欧州関連

クリミアで発生する謎の爆発、ウクライナは新型兵器のテスト結果であると示唆

占領下のクリミアで発生する謎の爆発について国防安保委員会のダニロフ氏は「ウクライナの新型兵器をテストしている可能性」を示唆、我々の反攻作戦を恐れて塹壕を幾ら掘っても「絶対に助からない」と付け加えた。

参考:Danilov hinted at the reasons for explosions in Crimea

現時点でクリミア大橋を破壊するための「隠し玉」に浮上している兵器は6つ存在する

国防安保委員会のオレクシー・ダニロフ氏は14日、占領下のクリミアで発生する謎の爆発について「ウクルオボロンプロム(ウクライナ防衛産業体)は新型兵器の開発やテストに従事しており、何らかの兵器のテストが行われるなら我々の領土で実施されるため、新型兵器のテストがクリミアで実施される可能性を否定できない」と明かし、クリミアのロシア人が反攻作戦を恐れて塹壕を掘っていることについても「信じて欲しい。彼らが塹壕を何km掘ったところで絶対に助からない」と述べた。

これまでも本ブログで「ウクライナがクリミア大橋を破壊するための隠し玉」について何度も取り上げてきたが、ここまで高位の人間が「新型兵器の存在」に言及したのは初めてのことで、ウクライナ防衛産業協会のイワン・ヴィンニク会長の発言内容とも一致するため大きな関心を集めている。

ワシントンのナショナルプレス・クラブで開催された会議でヴィンニク会長は「2022年5月にVilkha-Mが初めて戦闘で使用され、射程を150kmまで延長した改良型の開発作業も進行中でアゾフ海方面の反攻作戦に間に合えば良いのだが、、、」と明かし、この改良型について「事前テストは行わず実戦で試す」と付け加えていた。

出典:VoidWanderer/CC BY-SA 4.0 Grom-2

ロシア国防省も3月末「ウクライナ軍が発射した戦術弾道ミサイル『Grom-2』を迎撃した」と発表、ウクルオボロンプロムも「最大1,000kmの作動範囲と75kgの弾頭重量をもつ無人航空機の開発がほぼ完了した」と述べ、英国もウクライナに長距離兵器の提供を示唆(ストーム・シャドウではなくShahed-136と同じタイプの自爆型無人機の可能性がある)しており、ロシア海軍のモスクワを葬った対艦ミサイル「ネプチューン」を陸上目標の攻撃に使用するための改良も行っているらしい。

つまりクリミア大橋を破壊するための隠し玉に浮上している兵器は6つ存在し、もしザポリージャ州で実施される反攻作戦に合わせてクリミア大橋が破壊されると「ロシア軍の兵站」は致命的な問題を抱えることになるという意味だ。

出典:Oliver Carroll

  • 150km先の目標を攻撃可能な「Vilkha-M」の改良バージョン
  • 360km先の目標を攻撃可能な「ネプチューン」の対地バージョン
  • 500km先の目標を攻撃可能な戦術弾道ミサイル「Grom-2」
  • 1,000kmまで飛行可能な自爆型無人機
  • 英国が提供を示唆している長距離兵器
  • 米国が提供を約束しているGLSDB(引き渡しは9月以降)

勿論、ダニロフ氏やヴィンニク会長の発言は偽情報の可能性もあるが、果たして、、、

関連記事:ウクライナ、1,000kmの作動範囲と75kgの弾頭重量を備えたUAVを開発
関連記事:ウクライナ軍、BM-30で使用する射程100km以上のVilkha-Mを実戦投入
関連記事:ロシア軍がGrom-2を迎撃、ウクライナ軍はクリミア大橋に届く隠し玉を保有か
関連記事:英国提供の長距離攻撃兵器、Shahed-136タイプの自爆型無人機かもしれない
関連記事:米国、150km先を攻撃可能な長距離攻撃兵器を含むウクライナ支援を発表

 

※アイキャッチ画像の出典:Рада національної безпеки і оборони України

アルゼンチンが新しい潜水艦調達のため交渉を開始、フランスとドイツが競合前のページ

スーダンの首都で正規軍と準軍事組織が衝突、国際空港は黒煙に包まれる次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    EUが歴史的合意を発表、備蓄分から155mm砲弾100万発をウクライナに供給

    EU加盟国の外相は20日「今後12ヶ月間で155mm砲弾100万発の供…

  2. 欧州関連

    イタリア海軍の苦難!F-35Bが調達ストップで空母「カヴール」が存続の危機

    2019年5月、イタリア海軍の強襲揚陸艦「トリエステ」が進水したが、奇…

  3. 欧州関連

    バフムートを巡る戦い、じわじわと後退を強いられるウクライナ軍

    ロシア軍がイワニフスキー郊外の森林地帯まで前進していることを視覚的に確…

  4. 欧州関連

    ウクライナ版Shahed-136が完成、1,000km飛行可能な自爆型UAVを実戦投入

    ウクライナのウクロボロンプロムは「1,000km飛行できる(自爆型)ド…

  5. 欧州関連

    好みの角度で鑑賞可能、英空軍が第6世代戦闘機「テンペスト」の3Dモデル公開

    英空軍は17日、空軍の公式ホームページ上に好みの角度から第6世代戦闘機…

  6. 欧州関連

    ポーランド、米国から中古エイブラムス116輌を調達することで合意

    ポーランドメディアは15日、ウクライナに提供したT-72のギャップを埋…

コメント

    • 通りすがり
    • 2023年 4月 15日

    橋を落として兵站を絶ち、弱らせて包囲殲滅
    とかなったら小説みたいで面白いけど、さてどうなるやら
    成功したら映画化確実ね

    32
    • 58式素人
    • 2023年 4月 15日

    どこかで読んだのですが。
    今回戦役のロシア側前線司令部は、ボルゴグラード
    (旧ツァーリツィン、旧スターリングラード)にあるとか。
    こちらもウクライナ製兵器の攻撃対象に加えては。
    あと、スバトヴォ付近とベルゴロド州のロシア軍集結地等も対象にしては。
    他にも色々と対象があると思います。
    橋を落とすだけでは不足と思えます。

    15
    • 鼻毛
    • 2023年 4月 15日

    橋の破壊は絶対やると思うんですよね。
    防御線を正面から平押するような戦いを、これまで毎回作戦勝ちしてきた(あるいは、するしかなかった)ウクライナが実行するとは思えません。

    ロケット技術はあるので、Mig29のパーツ輸出のときみたいな感じで西側の材料とか色々もらってきて長距離ミサイルを組み立てるってのがウクライナ国内で進んでたりはしませんかね?

    20
      • Artillery
      • 2023年 4月 15日

      橋を破壊したところで、今は陸路での補給路があります。
      ザポリージャ州をアゾフ海まで打通して初めて補給の遮断に成功しますが、それまでは防衛線への正面攻撃が必要です。
      現在の整理された戦線で防衛線への正面攻撃を嫌うなら、それこそ沿岸からの大規模上陸作戦でもしないと難しいのではないでしょうか?

      2
        • 鼻毛
        • 2023年 4月 16日

        もちろん、いずれにせよ防衛線への攻撃はするものだと思ってます。

        ただ、クリミア大橋経由の補給が無ければ、ロシア軍も継戦能力が全然違いますよね。陸路での補給線はHIMARSで妨害されるでしょうし、一番重要なのは大橋が無いとクリミア半島のロシア軍は逃げ道がなくなるので、士気が低下します。それを踏まえて、クリミア半島の西側を攻めて圧力をかけて、半島東側、ドネツク方面の陸路から敗走させるのでは?という説もあるそうです。そんなシリンジに空気を送り込むような器用な動きが本当に起こるのかどうかわかりませんが…とにかくクリミア大橋の有無は戦略的にみてやっぱり大きいと思います。っていう話がしたかっただけです。

        11
          • Artillery
          • 2023年 4月 16日

          もちろんクリミア大橋の戦略的重要性は言うまでもないことですが、その重要性は長期的なクリミア守備隊への補給問題やクリミア市民の生活維持の問題、またはザポリージャ反攻成功後の効果を飛躍的に高めることにあるのであって、反攻自体の成否へは直接は関係ないと思うのです。
          あくまでその方面の軍事的拠点はメリトポリやマリウポリであって、そのメイン補給路は陸路です。
          また、HIMARSは拠点攻撃には向きますが、補給路への攻撃はコスパ・弾数の面で割に合わないのではないでしょうか。
          ただ、士気の事は考慮していませんでした。その点は大いに関係してくると思います。

          上記は全て反攻がザポリージャ地域だという仮定で話してるので、もしクリミアに直接反攻したりするようなら全てが間違いになりますけどね。
          その場合はクリミア大橋ほど重要なものは他にないと思います。

          4
    • ミリオタの猫
    • 2023年 4月 15日

    仮に偽情報だったとしてもロシア側としては対応策を立てざるを得ない訳で、情報戦略としては上手い手だと思います

    31
      •  
      • 2023年 4月 15日

      クリミア大橋くらい元からS-400でカバーされてるだろう

      7
        • くらうん
        • 2023年 4月 15日

        ここに書き込む人はロシアが迎撃態勢をとっていることくらい誰でも知ってますよ。
        ロシア側にとっての問題はウクライナがクリミア大橋攻撃のオプションを複数保有し、実際に何をどれくらい持っているか、いつどの手段を組み合わせてくるかがわからないからであって。
        射程1000kmクラスだとクリミア半島を回り込んで南側から攻撃される可能性も考慮しなくてはならない。
        S400があれば万事安泰なんて単純な話じゃないんです。

        44
          • ミリオタの猫
          • 2023年 4月 15日

          仰る通りですね
          昨年起きたクリミア大橋爆破の際には小型の水上無人艇(USV)が使われたとする説も有りました
          実際、その後にウクライナ軍はUSVを入手してセヴァストポリやノヴォロシースク港等への攻撃を実行していますから、ロシア側がクリミア半島にS-400やパーンツィリを大量配備してミサイルやUAVに対する守りを固めても海上から攻撃されたら無意味になってしまいます
          当然ウクライナ側はその辺の事も考えた上で今回の発言を行っているのでしょう

          24
    • gepard
    • 2023年 4月 15日

    長距離攻撃兵器のうち最も効果が見込まれるのはATACMSの供与だ。しかし、夏までに供与されなければ攻勢には間に合わない。遅れれば遅れるほど長距離SAMは枯渇するためロシア空軍を抑えられなくなる。よってウクライナとしては現時点でも長距離攻撃能力をもっているとPRする情報戦に出ているとみるのが自然だ。クリミア大橋よりも前線付近の飛行場を攻撃できるとした情報戦である。

    アントノフスキー橋は何度もHIMARSの攻撃を受けたが結局ロシア工兵の爆破で崩壊した。クリミア大橋も破壊工作によって損傷したとされている。橋を確実に崩壊させるなら更なる破壊工作が現実的だろう。新兵器は衆目を集めやすいが、この戦争では戦車・りゅう弾砲・航空機の大規模供与のほうが直接戦況に影響を及ぼすと考える。

    14
    • xyz
    • 2023年 4月 15日

    クリミヤ橋の破壊は確かに兵站に影響は出るんだろうけど、露助もそうなった場合
    フェリー等で全力で代替輸送を実施すると思われる。
    それが実行されると影響は限定的になってしまう可能性もあると考えてしまう。
    それに対してウクライナ側に海上破壊を実行する能力はあるのかな。

    4
      • NHG
      • 2023年 4月 15日

      旗艦モスクワを撃沈したぐらいだから能力的には可能
      クリミア西部の港はウクライナ軍のドローン攻撃を何度かうけ軍艦を本土側に避難させたとかさせてないとか聞くから、大きく南に(ウクライナ側からみてクリミア半島の陰になる)航路をとっての全力輸送は効率悪そうだぞ、と素人考え

      6
    • さめ
    • 2023年 4月 15日

    クリミア半島の奪還はあらゆる当事者にとって悩みの種だろうな
    特にウクライナをバックアップしてきている西側諸国

    ウクライナがクリミア半島を奪還する際には間違いなく「ウクライナによる」民間人の被害が発生する
    よしんば初動が有利に進んだとして、ロシア系の住民が多いということでロシアに対する内通が横行するだろうし、それを阻止するためにウクライナ側による弾圧が発生することも目に見えている
    法的にはウクライナ領土で、といったところで民間人に対する被害を支援国内で正当化できる世論が盛り上がるとは到底思えない

    以上を踏まえるとクリミア半島の奪還は棚上げがいいとこになるだろう
    これは軍事的というよりも政治的社会的な側面でそうならざるを得ないと思ってる
    兵站を阻害するという目的でクリミア大橋の破壊やクリミア半島内のロシア軍基地を攻撃することはあるかもしれないが、主権の回復は厳しい

    戦争の落としどころについて真面目に考えると、少なくとも領土ラインとしては2022年2月までのウクライナが支配しているラインを領土としてロシアに認めさせ、クリミア半島については未回収の地として棚上げにするしかないのでは

    12
      • 匿名
      • 2023年 4月 15日

      客観的に見るならウクライナのクリミア奪還は不可能でしょうね
      現在のクリミア住民がそれを許さないから
      無理強いするなら泥沼の内戦まで勃発するし、それを西側諸国が支持する筈もない

      13
        • nojigoo
        • 2023年 4月 17日

        西側諸国は表向き一貫してクリミア奪還を支持していますよね。いざその時に何が起こるかは仮定の話でしかありませんが。露系は7割弱で宇系とタタール系で残りということなので、ロシア系のレジスタンスというより今まで弾圧されてきた3割からの意趣返し的な協力者狩りが起きそうで陰惨な想像をしてしまいます。そうなったらロシアからネオナチ収容所ネタとかわんさか発信されるんでしょうね、って素人が想像しちゃうくらいだから奪還が見えてきたらあらゆる世論情報対策をするんでしょうが。

        1
    • まゅ
    • 2023年 4月 15日

    クリミア大橋を狙うなら、橋脚を破壊させるために、 UUV(水中無人機)を使うんじゃないかなぁ? S-400だけで破壊しようとしても、阻止される可能性が高いように思う。

    1
      • kitty
      • 2023年 4月 16日

      橋脚は大橋の最も強固なパーツでしょう。
      普通の橋を落とすときも、対称にC4設置して同時爆破させて剪断力を生じさせないといけないくらいです。
      UUVがそこまで精密な爆破工作をできるようになっているでしょうかね。
      積載量も少ないでしょうし。

      1
        • 58式素人
        • 2023年 4月 16日

        橋脚が二本一組なのが狙い処でしょうか。
        一本をを折れば良いのですから。
        あとは自重で崩壊するのでは、と想像します。
        それと、橋脚の足元の基礎の、そのまた下の水中部分ですが、
        丸い杭状ものが、柱脚の下に一本づつあるように見えます。
        水中での破壊をするなら、ここも狙い目では、と想像します。

        1
          • まゅ
          • 2023年 4月 16日

          UUVで飽和攻撃ができれば、橋脚を数本は破壊できるのでは?と思います。空中からの破壊は、阻止される可能性が高いし、やるなら、足元から崩すのではと考えます。
          阻止が難しい方法で攻撃をすれば、相手にも、余分な防御を強いることができるし。。

            • 58式素人
            • 2023年 4月 17日

            現地の防備次第ではないでしょうか。
            かなり前のここの記事のコメント欄に、
            ”ロシア側が、水中での攻撃に備えて厳重に警備をしている”
            との書き込みがあったと覚えています。
            方法は、きっと、現地をよく見てから決めるのでは。
            空中、水中、水上と色々と手段はあると思います。
            単独、あるいは組み合わせて、飽和攻撃もあるかもですね。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  5. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
PAGE TOP