155mm砲弾の共同購入をEUに提案しているエストニアは「欧州企業が生産する155mm砲弾量を7倍に引き上げる必要がある」と主張しており、欧州企業が1ヶ月で生産する砲弾量をロシア軍は1日で発射するとも指摘している。
参考:EU mulls billions in funding to quicken artillery shell production
ウクライナ軍が戦場で消耗する最小6万発~最大21万発の155mm砲弾は「NATO加盟国の備蓄」を食いつぶす形で維持されているだけ
エストニアはウクライナのニーズと枯渇したNATO加盟国の砲弾備蓄を埋め戻すため「EUによる155mm砲弾の共同購入=40億ユーロ分」を提案しており、今月7日に開催されるEU加盟国の国防相会議で何らかの決定が下されると予想されている。
エストニアの計算によるとウクライナ軍が戦場で消耗する155mm砲弾の数は1日2,000発~7,000発=月換算で最小6万発~最大21万発で、欧州企業が1ヶ月間に生産できる155mm砲弾の数は月20,000発~25,000発に過ぎず、これをウクライナの消耗スピードに合わせるためには生産量を7倍=月14万発~17.5万発に増やす必要があるらしい。
米国も155mm砲弾の生産量を6倍に増やして月産9万発に引き上げる計画なので、欧米で月23万発~26.5万発を供給できるようになれば「ウクライナのニーズ」を満たしながら「枯渇したNATO加盟国の砲弾備蓄」を埋め戻すことが可能がになるという意味だが、仮にEUが155mm砲弾の共同購入を決定しても欧州企業の増産が7倍に到達するまで何年かかるの不明で、米国が「朝鮮戦争の水準」と表現する月産9万発に到達するのは早くても2025年の話だ。
ロシア軍が1日に発射する152mm砲弾の数については諸説あるが、EUに提出した文書の中でエストニアは「1ヶ月間に欧州企業が生産する砲弾量をロシア軍は1日で発射する」と述べており、大雑把に言えば「ロシアが戦場に供給(生産分+備蓄分+支援国からの供給分)する152mm砲弾の量は月60万発レベル」という意味で、現時点での生産量(米国/月1.4万発+欧州/月2万発~2.5万発=約4万発)では到底太刀打ちできない。
ウクライナ国防省情報総局のキリロ・ブダノフ准将は1月「侵攻初期のロシア軍は1日6万発もの砲弾(152mm砲弾を指しているらしい)を発射していたが、現在は1.9万発~2万発まで発射ペースが低下している。この数字さえ供給能力を上回るため持続可能なものではなく3月頃までに1万発~1.5万発に発射ペースが低下するだろう」と明かしており、ブダノフ准将の数字を採用すれば「ロシアが戦場に供給する152mm砲弾の量は月30万発~45万発レベル」に下がる。
兎に角、ウクライナ軍が戦場で消耗する最小6万発~最大21万発の155mm砲弾は「NATO加盟国の備蓄」を食いつぶす形で維持されているだけで、この消耗ペースは持続可能なものではなく、早急に増産体制を軌道に乗せないと火力で撃ち負ける可能性があり、このギャップを早急に埋めるためには非欧州圏=アジア圏(韓国やオーストラリアなど)の砲弾生産力なども取り込んでいく必要がある。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Staff Sgt. Matthew Johnson, Operations Group, National Training Center.
相変わらずの火砲主義•••
航空機がろくに使えんのにこんなのと戦わされるウクライナは大変だ
ロシア軍の命中精度が著しく低いのが救いですね。もしかすると北朝鮮以下なのではと。
まともな命中精度あったら何十回レベルでウクライナ軍は壊滅してたでしょうし、壕に行っては壕に従えでしょうか。
ロシアは観測ドローンを大量運用していて砲火力の運用効率も高いです。
政治的に航空機が使えたとしても、NATO加盟国で米軍以外には制空戦した上で対地攻撃とか無理でしょうし
欧州は航空機があるから火砲は少なくても大丈夫と思いこんでいたのか、地域紛争しか考えてなかったのでしょう
(まとまな防空網がある軍隊に対する航空攻撃可能な装備・戦術が揃ってるのは米軍だけと思われる)
欧州主要国とウクライナじゃ立場が天と地ほど違うだろうし、ウクライナ基準で物を考えても仕方がないのでは?NATO加盟国を攻撃すると言う事はNATOからの反撃を意味するんだし、投入出来るリソースが全く違う。
ウクライナ相手みたいに生かさず殺さずみたいな支援じゃなくて航空兵力も最新兵器だろうが関係無く短期間で射程距離による制限もそれ程無く全力に近い戦力投入されれば、ウクライナみたいな砲撃合戦なんて起きるかは疑問。
歩兵相手の破片攻撃だってウクライナだと榴弾砲メインだろうが、NATOならば戦車砲・機関砲・MLRS含む各種ロケット弾と選択肢は広いし、必要ならば開発中のBLU-136 改良致死弾頭とか前倒しして航空爆弾でも効率よく破片ばらまく可能性すらあって選択肢や効率が別次元だと思う。
21世紀のご時世でここまで大規模な砲撃戦なんて正直朝鮮半島有事で北朝鮮軍と韓国軍の戦闘でしか起きないだろうと思っていたけど・・・戦争ってのはどこで発生してもやっぱり何が起きるかわからないね。
近いうちに韓国生産砲弾のウクライナでの使用が必須になるのではないかと思いますが、文政権より遥かにマシになったとは言え尹政権が決断出来るのか。
見返りとして北の暴発時のNAT支援の確約が入ることは日本にとっても好ましいと思いますのでその辺りを日米が後押し出来ると良いですね。
韓国が砲弾を輸出し、北朝鮮がカラダを張って外貨獲得。
一見代理戦争みたいに見えるが、北朝鮮はロシアから資金が入り、韓国は西側諸国の支援したお金が入り、お互い軍事部門が豊かになり、膨れ上がる。
結局、南北間の緊張がより高くなるんじゃないのかな?
当面に関してですが、韓国が米国の注文に応じて砲弾を生産し輸出する、という体裁が維持できるならば問題無いのでは。
最初の10万発の備蓄弾譲渡には同盟関係に鑑みすんなり応じたわけで、2回目の要請に躊躇が見られるのは自国の備蓄量に懸念が生じるからかと推測します。ロシアからの批判の影響が無いとは言えませんが、尹大統領が2回目の要請に対し理解を求めたのは国内向けだった印象です。
その備蓄量ラインを守る範囲での増産と米国輸出が持続できるなら、米軍が最終使用者という名目が立つ限りにおいて国内的同意は得られるのかと思います。
尹政権に対し決断の国際的要請圧力があるのは、対空兵器や陸戦兵器等提供を含む直接的ウクライナ支援でしょう。
問題は韓国がどこまで砲弾を支援できるという事ですかね。
いくら西側最大の砲兵戦力と備蓄量と生産基盤を持つとはいえ北朝鮮との有事を考えたらそんなに多くは送れないのでは?
もし砲弾を送り過ぎて北朝鮮との砲撃戦で弾が足りませんになったら洒落にならないですからね。
記事にある通り、米国も砲弾生産能力を現状の6倍にする計画ですがそれには2025年までかかる。
一方で韓国は戦時レベルの銃砲弾生産設備を平時(停戦中ですが)から維持していると言われています。これがフル生産に入れば、米国の生産拡大体制が軌道に乗るまで、ある程度の状況緩和ができるのかと。
>が1ヶ月で生産する砲弾量をロシア軍は
>1日で発射する
これが事実ならばロシア軍より戦車の性能や長距離砲の命中精度が高かろうが、物量で踏み潰されてしまいます。
要塞化されていると言われていたバフムトがこれだけ押し込まれているのが証明しています。
これはウクライナ侵略戦だけ特別ではないと思います。
一方的に航空優勢を取る事が可能な軍は米軍くらいでしょう。
その米軍すらロシア軍のようにS400やS300といった防空システムを大量に保有した軍隊相手だと難しいかもしれません。
そうなると今回のような戦い方が主流になってしまいます。
今回の戦争で、自走できる超射程の火砲の重要性が際立った。射程が短ければドローンでも無力化されかねないし、自走できないM777は十分な仕事はしつつも当初想定されたようなゲームチェンジャーにはなれなかった。今後の各国のドクトリンがどう変わるのかに目が離せない。個人的には低コストの対空自走砲の今後が一番気になる。
ロシアは絶倫だな
ATACMSでより遠くの弾薬集積地を叩けるようにすればいいのに、米国はまだそのやり方を渋ってる。
馬鹿正直に火砲の打ち合いに付き合って、西側諸国の砲弾備蓄量に過度な負担を掛け続けているのだから非効率甚だしい。
もうクリミア大橋を吹き飛ばしたぐらいじゃ、もはやロシアは核を使えないのは誰の目にも明らかだろうに。
トマホークやJASSM-ERとかみたいに、モスクワを攻撃できてしまうならまだしも、
そうでないのなら、供与を渋る意味はもはやない
昔のCMではありませんが「元から絶たなきゃダメ」ですよね。
余裕が無いのですから発射される前に始末する必要があります。
手元のカードは豊富なのに、Sカードしか使わず、SRもSSRも温存。
それで「Sカードが足りないから課金しなきゃ」と言ってるようで、
その前に上位のカードを切れば?としか思えませんね。
これ聞くと正攻法でロシアに対抗しようとするのは無為な気がしてしまいますね(それはそれとしてウクライナへの砲弾増備は必要でしょうけど)。古今東西戦場で敵の火砲が脅威な時は砲そのものを潰していけばいつか火力が失われるというのがお約束です。ロシア軍が使う榴弾砲は半分以上が牽引式で陣地移動に多少時間がかかるし、ロシア軍が厳密な意味でのシュート&スクートを志向しているとも思えません。ですから隠蔽陣地を事前に察知するか、砲撃に対して迅速に対砲兵射撃や精密攻撃が出来る体制を堅実に整えていくことも大事だと思います。
ウクライナ上空を西側の衛星がどの程度カバーしているのか分かりませんが、砲兵の活動の追跡となると赤外線監視衛星が常駐していなければいけないのでこちらは難易度が高いでしょう。米国などは案外持ってたりするのかもしれませんが、あの手の情報はアセットと同時に解析するマンパワーも必要になりますし、どこかが壁になっているのでしょう。となれば前線に近い場所に対砲兵レーダーを分散させて、砲撃が始まった時点で敵砲兵陣地を割り出してHIMARS等で叩ける体制を作るほうがまだ難易度が低いのかもしれないですね。対砲兵レーダーといえば日本が技術的にリードしていた分野で、かつ攻撃的兵器でもありませんので、仮にこういった対処方針が定まった場合にコミットできる可能性があるんじゃないかと思います。