米国関連

批判に晒されるF-35、同機の調達維持を要求する書簡に132人の米下院議員が署名

130人を超える米下院議員がF-35プログラムへの継続した資金供給を求める書簡に署名して下院軍事委員会の指導者に提出したと報じられている。

参考:More than 130 House lawmakers push to ramp up F-35 buy
参考:Joint Strike Fighter Caucus Announces Strong Bipartisan Support of the F-35 Joint Strike Fighter

同型機を導入する同盟国にとって吉報、しかし回り回って米空軍の弱体化につながれば同盟国の不利益に繋がる

今年3月に開催されたブルッキングス研究所のイベントで下院軍事委員会のアダム・スミス委員長は「F-35は何をもたらすのか?F-35はコストを削減できるのか?設定した準備率すらクリアできないF-35に投資される多くの資金を減らす方法はあるだろうか?ご存知のように同機の運用コストは酷いもので私がやろうとしていることは最も費用対効果の高い戦闘機や攻撃機の組み合わせをどうやって手に入れるのか、F-35Aに今後35年間頼らなければならないという事態を避けるための方法を見つけることだ」と主張してF-35プログラムコストを批判。

出典:US Air Force / Photo by: Staff Sgt. Kate Thornton

下院軍事委員会のメンバーで米軍全体の航空機調達に強い影響力をもつ戦術航空陸上部隊小委員会のドナルド・ノークロス委員長も「約束されたF-35の維持費用抑制や削減が達成できないのであれば我々は他の手頃なプログラムに資金を投資して800機以上と見積もられている潜在的な戦術戦闘機の不足分を穴埋めするかもしれない」と先月開催されたF-35プログラムの公聴会で証言。

特にノークロス委員長は「増加傾向に歯止めがかからないプログラムコストの問題を考慮すると今後我々は予算要求外でのF-35追加購入を支持しない、どう見てもF-35プログラムは予算オーバーで追加資金が何度も投入されているに約束された能力は提供されておらず設定された準備率も満たせていない。防衛産業界は問題を解消するにはさらなる資金が必要だと納税者に訴えているがそんな要求は絶対に認めない」と発言したため注目を集めている。

出典:U.S. Air Force photo/Chrissy Cuttita

予算要求外でのF-35追加購入を支持しないというのは国防総省が予算要求の中で計上するF-35調達と別の話で、軍は優先度が高い装備調達やプログラムをリスト化して提出すると議会が国防予算とは別の資金を割り当ててくれるというもので空軍、海軍、海兵隊は毎年のように国防予算外でのF-35調達を要求(2021会計年度では計17機のF-35の追加購入を承認して16億ドルを支出)してきたが、この様な措置はもう認めない=つまり「F-35調達資金が予算要求に計上された以上に増えることを期待するな」とノークロス委員長は言っているのだ。

この様なF-35プログラムへの逆風に立ち上がったのは超党派の下院議員132人で構成される統合打撃戦闘機コーカスで「2022年度の予算でF-35プログラムへの資金供給が削減されると空軍、海軍、海兵隊は能力的ギャプを抱えることになり、ロッキード・マーティンのコスト削減計画にも影響を及ぼし最終的にF-35プログラムのライフサイクルコストに不要な追加コストを発生させることになる」と主張して下院軍事委員会の指導者にF-35プログラムや予算要求外でリストアップされたF-35への継続した資金供給を求める書簡を提出した。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Beaux Hebert

確かに統合打撃戦闘機コーカスの主張にも一理あるのだが、彼らの主張にはF-35が抱える諸問題に対する「具体的」な対応策が決定的に欠けている。

2025年までにF-35の運用コストを2万5,000ドルまで運用コストを引き下げるとロッキード・マーティンは主張しているが、具体的に運用コストをどうやって2万5,000ドルまで引き下げるのか提示していないため議会だけではなく空軍上層部もロッキード・マーティンの主張を信用していない。

さらにF-35Aは対空任務や対地任務など複数の任務の中から一つでも対応可能な状態にあることを示すミッション達成率(50%~60%前後)、複数の任務にすべて対応可能な状態にあることを示すフルミッション達成率(不明だがミッション達成率を下回るのは確実)について国防総省が設定した基準を下回っており、これはミッション達成率70%以上を維持するF-15C、F-15E、F-16C/D、A-10をF-35Aで更新すると作戦効率が下がるという意味だ。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Trevor T. McBride

要するに既存機よりも運用コストが高価で準備率の低いF-35Aを導入すればするほど空軍の予算が圧迫され戦争への準備率が低下するというジレンマを無視してF-35プログラムへの資金供給を主張するなら、高価な運用コストをカバーするための新たな資金供給や低い準備率を数でカバーするためF-35Aの調達を現状よりも増やすなどの対策を同時に実行しないと絵に書いた餅で終わるだろう。

つまり統合打撃戦闘機コーカスの本気でF-35プログラムのライフサイクルコストを心配しているのではなく、F-35プログラムへの資金供給が削減されたり予算要求外でのF-35追加購入が今後認められなくなると自身の選挙区でF-35製造に参加している企業の雇用が怪しくなるので従来通りF-35プログラムに資金を供給しろと主張しているのだ。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Keith Holcomb

この様な主張が力を得れば同型機を導入する同盟国にとって吉報なのだが回り回って米空軍の弱体化(戦争への準備率低下)につながれば、これはこれで同盟国の不利益に繋がるため複雑な気分になる。

勿論、ロッキード・マーティンが運用コストや準備率の問題を数年以内に解消すればF-35を取り巻く状況は一気に好転するかもしれないが、現状のまま米軍も雇用も同盟国も不利益を被らない形でF-35プログラムを維持するとなると米国の納税者が全ての不利益(トランプ政権と同じ手法で他の連邦政府機関への予算配分をカットして国防予算の増額)を被るしか手がないのかもしれない。

F-35を導入中の日本からすれば有り難い話だが、果たして2022年度の国防予算やF-35プログラムはどの様な結末を迎えるのだろうか?

関連記事:日本も導入を進めるF-35が抱えた5つの問題、性能は申し分ないが取り巻く環境がネック
関連記事:米議会、F-35の状況が改善されない限り別の戦闘機で不足分を穴埋めすると警告
関連記事:批判に晒されるF-35プログラム、下院軍事委員長がF-35Aに依存した航空戦力の見直しに言及

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Zachary Rufus

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    この「減らせ!」「減らすな(増やせ)」のやりとり
    単なるボーイングとLMのロビー活動の綱引きに見えて来たんだけど気のせい?

    23
      • 匿名
      • 2021年 5月 07日

      言いがかりっぽくなってきたんで思惑はあるんでしょうね。F-35の運用コストは、寿命の短い電波素子の入れ替えが大きそうなのが、F-15IIやF-16Vの運用コストで見えてきたので。

      本心ならパイロットが死んでもコストのF/A-18派。(F-15IIとF-16Vは、電子機器は第五世代で運用コストはF-35並みだから)
      国内産業重視なら、F-15/18/16派。
      無人機を危険視してるパイロット雇用派ならF/A-18。
      ボーイング派ならF-15II等色々ありそう。

      7
        • 匿名
        • 2021年 5月 07日

        理解力無くて申し訳ないが教えてください。
        これは電子戦装備やレーダー等のメンテナンスコスト

        2
        • 匿名
        • 2021年 5月 07日

        理解力悪く申し訳ないが教えてください。これは電子戦装備のメンテナンスコストが第4世代機に比べると倍以上するということ? 運用コスト差を考えると倍どころの話ではなさそうだけど。
        またその電子戦装備は全般に係わるものなのか、特定のものなのか。グロウラー等の生粋の電子戦機では同様以上のメンテコストになるものなんでしょうか。
        参考になるサイト等あればこちらもご教示いただけると幸いです

        1
    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    F-35の運用期間は35年の予定なのか。
    35機のF-35を引き連れて来日したトランプを思い出した。
    まさかまさかのネタ発言?

    5
      • 匿名
      • 2021年 5月 07日

      これは時系列を知らないと解らない内容。

       まずf22の部品工場が共和党の選挙区に集中してて、オバマの民主党の時にf35に切り替え民主党の選挙区に部品工場を作った。

       次に共和党のトランプに変わって部品工場の選挙区が共和党と民主党の勝利選挙区に入り交じる。

      トランプは選挙戦でf35を売り込んでた政治のえげつない話し。

      正直言って今は民主党のバイデン変わって、もうどちらの陣営にどの程度の割合で部品工場があるかわからなくなった。

      オバマの時みたく新しい戦闘機を作って自分達の選挙区に工場立てる話しが出てるのでないだろうか。

      2
        • 匿名
        • 2021年 5月 07日

        このコメントはそういう類いの話ではないよ。

        1
    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    F-35の病理はアメリカの病理そのもので
    何を後継機にしようがまた再発するって理解できないのかね

    4
      • 匿名
      • 2021年 5月 07日

      デジタルセンチュリーで解消できたらいいけど、あれはあれで未知のアプローチだから不安でな

      24
      • 匿名
      • 2021年 5月 07日

      理解しててもF-35は止められないし後継機もボーイングかロッキードに任せるしかないんでは…
      企業側もうちらに出すしかないだろ?と高を括ってそうではあるし
      自動車のBIG3みたいに1回死んでもらうしか立て直しの手は無いように見えるなぁ
      そしてそんな事になったら大混乱だから出来ないっていうね
      先進各国どこも同じようなもんではあるが……

      15
    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    AIM120Dを機内に搭載できないポンコツ泥船なら読まなければいいんじゃない?

    あと他人に要求するんじゃなくて日本防衛に直結するアメリカのミサイル防衛関連(情報)が知りたいなら自分で調べろよ。

    君がここの管理人に対価でも支払ってるなら別だが。

    6
    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    米議員「減らせ!」
    米空軍「仕方がない、予算を捻出するために空母を撃沈しよう」
    ユナイテッド・ステーツ「こっちにおいで・・・」
    米海軍「やめてくださいしんでしまいます」

    9
    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    航空自衛隊も去年からF-35向けAIM-120の調達をC-8(D型)に切り替えてますが
    積めないと言うのはどこ情報なんでしょ?

    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    ただの記憶違いでしょ。AAM-4かなにかとこんがらがってたんだよ。
    アムラームは、F-22の時代にステルス機の兵器庫に対応してるよ。

    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    ブロック4がこれ以上遅れるようなことがあればF-35も本格的に詰むな

    9
    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    F-35が新しい機体だから息を潜ませてじっとしてるけど、F-22もいつ断頭台に立たされてもおかしくない
    今のところ改修するみたいだけど

    8
    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    アメリカ政府 同盟国(日本)に国債を追加購入+兵器の値段
    プレミアム価格で売れば解決さHahaha
    日本政府 ()

    1
    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    コスト管理は重要だけど、パイロットの命が天秤に乗っているのを忘れてないかな

    1
      • 匿名
      • 2021年 5月 07日

      とはいえ、いつまでたっても問題は解決しないのに金だけは延々と要求されたら文句の一つも言いたくなるだろうし

      2
      • 匿名
      • 2021年 5月 07日

      悪魔に魂を売った経理担当ならパイロットの命すら費用換算するものですよ。表通りでそれを叫ぶかは別にしてね。
      そのくらいの冷徹さがないと金庫番なんてやっとられんのです。

      13
        • 匿名
        • 2021年 5月 07日

        日本の財務省は良心を売り渡してるよな

        • 匿名
        • 2021年 5月 09日

        金にしか興味無いから金庫番やらせてもらってるってやつかね。ただし、そいつらを御せる奴がいないとただの嫌われ者の集まりにしかならんけど

      • 匿名
      • 2021年 5月 08日

      ???:兵士は畑から生えてくるものだからね

      4
    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    そもそも何をしたくて装備を更新しているのか原点に立ち返ってみては?。何だか難癖に近い感じになってきている気がする。
    確かにプログラムコスト削減の具体的な方策は無いが、一方新規に機体を作る具体的な方策もない状態なわけで…

    4
      • 匿名
      • 2021年 5月 07日

      国防のために装備を調達するのであって、コストのために調達するのではないからね。
      この手の議論が過ぎると結局安物買いの銭失いになるという。

      6
    • 匿名
    • 2021年 5月 07日

    やっぱりF-35購入は破棄してパキスタンからJF-17 を買おうよ
    日本みたいな弱小国まで弱体した国がF-35なんてマトモに運用出来る訳ないじゃん

    1
      • 匿名
      • 2021年 5月 07日

      ネタは繰り返したら面白く無くなるyo!

      17
      • 匿名
      • 2021年 5月 08日

      管理人さん、こいつアク禁でいいよ。
      お手数ですが削除ついでによろしく。

      9
      • 匿名
      • 2021年 5月 08日

      なんかマジキチ速報の溝口っぽいな、パフィーニップル!

      2
    • 匿名
    • 2021年 5月 08日

    記事中に出てくる「政府支出は税金が財源」というような表現が間違い。
    政府支出は新たに発行されたお金で執行されるもので、納税はその逆でお金が消える行為。
    スペンディングファーストとか現代貨幣理論とか信用創造でググるとそこら辺のカラクリが分かるよ。

    米連邦政府(日本政府も)にとって自国通貨は発行するだけで手に入るから財源は問題にならなくて、
    支出する上でのボトルネックは別の要素。

    3
    • 匿名
    • 2021年 5月 08日

    まぁF-35なんて鬼子だわな。
    X-35の時はさておいても、開発が上手くいかないときにスパイラル方式とか言い出してから話がずれているし、結果的に途中目標が設定できないスパイラル方式なら湯水のように金が使えることになったしまったわな。

    2
    • 匿名
    • 2021年 5月 09日

    F-16みたく「色んなことが出来る」機体ではなく、F-15やA-10の役割をこなせる「何でも出来る」機体として開発を強要されたのがF-35の不幸だったのかも。

    1
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