フランスのルコルニュ国防相は18日「ウクライナ向けのCaesarを78門生産するためフランスとウクライナは18門分の資金を提供する」「残り60門分の資金を集めるための砲兵連合を発足させた」と、さらに「フランスは月50発のAASMをウクライナに提供する」と発表した。
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ウクライナは2024年を乗り切れば仏防衛産業から追加の恩恵を受けられるかもしれない
フランスのルコルニュ国防相はLe Parisien紙とのインタビューの中で「備蓄から装備を取り出してウクライナに提供するやり方は終わりを迎えようとしている」「フランスとウクライナは共同で78門のCaesarを2024年中に生産するイニシアチブがある」と明かし、ウクライナのウメロフ国防相と共にCaesarを生産するブールジュ工場を18日に訪問予定だったが、ゼレンスキー大統領が主催する最高司令官会議への出席を優先したためウメロフ国防相の仏訪問はキャンセルされた。
但し、ルコルニュ国防相の工場訪問は予定通り行われ「フランスは2024年に78門のCaesarを生産できる」「ウクライナは自己資金で6門のCaesarを購入した」「フランスもウクライナにCaesarを提供するため12門分の資金を出す」「残り60門分の資金をパートナーから集めるためのイニシアチブ=砲兵連合を発足させた」と表明、これにリモートで参加していたウメロフ国防相も「この連合は我が軍が直面している砲弾不足の解決を目的にしている」「フランスは今後数週間以内に6門のCaesarをウクライナに納品する」と言及。
つまりフランスとウクライナの共同イニシアチブとは、ドイツ主導のレオパルト2提供に関する戦車連合、英国主導のF-16提供に関する戦闘機連合、ドイツ・フランス主導の防空能力強化に関する(地上)防空連合、英国・ノルウェー主導の黒海に関する海洋連合、リトアニア主導のサイバー能力強化に関するIT連合などに続く取り組みで、フランスがウクライナ軍の砲兵強化を主導するという意味だ。
Grâce à l’économie de guerre, @NexterKNDS peut produire 78 Caesar en 2024.
L’Ukraine en a acheté 6. J’ai décidé de débloquer 50 millions d’euros pour en financer 12 et amorcer une dynamique afin d’entrainer nos partenaires à financer les 60 restants. pic.twitter.com/2eTgrvJOOy
— Sébastien Lecornu (@SebLecornu) January 18, 2024
因みにマクロン大統領は16日「数週間以内に約40発の長距離攻撃ミサイル(SCALP)と数百発の爆弾がウクライナに届けられる」と明かしていたが、ルコルニュ国防相は「ウクライナに月50発のAASM=Armement air-sol modulaireを供給する」と発表、これは航空機で運用する自由落下式の「通常爆弾」を「精密誘導兵器(GPS/INS/レーザー/赤外線)」に変換するキットで、JDAMと異なりロケットモーターによる到達範囲の拡張に対応している。
AASMの到達範囲は「高高度からの投下で60km以上(70km以上という説もある)」「低高度からの投下で約15km」と言われており、標準的な条件で投下されるJDAMよりも到達範囲が3倍以上も広く、高度12kmから投下されるJDAM-ERと同程度の到達範囲だが、個人的には「月50発=年間600発のAASMをウクライナに提供できる余剰能力が仏防衛産業界に生まれた」という点を評価したい。
Le soutien de la France à l’Ukraine se poursuivra.
Une quarantaine de missiles Scalp et plusieurs centaines de bombes propulsées A2SM seront livrées en 2024.
Ils offrent une capacité de frappes à distance de précision afin de peser sur les arrières du dispositif russe. pic.twitter.com/TNdN8xBfKL
— Sébastien Lecornu (@SebLecornu) January 18, 2024
マクロン大統領はウクライナ侵攻を受けて2022年6月「戦時経済への移行」を産業界に要請、NexterはCaesarの生産ペースを4倍(月2輌→2024年に月8輌を達成予定)に引き上げ、MBDAもミストラルの生産ペースを月40発に倍増させ、Thalesもレーダーの生産ペースを3倍に増強し、発注から納品までにかかるリードタイムは相当短縮された格好だ。
戦時体制に移行したロシアと比較すると増産規模は小さいかもしれないが、この戦争の当事国ではないフランスの戦時経済は「民需を犠牲にしない範囲」であり、単独でロシアの生産量に対抗する必要もないので、ウクライナを支援する西側諸国の中では上手くやっている方だろう。
La France 🇫🇷 livrera à l’Ukraine 🇺🇦, en 2024, une quarantaine de missiles longue portée SCALP et plusieurs centaines de bombes propulsées AASM.
Objectif : renforcer les moyens de l’Ukraine pour frapper le dispositif russe en profondeur.⤵️
1/2 pic.twitter.com/pmm4QBricC— Ministère des Armées 🇫🇷 (@Armees_Gouv) January 18, 2024
ルコルニュ国防相は「戦時経済はビジネス面でもチャンスだ」「装備を短期間で納品できることは輸出市場で成功するポイントになる」と述べているため、仏防衛産業は「ウクライナ需要」だけでなく「世界的な防衛装備品への需要」を見極めながら今後も増産方針を維持する可能性が高く、ウクライナは2024年を乗り切れば仏防衛産業から追加の恩恵を受けられるかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Killersurprise64/Public Domain
火力こそ戦争の華が、このウクライナ戦争で世界中で戻ってきましたね。
ナポレオン「世の時代が戻ってきた。だが無能な味方はお断りだ」
そう言えば、陸自の18式防弾チョッキは1セット360万円程と言ってたましたね。
是非管理人さんに取り上げてもらいたいです。
防弾装備は自衛官の命に関わるので。
清谷(だけ)が張り切って拡散してる案件じゃないですか。彼に任せておくのがベストでは。18式防弾ベストなだけに。
そうは言っても、陸自の発表なので無視できない数字だと思います。
使っていた者としてはもう少し動きやすく、暑さを考慮した防弾チョッキが欲しい所です。
それに清谷氏の言うことは当てはまってる事が多いし、実際の現場の声とも合致するのでので、無視できないと思います。
まー言葉使いはあれですが…
自衛隊から資料を貰い、7枚のプレート代が3410000円だった。ここまでは良いんですが、その次の
「調達単価は外国製の10倍以上でしょう」
は問題かと。そこ重要だろ。せめてアメリカ軍のXSAPIプレートと性能と価格を比較するとかして書けよと。
確かにそうですね。
しかしプレートが行き渡ってないのはやばい事なので、大量生産して安くするか、海外のも調達するとかして、有事までに全部隊に配布出来るようにして欲しいものです。
予備含めて。
8000セットが27億円で調達されてますけどそんな単価になるんですかね・・・
オプションが高いのかもしれませんがはっきりとはしません
その価格は恐らく中に入れる防弾プレートを除いた値段、つまりプレートキャリアとソフトアーマーの値段ですね。
防弾プレートが前後、脇腹合わせて300万越ですので。
このまま戦争になれば防弾プレート無しで自衛官は戦地に行く羽目に…
問題は、肝心のカエサルから撃つエクスカリバーや滑空誘導弾のGPSがロシア側電子戦兵器で無力化されている点ですが、これは改善されているんでしょうかね。消耗式の爆弾であればMコード応用製品の第三国供給は認められているんでしょうか。
問題と言えば問題だけど、もっと大きな問題である、すり減るばかりの砲身や車体の補充ができることのほうが大きいと思う
自前の武器形態を持つ国は、自国の都合でこういう事が出来ますよね。
英国も仏国もNATO加盟国で、イザとなれば他のNATO加盟国と共同しつつも、自国の安全保障にとって必要なら自国単位で戦時経済に移行出来る。
日本もNATO企画は導入してますから、イザとなれば弾薬などの融通は受けつつも、自国にとって必要であれば日本の都合で武器弾薬の大量生産を行える体制は必要かと思うんですけど…
最近まで縮小一辺倒の日本の防衛産業には厳しくないかコレ…
島国の日本には、航空優勢・海上優勢を保てるだけの武器弾薬を。
陸自は割とよく戦力構造の見直しをしてる気がしますが、海空はあまり聞かないイメージですね。
見直しする必要性が無いのかもしれませんが。
つらつらと駄文失礼いたしました。
長距離スタンドオフミサイル1500発の装備を発表したばかりじゃないか
トマホークも購入するが中核は国産の射程延長型対艦ミサイル
AASMの提供はウクライナにとり嬉しいのでは。
低空飛行から投擲しても、ロケット推進で射程を伸ばすことが出来るし、
終末誘導にはGPS誘導に赤外線画像が併用されているし、
今の航空接近拒否/厳しいEW環境の中では使いやすいのでは。
写真のAASMの写真の背後の航空機はひょっとしてF1でしょうか。
ミラージュF1のようですよ
まだ残っていたとは嬉しいものです。
堅実な飛行機でしたし。
対空ミサイルのマトラマジックはソ連機でも使用可って昔のフランス兵器のお客に合わせた設計でしたが、AASMはこの辺が気になります。
ウクライナのために皆の力を集めるのだ!と言いつつやることは自国企業への利益誘導なあたりが欧州の政治って感じだ
こういう連中と一緒に武器を作るんだってことをF-3開発でも忘れずにいたい
散々ウクライナへ無償で兵器に資金提供してますが
ルサンチマンの陰謀論すぎんか
どないせえと
よその国から勝って提供しろとでも?
代案示してくれませんかね
無償?企業は無償では動かないよ
軍需産業は本質的に公共事業だからね
その公共事業にウクライナのためという名分をつけて他国の資金を引き込もうって話がこのイニシアチブ
ルサンチマンではなく、むしろこの外交の強かさ、面の皮の厚さを褒めているんだ
EU官僚が密室会議で配分を決めていた頃は不健全極まりなかったが、このイニシアチブへの参加は各国の自由があるからね
EU官僚が密室ね
ディープステートと同じく発想が陰謀論
日本の法律や政策も官僚が密室で作ってるって論理になるな
素晴らしい
えらく勘違いしてるみたいだけど
EUの支援はEUの支援であり、各国のそれぞれ支援もまた別にある
別の枠組み、別の財布なんだが
EU官僚が決めていた頃も何も、EUの支援はそれとして別にあるよ
それともEUが各国個別の支援に口出しして決めていたと言ってるのかな?
言いたいことはひとつのコメントにまとめようね
あとまずハンガリーの拒否権行使による軍事支援の停滞という大きなトピックの流れの中に今回のイニシアチブがあることを勉強してきてほしいな
なお本邦のマスコミといえば自国企業に利益誘導すれば重商主義だの貿易摩擦だの自国第一主義だの騒ぎ立て、相手に譲歩すれば日本の競争力の低下だとほざく模様
誰の味方だっつーの
まあうちの国の外交といえば何の得にもならない債務保証やらばかり引き受けて馬鹿じゃないかと
三菱に武器作らせて渡した方が誰もが喜ぶのに
フランスのこの面の皮の厚さがうらやましくてたまらない
在庫から回していたのに限界がきたから生産して供給するように切り替えた
何故それが面の皮が厚いになるのかね
面の皮の厚くない供給方法って何?
代案も無しに揶揄してるだけだなこれ
>三菱(自国企業)に武器作らせて渡した方が「誰もが喜ぶ」
と思ってるのに、なぜ他国がやると
>やることは自国企業への利益誘導なあたりが欧州の政治って感じだ
>フランスのこの面の皮の厚さ
という棘のある表現になるのか…。
人を動かすには実益と理念の両方が必要なのでしよう。欧州に限ったことではないと思いますよ。
思惑はあれど、こうやって軍事力による自己の影響力をアピールできるのは羨ましいな。良い事では無いんだけど
これまでずーーーっと砲は有るけど弾が無い!!
弾よこせ!って言ってた気がするけどもこれは弾の供給が砲の発射能力を上回るメドがついたのかな
もうぼちぼち新品のpzh2000なども届くと思うんだけど
フランスはラファールで独自色を出していたところに榴弾砲システム提供とAASM提供でビジネスチャンスを掘り当てた感がありますね。
一つの国家で全ての権利を保有・提供できることは今後重要になってくると思います。