英国防省は今月4日、インドが開発を進めている国産軽戦闘機「テジャスMK.2」の開発支援を行うと発表して注目を集めている。
参考:UK and India Prime Ministers announce Enhanced Defence Cooperation
英国とインドの両国関係は経済面だけでなく安全保障面でも「飛躍的な発展」を遂げることになる
英国のジョンソン首相とインドのモディ首相は今月4日、テレビ電話方式による首脳会談を実施して貿易規模の拡大や自由貿易協定(FTA)の交渉など「両国関係の飛躍的な発展」を約束をしたと報じられているが、この交渉には安全保障面に関する合意も含まれており興味深い事実を英国防省が発表している。
英国とインドの安全保障面での合意は主に海洋と産業に関する事項に重点が置かれており、自由で開かれたインド太平洋におけるより緊密な協力の確認や両国の海軍による野心的な共同演習などで協力を行うと英国防省は発表、さらに英国はインドが開発を進めている国産軽戦闘機「テジャスMK.2」の開発支援を積極的に行うことや英海軍のクイーン・エリザベス級空母や海上自衛隊のもがみ型護衛艦などに採用されているロールス・ロイス製の船舶用ガスタービンエンジン「MT30」の製造工程をインド(ヒンドスタン航空機)に移管することでも合意したらしい。
インドが開発を進めている国産軽戦闘機「テジャスMK.2」は昨年実戦配備が始まったテジャスMK.1、その発展型で83機の調達が決定したテジャスMK.1Aの後継機で2025年以降(初飛行は2023年9月予定)の実用化を目指して開発が進められており、エンジンはテジャスMK.1と同じ米国製のF404(ライセンス生産)を採用することになっているが開発中の国産エンジンに切り替えることが予定されている。
テジャスMK.2には先行してテジャスMK.1に統合された国産AESAレーダー、デジタルレーダー警告受信機、電子妨害ポッドなど技術を引き継ぎならが「ネットワーク中心の交戦能力」を強化する方向で開発されており、今年発表した戦闘機随伴型のステルス無人戦闘機「Warrior(ウォーリア)」とのエア・チーミングにも対応してくるのは確実だ。
Cats warrior is a near stealth UAV why flies along the plane that can deploy A2A or A2G munitions..It has supposedly a range of 800 km and can be used to penetrate enemy air defenses..without risking actual pilots or can be used to defend pilot from enemy aircraft pic.twitter.com/LQDmnSppsb
— Kya bola kya bola (ఏమంటివి ఏమంటివి) (@Telugu_vaaru) February 3, 2021
英国はテジャスMK.2開発支援の内容を明かしていないため詳細は不明だが、これまでのテジャス開発経緯から推測すると難航している国産エンジン「GTX-35VSカヴェリ」の開発に英国からの支援を受ける可能性が高い。
インドはフランスからラファールを78.7億ユーロ(約9,800億円)で購入する条件として契約総額の30%をインドに再投資するオフセットを義務付けており、ラファールを製造するダッソーや搭載兵器を製造するMBDAは国産戦闘機「テジャス」に搭載するため開発中の国産エンジン「GTX-35VSカヴェリ」に必要な先進技術を提供することで合意(※)したが、印会計監査局(CAG)が最近発表した報告書によれば約束していた技術をインド側は今だに受け取っていないと指摘している。
補足:エンジン技術の移転以外にもダッソーが製造する航空機に使用する部品をインド企業と共同生産してダッソーに輸出輸出する内容も含まれているが、こちらの内容は履行済み
この問題は一概にフランス側の問題と言うわけではなく対潜哨戒機P-8Aをインドに輸出したボーイングも同じ経験(6億1,420万ドル相当のオフセット履行期日を守れなかったためCAGに非難されている)をしており、インドの要求するオフセットは海外企業による直接履行を禁止しているため必ずインド企業を経由して行わなければならないという点が非常に厄介で「基準を満たしたインド側のパートナー企業を見つけるのに時間がかかる」とボーイングが指摘しているのでインド側の制度自体にも問題があるのだろう。
インド政府は結局CAGの指摘を受け入れて法律で定められていたオフセット条項の停止を決断、海外企業はインドの要求するオフセット実行のため要求していたコスト(契約総額の8%~10%)をインドに請求する必要がなくなったため、今後インドは従来よりも低コストで海外から防衛装備品の調達を行うことができるようになった。
少々話が逸れたが今のところフランスから国産エンジンに必要な技術移転を受けたという話もないので「GTX-35VSカヴェリ」開発に英国企業の力を借りる可能性は非常に高いと管理人は予測している。
あとロールス・ロイス製の船舶用ガスタービンエンジン「MT30」の製造工程をインドのヒンドスタン航空機に移管するというのも中々の決断だ。
MT30はロールス・ロイス製の船舶用ガスタービンエンジンの中で最も新しく英海軍のクイーン・エリザベス級空母や26型フリゲート、伊海軍のトリエステ級強襲揚陸艦、米海軍のフリーダム級沿海域戦闘艦やズムウォルト級ミサイル駆逐艦、豪海軍のハンター級フリゲート、韓国海軍の大邱級フリゲート、海上自衛隊のもがみ型護衛艦に採用されており、カナダ海軍の次期フリゲートにも採用される予定で今後もMT30を採用する国は増えるだろう。
これを惜しげもなくインドのヒンドスタン航空機に移管(MT30の全製造工程を移管するのか一部を移管するのは分かっていない)するというのだから驚きだ。
どちらにしても英国とインドの両国関係は経済面だけでなく安全保障面でも「飛躍的な発展」を遂げることになると予想され日本の立場からしても歓迎すべき事だが、英国の防衛産業はインドだけでなくトルコの次期ステルス戦闘機「TF-X」開発も支援しているので上手に他国の資金で戦闘機開発に必要な人材育成や開発経験を確保している=一種のエコシステムを確立していると言っても良いのかもしれない。
関連記事:インド、国産の艦上戦闘機「TEDBF」やステルス無人戦闘機「Warrior」を初公開
関連記事:インド、総額6,810億円を投じて国産戦闘機「テジャスMK.1」を83機導入
関連記事:日本にとって朗報、インドが防衛装備品の輸入に課していたオフセットを停止
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>F35と関係無く管理人に対して言いたい。都合が悪いからとやり取りしたコメントを「全て」消すのは言論統制そのもの。何の為にコメント機能を設けているのか意味が分からない。
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※アイキャッチ画像の出典:Venkat Mangudi / CC BY-SA 2.0 国産戦闘機「テジャス」
MT30に関係なく管理人さんに対して言いたい。馬鹿に構うことはないよ。
いつも更新ありがとう!!
そう思う、他では得られない軍事関係の海外情報源としてとても貴重だ。
その通りです。
狂った右翼や左翼には何を言っても無駄ですからね。
非常識で不快なコメントは徹底的に無視して削除が一番です。
これからも様々な情報を楽しみにしております!
同意。ここは他のまとめサイトみたいになって欲しくない
同じく。
人に見て貰う内容や表現でのコメントじゃなきゃ、チラシの裏にでも書いて自己満足してりゃ良い。
同意です。
自分のコメント含め、気に入らなければ全部バッサリでも
選んでピンポイントにでも好きな様に削除でも投稿制限でもしてくれて構いません。
できればその際は、今回と同様に「どのコメントのどこがどうマズい」のか指摘してくれれば以後ご迷惑を掛けない様に改善できてありがたいです。
こっちは管理人に「記事読ませてもらってる&サイトのコメント欄を使わせてもらってる」側だしな
管理人の場合別にそんな変に偏ってるとは思わんし管理人の裁量で全然かまわんと思うわ
消してくれる=見回ってくれてるって事だから安心して利用できるし、こっちも荒れる事言わんように気を付けようってなるし、何より明らかにこれあかんでしょってコメントみてもこれ後で消してくれるだろうからスルーでいいわって気持ちになれるし
私的なサイトに対して言論統制だ!って責めるなんて、芸能人のプライベートに知る権利を振りかざしてた昭和の芸能記者みたいだなぁ。
管理人さんもお疲れ様です。記事楽しみにしてます。
ブレグジットの辺りからかな?
イギリスはNATO以外との関係も構築しようと動いてる感じだね
基本的には北大西洋と自国の飛び地(と、旧植民地)くらいにしか関わりたがらない他の欧州各国とはだいぶ歩調が違うというか
まあイギリスの場合は、自国の飛び地と旧植民地と関わるだけでも世界相手に商売が成立しそうな大帝国(だった)ですからねw
日本政府も頑張ってくれ。
今後も防衛産業から撤退する企業は増えていくんだから、いい加減なにか手を売ったほうがいいよ。
左翼やマスコミがうるさいとか言い訳はいいからさ。
向こうを気にして黙ってたら、どんどん消えてくよ。
予算は有限だから支援するならとりあえずミニミをまともに作れる企業じゃないと
辛辣で草
防衛産業から撤退するのが結局は金って話だと、こういう事例はあんまりあてにならないような?
ある程度以上の兵器の売買には政治性が必ずついて回る傍ら、それ自体ではそんなに儲からないらしいし
日本の外交を強化するという意味で兵器を海外に輸出していくなら別として、防衛産業基盤の維持というなら「儲かるような値付けを防衛省がしてやれ」以外に無いんじゃないかと
防衛省も改革して頭でっかちの人がたを如何にかしてくれと思うのだが?
ミニミとかの話はそれからだ
いっそ国内の防衛関連企業を全廃した方が却って調達費用が安くなるのでは…??
機関銃とかは安くなると思うけど
年間のショボい調達スペースとかを見直さない限りラ国でも輸入でも大差ないどころかモノによっては高くなると思うわ
日本ももがみ型でMT30大量使用するんだからライセンス生産できんのか?そしたら、国内に金が落ちて経済が回るのに。
詳しい人いたら教えて!
令和2年の実績で見る限りMT30は川重から調達してる様です。
リンク
リンク
明石工場かな?
最近どこの国も国産エンジン開発に熱心で、さながら航空機戦国時代の感があるな。プロトタイプとはいえ日本は開発に成功してて良かったかもな。
ライセンス生産と今回の製造移管は何が違うのかな
そりゃ日本は自衛隊向けのMT30製造に限られるけど、インドはロールスロイスが受注したMT30の製造を請け負うんじゃないの?
ブログ主の書きっぷりだと輸出用のMT30の製造(の一部工程?)を
ヒンドスタン航空機に任せる、という解釈なのかな。
個人的には大邱級のエンジン製造なんか押し付けられても迷惑でしかないと思うけど。
中国の代わりとなれるくらいにはインドを育てようという腹なんですかね
確かに先進国から失われた、もしくは失われつつある生産基地としての機能を持った国が新たに必要で、民主国家であるインドは適格と言えると思うけど
ただ、日本も含めて先進国の優位性というのは技術力にあるわけで、それらを手放した時に圧倒的国力(潜在力)を誇る国々と立場が逆転してしまうってのが不安要素として残るんだけど
こういう駆け引きがあちこちで見られるあたり、パワーバランスの変化をしみじみと感じるな
多分あと数十年くらい経ったら似たような事がアフリカとか南アメリカとかで起きてるかもしれん
結構先の話になるけど、その手の動きが一巡した後の世界はどうなるのですかね?
発達すると少子化が進行し、後発程その変化が急速みたいだし。
人類社会全体が衰退するのかな。
しかし、製造業が消えつつあるイギリスでわざわざ海外移転せんでもなあ。それともMT30の需要拡大を見越して国内に追加のライン作るより効率が良いとの判断なのだろうか?
製造業が国の骨幹って考えは古いのかなあ。
エンジンはコンテナで送れないし造船するには人件費が高すぎる。1万キロ先に届けるにも最速で15日かかってミスったらまた再送なんてやってられないだろう。
>1万キロ先に届けるにも最速で15日
仕事でICとか電子部品を海外から取り寄せる場合、L/T 1~2wとかよくある話しだから、
L/T 15Dならモノがモノだけに仕事早いなぁと思うかも。
他国の新技術の開発に手を貸して人の金で技術をゲッツ
他人の金で焼き肉を食べたい方式と名付けよう
ここで三枚舌四枚舌仕込んでくるのがいつものブリカスなんだよなぁ…
ブリカスと言えば、日本製鋼所って北海道炭礦汽船とアームストロング、ビッカースの3社共同出資により設立だったね。
インドのケースも後々大きく育つ所があるのかな?
昔はヨーロッパ大陸内でゴタゴタしてりゃ、ブリテンは平和(だから揉めるよう工作する)という外交方針だったらしいから、最近のアジア関与にはブリカスェという感じで見てる