米ゼネラル・アトミックスは「海上および陸上の情報・監視・偵察(ISR)能力を強化するため、オランダ空軍がMQ-9Aの調達数を2倍(4機→8機)に引き上げた」と発表、ウクライナ侵攻の勃発でUCAVの有効性が再評価されたことを受けてMQ-9は受注を伸ばしている。
参考:Netherlands Increases Order of MQ-9A from GA-ASI
危ぶまれていたMQ-9の将来性、ウクライナ侵攻の勃発で状況が一変
米ゼネラル・アトミックスは21日「オランダ空軍がMQ-9Aの調達数を2倍に増やした」と発表、オランダ空軍のジャン・ルディスエ中佐(第306飛行隊司令官)も「MQ-9Aの数を増やすことで海上および陸上のISR能力を向上させるつもりだ。本機は電子情報の収集、通信のリレー、海上レーダーといった外部ポッドを搭載することができ将来的に武器も搭載する予定だ」と、同社のアレクサンダー社長も「オランダは拡張された自国のニーズに合わせてMQ-9Aをカスマイズした」と述べた。
オランダ空軍が調達したMQ-9は米空軍や米海兵隊が調達しているものと同じ「MQ-9A Block5」で、ヘルファイア、ペイブウェイII、JDAM、ブリムストーンといった武器を携行して地上目標を攻撃することが可能だが、オランダ空軍にとってMQ-9Aの対地攻撃能力は副次的なものに過ぎず、圧倒的な滞空時間をもつ多用途性を備えた空中プラットホームの利点を活かした通信・電磁波・信号等の収集任務、戦場のネットーワーク化に不可欠な戦術通信の中継任務、AN/APY-8(移動目標の検出に効果的な合成開口レーダー)を使用した海上目標の監視、AN/DAS-1を使用した視覚的な認識力の拡張が運用の基本なのだろう。
因みにMQ-9Aは一部のNATO加盟国(英国、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、スペイン)が導入、MQ-9Bは英国、台湾、モロッコ、オーストラリア、インドが調達を予定していたが、イスラエル、トルコ、中国が供給する競合機よりも割高で、オーストラリアは予定していたMQ-9Bの導入をキャンセル、インドも取得コストが高価なためヘロンのアップグレードと国産UCAVの開発を優先する方針を打ち出し、米空軍も「ハイエンドの戦場で非ステルスのMQ-9は生き残れない」と主張して新規調達を中止、旧型MQ-9A(Block5にアップグレードしてないバージョン)の退役を開始した。
De eerste MQ-9 in NL is in elkaar gezet @vlbleeuwarden samen met fabrikant @GenAtomics_ASI. Deze dient nu voor trainingsdoeleinden voor 306 squadron en zal nog niet vliegen. De andere drie MQ-9 toestellen vliegen vanaf Curaçao en worden binnenkort vanuit Leeuwarden bestuurd (1/2) pic.twitter.com/Otr60FlEq0
— Koninklijke Luchtmacht (@Kon_Luchtmacht) August 15, 2023
さらにデータ主権の問題やUCAVの独自開発や共同生産に乗り出す国(欧州、アラブ首長国連邦、エジプト、パキスタン、カザフスタン、韓国、台湾、タイ、インドネシアなど)も多く、MQ-9の将来性は危ぶまれていたものの、ウクライナ侵攻の勃発でMALE(中高度を長時間飛行できる無人機を指すカテゴリー)タイプのUAVに対する評価が再認識され、MQ-9も再び受注を伸ばし始めている。
ポーランドは2022年3月にMQ-9の緊急調達を発表、ギリシャも7月に3機のMQ-9B調達を発表、インドも2023年6月に対米関係強化の一環で31機のMQ-9B取得を発表、カナダも50億加ドルを投じてUCAV部隊を創設(MQ-9B導入が有力)する予定で、米空軍も「通信や信号情報の収集任務や戦術通信の中継任務なのでMQ-9はまだ活躍できる」という声が出てきており、MQ-9BをキャンセルしたオーストラリアでもUCAV調達に関する動き出てきているため、数年前と比べてMQ-9の将来は明るいものと言えそうだ。
Do Polski🇵🇱 dostarczone zostały drony MQ-9A Reaper klasy MALE (Medium Altitude Long Endurance), wyleasingowane od USA🇺🇸 w ramach pilnej potrzeby operacyjnej. Będą one służyć w 🇵🇱Siłach Powietrznych, prowadząc rozpoznanie m. in. na naszej wschodniej granicy. pic.twitter.com/eWunUzxhmG
— Mariusz Błaszczak (@mblaszczak) February 12, 2023
ロシア軍に対するTB2の対地攻撃が効果的でなくなったことを受け、BAYKARはTB2に搭載可能な巡航ミサイル(もしくは徘徊型弾薬)を発表、ゼネラル・アトミックスもMQ-9BにJSMの統合を示唆(オーストラリアの展示会でイメージを公開)しており、UCAVの攻撃範囲は今後拡張される可能性(100km以上)が高く、この辺りが実用化されてくるとUCAVの評価や運用にも変化が出てくるだろう。
MQ-9は依然として競合機よりも高価で共同生産や技術的移転に消極的なため、イスラエルやトルコに奪われた市場での地位を再獲得できるかは微妙だ。
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※アイキャッチ画像の出典:Koninklijke Luchtmacht オランダ空軍のMQ-9A
リーパー有能論はCSISのTodd Harrison研究員やランド研究所あたりから出ているが、一方で現場の米空軍はあまり乗り気ではない
リーパーの整備要員をハイエンド機や将来ステルス無人機に向けたいためだろう
そうなると、無用論にウエイトが傾く
どちらも傾注すべき意見だが、両方は出来ん
TB2が戦果をあげられなくなった原因を知りたい
当初は地対空ミサイルが随伴しない雑な作戦だったからか
TB-2はISRに徹してるって話がある。
ロシア兵の報告でもいまだにTB-2は飛んでるらしい。
多分、HIMARSやエクスカリバーの投入で無理してTB-2に攻撃参加させる必要が無くなったんだと思う。
8Kgしかないしょぼい爆弾落とすために敵の射程に入る危険を犯すより遠方から監視だけして攻撃は地上部隊に任せてしまった方が安全で効果的。
MQ-9B+JSMは可能性感じるなぁ。
国産スタンドオフ対艦攻撃力が出揃うまでの繋ぎにもなるし、
その後はJSMはF-35用、MQ-9BはISR用途に回せるから腐らないのもいいし、
有事の際には支援してもらえる可能性もある。
まあ一番のネックは調達が間に合う様な速度感で我が国が動けるか、だけど。
世界の阿知ことで、よく似た形の同類機体が出来て来ていますが。
米ゼネラル・アトミックス社は、(機体)形状について特許か何かを登録しているのかな。
もし登録していれば、自社の物が売れなくても、儲かりそうな気が(笑)。
でも、オリジナル(?)の方が、性能が良いのでしょうね、きっと。
またまた誤字です。自分のことですが、最近多いです。
「世界の阿知ことで→世界のあちこちで」
です。