欧州関連

世界中から発注が殺到するF-16V、 ギリシャもV仕様へのアップグレードを84機分発注

ギリシャは27日、空軍が保有する戦闘機F-16C/Dを最新のV仕様相当へアップグレードするための契約をロッキード・マーティンと交わした。

参考:Greece awards $280 million contract to Lockheed Martin for upgrade of its F-16 fighter jet fleet

トルコと緊張状態が続くギリシャがF-16C/DをV仕様へアップグレード

ギリシャは2027年までに、空軍が保有するF-16C/Dを最新型のV仕様(Block72)相当へアップグレードを行う契約を約2億8,000万ドル(約300億円)でロッキード・マーティンと交わしたが、このプログラムの契約総額は約15億ドル(約1,650億円)に達すると見られている。

出典:pixabay

ただし保有する154機全てのF-16C/Dをアップグレードする訳ではないが、これ以上、空軍の近代化プログラムを先延ばしすることができないギリシャの事情がある。

約10年前の経済危機で国防費が削減されたギリシャと積極的に軍備を拡張するトルコとの間には「キプロス島問題」があり、最近、トルコはキプロス島付近の海底資源発掘を進めているため両国の境界線付近は極度の緊張状態が続き、もはやトルコによる侵犯行為は日常化したといってもよく、いつ軍事衝突が起こっても不思議ではない。

経済的には余裕はないが、トルコの挑発を無視することも出来ないので、とりあえず半分(84機)だけでもV仕様(Block72)相当へアップグレードを決断したのだが、この契約の裏には米国によるギリシャの保護がセットになっている可能性があり、非常に複雑な背景が存在する。

米国はギリシャでの米軍の活動を拡大するため、10月にギリシャと協定を結んだ。

ただし、この協定はギリシャとトルコの問題とは無関係だと米国は説明しているが、トルコがロシアからS-400を導入した制裁として「キプロス島問題」のもう一方の当事者であるギリシャに肩入れをしたと言う政治的メッセージなのは明白だ。

ギリシャにしてみれば、トルコとの問題に米軍を巻き込むことでトルコとの極度の緊張状態を緩和することを狙っているのだろう。

ロッキード・マーティンのF-16Vバックオーダーは積み上がるばかり

それにしても2019年は、F-16Vの新造機・旧型からのアップグレード需要が爆発した年となり、F-35の製造も手掛けているロッキード・マーティンの戦闘機部門にとっては「最高の年」だったと言えるかもしれない。

特にF-16を導入した欧州の国が更新時期を迎え、第5世代戦闘機F-35Aへ更新するか、F-16を近代化するか決断を迫られており、新たに西側陣営に加わった旧ソ連陣営(主に東欧諸国)の国でも、ロシア製戦闘機の更新用としてF-16Vを選択するケースが多く、F-16のバックオーダーは積み上がるばかりだ。

出典:pixabay

一方のボーイングの戦闘機部門は、海外からのF-15とF/A-18の受注が先細りになっており、米軍からの受注でなんとか製造ラインの維持が見込めているが、もはやいつ戦闘機製造を投げ出してもおかしくなく、そうなれば米国の戦闘機開発・製造をロッキード・マーティンが独占することになるため、ボーイングにも頑張ってほしいところだが「737MAX」の問題で民間旅客機部門も苦しいため望みは薄いだろう。

来年の今頃、果たしてボーイングの戦闘機部門は生き残っているのか、それともロッキード・マーティンF-15になっているのか、日本にも関係があるだけに気になるところだ。

 

※アイキャッチ画像の出典:Radoslaw Maciejewski / stock.adobe.com

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 12月 29日

    スターライナーの実験にも失敗したしボーイングにとっては受難の年でしたねぇ…
    ボーイング全体の技術力が落ちてるんじゃないかと不安になるニュースの多い一年だった

    • 匿名
    • 2019年 12月 29日

    ボーイングは無人機、無人給油機、標的機の改造と民間旅客機改造の軍用機(こっちはトラブってるけど・・)で行くのでは?
    F-15EXはやるんだろうけど、新規開発ではないしなあ(ダグラスの遺産はボーイングにはもう残っていない?)

    ボーイング・スターライナーカプセル(無人)が宇宙ステーションとのドッキングを取りやめ(Clockがズレてたとか・・・・で失敗、地球への帰還、着陸は成功)
    宇宙もLM(ロッキードマーチン)が優勢

      • 匿名
      • 2019年 12月 29日

      サーブと組んで開発したT-7Aレッドホーク練習機がT-38の後継として、米空軍に採用されているのを忘れちゃいけないよ。
      T-7AはF-35への移行を前提に開発されているので、今後日本を始めF-35を採用している国を中心に大ヒットする可能性があるから、ボーイングの軍需部門は当面これだけでも食っていける可能性がある。
      スターライナーも任務に失敗しただけで帰還出来ているから、まだ挽回の余地がある。
      それよりもボーイングにとって深刻なのは旅客機の方。B-737MAXの改良作業とB-777Xの開発作業は共に進んでおらず、何時開発中止となってもおかしくない状況。

      1
        • 匿名
        • 2019年 12月 30日

        書いてるのは今後の技術、技術開発の話
        売り上げの話じゃあないのよ だから、高等練習機は・・・

         民間機で、即の対応が求められてるのは737NGもあるね、多大な費用負担がボーイング社にも発生するみたいね。
        主翼の付け根の「Pickle forks」って構造部のクラック
        737NG(-500, -600, -700, -800, -900)は現行機で短距離用、離着陸2万回以上でクラックだとかなんとか・・・・
         世界で約7,000機、現在は離着陸回数の多い約1,000機ぐらいの検査が終わっていて、約50機でクラック、オーストラリア、韓国が多かったかな?
         日本は3社で約130機を所有してて離着陸回数の多い順で検査、現時点ではクラックは見つかっていない
         原型機の707(構造が同じ)~737クラシック(737-500以前、737NGの前)は退役済みなので未対応

    • 匿名
    • 2019年 12月 29日

    ジョン・ボイドがいなかったら米を含む西側はどうなっていただろう。

    • 匿名
    • 2019年 12月 30日

    >>ジョン・ボイドがいなかったら
    ボイドも言ってたらしいけど海軍機が空軍機になってたやろなぁ

    F14とその子孫が繁栄してたのかもしれませんね

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