ウクライナ軍はザポリージャ州オレホボ周辺でロシア軍が準備した防衛ライン=龍の歯に到達、ロシア軍が攻勢を仕掛けたスバトボ方面でも視覚的証拠が登場、クピャンスク方面ではロシア人が「オスキル川までのグレーゾーンを支配地域に書き換えた」と主張している。
ザポリージャ州
ニューヨーク・タイムズ紙が「温存していた予備戦力を投入する反攻作戦の主攻が始まった」と報じたザポリージャ州オレホボ周辺では、ウクライナ軍が視覚的に「龍の歯と呼ばれるコンクリート製障害物」が並べられた地域に到達したのを確認。
ロボーティネの東に位置するベルベーヴ方向の龍の歯=Ⓐ付近でウクライナ軍の装甲車輌が視覚的に確認されており、ロシア側情報源(Рыбарь)は引き続き「ロボーティネに対するウクライナ軍の攻撃」に言及しているものの「現地の気象条件が悪化して大地が泥濘むため、今後24時間は装甲車輌を伴う攻撃はないだろう」と予想している。
さらに複数の観測者(主にウクライナ側情報源)はカムヤンスキーやルホヴェ方向に対するウクライナ軍の攻勢を主張、グレーゾーンだったカムヤンスキー市内やルホヴェ方向の一部からロシア軍を押し出したらしい。
但し、この攻勢と結果を裏付ける根拠は提示されておらず、ロシア側情報も特に言及していないため、カムヤンスキーやルホヴェ方向の攻勢が本当かどうかは分からない。
スバトボ方面
スバトボ方面についてロシア側情報源(Рыбарь)は25日「ロシア軍がセルヒフカを解放してナディア方向に攻撃を実施している。一部の報告によればウクライナ軍はナディアから撤退した。ロシア軍がノボエホリフカを支配したという報告もあるが、現在も集落では衝突が続いている」と述べ、ウクライナ側情報源(DeepState)も「ロシア軍がノボエホリフカ、セルヒフカ、ナディアを占領した。残念ながらノボエホリフカを失ったことが確認され、包囲されることを恐れた一部部隊がセルヒフカやナディアから撤退してしまった」と主張していた。
この地域の戦闘に関する視覚的証拠は限られているものの、ロシア人ジャーナリスト(Канал Максима)がゼレベツ川を越えたⒶ周辺を第21親衛自動車化狙撃旅団(第2親衛戦車軍)の副司令官と歩く様子、ノボエホリフカの南=Ⓑを進むウクライナ軍の装甲車輌群を砲撃する様子、セルヒフカの西=Ⓒの森林地帯をロシア軍が砲撃する様子が確認されており、ウクライナ軍は小さな集落で遮蔽物のないノボエホリフカ、セルヒフカ、ナディアから後退して郊外に森林地帯を維持している可能性が高い。
ウクライナ軍とロシア軍の地上戦は「小さな森林」を巡る戦いの連続で、反攻作戦に参加しているウクライナ軍兵士も「占領された土地を最終的に解放する大砲ではなく人間の仕事で、このプロセスには精神的なタフさと忍耐力が必要だ。約300mの区間を解放するのに1ヶ月半かかった」と述べており、もはや短期間で「何kmも前進する」「前線を突破して機動戦を行う」というのは不可能に近く、上記の視覚的証拠を加味するとライホロトカ、コバリフカ、カルマジ二フカ周辺からの攻勢範囲は予想よりも小さい=ハルキウ州境には届いていないだろう。
クピャンスク方面
クピャンスク方面についてロシア側情報源(Рыбарь)は28日「ライマン・パーシイ周辺の支配地域を広げてオスキル川沿いに到達した」と報告し、マシュティフカ周辺のグレーゾーンをロシア軍支配地域に書き換えたと主張しているが、この地域の視覚的証拠は依然として登場していない。
因みにロシア人情報源は「ウクライナ軍がオスキル川の対岸にコンクリート製の構造物を急いで準備しており、これはロシア軍がクピャンスクを突破した際の備えだろう」と指摘している。
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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
ロボティネ〜ノボプロコビフカの東は70mほどの谷になっていてロシア軍の抵抗は弱いが進出後に猛烈な反撃が予想される
ウクライナがロボティネの陥落を目指すならまさにここからが天王山であり、攻勢の今後を占う重要な戦場になるだろう
地図ではなんてことないロボティネ東のカーブだがこの農道の価値はこれまで獲得したグレーゾーンの何倍も重い
あと以前スバトボの攻勢は意図が読めないし助攻ではないかという趣旨でコメントしたけど、やはり規模はあまり大きくなかったようだね
視覚的情報を見る限りザポリージャ州で相当数の歩兵戦闘車が失われているようですが攻勢維持出来るんですかねこれ、、、
奪還が無理そうならもう停戦した方がよくね
いくらでも動員できるとはいえ人命を失いすぎだろ
歩兵戦闘車が被弾しているとはいえ、そこまでロシアが前進して鹵獲した画像的証拠はない。
大多数は回収されてるし、西側からも引き続き支援が行われている。
一部は部品取りにしか使えないほど破損していたらしいが、攻勢が維持できなくなる程に歩兵戦闘車を失うまでには、まだまだ時間がかかるんじゃないですかね。
そんな問題か?被弾するって事は死傷するって話でもあるのに、ロシア車両より人的損害はマシだけど。車両が鹵獲されなくても損害はピンキリで修理にどれ位掛かるか不明だし車両が供給されようが乗員がいなけれれば話にならない。
欧米から供与された歩兵戦闘車両は被弾しても生存率が高いと好評ですね。
地雷原を突破するにあたって生存率の高い兵器を選ぶのは正しい選択ですね。
朝鮮戦争の中国軍みたいに敵軍の数倍の損害を許容できるのなら、装甲車両を多数備えた相手であっても攻勢は可能だ。
問題はウクライナは朝鮮半島と異なり平坦なため装甲車両や重火器を持った陣営が優位になる、当時の中国は若者が捨てるほど存在したが、ウクライナは元々出生率が低く若者が少ないため損失の補填が効かないことだ。打開策として「貧乏子沢山の親米国家から傭兵を調達する」ことが考えられるが、そんな都合の良い国は無い。(ロシアならシリアとかアフリカ貧乏国と仲良しなので傭兵の調達が容易)
視覚的情報でウクライナ軍とロシア軍の損耗数を計算している方のリストを見ますと、ウクライナ軍のAFV損耗は153両でロシア軍のAFV損耗は136両です(反攻後のザポリージャ方面のみ)。
ウクライナ軍が攻撃側で諸外国の供与も考慮すれば許容範囲内だと思います。
ロシア軍は大砲(MLRS含む)や対空兵器の損耗が激しくてウクライナ軍の約4倍損耗しています。
スバトボ方面はロシア軍が一時ハルキウ州の州境まで前進しましたが、ウクライナ軍が押し戻して今は膠着状態ですね。
ウクライナ軍・ロシア軍の双方に色々と問題があったみたいです。
ロボティネを奪取するために最近得た東の突出部から南の補給路を切断しようとする動きをウクライナ軍は試みる可能性がある、しかしこの動きはロシアの第一防衛ラインに側面を晒しながらの機動になり非常にリスクが高い。
もしウクライナ軍がリスクを回避しようとするなら細い攻勢軸からの突出ではなくロボティネ周辺のノボボクロフカなどを先に攻略しようとするだろう。しかしその試みは1か月以上成功していない。
ウクライナは南部で攻勢強めてるのにロシア軍はハリコフ方面に専念してるのは、ウクライナ軍が南部を突破できないというロシアの自信の現れなのかな?
残されていた第10軍団をウクライナは投入したのに対して、恐らくロシアの戦略予備は南部に相当残っていると思われます。
ハリコフで攻勢しているのは自動車化ライフル歩兵師団隷下に配属されたストームZ部隊(囚人兵と国防省と契約した元ワグナーで構成する攻撃部隊)がメインとのことなので探りを入れながらの攻撃になるでしょうね。