ドイツ軍のクリスチャン・フロイディング少将は「もっと長く持ちこたえることができるとプーチンに分からせなければならない。ドイツは2032年までの予算計画にウクライナ支援資金を組み込んでいる。自由のための戦いに期限はない」と述べた。
参考:„Wir müssen Putin klarmachen: Wir halten länger durch, Freiheit siegt“
参考:В Украине на фронте оперативный тупик. Не стоит переоценивать зиму, – генерал Германии
時間がプーチンではなく我々の味方だと認識しなければならない
ピストリウス国防相は今年5月、国防省改革の一環として長期的な国防戦略や計画の立案・管理を行う部署を設立してクリスチャン・フロイディング少将を任命、同氏は昨年2月から国防省内のウクライナ支援に関する責任者も努めており、Stuttgarter Nachrichten紙のインタビューで興味深い話を披露した。
定期的に訪問するウクライナ側の雰囲気は?
昨年の訪問はハルキウ反撃の直後だったため会議に参加したウクライナ人の雰囲気も高揚感に満ちていた。今年9月の訪問時も「勝利への期待感」や「厳しい決意」が感じられたが、同時に「疲労感」や「悲しみ」も感じられ、もう喪失感=大切な誰か失うという経験をしていないウクライナ人はいない。
ウクライナはドイツをどう見ているのか?
ドイツがどれだけ支援しているのか良く知っているためウクライナ側は感謝の気持ちでいっぱいだ。我々は約束したことを必ず実現させるため「信頼できるパートナーだ」と思われている。
現在の戦況についてどう思うか?
ここ数週間は膠着状態が続いており、戦場の主導権がウクライナ軍とロシア軍の間を行ったり来たりしているが、ザポリージャ南部でウクライナ軍の攻勢は勢いを失っている。ただ本攻勢で獲得した土地は維持できている。一方のロシア軍はウクライナ東部に人員と物資を大量に投入して攻勢を仕掛けているが、今のところ大きな進展は見られていない。
冬に突入すると戦争はどのように変化するのか?
冬の影響はあると思うが、特にウクライナ南部では天候の影響を過大評価すべきではない。双方とも冬場に部隊のローテーションと訓練を行うはずなので、作戦のテンポは落ちても完全に停止することはないだろう。冬場の作戦は後方の拠点、インフラ、司令部などの攻撃に集中する可能性がある。
膠着状態が長引けば「ロシアに勝てない」という声が高まると思うが?
ウクライナとロシアの戦争を含む「全ての戦争」は軍事的に勝利することが出来る。しかし「全ての戦争」は交渉テーブルの上で終結するというのも事実で、最も重要なのは両者が「どのような立場」で交渉の席に着くかだ。
あなたはロシアは小さな利益のため多くの犠牲を受け入れると述べたが?
これはロシア軍の伝統的なドクトリンに起因するもので、ロシア軍の人道的なイメージを示すものと言える。彼らは人的な損失や物資的な損失にも関わらず「戦場の成功」を強要しようとしているのだ。
ロシアは兵士や装備の損失を容易に補填することが出来ると思うか?
ロシア軍は潜在的な動員力に余裕があるため「戦力を出し惜しみする必要がない」と明らかに確信している。ロシアがどれだけ動員できるかは政治的状況に左右され、特に2024年春に大統領選挙が控えているため現時点で「最大動員力」を見積もるのは困難だ。装備に関しては1960年代モデルや1970年代モデルを投入していることが確認できるものの、まだT-14のような「驚異的な兵器」は戦場で確認されていない。
ドイツはどのような貢献が可能か?
ここ数ヶ月間だけでも複数の強力な支援パッケージを発表してきた。現在は3セット目のIRIS-T SLMを納入し終えたところで、2セット目のパトリオットシステムも間もなく納入されるだろう。さらにウクライナ軍兵士のため冬用装備も提供しており、我々の支援は特定分野(防空、砲兵、工兵、装甲車輌、特殊装備など)に集中している。
ドイツが供給した装備の内、既に破壊されているものはどれぐらいあるのか?
正確な数を口にすることは出来ないが戦争に損失はつきものだ。我々はウクライナ人に最高の訓練環境を提供して損失を最小限に抑えようとしている。パートナーと共にドイツ軍は8,000人以上のウクライナ人を訓練してきた。ウクライナ人はもっとレオパルト2やPzH2000を欲しいと言っている。
ウクライナ支援とイスラエル支援は競合関係にあるのか?
両国に対する支援のスタートラインもニーズも大きく異なる。ウクライナ軍は西側基準に移行し始めたばかりだが、イスラエル軍は高度な訓練と近代的な装備で構成されており、両国の経済力も戦争のタイプも大きく異なるため支援内容が競合することはない。
ウクライナ支援の責任者として仕事の内容に変化があったか?
当初は短期的な支援が中心だったが現在は長期的な視野で支援を考えている。パートナーとの協議で「ウクライナへの軍事支援」が10年以上になると見積もられており、既に我々は2032年までの予算計画にウクライナ支援資金を組み込んでいる。これは我々の決意を示すもので「自由のための戦い」に期限はない。
以上がStuttgarter Nachrichten紙のインタビュー内容で、同紙は最後に「あなたは戦争に勝てないとロシアが確信する必要があると述べたが、この認識がモスクワで広がっている兆候はない。これは今後の戦争にとって何を意味するのか?」と質問、これについて「時間がプーチンではなく我々の味方だと認識しなければならず、プーチンに『我々はもっと長く持ちこたえることができる』と分からせなければならない」と答えたのが印象的だ。
追記:2032年までのウクライナ支援資金を組み込んだ予算計画が政治的に成立するのかどうかは不明なので注意して欲しい。
関連記事:ザルジニー総司令官が反攻作戦の評価に言及、私が間違っていた
関連記事:米下院がイスラエル支援法のみを可決、ウクライナ支援継続は不透明
関連記事:ロシアの動員数は損失を十分カバー可能、10ヶ月間で38.5万人を確保
※アイキャッチ画像の出典:Оперативне командування “Схід”
2032年!ドイツの決意は頼もしいね!
ヨーロッパの国々では支援疲れってハナシも耳にするようになったけど
それを払拭する意味も含めての予算計画なんかな?
>「時間がプーチンではなく我々の味方だと認識しなければならず、プーチンに『我々はもっと長く持ちこたえることができる』と分からせなければならない」と答えたのが印象的だ。
結局はこれだからなあ・・・。
独裁者に成功体験を与えれば、それが第2のズデーデン地方併合になることは目に見えてる。
こういっちゃなんだが、自分らが過去にやったことだからよくわかるのかな。
これに関しては具体的な予算規模も分かりませんし、政治的な決定がされたものではないので何とも言えませんが
ウクライナにとって戦争継続に対する最大の懸案は、兵器ではなく人的資源だということを忘れてはいけない気がします(特に2032年を想定するのなら)
兵器や弾薬の供給は予算措置をすれば最悪続けることは可能ですが、兵士が足りない問題の解決策は他国の派兵以外ない気がするので
時間がプーチンではなく我々の味方だと言い切るには重要な部分が足りていないのではないでしょうか
威勢のいいことを言うですが、所詮最終決定権を待つわけでもないし、意思表明だけはタダですから、戦車や装甲車など今頃調達困難な重装備はさておき、まずは一番大事な砲弾の生産量や生産ペースを何とかしてほしいですね。
10月24日ロイター通信の記事によると、現在155ミリ砲弾の価格は2021年と比べて4倍近く跳ね上がったことが分かった、またもう一つ驚くべき事実は、NATO加盟国14カ国がNATO基準から逸脱する権利を留保し、現在同じく155ミリ砲弾でも14種類の異なる弾薬が製造されること、その理由もまた冷戦後大幅に縮小した防衛市場の中、各社自分の分を確保するためだったらしいです。
リンク
長期戦をするなら、ウクライナの工業生産を復活させないとですね。
聞き及ぶ範囲では、ウクライナの鉄鋼生産は壊滅状態であるとか。
最後のザポリージャの製鉄所も閉鎖寸前とありました。
廃兵器や壊された建物/構造物などの鉄材の再生などはできないものでしょうか。
詳しく無いですが、電気炉や圧延施設やそのエネルギー源などが必要では。
比較的に安全な地下に置くか移動可能な形(船舶?)で実現できないものでしょうか。
本当なら素晴らしいことだけど「ドイツ政府はそのような見解ではない」とかいって更迭とかありそう
ドイツにとって、アメリカやEUとの関係もありますそ、ウクライナ支援は公的な方針なので、さすがにこの発言で更迭はないと思いますが、
この発言は、ウクライナ支援責任者の軍人の発言です。ドイツの政治家や国民の「本音」は、少し違う可能性も考えられます。
ロシアに勝利は絶対に与えないことは確定している
米国は中国に集中し欧州はドイツをその気にさせればいい
政治的に正しい回答だな
これでドイツ政府が予算を認めなかったらギャグになるが
こいつら口だけは達者だからなぁ……
責任者の発言とは言え、これまでのドイツ政府の行動(ロシア寄りと誤解されかねない発言・行動をする、兵器供与で「米国が先に供与しない限り嫌」とごねる等)を考えると奇異と言わざるを得ないですね
下手をすれば、後日ドイツ政府がこの発言を否定する可能性も有りますね
現実には、ロシアはアウディーイウカ・クピャンスク・バフムート等で相互連携した消耗戦(あるいは作戦術)で勝利しつつあり、更には自国の戦時体制の構築と共に中国・インド・イラン・北朝鮮等からの支援で戦力維持に成功していますから、後は米国がウクライナから手を引けば時間はプーチンの味方となります
その事を考慮するなら、いっその事「これ以上ロシア軍が前進すればNATO軍が介入する」と脅した方が効果的でしょうね(それでも核兵器で脅して西欧を腰砕けにしたロシアよりは良心的だと思いますが)
最近一部で停戦論が盛んですけど、この戦争がデスマッチであることを忘れていませんかね…ロシアはヘルソンまで含めて併合宣言してるし憲法で領土の割譲を禁止している。ウクライナも引く気はないし、無駄な争いは辞めましょうなんていう展開は、西側文明圏で平和に暮らす人々の頭の中にある空想にすぎない。
ではなぜ憲法9条にも似た非現実的な停戦論が頻繁に出てくるのかというと、そのルーツはウクライナ支援を無駄だと西側に思わせてロシア軍を有利にしようという工作活動にあるというような気がします。停戦論者は工作員だと言いたいわけではありません。ロシアは情報工作でそういう思想を作って種を蒔いたのが勝手に育ってる。
停戦がありえないままで厭戦気分を広まってもウクライナ不利のまま戦争は続き、得をするのはプーチンだけですので、変なムーブメントに載せられていないか今一度考え直してもらいたいですね。
「プーチンの目標が『支配』から『殲滅』にシフトした」
という趣旨のコメントを最近よく見かけるのですが、
明確な根拠はありますでしょうか?これまでの併合地の住民は
殺されずに済むけど、今後(降伏または占領で)新たに
併合された地域が出るとそこの住民は殺されるのでしょうか?
支配するつもりがあるならば、ウクライナ国民から恨まれるようなインフラ攻撃や街を廃墟となるまで砲弾や爆弾を打ち込まないのでは?
侵攻当初は無差別攻撃はしていませんでしたし、ロシア兵がキーウのレストランに予約を入れる電話をしたりなど、完全破壊までは目指していなかったと思います。
まあ確かに穏当な支配をしようとは
思ってないでしょうね。チェチェン
みたいに武力行使で恐怖を植え付けて
従わせるつもりだろうと思います。
というかレストランの件は初めて
知りましたけど、攻め落とした国の
店で食事しようと思えるのは凄い
ですね。仕返しに変な物入れられ
そうだから私なら絶対嫌ですけど。
恐らく( ゚Д゚)様は「ロシアはこう行動してるから目的は殲滅だろう」と言った憶測ではなく
男プーチンやロシア国防省、もしくは有力なメディアが「ロシアはウクライナを殲滅すると決定した」と発表したのか? を知りたいんだと思います
正直私も気になってます
自分は国と国との総力戦という意味でデスマッチという表現を使いましたが、ロシア軍は組織的にウクライナ人を皆殺しにしようとしているという主張ではありません。
それでも、双方の立場として中々停戦は難しいのではないかと。
記事にもあるようにどんな形で戦争が終わるにしろ外交交渉で終わるのは明らかで、昨年の春には実際にそうした動きがありました。
英ジョンソン首相(当時)が首都を電撃訪問し、ゆるぎない支援を約束したことが停戦を蹴ってウクライナが戦争継続をするモチベーションを与えたのです。
デスマッチだから戦争を続けたのではなく支援国から長期的に資金と武器を貰える目途が付いたので継戦したのです。
ウクライナに国の運命を決める主権があるように支援国にも当然主権があるので、ウ支援をこれ以上続けても得が無く自国の国益上不利になるとなれば支援を縮小しようとなるのは合理的なことで、米下院やスロバキアでは現にそうなっています。
支援が無くなれば国力差・戦力差から継戦は非現実的です。勝ち目がない戦争を引き延ばして破滅するよりも、ウ国民の命を守るため停戦論が出てくるのはごく普通のことでしょう。
gepard氏の考えるような停戦プロセスも当然あると思っております。今回コメントで指摘したかったのは、憲法9条を信じていれば助かるみたいな表層的で軽いノリで語られる停戦論が増えてきているような気がするという話です。ウクライナ人や西側の利益を最大限に確保した状態で停戦するために最善を尽くすことを放棄させるため「ウクライナ人の命を守る」とか「どうせ勝てない」とかロシアがプロパガンダで流しているというのは事実でしょう。その際、gepard氏のような合理的かつ現実的な思考で停戦論を唱える識者の方の意見は厭戦煽りプロパガンダを覆い隠す立て看板として利用されてしまっています
むしろ過剰な西側の期待をウの情報作戦が煽りに煽ってきた弊害が表面化しただけでしょう。
現実に基づかないバラ色の期待が現実に直面した時、一転してヒステリックな悲観論に支配されるのは古今東西よくあることです。
プロパガンダに対抗するのはプロパガンダではありません。
ノイズに影響されない事実の分析が大事です。
そうですね、ウクライナの情報戦は実態より上手く行き過ぎでした。ガッカリされるのは当然の報いと言えましょう。gepard氏の意見には100%賛同するわけではありませんが、いつも大変勉強させて頂いており、そういう考え方もあるのだと頷いております。ただ、大前提として自分の頭で思考をして、情報を収集した上での意見ならいいのですが、停戦論も継戦論も、そうじゃない人が世間には多い印象。
gepard氏は断じて違いますが、降参すればロシアが許してくれるみたいな、実態を何も考えてないめちゃくちゃな停戦論も、逆に戦争やってればウクライナは普通に勝てるみたいな話も多いですから。実際どちらも有害なのですが…後者はまだ西側やウクライナに比較的有利な存在ですけど、前者は利敵行為として洒落にならないので、ちゃんと現実をみた上での停戦論と切り分けた上で、批判的な書き込みをしました。古代ギリシャの頃から大衆なんてそんなものなのかもしれませんが、戦争への理解というか、スポーツ観戦みたいに消費するんじゃなくてマジメに取り組むという考え方が広まればいいなと思っています。
米大手政治メディアのポリティコの調査によると、ショルツ首相のSPDは支持率16%と第3党に転落し、先のバイエルンとヘッセンの地方選挙でも支持離れを止めることができず極右AfDに躍進を許した。東部に基盤を持つAfDが西部と南部で躍進する事態は過去に例がない。
ショルツ政権は移民難民問題やG7で唯一マイナス成長となった経済政策の責任を問われる苦しい状況。
米国の代わりにウ支援を主導できる余裕はないだろう。
ドイツがG7で唯一経済がマイナス成長となったのに、GDPで日本を抜いて第3位になったのが笑えますね
日本では国会で「我が国がGDP第4位に転落」と野党が騒いでいましたが、やっぱりアレは円安ドル高が生んだトリックだったんですね
一人当たりGDPは惨憺たるものですからGDP4位のほ方がトリックみたいなものですけどね。
尤も、ドイツの一人当たりGDPが日本の約1.5倍相当に当たるのは「自動車等のブランド商売でぼろ儲け&中国向け一本足打法」が当ったからなので、余り褒められ無いですね
勿論、我が国の方も昔ながらの薄利多売の方針から足を洗う事が出来ずに輸出品のブランド化に失敗し、仕事を中韓台に奪われたから人の事は言えないのですが
ウクライナが形勢逆転しなかったとしてもロシアの弱体化には成功してるからドイツとしては問題ないのかも
不思議なんだけど
ドイツ軍の仮想敵国ってどこなんだろうねぇ
欧州事情に疎い日本人にはわからないだけでロシア以外にもあるのだろうか
案外アメリカと日本かもしれませんよ。敵意を抱かれてるとかじゃなくて、海を挟んだ国
との戦い(陸軍が使えない)を想定する上で比較的海峡が狭いパターンは日本(又はイギリス)、
広いパターンはアメリカを想定してシミュレーションしてみると大体の国に対応できるかと。
ポーランドとかかもしれず
昔から仲が良くないし、急激に軍拡してるから警戒位はするのでは?
ドイツやポーランドの話ではないですが、政権が変わった途端、険悪な関係になった系の話は世界中にごろごろしてますし
仮にアメリカが選挙に負けて支援が減ったとしても、EUが戦争疲れで手を引くというのはあり得るんだろうか
自分達のすぐ横で起こってる戦争に対してたったの2,3年で心が折れるって、かえってNATOの弱さをアピールすることになると思うけど
仮に停戦しても今更誰がロシアを信用するんだよ、ロシアに時間を与えれば戦力を補充されるし、
成功を与えれば次の戦争に踏み切りやすくなる
国防費増額がすでに西側にとって確定の路線なら戦争続ける方が国民の理解を得やすいんだから、
戦争をやめる選択はあり得ないと思うわ