欧州関連

フランスもウクライナに安全保障協定を提供、マクロン大統領が2月にキーウ訪問

英国とウクライナは12日にG7が約束した二国間の安全保障協定に署名したが、フランスのマクロン大統領も「二国間の安全保障協定をまとめるため2月にウクライナを訪問する」と表明、カナダも草案をウクライナ側に提示済みで、米国、ドイツ、イタリアとの協議も進んでいる。

参考:France’s Macron to travel to Ukraine in Feb to finalise bilateral security deal

進行具合に程度の差はあってもG7が約束の履行に向けて動いていることだけは確か

昨年7月のNATO首脳会議でG7はウクライナに対する共同宣言を発表、バイデン大統領は「G7メンバーと参加を希望する国が『ウクライナの長期的な安全保障』について交渉を開始することを約束する」と述べていたが、12日に英国とウクライナは安全保障に関する二国間協定に署名した。

出典:PRESIDENT OF UKRAINE

長期的な安全保障協定を提供する国はG7(米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、日本)と共同宣言の旨趣に賛同した24ヶ国で、ウクライナのシュミハリ首相も最近「30の国(英国との協定が成立したための31から30になったという意味)と協議が行われている」と述べていたが、フランスのマクロン大統領も「二国間の安全保障協定をまとめるため2月にウクライナを訪問する」と表明。

マクロン大統領は16日の記者会見で「我々は今後も多くの装備を提供し、ウクライナの空を守るのに必要なものを支援していく。私は2月にキーウを訪問して関連文書(長期的な安全保障協定のこと)をまとめるつもだりだ」「ロシアがウクライナを打ち負かすことは容認できないため、欧州諸国は今後数週間以内にウクライナ支援の強化を表明するだろう。何故なら(ウクライナの敗北は)欧州の安全が脅かされることになるからだ」と述べたが、カナダも二国間協定への署名に近づいている。

出典:PRESIDENT OF UKRAINE イタリアと安全保障協定について協議するウクライナ側の様子

カナダの駐ウクライナ大使はEuropean Pravdaの取材に「安全保障協定に関する草案をウクライナ側に提示済み」「数週間以内に文書への署名が行えるのではないか」と述べており、米国務省も昨年7月末に「ウクライナとの交渉が今週にも始まる」と、ウクライナ大統領府も11月末に「イタリアと協議を開始した」と、12月末に「ドイツとの協議が進んでいる」と表明しているため、進行具合に程度の差はあってもG7(日本の動きだけは不明)が約束の履行に向けて動いていることだけは確かだ。

因みにマクロン大統領は「数週間以内に約40発の長距離攻撃ミサイル(SCALP)と数百発の爆弾がウクライナに届けられる」とも明かしているため、フランスが提供したSCALPの数は90発程度(これまでに約50発提供)になる。

出典:PRESIDENT OF UKRAINE

追記:リトアニア、エストニア、ラトビアはウクライナに対する「長期的な支援(複数年14億ユーロ以上)」と「政治的な支持」を先週表明したが、スイスは15日「ウクライナの再建に15億フラン(2025年~2028年の複数年)を割り当てる」と発表した。

関連記事:ウクライナは孤独ではない、英国とウクライナが歴史的な安全保障協定に署名
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※アイキャッチ画像の出典:PRESIDENT OF UKRAINE

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コメント

    • 匿名さん
    • 2024年 1月 18日

    高価な防空ミサイルと長距離精密ミサイルを提供したところで、戦況にどれほど影響するのかな。
    ウクライナ支援というより、ゼレンスキー政権支援だな。

    6
      •    
      • 2024年 1月 18日

      違いますよ
      ウクライナがNATO加盟するまで支援するという共同宣言に基づく協定ですから、大統領が変わっても継続されるので

      対空ミサイルは長期に渡るであろう支援の中での一部でしかありませんな

      33
        • 匿名さん
        • 2024年 1月 18日

        ウクライナがNATO加盟するまで、ウクライナの前線が持ち堪えられると思わないのですよ。

        キーウの安定と目を引く戦果のためと思ってしまうのは、私の心が荒んでるからでしょうか。

        10
          •    
          • 2024年 1月 18日

          アウディウカやバハムトは延々と膠着してますし
          キーウはおろかハルキウオデッサを落とすなんて夢物語状態だと思いますが

          猫の額程度の戦域での一進一退を課題評価しすぎてませんかね

          23
            • 匿名さん
            • 2024年 1月 18日

            往々にして、心配事は取り越し苦労であることは多いですからね。そうであることを願ってます。

            3
          • うくらいだ
          • 2024年 1月 18日

          それより先にアメリカの支援がどうなるのかってのがありますね。

          6
          • ゆj
          • 2024年 1月 18日

          2022年11月のロシア軍ヘルソン撤退以降、ロシア軍・ウクライナ軍双方が攻勢を行っても、ウクライナ全体図ではほとんど変化が見えないほどの小規模な戦線の変化しか無い。この状況でウクライナの前線が崩壊するとか、逆にロシア軍をウクライナから撤退させられるとか言うのは、昨年夏にロボティネを落としただけでウクライナ勝利は近い!と言っているのと同レベル。西側諸国の支援完全停止や、ロシアによる総動員(と西側諸国による支援の増加無し)、逆に西側諸国による支援の大規模増加や直接参戦等が無い限り、ウクライナ側の戦線の「崩壊」も、ウクライナ軍がクリミアとドンバス全域を占領することも、ほとんど可能性が無い。
          そういった大規模な政治的変化があると思うならそのように書いてその根拠を述べるべきだし、そういった政治的変化が無いのに、今ウクライナ側の戦線が崩壊するだろうとか、逆にウクライナ軍がクリミア・ドンバス全域を占領するだろうとか言うのは、共に同レベルで全体が見えていないコメントだ。

          10
    •    
    • 2024年 1月 18日

    連合国共同宣言が後の国連になったように、このG7共同宣言への参加した国々の枠組みや協力関係がより影響力も含めて大きくなっていけば良いなあ

    13
      • 名無し
      • 2024年 1月 18日

      いやー厳しいでしょ
      ただでさえ無力とダブスタを晒しまくってるのに

      20
        •    
        • 2024年 1月 18日

        何か一つ問題が全部ダメって考えではそら何もかもダメでしょね

        20
    • 名無し
    • 2024年 1月 18日

    ロシアを更に刺激するウクライナのNATO加盟などに踏み込まないと良いけど…

    4
      • ak
      • 2024年 1月 18日

      戦争中の国がNATOに加盟する事は出来ないので(少なくとも今のNATO憲章においては)
      それは無いです。

      16
    • hiroさん
    • 2024年 1月 18日

    上川外相の突然のウクライナ訪問もこの流れの一貫なのだろうか?
    日本が安全保障協定を締結することは出来ないだろうから、経済支援の発表がスイスと同じ動きなのかね。

    1
      • 58式素人
      • 2024年 1月 18日

      内容は判りませんが。
      協議そのものは進行中の様子ですね。
      10月7日に初協議を行なったとの報道もありましたし。

      1
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