ウクライナ戦況

米英の諜報機関、プーチンのウクライナ侵攻計画を昨年夏に察知か

英BBCは9日、米英の諜報機関は2021年夏にプーチン大統領がウクライナ侵攻を企てていることに気づき前例のない措置に踏み切ったと報じている。

参考:Як західна розвідка намагалася зупинити війну в Україні та в чому помилилась

侵攻を阻止するため情報を公開、ロシアは侵攻を正当化させることに失敗するなど一定の効果は認められたが、、、

英BBCは「米英の諜報機関は2021年夏にプーチン大統領がウクライナ侵攻を企てていることに気づき前例のない措置に踏み切った」と報じており、記事内容の要点をまとめると以下の通りになる。

  1. ロシアがウクライナ侵攻の兆候を見せたのは1年前でウクライナ周辺のロシア軍が増加
  2. この段階でプーチンの意図は理解できなかった
  3. 2021年夏頃になると本格的な侵攻を計画しているのに気が付いた
  4. 米英の諜報機関は情報の収集と分析を共同で行いプーチンの意図が見えてきた
  5. ウクライナをロシアの勢力圏に戻すには武力行使しかないとプーチンは考えていた
  6. バイデン大統領はこれを阻止するため前例のない決断を下した
  7. 前例のない決断とは諜報機関がもつ情報の公開である
  8. CIA長官がモスクワを訪問、これでロシア政府の一部は計画が気づかれていることを認識
  9. 諜報機関がもつ情報をメディアにリークしてプーチンにメッセージを送った
  10. 2021年末に多くの関係者や同盟国にも情報を開示
  11. しかしウクライナ侵攻に懐疑的な国も多く、フランスは侵攻をブラフだと判断した
  12. 米英はさらなる情報公開に踏み切る
  13. 米国は偽旗作戦でウクライナの非人道性を強調して戦争の口実にすると公表
  14. 英国はキーウ政権を転覆させて特定の人物を大統領に据えるロシアの計画を公表
  15. これによりロシアは侵攻を自国民や他国に正当化するチャンスが奪われた
  16. しかし情報の力で侵攻を未然に防ぐことには失敗した
  17. ウクライナがロシアの侵攻を撃退できると思っていなかった
  18. 特に人々の士気や反応を正確に予測するには不可能
  19. 将来何が起こるのかをインテリジェンスの力だけで言い当てるのは不可能

出典:President of Russia

つまりプーチン大統領は2021年春にロシア軍を15万人も動員してウクライナを恫喝、ゼレンスキー政権はロシアと西側の間でバランスを取ろうとせず西側により傾向(軍事援助を要請)するようになったため外交や脅しでウクライナをロシアの勢力圏に戻すには不可能と判断。

プーチンは武力行使によるウクライナ占領を決意、この意図に米英の諜報機関は2021年夏頃に気づき情報を公開することで戦争を阻止しようと考えたが、結局侵攻は現実のものになる。

出典:Mil.ru / CC BY 4.0 ロシア軍のT-72B

ただ事前にロシアの侵攻計画(政権転覆後に親ロシア政権の樹立や偽旗作戦で戦争の口実を作る計画など)を世界に公表したため、ロシアは侵攻を正当化させることに失敗するなど一定の効果は認められたが、ウクライナがロシアの侵攻を撃退できると予測していなかったため「インテリジェンスの限界」も痛感したという意味だ。

BBCの報道がどこまで真実なのかは不明だが、情報機関からのリークを元に書かれたものぽっいので興味深い。

因みに以下の関連記事は2021年春のもので2022年に戦争が起こることは思っても見なかった。

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※アイキャッチ画像の出典:ロシア国防省

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コメント

    • 灰色の猫
    • 2022年 4月 10日

    個人的に今回のウクライナ侵攻で驚かされたことはまず米英の諜報能力。クリミア検問のスペツナズ急襲前からずっと追いかけてますが、彼らの予言が的確すぎた。
    それでもすべての予想が当たっていたとは言えないわけなんですね。
    日本も本気で諜報機関を作らないといけないと危機感を覚えます。

    87
      • G
      • 2022年 4月 10日

      実際にロシアの行動を先読みした数々の警告をしてきたこともあり、ファイブ・アイズの凄さが目に見える形で思い知らされましたね

      25
    • や、やめろー
    • 2022年 4月 10日

    やはり、ここまで知っていましたか。英国の情報収集能力が、やけに高いことから見ても、SBSが、ウクライナに多分入ってますね

    20
    • ミリオタの猫
    • 2022年 4月 10日

    戦争に限らず、人間の活動では正確な情報を得ていてもそれを活用出来ない事例は多いから、今回の記事を読んでも特に驚きは無いのだけど、敢えて此の件の教訓を述べるのなら、こうなるかな。

    「自分に都合の良い世界観を実現する為に戦争を決意した独裁者を止める事は誰にも出来ない。特に、彼がナショナリズム的な歴史観や宗教的な価値観(例:ネオ・ユーラシア主義やル―スキー・ミール等)に裏打ちされた世界観を抱いている場合は」

    とは言え、プーチンって1年前からウクライナ侵攻の準備を始めていたのね…それで実行したらこの体たらくって一体(大汗)。
    その意味では、今回のウクライナ侵攻における欧米・ロシア側最大の誤算は「ウクライナのゼレンスキー大統領がフェイスブックに自撮り動画で『自分は首都キーウに残る』と公言し『最後は首都と運命を共にする』覚悟を示してウクライナ国民の心に火を付けた」事だろうな。
    本当に世界を動かすのは情報では無く、何かに立ち向かう人々の覚悟なのだと痛感した次第。

    74
    • あさり
    • 2022年 4月 10日

    かつての覇権国と今の覇権国、この2つに勝てる国家は生まれないでしょうね。積み上げたものが違いすぎる。

    24
    • ウーン
    • 2022年 4月 10日

    やっぱり現代版陸軍中野学校みたいなのが必要だよなぁ。
    どんな戦争でも、結局情報収集が一番大事。
    今回のウクライナ侵攻で世論も変わるだろうから、次の参院選の公約に諜報機関の新設でも掲げたらどうだろうか。

    50
    • zerotester
    • 2022年 4月 10日

    昨年夏といえば、プーチンがウクライナについての論文を発表したのが昨年7月です。ロシアとウクライナは元々同一民族であって不可分のものだ。それが間違って独立国になってしかも西側の手先になってるのが許せない。ウクライナはロシアと共にあらねばならない。という内容でした。これがつまりウクライナ侵攻の所信表明だったのでしょう。

    32
    • k.o
    • 2022年 4月 10日

    昨年の夏頃からとは・・・さすがは諜報分野で長い歴史を持った米英だけの事はありますね。
    当初はロシアがウクライナに全面侵攻するなんて正直に言うと半信半疑でしたからね。
    特にアメリカなんてアフガニスタンの失敗もありましたからウクライナに全面侵略するなんて事言われても「まさかいくらロシアでもそんな自殺紛いなバカな事はしないだろう、せいぜい親露派地域をクリミアみたいに奪い取る事はやるかもしれないけど。」という感じでしたからね。
    更に言えば余りにもウクライナ全土に侵略する気だ、すぐに戦争が始まるぞとか執拗に訴えている姿を見ている内にアメリカによる情報戦の一環、ネガティヴキャンペーンとすらも思っていましたから今になっては反省ですね。

    25
      • ミリオタの猫
      • 2022年 4月 10日

      それ以前に、ロシアによるウクライナ侵攻までの世界の話題はコロナ禍と地球環境問題、そして中国等による権威主義国家の台頭に伴う民主主義国家の凋落を巡る議論でしたからね。
      皆が別の所に注目していたからこそ、今回の戦争が予想外の事態として受け取られていたとも言えます。

      16
    • 黒丸
    • 2022年 4月 10日

    陸続きの隣国を攻めるのに、約1年準備期間があってこの現状か。
    アメリカの軍事力の隔絶した最強さが改めてわかる話だな。

    渡海が必要な中国による台湾進攻は、事前準備が大変であり、隠蔽が困難なこと。
    米国の介入を絶対に阻止しなければ、勝率が大幅に低下すること
    指揮命令系統の破壊により速戦を目指す斬首作戦の実行は大変難しいことが
    中国政府にも理解できたんじゃないかな。

    21
      • vn
      • 2022年 4月 10日

      大変難しいのは中国政府も前から知っているので、2049年までに平和的手段で再統一することを追求している。
      もっとも、今回のロシア軍は準備不足が酷くて斬首作戦は失敗したので、中国は念入りに事前準備をするかもしれない。

      16
    • 2022年 4月 10日

    ロシアの侵攻を撃退できると思っていなかった
    特に人々の士気や反応を正確に予測するには不可能
    ↑侵略された側の士気って高くなるもんじゃないのか?
    なぜロシアも英米もウクライナを過小評価してたんだろう
    ロシアが想定より弱かった可能性もあるのかな

    あと本気で止める気があるなら止めれたような気もするけど
    ロシアに大損害を与えるってのが英米の目的の可能性あるよね

    4
      • hiroさん
      • 2022年 4月 10日

      クリミア侵攻時のウクライナを見ているから、こんなに善戦するとは思わなかったのでは。
      ウクライナ軍を訓練していた米英がそうなのだから、ロシアが舐めてかかったのもある意味理解できる。
      総じて言えるのは未来の事を正確に予想するのは、誰にとっても難しいということ。

      40
        • くらうん
        • 2022年 4月 10日

        クリミア併合後のウクライナ軍の様子も漏れ伝わってくる限りではひどいものでしたからね。
        つい1年前まで酔っ払い将校がMig-29破壊してたほどだし。
        リンク

        3
      • ミリオタの猫
      • 2022年 4月 10日

      >なぜロシアも英米もウクライナを過小評価してたんだろう

      これは、2019年にウクライナ大統領になったゼレンスキーが周囲から無能扱いされていた事が一番大きいと思います。
      彼は大統領選・最高議会(日本の国会に当たる)選挙に圧勝して政権を握ったのですが、ウクライナが抱える経済、汚職、紛争といった難問を解決出来なかった上、ロシアとのミンスク合意の反故やNATO加盟に対する西側諸国の支持取り付けに失敗した事で、2021年10月には支持率が25%落ちていたんです。
      ところが、上の方にも書き込みましたがロシア軍がウクライナへ侵攻した直後、フェイスブックに自撮り動画を投稿して『自分は首都キーウに残る』と公言したら国民が奮起してロシア軍に抵抗、ある世論調査ではゼレンスキー大統領への支持が91%に達すると言う事態になったのですから、世の中本当に分かりませんね。

      43
      • NHG
      • 2022年 4月 10日

      士気が高かったら勝てるもんじゃなし、今回のウクライナは初戦でロシアを撃退できたのが大きい
      もし初手のキーフ強襲が成功裏のうちに終わってたら士気も上がらず、なし崩し的にロシア領になって終わってた

      21
      • ネコ歩き
      • 2022年 4月 10日

      ウクライナ国民の意思を読み間違ったという分析が的を射ているのかと。
      侵攻初期のロシア側報道によれば、ウクライナ国民は侵攻ロシア軍を歓迎しゼレンスキー政権は簡単に崩壊すると読んでいた、とうかがえます。だから圧倒的戦力を投入すれば軍の練度や戦意に関係なく目的は達成されると考えていた。
      信を失っていたと言えるゼレンスキー大統領が徹底抗戦を謳うことでこれほど国民の支持を得、武器支援を受けているとはいえこれほどの善戦は予測外で、ロシア以下世界中が読めていなかったのが事実でしょう。

      8
    • ザコ
    • 2022年 4月 10日

    さりげなくdisられてるフランスに草ですよ。

    46
      • 豆柴
      • 2022年 4月 10日

      フランス人は基本的に裏切り者ですから

      5
      • 2022年 4月 11日

      こういうさらりと行われる皮肉がたまらねぇ。

      3
    • 無題
    • 2022年 4月 10日

    戦車の屋根はウクライナ侵攻の前兆だった…?

    13
    • 匿名
    • 2022年 4月 10日

    戦争の阻止には失敗したけど、事前にロシアの手の内がわからず国際社会の結束に時間がかかっていたとしたら、
    ウクライナには支援物資が届かず、今頃親ロシア政権ができてたかもしれないんだよな…
    事前に情報を一般に公開することで民意が一気に「ロシアは悪」という流れに傾いたように思える。

    21
    • 霞ヶ浦
    • 2022年 4月 10日

    冷静に考えて見れば侵攻の意図あるのは割と明確ではあった
    ただあの中途半端な戦力で全面侵攻に踏み切った(内部事情その他でそもそも無理だった)のは読み違えたな

    6
      • G
      • 2022年 4月 10日

      しかも暖冬でウクライナ侵攻に使えるルートが非常に限定的な状況なのにも関わらず、制空権もとらず一列になって突撃するという、まるで戦列歩兵のような侵攻をすると予想できた人はいないでしょうね
      仮に西側情報分析家が事前にそんな予想をしようものなら、一蹴されて首にされてもおかしくないぐらい意味不明なやり方でしたし
      (プーチン大統領が本気でウクライナ国民に歓迎されると考えていた可能性があることも含めて)

      9
    • うた
    • 2022年 4月 10日

    ゼレンスキー大統領がもし今、暗殺されたら、欧米は協力の手を引っ込めるのじゃなかろうか?
    抗戦の意思があるから助力するけど、中心が崩壊してしまったら、仕方がないね、という論調になってしまいそうな気がする。
    米英は口では無念だと言いながら、第三次世界大戦を回避出来て良かったと胸を撫で下ろすのではなかろうか

    最近、ロシアのどっかの議員が、北海道は自分達の物だと言ったそうだが、日本は、ニホンジンはどうだろうか。

    1
    • 匿名
    • 2022年 4月 10日

    アフガニスタンからあんなに慌てて撤退したのも、今回のことがあったのからかなぁ

    13
      • ワカヤマ
      • 2022年 4月 10日

      そういう事情もあったのだと考えるのが無難でしょう。
      恐らく、我々が思った「ロシアがウクライナに侵攻する可能性」と同程度には米露衝突、核戦争の可能性がピックアップされていたのでしょう。
      割と早期にNATOの不介入を表明したのは上記を回避するに必要なことだったのでしょう

      6
    • 無無
    • 2022年 4月 10日

    もうリーダーの暗殺で戦意が失われる段階は過ぎてます、
    彼の死はむしろ救国の殉教者、神とされウクライナ人は余計に燃え上がり、各国は支援を引くに引けなくなる
    暴力ですべてを支配できると勘違いしてるプーチンだけがそこを判ってないだろうね

    23
    • 匿名
    • 2022年 4月 10日

    20.露軍がこうも機能不全起こすとはしかも2週間で片つけれると信じ切って万が一に備えてなかったのはあまりにも想定外だった
    21.露軍の精密誘導兵器がここまで精密さに欠けていたのは西側の電子妨害の結果ではなく単に品質の問題であるのは想定外だった

    12
    •    
    • 2022年 4月 10日

    ゼレンスキー大統領夫人が全く表に出ていない
    外国の首脳がキエフを訪れても姿を見せていない
    キエフにはいないであろう

    ゼレンスキー大統領は、自分が死んだ場合は夫人を担ぎ上げて士気を高める事さえも想定していたのではないかと思える

    1
      • 黒丸
      • 2022年 4月 11日

      娘さんが17歳だったと思う。
      本気で家族を担ぎ上げて士気を高めるなら、こちらの方がはるかにいいかと。

        • 匿名
        • 2022年 4月 11日

        神輿だとしても、17歳じゃ判断力がね…
        逆に「未成年者担がなきゃなければならない程人材不足と取られかねないし

        1
    • Blanche
    • 2022年 4月 10日

    フランス諜報機関トップがクビにされるのも納得だな
    完全に読み違えてた

    11
    • tarota
    • 2022年 4月 10日

    NATOも有名無実化してんな
    結局は米英が頼りで他はオマケだな

    3
    • aikobros
    • 2022年 4月 10日

    大国の首脳は常に国運かけた将棋やトランプゲームやってるんだよ。
    今回の侵攻だって、じっくり準備したり様子を見たりして、脅しで目的達成できるならなし、
    脅しだけでは達成できず、且つ欧米がある訳ないと油断してるなら実行とか常に複数の手を考え、
    最初から必ず侵攻なんて方針でやってるわけではないだろう。

    だから訓練を止めて撤退とか言ってみたり、逆にドンバス親露派にロシア国籍を与えるとか言って
    こっちの反応見て、よし今だ!で開戦したわけ。蓋をあけてみたらスラブ民族同士の自滅行為になったが。

    1
    • tny
    • 2022年 4月 11日

    >> しかしウクライナ侵攻に懐疑的な国も多く、フランスは侵攻をブラフだと判断した

    AUKUS発足の遠因もここにありそう

    2
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