米空軍のアルヴィン参謀総長は28日「以前のように航空戦力を増強し『何日も何週間も制空権を維持する』というのはコスト的に無理がある」「空の心配をすることなく『恒久的に軍事作戦を実施できる』という考え方から転換しなければならない」と言及した。
参考:Air Force Must Rethink How to Achieve Air Superiority, Chief Says
現実的で手頃な作戦コストのため発想の転換が必要
ウクライナとロシアの戦争では「高度な防空システム」が「航空戦力の運用を大幅に制限できる」と実証されたが、大量投入されたドローンの抑制手段が欠如しているため「有人機が飛行する高度と地上の間に広がる空域」で「低空の戦い」が成立し、高価な航空戦力の将来について多くの議論が交わされている。
ブルッキングス研究所のイベントに登場したアルヴィン参謀総長も「以前のように航空戦力を増強し『何日も何週間も制空権を維持する』というのはコスト的に無理がある」「必要な時に必要な分だけ『空を支配する』といった現実的で手頃なコストのアプローチが必要だ」「空の心配をすることなく『恒久的に軍事作戦を実施できる』という考え方から転換しなければならない」と述べ、空を支配するために制空権を握るのではなく「他の戦力と強調するため空の支配が必要になる」と付け加えた。
要するに大国間の戦争で「従来通りの制空権に依存した軍事作戦」はコストがかかりすぎるため、戦力の集中と制空権の確保を同調させたり、長距離兵器による接近拒否外から攻撃を増やしたり、損耗可能な無人戦闘機を使用するなど「現実的で手頃な作戦コストのため発想の転換が必要だ」という意味だ。
因みにアルヴィン参謀総長は「今後も航空戦力の重要性は変わらない」とも述べているため「空から戦場にアプローチする」という根本は揺るぎないが、その手段は大きく様変わりするかもしれない。
気づいたらトータルのコメント数が20万を越えてました。ここを覗きに来てくれる全ての読者に感謝します。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Eric Dietrich
いつも詳細かつ深い洞察の記事をアップしていただいていることにこちらこそ感謝いたします。
ドローンの活躍が、人間が空中で作戦行動するコストの高さを浮き彫りにした結果、従来の航空戦力がコストに見合わなくなってきたと理解しました。
輸送手段としての航空機の有効性は決して否定されないですが、対象を認知して攻撃するために人間が同乗する価値が低くなってきているということでしょうか。
勿論WW2のような総力戦体制になれば別なのでしょうが、まさかドクトリンに合わせて重宝されてきた米空軍がコストの観点だとしても制空権保持できないと口にするとは……
まさに戦争は変わりましたね
アメリカでさえ制空権の確保が無理な時代になってるわけか
…‥西側の軍事ドクトリンだいぶやばくない?
今後はコストの低い無人機を大量に使用して攻撃するのが主流になるのかもしれませんね。
コメント数20万突破おめでとうございますご盛況で何よりです
精緻な戦況図、頻繁な更新、公正な戦況紹介、本邦に置いて管理人さん以上の軍事情報の知識を深める事が出来るサイト運営者は存在しないのではないかと思われます
早いものでウクライナ侵攻も2年が経ってしまいましたが中々終結の目が見えない状況です
支援すればする程この状況が継続し宇露双方の人命が失われていくのですが、かといって支援が先細りウクライナ不利での停戦講和となると本邦も所属する西側有利の世界秩序が揺らいでしまうジレンマ…
一市民としては見守る事しか出来ませんが政治家諸氏には何とか上手な落とし所を見つけて頂きたいものです
管理人様。更新お疲れ様です。
ウクライナ戦争がはじまってからこちらのブログを拝見するようになりました。中立的かつ客観的なコメントと、リアルタイムで戦局をモニターし続けてくださる管理人様の努力と責任感に感謝と尊敬を。本当にありがとうございます。
コメント数20万は素晴らしい、管理人様おめでとうございます!
軍事ブログという、コメ欄に専門性・意識の高い方々の賛否両論が集まっていますから、記事と共に勉強させて頂いています。
米空軍ですら、ドローン・旧来兵器のインフレが影響を及ぼしているとは、時代は変化していくものですね。
「航空優勢が取れている事が前提」「全てが上手く噛み合っている事が前提」という条件の上に立てられる戦い方はそりゃあどっかで無理が生じますわな
ウクライナ軍やアフガニスタン政府軍にも同じ戦闘教義を叩き込んだものの、空からの支援が無い事でその前提条件が崩れパニックに
イスラエル軍もハマスの奇襲を受けた際、歩兵の装備も圧倒的に上、重装備もあったのにパニックを起こし民間人を置いて逃げる事に
相手が格下なら効率よく戦える戦術かもしれませんけど
相手が同等レベルでは通用しない、あるいは常時そのようには戦えないとするならば、プランBとなるドクトリンを練り上げて必要な装備、必要な戦い方を議論して陸軍にフィードバックしていく事が必要ですな
最悪ヨーロッパや極東で中露が攻めてきた時も同じことが起こりうるってことか
WW2では各国年産1万機2万機と大量に生産消費していた航空機も、今では3機落ちたら大事件ですからね
しかし制空権無しの軍事行動も同様に高コストになるように思いますが、アメリカは軍人の死というコストに耐えられるのでしょうか?
ww2の頃は駆逐艦1隻の費用で戦闘機100機ぐらい買えた
今や駆逐艦1隻の費用で戦闘機10機ぐらいしか買えない
管理人さん、コメント数20万突破!おめでとうです!
米国の軍事ドクトリンの修正はウクライナ戦争を見ていればまぁそうなるだろうなって当然の帰結だと思う
日本もウクライナ戦争で見て
対地攻撃をするのはシャヘドみたいな長距離ドローンを乗っけた鉄板を引いたタンカー
トルコのバイタクルTB2みたいなのを北海道の沿岸部に飛ばして上陸を阻止する
とか既存の兵器+ドローンを上手く組み合わせて新しい日本版A2D2を組み上げてほしいな
とりあえずシャヘド136をパクる所からスタートしてくれ
これじゃNATOがウクライナ戦争に参戦しても苦戦するのか?
するだろうな
だってどのNATO国家も大量にドローン供給できる能力がないもん
仰る通りですね。
現状は、中国からドローンのコンポーネントを輸入しないと、ドローンの大量供給は不可能です。
欧米の製造業、末端の部品・素材の自国生産は、非常に貧弱になっています。
Google創業者のエリックシュミットさんがWhite Storkという会社を作って一台400ドルのAI搭載自爆ドローンを生産するのを目指しているそうですね。
GoogleにはAIのソフトウェアの技術だけでなくてカスタム半導体を設計できる技術もあるのでテクノロジーでコストの問題を解決できるのか注目してます。
砲弾の生産力無し、ドローンの生産力無し、兵士少なすぎで政治的にも地盤がそんなに強くない大半のNATO加盟国は戦う以前の問題
砲弾の生産力がロシア北朝鮮>欧米で制空権維持できないならNATOでも駄目なんじゃ…
常に航空優勢確保するのが前提条件の西側ドクトリンが根底から覆されるのか…
航空優勢の確保に必ずしも拘らない旧ソ連〜ロシアのドクトリンはより合理的になったということか
意地の悪い言い方をすると。
米軍の砲兵隊も、3分で射撃準備終了して、1分射撃、4分で撤収をしないとですね。
あちこちの記事で、”遅い”と書いてありますね。
元がM109ですからね
もっと速くM1299を実用化するか、緊急にK9かPzH2000を入れるかしないとどうしようもないかと思いますよ
直ちに移動するにせよ装軌の走行煙は低空ドローンでモロバレでしょうし速度的にMBTほど速くもないので無人機火力を混合した対砲カウンターの前にはよっぽどの長射程化で圧倒するしかないですね。もしくは装輪車載化です。
しかしその際でも発射炎は消炎剤でどうもなりますが発射音はどうなんでしょう。電波逆探の続いて発射音逆探で追尾する徘徊無人機とか出てきそうな気はします。
海兵のライフルマンは全員が減音器付きになりますが火砲もIR秘匿性以上に音対策は必要だったりしそうな?IR検知は直接センサーの視野に入る必要ありますが音は地形に隠蔽され完全な潜在でも探知はできる。無人化という名の対戦車弾薬の巡航化でコレまでにない手法で遠距離火力戦闘は可能になりつつあります。
M109自走砲の射撃手順の動画を見ていたら、
手順の最後に発火用の雷管を手で、閉鎖機に挿入してました。
発射薬も薬嚢に入っているみたいです。時間がかかるわけですね。
あれでは機械装填は無理なように思えます。
発射薬と雷管だけでも更新は出来ないものでしょうか、と思ったり。
現在のウクライナは1945年の日本と同じで国家経済が破綻しているのにマスコミは報道しない
ロシア軍の連日のミサイル爆撃で軍需工場、兵器燃料保管施設、軍基地などが被害を受けており
米NATO諸国からバラバラに供給された兵器類はメンテナンス・修理が困難で稼働率が低迷し
西部の地下工場の様な施設で生産可能な>中国からドローンのコンポーネントを輸入して自爆ド
ローンに組み立てる程度、停戦すれば莫大な借金が返済できず政権崩壊まで戦い続けるしかない
第二次世界大戦のレンドリースとかでアメリカの生産力が最強だと思ってた。
いつからロシアに砲弾の生産力劣ってたの?
コストの問題で民生品の工場がどんどん中国に流出する状況だったんですから、軍需生産も同様にコストの問題に直面するのは当然ですし、それまでの生産規模を維持できないのは当たり前です。
いつからと言われても正確なデータはないですが、少なくとも最近急に逆転したわけではないのは明らかでしょう。ずっと前から工業生産力では負けていましたよ。
弱い敵とばかり戦いすぎたんじゃないですかね。常備軍、在庫兵器だけで戦って圧倒できる。互角の兵器で撃ち合って大量に消耗する経験は長いことない。
結果余剰の兵器や生産力は無駄になり、産業はサービスや金融、ソフトウェアに移行する。工場を廃止してしまい生産できなくなり、金はあっても物がない。
第一次世界大戦で世界最大規模の航空機生産をほこったフランスが戦後に航空機産業を縮小して壊滅状態となり、ドイツに瞬殺された光景と被って見えて不吉です。
砲弾は陸軍。
アメリカ空軍が強いので、陸軍が進む前に、空爆で、兵器も弾薬庫も破壊される。
その結果、陸軍が膨大な砲弾在庫。生産能力を持つことは無駄となります。
強すぎる。
対して西側に劣る北朝鮮、ロシアは制空権獲得は困難なので、相手の制空権阻止にパワーを振ります。そしてローテクの砲弾に資源を投入する。
世論を気にするNATOによる介入では、陸軍投入はハードルが高い。
対照的に、
人的消耗が少ない空爆、ミサイル攻撃、コストも安いドローンなどは気楽。リビア介入などは大きな議論や反発もなしに、お気楽で行われるようになった。心理的抵抗感が減った。
NATOが航空に傾いた。そして、それなりに上手くいっていた。
砲弾ではないですが、スティンガーは分かりやすい事例かと。
アメリカ政府・企業が、生産需要による合理化を徹底すれば、アメリカ本土を攻める外国軍は考えにくいため(地政学の関係)余剰のものはリストラされていきます。
ロシアは、中国のような大国が隣国にある・多数の国と接している・大陸国で陸軍重視、こういった事情があるため生産ラインを残しています。
>それを表すようにアメリカ国防省は18年間、新規のスティンガーを購入していません。生産需要が無いなかメーカー側もスティンガーの生産ラインを閉じ、他の製造に充てることになります。
(2022-07-06 スティンガー対空ミサイルの量産は少なくとも1年待ち ミリレポ)
ドローンの発展状況と、日本のいわゆる原付の世界市場への拡大が被さって見えます。
うまく言語化できずもどかしいですが、
今はウクライナ戦争という局地が軍用ドローン使用の中心ですが、ここで発展して
どこかで安価で訓練最短で確実に使える武器として、世界市場に飛び出していきそうな気がします。
管理人さん20万コメント目を通したんですね。いつもお疲れ様です!!
こちらこそ管理人さんの精力的な活動と努力に感謝します。
アメリカ陸海空軍と海兵隊の『低空』を守るドローンを用意するだけで、数も種類も予算も膨大になりそうな気もするが。量産効果でどうにかなるんだろうか。
低空の制空機が生まれるのも時間の問題でしょうね
ヒト程の大きさのドローンがその役を務めるかもしれないし、複雑な地形込みで低空域を認識できる地対空ユニットが務めるかもしれない
軍オタになった若い頃、既に制空権はWW2までの概念、今は航空優勢と言うとか賢しらに言っていた記憶がありますが、20年続いた非対称戦の米空軍にとってはヌルゲーだった時代で制空権があった時代の気分が復活していたんでしょうね。
ここいらで大国中露相手に制空権を保持することのコストに注意喚起するのは妥当でしょう。