欧州関連

ゼレンスキー大統領、ロシアが理解する唯一の言語は武器のみだ

ゼレンスキー大統領は「ロシアが理解する唯一の言語は武器のみだ」と主張して和平交渉を否定、米軍のミリー議長も「ウクライナもロシアも軍事的手段で政治目標を達成する見込みなく、お互い掲げた目標達成に夢中になっている」と述べた。

参考:Ukraine war: Zelensky rules out territory deal with Putin in BBC interview
参考:Генерал Милли: война закончится переговорами, ни Россия, ни Украина не достигнут своих целей

ロシアが軍事的手段で政治目標を達成するのは限りなく不可能、ウクライナも全ての占領地域を解放するにはロシア軍の崩壊が必要

ウクライナとロシアの約1年に及ぶ戦争は互いに軍事的な決定打に欠け、和平交渉のテーブルに着く条件(宇:占領地域からロシア軍撤退/露:クリミアを含む併合した4州の承認)も両国間で大きな隔たりがあり、この溝を埋めるためには譲歩を必要としている。

出典:PRESIDENT OF UKRAINE

BBCの取材に応じたゼレンスキー大統領は「予想されたロシア軍の攻撃が幾つかの方向で始まっている。西側諸国の提供する武器があれば反撃準備が整うまで抵抗できるが(提供までに)時間がかかりすぎる。近代的な武器は平和を加速させことができロシアが理解する唯一の言語は武器のみだ」と語り、和平交渉についても「領土問題で妥協すれば国家は弱体化するしかない。妥協そのものが問題なのではなく我々も日々の生活で妥協を繰り返している。問題は誰と交渉するかでプーチンとの間には信頼関係がないのでダメだ」と主張。

つまり主権に関わる領土問題以外なら譲歩も可能だと示唆したものの「信用できないプーチン大統領とでは交渉にならない」という意味だが、この問題について米軍のミリー統合参謀本部議長も興味深い発言を行っている。

出典:Public domain

Financial Timesの取材に応じたミリー議長は「ロシアが軍事的手段で政治目標を達成するのは限りなく不可能で、ロシアがウクライナを乗っ取るのは絶対にあり得ない。ウクライナも全ての占領地域からロシア軍を追い出すのは非常に困難だ。可能性は0ではないものの、、、本当に難しく、これを実現するにはロシア軍の崩壊が必要になる。お互い自分達が掲げた目標達成に夢中になっているため和平交渉を始める気はないだろう」と述べた。

さらにミリー議長は「この侵略戦争は第二次大戦の教訓に基づき毅然した対応や抑止力・軍事力で阻止しなければならないが、核兵器を保有する大国が相手なのでエスカレーションの管理には細心の注意を払わなければならないし、同時に国際秩序に基づく原則も守らなければならない」と付け加えている。

出典:Photo by John Hamilton

つまり互いに軍事的手段で政治目標を達成する見込みがないまま「戦いが続く」という意味で、国際秩序に基づく原則を優先させウクライナが要求する通常兵器を供給すれば「ロシアを占領地域から追い払うことも可能」だが、プーチン大統領を政治的に追い詰め過ぎると核兵器使用の可能性があるためエスカレーションの管理=戦場に決定的な違いをもたらす通常兵器提供を慎重に見極める必要があり、戦術核兵器が使用される状況だけは作りたくないのだろう。

ここから先は「NATOとロシアの核戦争に発展する」という比較的シンプルな主張が多いが、ウクライナに対するに戦術核兵器の使用が「なぜ核戦争に発展するのか」を明確に説明してくれる記事に出会ったことがなく、個人的に「NATOが恐れているのは戦術核兵器が使用された後の状況」だと思っている。

出典:Kremlin.ru/CC BY 4.0

NATO加盟国との間に干渉地帯が欲しいだけのロシアが「ウクライナで核兵器を使用するわけがない」というもの可能性の1つだが、欧米諸国の支援を受けるウクライナとの戦いをロシアは「NATOとの代理戦争」だと主張しており、欧米諸国がウクライナにATACMSや戦闘機を提供してロシア軍が決定的な敗北を喫すると「戦術核兵器の使用に踏み切る」というもの可能性の1つだ。

ロシアは低出力の戦術核兵器を何発か撃ち込みウクライナ人が引き下がることを期待するかもしれないが、核兵器の脅威を現実のリスクだと受け止めてウクライナ人が和平交渉に応じるか、低出力の戦術核兵器ぐらいで国全体や軍が壊滅するわけがないので抵抗を続けるかはやってみないと分からない。

出典:Vitaly V. Kuzmin / CC BY SA 4.0

ここまで戦いがエスカレーションしてウクライナ人が抵抗を諦めない場合、ロシアの政治体制を守れる最後のカードは戦略核兵器だけで、このエスカレーションはウクライナに向かうのではなく「武器や物資を支援する欧米」に向けられる可能性が高く、ここまで来ると軍事的な次元ではなく欧米とロシアの政治的もしくはイデオロギー的な対立=拳を先に降ろした方の原理原則が崩れるため「全人類の命」をベットした究極のゲームになるだろう。

勿論、ここまで戦いがエスカレーションまでに様々な分岐点があるため異なる結果に辿り着く可能性もあるが、ミリー議長が「核兵器を保有する大国が相手なのでエスカレーションの管理には細心の注意を払わなければならない」と述べているのは、どこまでプーチン大統領を政治的に追い詰めても大丈夫か見極めているという意味だと個人的に解釈している。

関連記事:ロシア軍が航空戦力を準備している理由、ウクライナ軍の予備戦力を叩くのが目的?
関連記事:ロシア軍が国境付近に航空戦力を集結中、ウクライナへの防空システム供給が急務
関連記事:ウクライナ人パイロットは数ヶ月でF-16を飛ばせる、但し飛ばせるだけ実戦は別

 

※アイキャッチ画像の出典:PRESIDENT OF UKRAINE

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コメント

    •  
    • 2023年 2月 17日

    ウクライナが進行初期の電撃戦を耐えて一時的とは言え押し返してしまった時点でわかっていたこと。この戦争が起きた時点で人類は二度の世界大戦から進歩していないとわかるし、結末も大して変わらないだろう。三度目の正直で今度こそ人類が教訓を遺伝子に刻みつけることを祈るしかない。

    12
      • ActivePresent
      • 2023年 2月 17日

      無理ですよ。ウクライナ内戦の時からいやそれ以前から、アメリカやイギリスもロシアもウクライナも一方的な報道で自国側に正義があって、相手側には道理がないって報道しか殆んどやってなかったんですから。またそれで映し出される相手国による犠牲者は幼い子供や女性のような弱者でそれは万国共通なんですから笑
       関係のない国は我関せずか、緩く体制側の報道を流しておくだけ。戦争に向かうことを本気で止めようと思った国家が一国でもあればこんな状況になってません。まぁこれも当然ですよね。そうではなしにそういった目標を前提にして、例えば他国間の問題であっても、その両国が訴えている蓋然的な事実の諸々の事柄をすべて開示してどこに問題があったのかを真剣に国民同士で議論させるような国家があったとしたらそれは同時にもうその国家体制の危機でしかないですし。

      3
        • 名無し
        • 2023年 2月 18日

        いや、それも違う
        今回のはロシアが一方的に悪い

        6
          • ActivePresent
          • 2023年 2月 18日

          今回とは一体いつからのことを言っているのですか?そもそもそれは一体誰が決定するのですか?―(言うまでもなく我々人間がです)。2月のウクライナ侵攻から歴史を見れば現状変更を行ったロシアの悪は明らかですし、私はそれに異論ありません。ですがそれはあくまでこの現前においてです。

          2
      •  
      • 2023年 2月 17日

      生物が競争をやめるわけ無いじゃない

      8
    • kitty
    • 2023年 2月 17日

    原爆2発落とされてもピンとこずにスルーしたのに、ソ連が参戦したら降参を選んだ国もありますからねえ。
    チョルノービリ原発事故まで経験したウクライナ人が戦術核で止まるだろうか…。

    40
    • samo
    • 2023年 2月 17日

    アメリカは個別の武器(ハード)にこだわり過ぎだとする見方もありますね。
    先回りしすぎて考えてロシアの思考を忖度して、遠慮しすぎたと。

    F-16の供与にしても、論議されるべきはそれが戦術レベルで効果があるか否かであって、
    戦術レベルの話が戦略レベルの懸念に飛躍しすぎている。
    それならまだマシで、効果があるなしどころか、訓練に2年とか3年かかるとか、訓練がかかるという話に論議がすり替わっている。
    大体、ほんとにそんなに訓練がかかるか極めて怪しい。

    日本での例で言えば、
    F-4EJのパイロットがF-4EJ改への機種転換訓練にはおおよそ3ヶ月程度かかったとのこと。
    F-4EJとF-4EJ改ではコックピット全刷新なため操縦方法は完全に別物。(大半F-4が改修されたために、岐阜に残ったF-4EJを操縦できるパイロットがほとんどいなくなって、操れるパイロットの確保に苦労したという逸話があるくらいには別物)
    F-4EJパイロットに、経験も知識もない、対地対艦戦術の習得も含めて、これぐらいで済んでいる。しかも平時。
    しかも航法は東西関係ない、世界共通のもの。
    これでいくら東西で戦術が違うからって、年単位の時間がかかるなんて、眉唾物であると判断しています。

    ちなみに、防衛研の高橋氏は、戦時の練成であれば、東側パイロットであっても6ヶ月でできる、3ヶ月は無理と回答されていますね。

    23
      • daishi
      • 2023年 2月 17日

      東側の戦闘機の計器はメートル単位で西側はフィートとか差異があり、管制側もロシアや中国ではメートル法が使われることがあるため、普通の機種転換より手間はかかると思います。
      単位問題は「メーデー!」でも事故の原因として挙げられますから、「飛行するだけ」なら比較的短時間で済みますが、戦闘機という忙しい仕事の中では計器の単位の慣れ一つ取っても重要な要素になるものと思われます

      2
        • samo
        • 2023年 2月 17日

        そのご懸念ですが、結論から言わせていただくと、あり得ない、と断言できます。
        根拠を3つほど提示しますが、

        ①そもそも、東西の単位がいじり交じっての飛行は、パイロットでは日常茶飯事であること。
         他国をまたがる際でのフェリーとなれば、その通過国の管制に従うことになるため、当然単位もその国に沿ったものとなります。

        ②日本での例で言えば、インド空軍のSu-30は日本国内での戦闘訓練を難なくこなしている。
         共同訓練でも、管制はホスト国側に委ねることになるため、単位が違うから戦闘時に支障が出る、という理由成り立ちようがない。

        ③ウクライナ空軍パイロットは以前より、NATO国等との国際共同訓練経験がある。
         つまりは西側の管制を使っての戦闘訓練をやっていますので、単位の変換がとっさに出てこないといった可能性はありえません。

        計器の違いもただのイージーミスの範疇からでず、
        そもそも計器の位置が違うコックピットへの機種転換は事故の元にならないのか?となりますし、
        読める読めない以前に計器を見ていなかったためにF-35を墜落させてしまったといった事故が日本でも起きています。
        計器の違いを理由にしてしまうと、米国以外の人は米国で車の運転を教習を受けないと出来ないのか?といえばそんなことはないわけで、それが機種転換の大きな障害になるという理由になりえません。

        7
    • samo
    • 2023年 2月 17日

    数発の核兵器を使ったところで、軍隊は倒せないよ。
    かつてのナチスドイツが連合軍を倒すためには数千発の核兵器が必要だとして計画していたことがその証左。
    核兵器は確証破壊には使えても、軍隊を倒すには向かない。

    20
    • クローム
    • 2023年 2月 17日

    平和的外交による解決を言い続ける方々はこの言葉を知って欲しい。
    まあウクライナの外交努力が足りない、日本には当てはまらないと一蹴りするだろうけど。

    18
      • おーるず
      • 2023年 2月 17日

      数年前に、「侵略者が来たら酒を酌み交わして話し合えば分かり会える、俺が抑止力だ!」と言って某大学生は元気かな。
      会えたら酒を酌み交わす時がついに来たぞ、と背中を押してあげたいよ

      43
    • 無無
    • 2023年 2月 17日

    ロシアが怒りの矛先を欧米に向けようとも、軍事的には核恫喝しか手段が残されてないが、その場合はロシアも同じ目に遇うんだが
    ウクライナへの戦術核使用は、欧米反戦派に恐怖感を与えてウクライナ支援を滞らせるためにのみ考えられる、ウクライナ本人はもはや引くまい
    文化芸術科学に多大な貢献を為したロシア人との共通言語が武器のみというのは、人類にとっての不幸なんだけど

    16
    • たら
    • 2023年 2月 17日

    短期的に本気で終わらせようと思えば、西側がウクライナに多大な援助と安全保障を確約して、ロシアに領土割譲するしかないでしょうね。

    8
    • リソース焼きそば
    • 2023年 2月 17日

    プーチン「ウクライナがッ降伏するまで攻撃するのをやめないッ!」

    4
      • ポロニウム
      • 2023年 2月 17日

      降伏しても攻撃してきそうなんですがそれは…

      31
        • k.ziro
        • 2023年 2月 17日

        降伏したら粛清と弾圧、強制労働ですからね…

        34
    • Ard
    • 2023年 2月 17日

    その究極が核を持った国以外の主権を認めないというやつやな。

    20
    • スマック
    • 2023年 2月 17日

    西側の想定外

    ウクライナが予想より強かった

    ロシアの継戦能力は半端じゃなかった

    まあ西側は両国を完全に見下していたということ

    24
      • samo
      • 2023年 2月 17日

      そもそも、両軍合わせて100万人を超える兵力が正面からぶつかって戦うということ自体が想定してなかった。
      結果戦場での戦い方は、WW1のときにやってた古典的な、砲撃と塹壕を中心にした戦い
      これ自体も予想されてなかった
      戦局に関しては、何もかにも欧米の予想外

      24
      • ukgjw3
      • 2023年 2月 17日

      「ロシアの継戦能力は半端じゃなかった」というよりは、「ロシアは予想より弱かった」「ロシアの非合理性は半端じゃなかった」というべきかと。
      人海戦術による肉弾突撃まで退化して戦いを続けるとは思わなかったですね。
      中越戦争の時の中国は割りに合わないと判断して1ヶ月で撤退し、軍の近代化を最優先の国家目標にしましたし。

      29
        • ホテルラウンジ
        • 2023年 2月 17日

        私はロシアの半端じゃない非合理性を実施できた(ロシア国民が受け入れた)事が一番の驚きですね。
        そら当初の目論見が大ハズレも大ハズレでゼレンスキーは亡命して3日でウクライナを落とすどころか
        精鋭は全滅して膨大な車両が鹵獲されて「勝ち筋の完全消滅」「失敗」が確定していきなり地球上に自分の安住の場所が無くなった
        プーチンからしたら第一次世界大戦のノリだろうと何だろうと付け焼刃的な頭の悪い非合理な手を乱発して取り繕おうとします。
        ただ、私が思うのは侵攻1週間程で見えてきたあの時点でプーチンはチェックメイトで、実際に行った無秩序な追加動員やら素人を戦場に送るだのをやれと指示しても21世紀の現代に余りにも時代錯誤な野蛮で原始的で非合理な施策に国民は呆れてプーチンへの熱が冷め、国内が内乱状態になってロシア政府は崩壊すると思ってました。
        そのあり得ないような施策が国内に混乱は発生したものの、国民の反乱が起こる事無く実施出来た事が驚きでしたね。
        21世紀ですよ?。スマホでツイッターやってるような時代に幾ら独裁的な国家とはいえ、こんなアホみたいな事をしてるのにも関わらず国民が反乱を起こして政権が転覆しなかった事が驚きです。

        8
      • ヤゾフ
      • 2023年 2月 17日

      ロシアの品質の悪い戦車を後2年くらい相手して壊すだけですから…
      諸々詰んだ国なのでロシアを相手としなくて良くなったのは日本に朗報です。

      11
    • 花束
    • 2023年 2月 17日

    いきなり本土決戦の総力戦に巻き込まれた国の行く末を中国、ロシア、北朝鮮といった世界でも屈指の非民主主義国家に囲まれた我が国は注視しています。どんな状況であれ和平交渉の窓口は断つべきでは無かったのです。開戦直後はまだ理性的でした。

    16
      • Ard
      • 2023年 2月 18日

      未だに和平に期待しているんですか。それも今のウクライナを非理性的であるとまで罵倒している。最低ですね。狂人と交渉する事に理性は無く、勇気を持って立ち向かう事こそが人の理性です。ロシアが飲む和平はウクライナ現政権が抹殺され、ロシア傀儡政権が樹立される事のみ。

      14
    • 戦略眼
    • 2023年 2月 17日

    ロシアが核を放棄したウクライナに核を使うと、核不拡散体制が崩壊する。
    皆が核兵器を持たないと核兵器を持つ国にやりたい放題される事を、証明してしまう。
    ロシアはソ連の領域を確保しようとするから、ウクライナで止まらない。
    一番解っているのが、ポーランドとハンガリーだろう。

    23
      • gobu
      • 2023年 2月 17日

      ハンガリーじゃなくて
      バルト3国じゃない?

      14
    • ネコ歩き
    • 2023年 2月 17日

    >エスカレーションの管理には細心の注意を払わなければならない
    ウクライナへの武器支援を主導する欧米主要国のリスクは結局のところこれなんでしょうね。

    将来の安全保障体制への懸念から、ロシア側に指摘されるまでもなくNATO加盟諸国は当戦争の準当事国であり、可能な範囲で(多少無理をしてでも)武器支援を続けるという構図になっていると考えます。だからこそこの戦争がプーチン一派の野望を利する結果に終ることは現状許容できない。その意味でも(ウクライナの意志を勘案すれば尚更)落しどころは難しい。

    一方で米国の最大の懸念は戦火が北米に拡大飛び火(核戦争へのエスカレーション)することであろうかと。下手をすればその発端になるだろうロシアの戦術核使用はなんとしても回避したい。
    中国という覇権を争う現状最大のライバルと対峙している中で、そのリスクは慎重すぎるほどに排除したいのではないでしょうか。

    主力戦車についてあれほど慎重だった米政府が一転して提供を決めたのは、先に提供を発表した英国から主力戦車提供は戦術核使用のリスクを高めないという情報提供があったからではないかと推測します。決断までのタイムラグがあったのは米国側でも裏をとったからかもしれません。
    提供するM1エイブラムスは退役したての海兵隊装備になると推測しますが、専用バックアップ機材も丸ごと移管できるはずで、当事の提供できない直接的理由は説明として弱かったかと思います。

    懸案になっている欧米製戦闘機提供を含め、ウクライナへの武器提供は再三言われる「エスカレーションの管理」に左右されるんでしょう。

    10
    • JJ
    • 2023年 2月 17日

    侵略をソ連復活の野望のためと言われがちですが、
    ロシアの政治家や国営メディアの主張を見ていると
    ソ連復活の野望ってわけではなさそうなんですよね

    ロシアの政治家や国営メディアは、ソ連崩壊後もCIS、CSTOなどのロシア主導の国家連合体に加わっていたにも関わらず
    あとから脱退して西側に乗り換えようとしている国に対して明確な敵意を向けて、非ナチ化という名の侵略候補としてあげています

    CISから脱退したウクライナとジョージアは侵略されました
    他にも反政府デモが発生したカザフスタンを次の非ナチ化の候補として主張していたり
    モルドバもルカシェンコの地図で対象になっていたり
    CIS加盟国でありながら裏切って西側にいこうとしている国を侵略対象にしている感じですね
    ベラルーシもルカシェンコ政権が反政府デモで追い込まれたら、ロシアの非ナチ化の対象になるのでしょうね

    ソ連崩壊から一貫して反ロシアのポーランドやバルト三国は、当事国の危機感は強いですが
    ロシアの主張をみていると侵略対象としての優先度は低そうです

    6
      • バーナーキング
      • 2023年 2月 17日

      >ロシアの主張をみていると侵略対象としての優先度は低そうです

      「優先度が低い」だけで侵略対象には入ってる、と。

      22
        • JJ
        • 2023年 2月 17日

        ワルシャワ条約機構と一切関係ない日本やアラスカまで侵略候補と主張している人物がいるので入ってるか入っていないかでいえば入ってるでしょうね

        ソ連崩壊直後は独立国家共同体だったのに親欧米政権になってしまったウクライナ、ジョージア、モルドバ
        親露政権を維持できているが親欧米派による反政府デモが発生しているカザフスタン、ベラルーシ
        ここまでの非ナチ化という名の思想弾圧が終わった時が、ポーランドやバルト三国などが狙われる時ですがその頃にはロシアは滅んでると思いたいですね

        8
    • XYZ
    • 2023年 2月 17日

    ウクライナはロシアの条件は受け入れられないでしょうね。
    下手するとウクライナという国家が消える可能性があります。

    西側諸国がどうしても手打ちにさせたい場合、以下の条件ならばウクライナも開戦当初は中立化などあまり良い条件ではなくても検討していましたから、それ以上のメリットがあれば受け入れるかもしれません。 

    ・ドンバスとクリミアはロシア領へ編入
    ・ただし、両地域は非武装地帯とする
    ・ウクライナはNATO及びEUに加盟する
    ・差し押さえているロシア対外資産の大部分をウクライナに委譲する
    ・天然ガスや石油を無償で数十年単位でウクライナに供給する
    ・ロシアのヨーロッパへ輸出用天然ガスパイプラインはウクライナ経由のみを認め、毎年利用料を支払う
    (安定収入と安全保障の為)

    ウクライナはNATOとEUに加盟できて安全保障と経済発展のきっかけをすぐに得られます。
    領土を失う点も過去にアラスカが売却されたりしていますので、ウクライナ国内への説明もつくのではないでしょうか?

    3
      • 匿名11号
      • 2023年 2月 17日

      ロシアが占領地に執着する限り、ウクライナは受け入れんでしょうなあ。

      2
    •  
    • 2023年 2月 17日

    引っ叩かなきゃ分からん子
    それがロシア

    7
    • 2023年 2月 17日

    ロシアがNATO加盟国に核を落とす可能性は限りなく低いとは思いますが、ウクライナに落とす可能性は十二分にあるかとは思います・・。
    なぜなら、落とさずに負けたら、なんで落とさなかったと戦後に必ず言われるからです。

    ロシアにとって大事なのはNATOとの緩衝地帯のウクライナなので、究極的にはそこに住む人間の質などはどうでも良いのではないかとは思います。(ようはつまり、核兵器に汚染されたミュータントが住んでようが、人間が住んでようが、NATO加盟国でなければ良いのではないでしょうか)

    欧米が恐れるのは、核兵器を使った世界大戦などというレベルの話しではなく、核兵器の『使用実績』ができることかと思います。

    一度使用実績ができれば、核兵器と言う最終兵器の使用へのブレーキが一気に決壊する可能性があります。

    中国も、インドも、パキスタンも、またロシアも、他の自国が抱える紛争地域への核使用をためらわなくなる可能性があります。

    その場合、核がそれ以外の中小諸国にも、対抗の都合上多いに拡散する可能性が高いかと思います。

    結果、猫も杓子も核兵器を持つようになり、世界は核を使った報復合戦の危機がどんどん強くなるでしょう。

    というわけで、核というのは基本は使ってはいけないというのが欧米の首脳部クラスの基本的な考えなのかもしれませんね。

    12
    • せい
    • 2023年 2月 17日

    現実的な落とし所はウクライナ東部地域を国際監視の元独立させるくらいかね。
    朝鮮半島みたいに半分ずつ親露と新欧の地域で緩衝地帯にするとか。
    勿論住んでる人のことなんか考えてませんが、それを考慮しだしたら終戦なんて夢のまた夢ですし。
    まあ無視できないから簡単には終われないんだろうけど。

    4
    • ぱんぱーす
    • 2023年 2月 17日

    東側を失うとウクライナは豊かな穀倉地帯と工業地帯を一気に失いますからね。
    残るのはわずかな重工業とチェルノブイリぐらいで貧乏国家まっしぐらです。
    現状での停戦なんて飲めるわけないんですよね。
    このまま双方妥協点の見つからないまま何年も血を流し続けるんでしょうか。

    7
    • 折口
    • 2023年 2月 17日

    核エスカレーション管理への対応がここまでこじれたのも、東西で戦術核兵器の配備状況に不均衡が生じているのが一つの遠因だと思うんです。ロシアのイスケンデルに相当する核搭載可能な戦術弾道ミサイルって西側には無くて(ATACMSに核弾頭型はない)、イスケンデルが使われてしまった後の報復オプションが極端に少ないんですよね。トランプ政権時代からこの問題は指摘されていて、同政権では対応としてSSBNに搭載する戦略核の一部を低出力核に置換えたモデルの配備や、核搭載可能な巡航ミサイルの開発を進めていましたが、これらの施策は一部を残してバイデン政権で中止されました。アメリカが現在持っている戦術核兵器への報復手段は低出力仕様のトライデントが数発程度と見られており、このままロシアが戦術核をウクライナで使っても適切な報復が出来ない=撃たれ損で終わる可能性が高いのです。それはウクライナとしても国際社会としても許容できない事態なので、ゆえに一定の慎重さを以ってロシアに核使用を踏みとどまらせるという現状を作ってしまっているんだと思います。

    ロシア人がウクライナで戦術核を使い、西側が使える報復核攻撃がない(=核は使ったもん勝ちというメッセージを世界に送ること)となったら、ラダーを少し遡ってでもNATO通常戦力による限定参戦を検討すべきだと思うんですよね。地上部隊を送ることはしなくても、ウクライナ上空での飛行禁止空域設定や黒海西部の航行制限、東部ウクライナでの道路鉄道インフラへの爆撃などなど、開戦当初に検討されていた積極関与案に立ち戻ることが核使用を許さないという姿勢を示す唯一穏当な選択肢なのでは。

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