欧州関連

大統領の要請に応じて戦時体制に移行した仏産業界、武器生産が大幅に増加

フランスのマクロン大統領は昨年6月のユーロサトリで「欧州諸国は戦時経済へと移行した」と述べ、自国の防衛産業界に「戦時体制への移行」を訴えていたが、ルコルニュ国防相は16日「自走砲、砲弾、戦闘機、対空ミサイルの生産量が大幅に増加した」と発表した。

参考:French firms to triple 155mm ammo production, boost weapons output

仏産業界の戦時体制は「ニーズが見込める範囲での設備投資や増産」を意味し、これは米国を含むウクライナ支援国に共通するパターンだ

フランスのマクロン大統領は昨年6月のユーロサトリで「(ロシア軍のウクライナ侵攻を受けて)欧州諸国は戦時経済へと移行した」と、ルコルニュ国防相も戦いの長期化が予想されるため自国の防衛産業界に「戦時体制への移行」を訴えていたが、ルコルニュ国防相は16日「仏産業界による自走砲、砲弾、戦闘機、対空ミサイルの生産量が大幅に増加した」と発表した。

出典:Photograph by Rama/CC BY-SA 2.0 fr

ルコルニュ国防相は戦時体制に移行した具体的な結果について「NexterはCaesarの生産ペースを月2輌から月6輌に引き上げた。さらに2024年の生産ペースは月8輌に増加する予定で、155mm砲弾の生産ペースも2024年初頭までに月1,000発から月3,000発に引き上げる計画だ。MBDAもミストラル(MANPADS)の生産ペースを月40発に倍増させ、Dassaultもラファールの生産ペースを月3機、Thalesもレーダーの生産ペースを3倍に増強した」と明かしている。

米国は155mm砲弾を月2.8万発(10月時点)も生産しているため「月3,000発」は少なく感じるものの、Caesarは生産数は年間96輌と非常に多く、ミストラルの生産ペースもスティンガーと同じで、ラファールの生産ペースもF-16の生産目標(2025年~2026年までに月4機)に近いため、戦時体制に移行した仏産業界の生産力は着実に強化されている感じだ。

出典:public domain

因みに仏産業界の戦時体制は「ニーズが見込める範囲での設備投資や増産」を意味し、これは米国を含むウクライナ支援国に共通するパターンだ。

関連記事:米陸軍の155mm砲弾増産、ポーランド、インド、カナダ企業も契約を獲得
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※アイキャッチ画像の出典:public domain カエサル6×6

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コメント

    • 名無し
    • 2023年 10月 17日

    >「ニーズが見込める範囲での設備投資や増産」
    まぁ、ロシアみたいに完全に戦時体制ってわけにいかんからしかたないよなあ。

    27
      • kame
      • 2023年 10月 17日

      継続的な投資や生産に及び腰だった防衛産業の意識改革や構造改革が目的になるんでしょうね。
      即応的に対応できる基盤があるかないかは大きな違いなので、今の時点では充分な気がします。

      12
      • STIH
      • 2023年 10月 17日

      民主主義国家なら十分なんでは。需要に応じて生産が増減されるのは、これまでみたいに生産インフラすら無い状態に比べたら健全な状態でしょう。

      10
    • 無印
    • 2023年 10月 17日

    カエサル年96両かぁ
    ここで以前聞いた話だと、カエサルも職人さんの手作業で生産してる部分があるとか
    職人さんも増員したのかな

    3
      • qwerty
      • 2023年 10月 17日

      元ネタはNHK BS1の国際ニュースだったからWebソースが出せないんだけど、
      ニュースでは熟練職人の手作りなので砲身の年産が100門だったと言ってた

      職人さんの増員というのはどうなんでしょうね、ほんの数年では流石に早々難しい気も。
      現実的に今の範囲で頑張って1割増産して砲身の年産110門だとして、
      摩耗した砲身の交換用に年間14門予備として確保すれば、年産96両は行けるかも?なので、
      96両というのは今のできる範囲での増産な気はしなくもないです。

      11
        • qwerty
        • 2023年 10月 17日

        NHKじゃないし解説はないけど、ようつべにAFPBBの取材動画はありました。
        職人さんが手作業で溶接したり検査してて、砲身の量産が容易でないことは伝わると思う。
        リンク

        6
        • STIH
        • 2023年 10月 17日

        結局は需要じゃないでしょうか。需要さえあれば停滞していた生産現場の改善もできるし、より効率的な生産体制ができて生産数が増やせるでしょう。
        自由資本主義の強さはそこですから、それを生かさなけりゃ、権威主義体制に対抗できないです。

        3
    • トーリスガーリン
    • 2023年 10月 17日

    年産100両近い自走榴を製造出来るのはスゴイですね
    逆にラファールはそんな生産速度上げて大丈夫なのって感じがする
    向こう4年くらいでバックオーダーを捌き切りそうだけど更なる需要増を見込んでるんですかね?

    11
      • Hydra
      • 2023年 10月 18日

      実際それだけの生産体制を維持し続けられるのなら、ポーランドに売り込みかけても良かったんじゃないかって気はしますね。

      1
    • 思い付きだけど
    • 2023年 10月 17日

    比較するのは別ものとは差があると思いますが、日本では三菱重工業の株価は2~3年前まで2000円~3000円だったのが、急上昇して8000円~9000円になりました。くっそ、手放さないべきだった・・・

    41
    •  
    • 2023年 10月 17日

    今を生きる私たちの視点ではわからないですが、後世の歴史の教科書的にはもう世界大戦はもう始まってる扱いになってそう。あぁ嫌だ。一般市民には勝っても負けても損しかない。

    38
      • 名無し太郎
      • 2023年 10月 17日

      紛争だらけの世の中になれば、直接は巻き込まれなくても資源価格の高騰で経済が壊滅する。ここに無頓着で、他人事みたいに捉えている人が多いけど。
      なんとか世界秩序は落ち着く方向に向かって欲しいけど、こればっかりは個人の力量を越えている。もう完全に運次第だ。
      そもそも二年前は、こんな状況になるなど全く予想できなかった。というか予測できた人間がいただろうか?

      17
    • TA
    • 2023年 10月 17日

    ラファールが増えることは喜ばしい
    週刊ラファールまでもう少し‼️

    5
    • たむごん
    • 2023年 10月 17日

    防衛大手は上場企業が多いですからね。
    民間企業は、総資産利益率、過剰設備に厳しい視線が向けられます。

    フランスは、限られた条件の中でも着実に投資を行っていますね。

    日本の防衛装備庁は、戦略性がない(値引き以外にあまり関心がない)ですが、日本も改善していく必要があります。

    22
    • 2023年 10月 17日

    海運壊滅で日本オワタ

    6
      • 匿名
      • 2023年 10月 18日

      増税メガネとジミンが政権握り続けてる時点でとうの昔に終わってますよ、わーくには

    • 58式素人
    • 2023年 10月 17日

    日本はどうなのでしょう。重装備のいきなりの増産は無理でしょうし。
    順次に増産でしょうか。トマホークが2025年からと言ってましたから、2年先ですね。
    自爆UAVなどはどうなのでしょうか。新規発注或いは増産はできるのでしょうか。
    日本の場合、海上目標の場合、射程が必要ですから、固定翼のもの。
    上陸されたら、マルチコプターも。
    大きな目標はSSMに任せて、偽装漁船/上陸用舟艇/水陸両用車のような小型目標用に。

    2
    • fusa
    • 2023年 10月 17日

    私の髪の毛も大増産体制です。本気見せちゃいます☆

    16
      • たむごん
      • 2023年 10月 17日

      アートネイチャーが戦時量産体制に入りました!

      12
      • 毛沢山
      • 2023年 10月 17日

      閣下!現実(鏡)をご覧になって下さい!
      遺憾ながら閣下の毛根は損耗率5割を越えています。壊滅状態ではありませんか…

      11
      • あばばばば
      • 2023年 10月 17日

      イギリスの防衛産業からBAEシステムを除いたような産業ベースで増産体制を取ったとしても……

      4
      • 匿名
      • 2023年 10月 18日

      残念だが、商売人は勝ち目と儲からない所には投資しないんだ

    • ななし
    • 2023年 10月 17日

    155ミリ砲弾が月産3000発というのは少なすぎますね。
    昼勤のみの工場だとして弾体生産ラインで1発作るのに4分かかっている計算で、あり得ないほど遅いです。
    いまどき旧式旋盤を職人が手作業で操って弾殻の切削をしてるとは思えないので、
    以前書いたようにセットする信管側の生産にボトルネックがあるのかもしれません・・・

    4
      • バーナーキング
      • 2023年 10月 17日

      155mmだけ作ってる訳じゃないんでしょ。

      21
    • 無能
    • 2023年 10月 17日

    ラファールの異常さが突出してるなぁ
    F-16よりは(政治的な意味で)使い勝手良くて引き合いの多い機体とはいえ、そこまで見込みあるんか?

    10
      •  さ
      • 2023年 10月 18日

      フランスは、というかダッソーはその辺りの(損得の)線引きにかなり厳しいらしいので勝算があるのだと思われ
      あとラファールの現地生産を希望してる国がいくつかあるから、余剰になった場合はそれらの国にラインを売るという方法もあるのだと思う
      その際、人員に関しては新型機なり何なりのラインに回すつもりなのかもしれない

      2
    • L
    • 2023年 10月 17日

    FCASが遅れることを見込んだのだろう

    4
    • 黒丸
    • 2023年 10月 17日

    フランスがこれなら、中国が本気出せばどうなるのだろうか
    第二次大戦のアメリカレベルになりそうな。
    一定品質のある物量への対抗手段は、いつどこの世界でも厳しいです。
    昔は兵器にはそれを扱う人が必要なので量産効果に歯止めがありましたが
    最近はドローンのような操作する人への一定の安全が確保できたうえで
    安価で使い捨てができ量産できる無人兵器が増えたので、余計に厄介ですね。

    15
      • たむごん
      • 2023年 10月 18日

      サプライチェーンの左端は、世界シェアで見ても、中国が圧倒的ですからね。
      仰る通り、民生品~軍需品まで安価で使い捨てのできるもの、量産効果の出るものは追随を許しません。

      アメリカの防衛企業大手も、サプライチェーンの左端を中国に依存しているため、中国なしでは生産困難な事を訴えています。
      最悪の場合、アメリカ軍の兵器でさえ、整備不良・共食い整備だらけになりますね。

      1
    • 暇な人
    • 2023年 10月 17日

    増産して月三千発ってロシアが一日に数万発うってるのになに悠長な事やってんだよ
    だめだこりゃ

    8
      • おるか
      • 2023年 10月 18日

      フランス一国、それも榴弾砲の生産数だけを見て失望することもないでしょう。
      EU全体で榴弾砲生産数の目標値もあるでしょうし、構造が比較的単純な砲弾の生産は他国に任せているだけではないでしょうか。

      11
    • ポルスカ
    • 2023年 10月 18日

    単純に「需給均衡を達成した」といえばいいところを、「戦時体制」という言葉でさぞ凄いかのようにアピールするところが、マクロンらしいよね

    1
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