攻守が逆転したバフムートを巡る戦いはウクライナ軍が主導権を握っており、クリシェイフカやアンドリーフカだけでなくクルデュミフカの郊外にもウクライナ軍部隊が到達、バフムートの南を守るロシア軍は崩壊寸前だ。
シルスキー陸軍司令官が奪回すると公言するバフムートの戦いはウクライナ軍が優勢
シルスキー陸軍司令官はBBCの取材に対して「バフムートを守る戦いで我々は多くの仲間や兵士を失ったため、街の奪還は基本的に名誉の問題だ。素晴らしい街だったバフムートは廃墟になってしまったが、我々はこれを取り戻さなければならない」と述べ、バフムート奪還に拘る理由について以下のように主張した。

出典:Zelenskiy Official
バフムートはスラビャンスク、コンスタンチノフカ、シヴェルシク、ホルリウカ、デバルツェボに通じる道が交差する中心地で、この整備された道路網を使用すればロシア軍は少なとも3方向に前進することができ、周囲の高地も押さえれば「次の攻勢」にとって重要な役割りを果たすだろう。そのため周囲の地形よりも標高が低いバフムートで敵を止めることが非常に重要だ。
この街を制圧するためワグネルは莫大な人的損失を被ったが、現在のロシア軍はバフムートを起点とする突出部に戦力を集中しているため「一種の半包囲状態」にあり、この状況を利用しない手はなく「敵が支払った代償(恐らくワグネルが被った人的被害のこと)」の1/10で街を奪還できる条件が整っている。
つまり周囲の標高よりも低いバフムートをロシア軍は政治的に放棄できないため、本来ならチャシブ・ヤール方向に前進して『不利な戦場条件』を修正する必要があるのだが、バフムート制圧後にワグネルが戦場を離脱し、ウクライナ軍の反攻作戦にも備えなければならないロシア軍にバフムートで攻勢を維持する余力はなく「戦術的に不利な突出部への戦力集中」を半ば強制されており、これをシルスキー司令官は「一種の半包囲状態」と表現して「この状況を利用しない手はない」と述べているのだ。
ウクライナ軍は時間をかけて水路の西側にあったロシア軍陣地を掃討し、チャシブ・ヤール方向から水路の内側にあるクリシェイフカに向けて攻勢を仕掛け、大きな損害を被りながらクリシェイフカに隣接する高台を制圧、クリシェイフカの南に位置するアンドリーフカにも迫っていたが、ウクライナ軍はクルデュミフカの郊外にも到達しているのが視覚的に確認されており、ロシア軍のバフムート南の守りは「崩壊寸前」に見える。
ウクライナ軍の装甲車輌がクルデュミフカの郊外の森林地帯=Ⓐで確認されており、既に水路の外側からクルデュミフカに入るための出入り口もウクライナ軍に抑えられているため、ここを守るロシア軍は二方向から攻撃を受ける状況だ。
アンドリーフカを守るロシア軍=Ⓑもウクライナ軍の砲兵部隊に狙い撃ちされている状況で、もうクリシェイフカ、アンドリーフカ、クルデュミフカのどれが落ちても不思議ではなく、ウクライナ軍の反撃はロシア軍がバフムートを包囲するため進んできた手順(オザリアニフカ→クルデュミフカ→アンドリーフカ→クリシェイフカ)の逆バージョンと言える。
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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
この不利な状況に陥っても、戦力を追加投入するなり、周辺地域に攻勢をかけて圧を加えることができない辺り、ウクライナ軍によるロシア戦線への全体的な削り攻勢が効いている証左と言えそうですね。このままバフムートでロシアが諦めない限りは、削り作業に勤しんでいくのが、結局はロシア軍全体の力を効率よく削ぐことに繋がり、他方面からの進軍を助けることになるでしょう。
大変ですが粘り強く戦い続けて欲しいとこです。
前まである程度進展があったバフムート北西方向でウクライナが攻勢掛けていても進捗ないから削りが効いているかと言うとね。クリシェイフカに関しては攻撃手段有ってタイミングさえ整ったら結構良いキルゾーンになりそうなんだけど。
結局の所、バフムート南側は西側の大型兵器よりは歩兵携行兵器で痛い目に遭っている感じが高いので増援よりはロシアの対歩兵兵器が充実しない限りは無理だろうなと言う感じを受ける。未だに対歩兵の間接射撃は着発の砲弾を撃ち込むだけに留まっているように思うし、良ければそれにプラスしてUAVの観測があるだけか。
現在「バフムトの半包囲」は存在しない。
より重要な北のソレダー・ベルヒフカ方面で成果はなく、2軸包囲機動は諦めてクリシェイフカに戦力を集中した模様だ。(ロシア側情報源はクリシェイフカ前面に3万人以上の戦力の集結を報告)
クリシェイフカは高地を奪取した後も激しいロシア軍の砲撃で集落の確保に至らず、この所足踏みが続いている。
ウクライナとしてはクリシェイフカ南で進捗を拡大することでロシアの防衛ラインを破綻させたい狙いがあるだろう。
バフムトの半包囲は全く意味不明な話だよね
ロシア軍は南北のクリシェイフカ•ヴァシリフカを確保して最大の後方連絡線であるT0504を圧迫出来たから半包囲で有利を得てバフムトを攻略出来たわけだけど、ソレダル→バフムトの後方連絡線にまるで近接出来ていない現在のウクライナ軍が何をもってバフムトの半包囲を主張するのかと
”バフムト”ではなく”バフムトとソレダルを含む広域”の半包囲では?
ソレダル東方のヤコヴリフカとバフムト南方のゴルロフカを結んだ線の北西部が突出部になっている
バフムト南方を削ることで突出部の付け根を削ろうとしているように見える
いやまあ確かにポクロブスキーあたりまで突破出来たら後方連絡線を脅かして広域を包囲出来るけど、さすがにそれは遠すぎて「半包囲の状態にある」なんて強弁するのは違和感強すぎるな…
そこまで行かずともクリシェイフカからT0513を越えた先にあるザイツェベで充分では
ザイツェベからなら迫撃砲でも攻撃できそうな距離にM03とT0504の合流点がある
そうなるとバフムトへの安全な補給路はポクロブスキーを通る白い道路1本のみになり
バフムトへの補給を細らせることができるかもしれない
北方からではないのは北方にはロシアの防御施設が建設されていて攻めると被害が大きそうだから
「現状から半包囲に進む可能性がある」と、「現状は半包囲はない」は別の話です。
戦況を見ていると現在の段階で半包囲云々というのは時期尚早でウクライナの情報戦の一環でしょう。
”不利な戦場条件であるにも関わらず政治的な理由で撤退出来ず戦力消耗を強いられる状況を「一種の半包囲状態」と述べている。”と記事には書かれており、物理的に半包囲ではないことはウクライナ側も承知の上だろう。
そもそも半包囲に明確な定義が無い以上は物理的であれ精神的であれ好きに半包囲を主張すれば良く、個々の定義を押し付けるのは無意味だろう。
重要な点はウクライナ側の損害に見合うだけの効果的な戦力消耗をロシア側に強いられているのか?という点だ。
ロシアも西側諸国に半包囲されたから仕方なく、ウクライナに軍事作戦行ったといっているから、半包囲の状態にみえれば距離は関係ないと思う。
ロシアが国に半包囲されたと先に言い出したから、半包囲の定義はかなり曖昧になっており、ウクライナがその発言を活用している。
厄介なのが、ロシア側も一応回りを削ってからバフムトを攻略した訳ですが、削ってからが長かったと記憶しています。
もちろん、周辺を削ってからはずっと動きはありましたが、半包囲になったからすぐ奪還と簡単に言いにくい所がこの場所の予想の難しい部分ですね
ただ、ロシア軍の正規軍はワグネルよりは市街地戦に弱い事と、既に街は廃墟に近い事を考えると解放は早いかもしれません。
一方で、ロシアの北の攻勢は視覚情報は欠けているものの止まっている話を聞かないのでもしこれが本当なら、やや恐ろしいところです。とはいえ、この戦争で過大な戦果をロシアは何回も報告しているので実は北部は最低限しか取れてませんはありそうだなと。
クリシェイフカ、アンドリーフカ、クルデュミフカの全てが確保出来たらどのくらいのスピードでバフムトを奪還できるんだろう。バフムトが破壊しつくされてもMIG-17モニュメント付近でウクライナ軍は頑強に抵抗できていたし、いくらバフムトが低地でロシア軍が不利とはいえ北部が掌握されたままの現在だと10分の1の損失(勿論方便だとは思うが)で奪還するのは無理があるような気がする。
ソレダーを攻略できるかにかかってくると思います。
ここにある地下鉱山はハイマースやストームシャドーでは破壊できないので安全なHQや補給ハブとして機能します。
第二次ザポリージャ攻勢が始まった今、正直このままバフムト南部を押してもオピトネあたりで停滞するのではという気がしています。もう一度市街地戦を真正面からやるには戦力が足りないでしょう。
まあロシア軍もポパスナやスビトロダルスク攻略からその後のルハンスキーやコデマ、ミコライフカ・ドルハ、バフムト市内の突破に合計1年以上詰まった結果攻勢限界を迎えて現在の反転攻勢があるので、ウクライナ軍も同じように攻めるのに苦労するのは当然でしょうね
ロシアがウクライナ軍を追い出すにあたって陣地化しやすい建物に片っ端から砲撃を加えながら進んでいったので、まもりずらくはなっているんだろうけど…1/10は難しそう。とはいえ優位に戦えるの自体は事実でしょう。戦略レベルでどの程度の効果があるかは結果を見るしかもうわからない。
高台に囲まれ、遮蔽物の大半を破壊したバフムト市内は郊外から砲撃するのに適した戦場なので、ウクライナ軍が市内に部隊を突撃させるのはまだまだ先だと思います。
仮にロシアが撤退したとしても、市内は地雷や不発弾が大量に置き去りにされてると思いますので、ウクライナ軍はかなり慎重に進めるのではないですかね。
東部に侵攻したロシア軍弱すぎたね。
結局陽動にもならなかった。
ウクライナは南部に予備兵力をつぎ込んでるし
急いで南部に戻らないとまずいんじゃないの?
まあ戻ったらじゃあ東部はどうすんのってことになるけど。
現在のところ3軸の攻勢すべて阻止されてますね
初期の攻撃に成功したスヴァトヴェもやや押し返されるような形
10万の兵力とは・・・まあウクライナ側が言っているだけではありますが
ほんと不思議なのは 東部でも南部でも自分達の防衛ラインより前に出てウクライナと戦って削られること。
防衛ラインの後ろで守ってれば無駄に削られることもないのにね。
いたずらに戦力を消費するだけで結局防衛も危ういことになってる。
ロシア人の戦術ってホントわからん。
バフムト南部のクリシチュウカが陥落しそうですね。
ウクライナ軍は、クリシチュウカに、名前だけなら10個旅団くらいつぎ込んでいますね。例えば、ウクライナ軍は、様々な部隊、例えば警官で組織した部隊なんかもつぎ込んでいるようようです。
守るほうは、小さな集落をなぜか異常にしつこく守り、攻める方は大量の部隊で損害無視で波状攻撃をかけている。
昔、ズールー戦争という映画がありましたが、そういうイメージを持ちました。
ボーア戦争で英軍の小部隊が小さな砦にこもっていて、そこにズールー族の大部隊が攻撃するわけです。大群なので、次々と波状攻撃するわけです。ズールー族は勇敢です。
もっと面白おかしく言えば、守るロシア軍第4ライフル旅団は確か東部の民兵です。彼らは自分たちが戦うことによって、家族や同胞を守っている意識があり、しつこく守っているようです。
そして、攻めるのはアゾフやアイダールです。彼らは、第4ライフル旅団の兵士たちの天敵であり、お互いに凄惨な戦いかも。
しかし、ここまで言えば面白く言い過ぎです。
第3突撃旅団はアゾフという名前を持っていても、たぶん実態は普通の軍隊であり、思想的なものはあまりないと思います。しかも、消耗してクリシチュウカからすでに転進している可能性も高いですから。
まあ大局的には、ウクライナは、南部の攻撃が上手くいかないので、バフムトに再び力を入れ始めて、その中でクリシチュウカが攻めやすそうだったというところでしょう。しかし、兵力の多さは大きな力ですね、後は武器さえあれば。