ポーランド人によるウクライナ国境の封鎖から72日目が経過、ルーマニアでも農民がポルブノエ検問所とビコブ・デ・スス検問所で抗議活動を開始し、ウクライナ国境警備局は15日「両検問所でトラックの通行が阻止されている」と報告した。
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いい加減「EUの恩恵が周辺国の利益を侵している」とウクライナが認めて歩み寄らない限り、いつまでも国境封鎖は続く
ポーランドのトゥスク政権は「農民達が要求する3つの要求(トウモロコシ関連の補助金増額、農業税の現行レベル維持、低金利の融資継続)に応じる」と書面で保証し、シェギーニ検問所の封鎖を解くことに成功したものの運送業者が抗議を行なうクラコヴェッツ検問所、ヤゴディン検問所、ラーヴァ・ルーシカ検問所では依然として封鎖が続いている。
ポーランドの運送業者は「EUとウクライナ間で締結された陸上輸送に関する自由化協定の取り消し」と「ウクライナの運送業者に対する許可取得の復活」を要求しており、ウクライナとの関係改善に前向きなトゥスク首相も「ポーランドがウクライナを助けることで我々の利益が損なわれてはならない」「ウクライナ側が国境の病的な状況を解決してくれることに期待している」「そうすればポーランド人は国境を封鎖することもウクライナを攻撃することも必要なくなる」と述べ、この問題はウクライナ側が解決に動くべきだと示唆。
さらにトゥスク政権はEUが1年延長を検討している「ウクライナの輸出品に対する関税や割当上限の一時停止(2024年6月まで有効)」についても反対しており、ポーランド、ブルガリア、ルーマニア、スロバキア、ハンガリーの農業相は欧州委員会に対して「安価なウクライナ産農産物が自国の輸出向け農産物(小麦とトウモロコシ)に被害をもたらしている」と共同書簡で訴え、ウクライナと国境を接する加盟国の市場を保護するため「輸入税=関税」の導入を要求している。
ウクライナ側は東欧5ヶ国が独自に導入した輸入制限について「EUの決定に矛盾するため不当だ」と非難しているが、EUが戦争で落ち込んだウクライナ経済を支援するための措置は事実上「国境を接するEU加盟国」に経済的な悪影響をもたらしており、遂にルーマニア人農民がポルブノエ検問所とビコブ・デ・スス検問所で抗議活動を開始。ウクライナ国境警備局は15日「両検問所でトラックの通行が阻止されている」と報告したが、今のところルーマニア人農民の抗議が何処まで続くのか分かっていない。
一部では「ポーランド農民はロシアの手先だ」「この抗議の背景にはロシアが絡んでいる」という見方も存在するが、これは「ウクライナ支援策が国境を接するEU加盟国の経済的な犠牲の上に成り立っている」という構図と、EUもウクライナも「当該国による再三の訴え」を放置してきたことに原因があり、空路と海路が絶望的なウクライナにとって検問所封鎖(トラックの通行のみ)は物流の混乱を引き起こし、税収に直結する輸出関連の収益や戦争継続に不可欠な物資の輸入にも影響が出始めている。
ウクライナ国立銀行は国境封鎖の被害額について「15億ドル(12月17日時点)に達する」と、ウクライナ税関は「2023年の輸出額に占める道路輸送の割合は約35%」「輸入額に占める割合は約70%」と明かしているので封鎖が長引けば「何が起こるか」は誰の目にも明らかだろう。
さらにロイターの取材(昨年12月)にウクライナ最大の軍事援助ボランティアの代表は「調達した無人機、暗視装置、ピックアップトラックが国境で数週間も立ち往生している。これらの物資は全て海外から調達しているため国境での抗議活動が我々の仕事を遅らせる」と、軍事向け装備を製造するウクライナ企業の代表者も「このまま封鎖が続けば大きな問題になるし既に影響も出始めている。工場で使用している機械部品、無人機のエンジン、無線装置に使用する電源ユニットの供給に遅れが生じている。国の国防プロジェクトに参加する民間企業が海外で調達した大量の部品が国境で立ち往生している」と訴えている。
ルール的に国境封鎖を解決するのは当該国(ポーランドやルーマニア)の責任で、ウクライナは「EUと締結した協定の権利を行使しているだけ」という立場を崩していないが、いい加減「これが周辺国の利益を侵している」と認めて歩み寄らない限り、いつまでも国境封鎖が続くことになるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:pexels 国境封鎖とは無関係のイメージ
ウクライナやEUが譲歩しないなら状況は悪化するだけでしょうね。
今は封鎖を解除した農民も政府が約束を守らなければ再度国境の封鎖をするでしょうし。
>いい加減「これが周辺国の利益を侵している」と認めて歩み寄らない限り、いつまでも国境封鎖が続くことになるだろう。
抗議参加者を民主主義の敵、ロシアの手先として徹底弾圧する方に一票
圧倒的被害者たるウクライナに譲歩を迫るのはありえないってなるでしょうね。
例え弾圧しても西側は当然の行為として称賛こそすれ、批判はないでしょう。
>圧倒的被害者たるウクライナに譲歩を迫るのはありえないってなるでしょうね。
その論理でいけば、ガザへの支援のために、ウクライナ支援を中止することは、当然の行為として称賛こそすれ、批判はないでしょう。
すいません
言葉がたりませんでした
ウクライナは圧倒的被害者として西側に認定されているのに対してポーランドの農民や運送業者は被害者認定されていないので、強者が弱者に譲歩を迫る形となるのではと考えました。
ガザの場合は相手がイスラエルという永年弱者属性ナンバーワンなので、ガザを支援することはイスラエル様の機嫌を損ねるので難しいというわけですね。
という無茶苦茶な弱者絶対正義というシステムが西側にあると思ってます。
記事にあるように補助金で解決すると思われるが
農民だって有権者、民主主義国家である事をお忘れでは
仰っている施策を行ったり、称賛するような国が『自由』や『民主主義』を名乗る資格はありませんね。強権的な国家に対抗するために、自国も強権的になる必要があるのは多少なりとも理解は出来ますが、それは自国が戦争当事者の時だけです。
これ関連のニュース聞くたびに「ウクライナ政府はナニがしたいのかね?」と不思議で仕方が無い。
ウクライナに必要な荷が入って来ないという割には、それを解決する方策を絶対に取ろうとはしない、ゼレンスキー政権的には何かそこに整合性が有るんだろうか?
ウクライナ人に顕著だと言われる「西も東もみんなが俺たちを迫害する」という被害者意識なのか?
以前別のトピックで同様の事を書いたが、「EU圏内でウクライナの運輸業者とそのトラックが自由勝手に荷を動かせる特権」を手放すのが嫌で、その為には「ウクライナがどうなろうと知ったこっちゃない」、荷捌きで得た金は外国の銀行に入れて自分の利益を確保していつでも国外に逃げ出せる策を取っているオリガルヒに、前線では無いキエフの死に体で先が期待出来ないゼレンスキー政権がどっぷりと浸かってお互いに敗戦後を見据えた保身の為の蓄財利益供与を受けている、という「ウクライナの伝統仕様」になってるんだろうなあ。
としか考えられないんだが。
だとしたら外野が幾ら何を言っても「知った事か、そそんなつまらん事より俺のカネ儲けが大事だ」で永遠に解決しないだろう。
輸出ができないとウクライナの財政事情も厳しいと記事に書いてありますよ
ウクライナの財政問題が農作物の輸出レベルでどうにかなるものではないと思うのですが、「民主主義国家w」ではどうしようもないんでしょうなあ。
そもそも農民やトラック運転手が損害かぶらないといけないのはおかしいですよね
それをEUとウクライナが勝手に決めるなんて・・・・
日本のアンケートでは多少生活を犠牲にしてでもウクライナを支援すべきって意見が確か七割超えてましたね
デモや抗議活動が盛んな欧州では、民意を反映していないならすぐに行動に表れますね、ご覧のように
フランスなんかでは毎日どこかでデモやストライキが起きてるというくらい
大規模な反ウクライナ支援抗議活動も起きていないし民意を得てると思われますが
欧州の民主主義って一見国民が立派であるように見えますが
そもそもの問題がEUやNATOなどの組織に問題があることが多く、根本的に解決することは難しいわけです
こういう多数の加盟国で成り立つ仕組みというのは、依存させて抜けられないようにするのが基本なので、加盟国はどんどん衰弱してるのに、さらにEUやNATOに依存するという悪循環なわけです
元々、分裂していたEUの分断がいっそう進んでいるな
ドイツ、オランダ、イタリア、バルト三国などの豊かな国はウクライナに積極的に支援する一方、
ポーランド、ルーマニアなどの中進国は、ウクライナ支援と自国の国益とのバランスに苦心している
全会一致を取るEUが東欧諸国の要望に応えるのは不可能だ。ウクライナはこのままゆっくりと締め殺されるだろう
わかってはいたことですがウクライナ現政権に折れる素振りはありませんし、EU側も運輸・電気通信・エネルギー評議会等を見ている分には(主にPiSの浅慮が原因で)一度通した決定で東欧に多大な配慮をする気配はありません。
問題が大きくなってからのウ国の初動が主にポーランド勢に対する国境管理用電子キューの(報復ともとれる)削除だったり、空荷のトラックや軍事物資優先の検問所新設だったのは象徴的でした。
ASMAP UAをはじめとする運送業界やその利益代弁組織,各種報道機関も対決姿勢を崩しませんし、そのトーンは心なしか政府との近さに比例しているようにすら感じます。
今戦争におけるEU・ウクライナ間の各種取り決めには持続可能性に欠けているものが多いため、本当に長期戦を見据えるのであればどこかで制度の再編が必要だと思っていますが、PiS政権が倒れてなお”ポーランドは(ウ・EU間における)最大の輸送路ではなくなる可能性がある”等と公言しているのを見ると、本質的な解決はまだ遠そうです。あるいは永遠に、ですが。
またまた、ウクライナ折れないなんてそんなことあるわけないじゃないですか。きっと水面下では問題解決に向けた協議が進み近々解決するにきまってるじゃないですか!政府があり外交部があるんですよ、問題解決に向けて相手国との妥協点を探るのが外交の仕事でしょ。これじゃあまるでキュウイ政権がまるで外交が出来ないみたいじゃないですか。
ゼレンスキーの過去の華々しい外交実績をみてください。妥協せず色々なもの貰ってきたでしょ!!
ロイターに15日付けで「東欧5カ国が不公正な競争を理由にウクライナの穀物に輸入関税を課すようEUに要求した」という記事がでています
5カ国はブルガリア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアとの事。ポーランド・ルーマニアは国内向けに説得をしつつ、EUに向けて「ウクライナ産穀物に関税掛けろや!」と交渉に乗り出したようです
EU諸国がどのような対応を取るかはわかりませんが、この要求がまともに取り上げられてウクライナ産穀物に関税を掛けるようになるのであれば、少なくともポーランド・ルーマニア農民によるストは収まるでしょうが、まだまだ時間は掛かりそうです
陸運関連についてはロイターで触れられてないので、そっちがどうなってるのかはさっぱりわかりません
EUは各国政府の上に立つ官僚組織のような面があります。民主主義の面から見ると、EUは反民主主義の方向の機構なんです。EUの効能はありますが、民主主義の面からは。
また、「ポーランドの前政権は、支持率を高めるために民意に、ウクライナ支援にマイナスの方向のこともしてしまった」と言われます。でも、それが民主主義なんですよ。民意重視なんです。
ポーランドの現政権も、民意を重視する方向でなければ次の選挙は危ういと思います。
そうでなくて、一つの政策が大事だから(例えば温暖化やウクライナ支援や・・・)、すべての上に置くべきだというのは、イデオロギー優先なんです。
または、とにかくすべてに優先すべきだというのは、民主主義ではないのです。
ウクライナの継戦能力を左右しますからね。
ウクライナ兵の命が、かかっているわけですから、早々に解決する事を願っています。
そもそもポーランドとウクライナは鉄道で繋がっており、軍事物資、特に車両は鉄道で運ばれるので戦争にはたいして影響はない。小麦の輸出も鉄道経由が中心で、トラックで運ばれるのは日用品
ウクライナとポーランドでは鉄道のレール幅が殆どの路線で違っているので言うほど輸送能力は高く無いはずですよ?
いくら鉄道の輸送能力が高いと言っても限度が有りますし。
一方でロシアとウクライナは同じ広軌だから、鉄道でスムーズに軍事物資輸送ができるのはなんたる皮肉ですな
別記事にもあるが普通にトラックで軍事物資運んでるから。
んで封鎖の影響で届かなくなったっていうウクライナ側の声も記事になってるから。
俺がこう思い付いたから現実もきっとその通りのはずだっていう考え方はそろそろやめましょう。
でも車列に戦車や装甲車は並んでないけどな
マジでこの行列にPAC3とかM777があるのか?
鉄道で輸送して駅で載せ替え?
物流投資が、積み替えなどのために新たに必要になるんですよね。
既存の陸上物流は、今までの状況に最適化されていまして(ウクライナ戦争前)、過負荷をかけるとパンクするという難しい問題があるんですよね…。
ドイツでも農家のデモがおこってます。
理由は補助金削減などが原因ですけど、
燃料費高騰、肥料高騰、補助金削減、ウクライナから安く穀物流入は死活問題ですからね
本当に、仰る通りですかね。
農家の方々にとって、安い外国産の大量流入・燃料や肥料の値上がり(ロシア産の影響)は、厳しいですからね。
日本も、オレンジなど輸入自由化・TPP加盟などでも、農業関係者に動きがあった事を思い出しました。
諸々の事情とかは置いておいたとしても、ある程度なら目を瞑ってくれていた(しかも伝統的に仲が悪い)東欧国家群を態々敵に回すのかが分からない。ロシアに攻められてる被害者なんだから何でも許されると勘違いしているとしか思えない。
何とか凌いでるとはいえど余裕はまるで無いんだから、生き残りたいなら何でも使うべきだと思う。もしかしたら面子の為に引き下がれないのかもしれないけど…
常々思うのですが、『ウクライナが被害者』というのはあくまでロシアとの2国間関係においてでしかないんですよね。どこの国も財政が厳しく、国民生活も苦しいのに、それでも予算の一部をウクライナ支援に提供してくれているのだからもっと謙虚になるべきです。ゼレンスキーの真意は分かりませんが、少なくとも表に出てくる態度にそういった所が伝わってこないので、私は日本が莫大な額の支援することに良い気持ちがしません(ウクライナ問題が起きる以前から外国を助ける前にまず自国民の困窮者を救うべきという考えだったことも大きいですが)。当初は日本の潜在的な敵国であるロシアを(自衛隊員の流血無しに)削れるならば安上がりという意見に賛同していましたが、よく考えるとロシアをどれだけ削れようが中国は全くの無傷な上に同盟国であるアメリカの財政が悪化するのならば、日本の国益だけ考えればデメリットの方が上回る気がしてなりません。
「権利を行使してるだけ」
そういうところだぞ、ウクライナ!!!!!