欧州関連

ポーランド軍からの受注を伸ばす英国、今度はブリムストーンを輸出か

英国はポーランドから短距離防空システムやフリゲート艦の受注に続き、駆逐戦車プログラムの対戦車ミサイルとして「ブリムストーン」採用が噂されており、英国産業界とポーランド産業界の協力関係は順調に成果を上げ始めている。

参考:Polish MoD: Tank Destroyer Contract Imminent

ポーランド側に前例のない規模での技術移転を容認した英国、目論見通り受注を伸ばす

ポーランドは昨年10月に軍のサイズを14万人→30万人(40万人規模に達する可能性も浮上)に拡張することを決定、これに合わせて大規模な装備調達を進めている最中で、調達契約を締結したものから交渉中までのものを含めると以下の通りになる。

調達先種類数量ステータス
米国戦闘機F-35A32機契約済
 UCAVMQ-9不明交渉中
主力戦車M1A2/SEPv3250輌契約済
装甲車輌クーガー300輌契約済
防空システムパトリオット8セット契約済
MLRSHIMARS20輌契約済
500輌交渉中
防空レーダーLTAMDS不明交渉中
英国短距離防空システムCAMM不明契約済
 空対地ミサイルブリムストーン(駆逐戦車向け)不明交渉中
フリゲートアローヘッド1403隻契約済
フランスISR偵察衛星2基交渉中
イタリア多用途ヘリAW14936機契約済
M-29の後継機M-346(FA-50と競合)不明交渉中
韓国主力戦車K2計500輌?交渉中
K2PL交渉中
歩兵戦闘車K21もしくはレッドバック不明交渉中
自走砲K9不明交渉中
防空システム天弓2不明交渉中
M-29の後継機FA-50(M-346と競合)不明交渉中
 
トルコUCAVTB224機契約済
 
国内調達掃海艇コルモラン型3隻契約済
 駆逐戦車プログラム不明不明開発中
 砲兵システムグラディウス 契約済

ポーランド軍の調達需要で存在感を発揮しているのは米国と韓国で、これに食い込むため英国もSA-8の後継システム=ナレフ・プログラムにCAMMを提案、ポーランド側に「前例のない規模での技術移転」「CAMM製造へのポーランド産業界の参加」「独自にCAMMの海外輸出も容認」すると約束することで競合相手のIRIS-T/SLMやNASAMSを抑えて受注を獲得したが、この破格の条件提示はドイツやスペインと競合していたフリゲート艦受注への布石でもあり、英国は狙い通りアローヘッド140の受注獲得に成功した。

出典:ポーランド国防省

さらにポーランドが進めている駆逐戦車プログラムにも英国製の空対地ミサイル(対戦車ミサイル)「ブリムストーン」が採用されると噂されており、CAMMで勢いがついた英国産業界とポーランド産業界の協力関係は順調に成果を上げ始めている。

因みに駆逐戦車プログラムとは対戦車兵器を搭載したBRDM-2/9P124を更新するためのもので、チェコのTatra社とポーランドのHSW社が共同で開発した戦術多用途車輌に英国製のブリムストーンを統合したものになる可能性が高いと噂されており、ブラスザック国防相は「まもなく駆逐戦車プログラムの調達に関する正式な契約を締結する」と言及。

出典:SuperTank17/CC BY 3.0 BRDM-2

フランスやイタリアも順当にポーランド軍の調達需要に食い込んでいる一方でドイツが姿を消しており、韓国がドイツの代わりに浮上してきた格好だ。

追記:地対空→空対地に修正

関連記事:英国、ポーランドに前例のない規模での技術移転を認めシーセプター売り込みを後押し
関連記事:ポーランドは英国と関係強化、次期フリゲートにアローヘッド140を採用
関連記事:ポーランドが韓国とK2PLの開発製造で合意、K2も数百輌導入するため交渉中

 

※アイキャッチ画像の出典:CrownCopyright/2008

バイデン政権、ドイツに続き西側製防空システムをウクライナに提供か前のページ

フィリピン国防省、韓国に海軍向け哨戒艦6隻を5.7億ドルで正式発注次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    英国防相がチャレンジャー2全廃を否定、但し削減の可能性は否定せず

    前記事で「戦車廃止で揺れる英国、塹壕戦で騎兵隊が役に立たなかったのと同…

  2. 欧州関連

    英首相が国防費増額2.0%→2.5%を発表、国内からは少なすぎると批判が集中

    NATO首脳会議が行われていたマドリードで英国のジョンソン首相は「10…

  3. 欧州関連

    無人機の迎撃コスト問題、ゲパルトのようなレーダーと連動した対空砲が必要

    ウクライナ軍は1日と2日に侵入してきた84機の無人機を全て撃墜すること…

  4. 欧州関連

    伊メディア、イタリアは60輌のM109Lをウクライナに提供済みか提供予定

    イタリアのLa Repubblica紙は16日、ウディネ駅で撮影された…

  5. 欧州関連

    ウクライナへの戦車提供に関する合意形成、これを阻止したのは誰?

    20日に開催されたラムシュタイン会議は「ドイツ製戦車のウクライナ提供に…

  6. 欧州関連

    頻繁な水漏れ事故に悩む英空母、修理中のプリンス・オブ・ウェールズが5月までに復帰

    機関室への水漏れ事故で運用不能になっていた英海軍のクイーン・エリザベス…

コメント

    • NA
    • 2022年 6月 27日

    >英国製の地対空ミサイル(対戦車ミサイル)「ブリムストーン」が採用されると噂されており
    地対空ではなく地対地ですね(typoでしょうが)

    1
    • ウツボ
    • 2022年 6月 27日

    もう、主要国の軍需産業は笑いがとまらんだろうな。不謹慎なことをいうけれど、ロシアに感謝している人間もいるかもしれん・・・・

    10
    • makumaku
    • 2022年 6月 27日

    調達実数はさておいても、これは破竹の軍拡というべき内容ですね。
    ポーランドが、近い将来必ずロシアはやってくると結論したようです。

    10
      • えっくす
      • 2022年 6月 27日

      プーチンのもろもろの発言からロシア帝国の最大版図を目指してるようですからね。後継者はその意向を継続するかは分かりませんが、フィンランド、バルト三国、ポーランドなど帝国の旧領は侵略に備えないといけないでしょう。

      19
    • ido
    • 2022年 6月 27日

    ドイツはポーランドに色々やりすぎた結果がこれかぁ。まあ、大体予想してたけど。

    8
    • 戦略眼
    • 2022年 6月 27日

    支払いは大丈夫なのかな?
    後で、EUの補助金とか求めそうだが。

    1
    • もり
    • 2022年 6月 27日

    こう言うフリゲート需要にもがみ型準同型艦を食い込めさせられるようになりてぇよなぁ

    4
    • 黒丸
    • 2022年 6月 27日

    ベトナムがポーランドみたいな存在になるかどうかだが
    現状だと困難だろうな。
    ラオスやカンボジアで中国に先手とられているし。

    1
      • 無無
      • 2022年 6月 28日

      ベトナムのスポンサーかパートナーというべきロシアがどうなるのか、ここはベトナムを揺さぶるチャンス
      台湾の次に中国がフィリピンかベトナムを標的とする予想を立てれば、ベトナムは先の見えないロシアから離れてアメリカと日本に接近してくるでしょう

    • 月虹
    • 2022年 6月 27日

    >韓国がドイツの代わりに浮上してきた格好だ

    韓国が契約した兵器を見ると主力戦車、歩兵戦闘車、自走砲と確かにドイツが得意げに売り出していた機甲車輌をそっくり受注できる可能性に持ってきているのは凄いですね。防空システムの天弓2はロシアのS-400の技術を基に開発されたと言われ、既にアラブ首長国連邦(UAE)が導入。エジプトなど対ロシア制裁によりS-400導入を検討していた国が関心を示している様です。

    2
    • 南極1号
    • 2022年 6月 28日

    最初の写真の航空機は何でしょうか?

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  5. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
PAGE TOP