欧州関連

米国やロシアが実用化を狙う運搬可能な小型UAV、フランスが次世代戦闘機による対応を明言

フランスの国防当局者は未来戦闘航空システム(FCAS)プログラムについて「100kg以下の小型無人機とロイヤル・ウィングマンとして作動する無人戦闘機を用意する」と明かした。

参考:FCAS developers chasing the sweet spot in mix of fighter, drone designs

使い捨てで運搬可能な小型UAVに対応してきた欧州の次世代戦闘機プログラム

FCASプログラムとは第6世代と目される有人戦闘機(NGF)、エア・チーミング可能な無人戦闘機、同機が搭載する新しい兵器類で構成されるファミリーシステムで、まだ戦闘機の正式名称は決まっていため便宜上FCASと呼ばれることが多いが実際にはシステム全体の総称だ。

パルリ国防相は今月17日にNGFのデモンストレーターを2027年までに開発するためフランス、ドイツ、スペインは35億ユーロ/約4,640億円を均等に拠出することで合意、FCASのファミリーシステムが完全作戦能力を獲得する時期を2040年に設定したと発表して注目を集めたがフランスの国防当局は「複数の設計案で構成されたNGFのプロトタイプとエア・チーミング可能な無人機の最適な組み合わせを検討中だ」と語り注目を集めている。

出典:Airbus Future Combat Air System

仏国防当局の話を要約するとFCASプログラムは仏独による概念設計(開発フェーズ1A)が間もなく終了して年内にスペインが参加する開発フェーズ1Bへ移行、2024年までに3種類のNGFプロトタイプ案と6種類のエア・チーミング可能な無人機設計案を組み合わせて比較を行い実機製造に進む案を決定するらしい。

注目すべきはFCASファミリーシステムも第6世代と目される有人戦闘機に対して複数の無人機を用意する点で、最低でも100kg以下の小型無人機とロイヤル・ウィングマン(忠実なる僚機という意味)として戦闘機に随伴可能で自律的な運用ができる大型の無人戦闘機が用意される予定(今後の検討結果次第で2種類以上になる可能性もある)だと言っている点なのだが、米国や英国のプログラムと異なるのは既存の戦闘機に開発する無人機システムを対応させるのか明言していなところだ。

数年前までは第6世代戦闘機とエア・チーミング可能な無人機はセットで登場すると予想されていたが、急速な無人化技術の発展に伴い多くの国(米国、ロシア、中国、英国、欧州(フランス/ドイツ/スペイン)、オーストラリア、インド、トルコ、ブラジル、日本の10ヶ国)がエア・チーミング可能な無人機の開発に乗り出しており、ロシアは2024年までにSu-35やSu-57とエア・チーミング可能な無人機「S-70オホートニク」の量産機を空軍に引き渡す予定だ。

米国は実用時期を明言していないもののF-35を含む既存の戦闘機とエア・チーミング可能な無人機を複数開発しており、もう間なく無人戦闘機プログラム「Skyborg(スカイボーグ)」の機体開発を担当しているボーイング、ゼネラル・アトミックス、クラトスから空軍にプロトタイプが引き渡される予定なので当然2030年までに有人機と無人機によるエア・チーミングを実現させてくるだろう。

出典:エンブラエル ブラジル空軍向けに開発が発表された無人戦闘機

英国も2023年までにエア・チーミングに対応した無人戦闘機のデモンストレーター「モスキート」を開発する予定で2030年までにタイフーンやF-35Bに統合する予定で、インドも5年以内に無人戦闘機「ウォーリアー」のデモンストレーターを開発して初飛行させると予想されており、トルコもバイラクタルTB2の開発で有名なBaykarが無人戦闘機を開発中で2023年まで概念設計を完了させると発表しているため有人機と無人機によるエア・チーミングを2030年までに実用化してくる国は米露以外にも複数登場すると予想されている。

このような状況下でNGFのみに無人機システムを対応させるというFCASプログラムの計画は非現実的なので、恐らくフランスのラファールやドイツ/スペインのタイフーンなどにも対応させてくる可能性が高く、他国の開発状況を踏まえて無人機システムのみ実用化を先行させてきても不思議ではない。

出典:英国空軍

勿論、エア・チーミング可能な無人機の開発に乗り出した10ヶ国の中で国際共同開発という形式をとっているのは欧州(フランス/ドイツ/スペイン)だけなので、この辺りの事情が無人機システムの先行開発を阻害するかもしれないがFCASプログラムのライバル(潜在的な輸出市場が被るという意味)英国が「無人戦闘機の開発は我々だけではなく米国やオーストラリアでも進められており一刻も早く無人戦闘機を実用化しなければならない」と語ってエア・チーミングに対応した無人機輸出への動きを見せているためフランスやドイツは無視することはできないはずだ。

つまり既存機とエア・チーミングに対応した無人機を海外市場に提供出来なければ、中東に売り込んだ約150機近いタイフーンが必要とする無人機需要の英国独占を許すことになり開発国のフランスがラファールに対応した無人機を供給出来なければ他国にラファールが必要とする潜在的な無人機需要を奪われる恐れがあるという意味で、何れFCASプログラムで開発してくる無人機システムをラファールとタイフーンに対応させてくるのではないかと管理人は予想(エアバス独自の有人無人チーミングの研究にユーロファイターとNGFらしき機体が無人機とチーミングを行う様子が登場する)している。

出典:ロシア国防省 Su-57搭載を噂されている小型の多用途無人航空機「ライトニング」

大きく話が脱線してしまったが、米国も無人戦闘機「XQ-58Aヴァルキリ」のウェポンベイから偵察・監視や自爆攻撃などの任務に対応可能な小型UAV「ALTIUS-600」の分離実験を行い、ロシアもSu-57のウェポンベイにチーミング可能な小型UAVを最大10機以上搭載できるように改良中で、高度な防空システムで守られた空域に侵入する際に敵のレーダーに干渉して防空システム全体に過剰な負荷を与えることで隙をつくりだすことを想定するなど「使い捨てで戦闘機や大型無人機で運搬可能な小型UAV」の開発や運用に注目が集まっており、今回の仏当局による発言は「FCASプログラムも同じようなことを想定している」とアピールしているのだろう。

出典:SAAB

因みにサーブはフィンランドの次期戦闘機HXプログラムに対してグリペンEと空中発射式デコイミサイル(Air-Launched Decoy Missile system:LADM)の組み合わせを提案しており、このLADMは高性能な使い捨てのデコイで搭載された電子妨害装置を駆使して敵防空システムに誤った標的情報をばら撒いたり、システム自体の処理能力に負荷を与えることで飽和させ攻撃を貫通させやすくするという使い方(空対空戦闘の視界外化に伴い敵戦闘機に対するデコイとしても機能するらしい)を提案している。

コンセプト的には米国やロシアが実用化を進めているものに近く、使用するプラットフォームが滞空性能に優れるUAVか速度性能に優れるミサイルかの違いでしかないので非常に興味深い取り組みだ。

関連記事:フランス、2027年までに次世代戦闘機の技術実証機開発で3ヶ国合意と正式発表
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※アイキャッチ画像の出典:Tiraden / CC BY-SA 4.0 パリ航空ショーで発表されたダッソーFCASのモックアップと随伴機の無人機

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    電子妨害無人機ってグリペン本体もそんなコンセプトじゃなかったっけ?

    8
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    100kg以下の小型UAVって、SRAAMより軽量なのか。
    サイズも同等以下なのかな?

    1
      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      ALTIUS-600に限って言えばサイドワインダーなんかより断然小さいよ

      2
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    CGを見るにFCASは複座で構想しているのかな。チーミングでミッションが複雑化するから戦場全体を管理するオペレーターとパイロットを分ける方が柔軟性は高い気はするけど、スクランブル任務を考えると単座の方が効率が良いような気も。
    何はともあれF-3、テンペスト共々完成が楽しみではあります。

    6
      • 匿名
      • 2021年 5月 25日

      こんなもん単座で全部処理しろとか言われたら、マジで誇張無しにニュータイプとかコーディネーターが必要になるで

      1
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    自爆型の小型UAVは擬態ミサイルという方向性かな

    1
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    マジでファンネルだらけになった逆シャアみたいな状況やな。
    双方戦ったら相当ワチャワチャした空戦になりそう。

    7
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    ファミリー・システムに関しては、その巡航速度や戦闘速度も不明。
    有人機の場合と比較して、どの程度近い速度が出せるのだろうか?

    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    こうなってくると敵が前線でUAVばら撒くのを黙って見ててやる義理は無いわけだから根元を叩く=策源地攻撃に拍車がかかり今までだったら地域紛争で済んでいたものが全面戦争に・・・ってな方向に行く可能性も無視出来なくなってくる。
    UAVの保有や機能を制限しようって話は持ち上がりはするだろうが肝心な国が加盟しなかったり守らなかったりするだろうから意味を成さないだろうし当面の情勢は拡大の一途かな。
    もう少し防禦技術が進めば対空レーザーの高出力化や低電力化、指向性EMPの実用化等で「目的を達成出来ない低価格UAVは無意味」って時代が来る・・・かもしれない。

    3
    • 匿名
    • 2021年 5月 23日

    偵察能力を持ったミサイルと人が乗ってないだけの無人戦闘機を同一のカテゴリで扱うのは厳しいよなぁ。単にUAVといった時どのくらいの用途のどんな規模のものを差すのかまだざっくりしているのは技術的にも草創期の正規戦もない戦間期だから仕方ないとは言え、記事で挙がってる10カ国のうち何カ国が具体的な運用ビジョンをイメージできているのやら。日本はこの分野では概念研究だけは20年くらい前からしているけど、欧州諸国なんかは市場競争のせいでハードウェア先行になりかねないんじゃないか(そもそも無人随伴機をどれくらいの国が購入する余裕があるのか)

    3
    • 匿名
    • 2021年 5月 25日

    高速通信となると事実上見通し線内となる現代の技術の制限上、有人の親機に随伴する無人の子機、さらには子機から孫機(もしくは双方向通信ミサイル)が発進してネットワークで接続するというのは、ある意味当然の流れかもな
    単純な放射線のスポーク構造では、どうしても親が敵からも見られる位置に行かざるをえないし
    特に低空での対地戦・地上戦となると、どうやって通信ラインを維持するor切断するのかというのが戦闘の焦点になりそうだ

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