欧州関連

ウクライナ軍の自爆型USVはユーリー・イワノフに到達、ロシア側の主張を否定

ウクライナメディアの編集長は25日「黒海艦隊のユーリー・イワノフに自爆型USVが到達したことを示す動画」を公開、爆発で損傷を与えたのかは不明だが、攻撃を仕掛けてきた3隻全てを「破壊した」というロシア側の発表は否定された格好だ。

襲撃を受けた場所がボスポラス海峡に近いため、黒海を航行するロシア海軍の艦艇は緊張を強いられるだろう

ロシア国防省は25日「ウクライナ軍のUSV3隻が黒海艦隊のユーリー・イワノフ(信号情報収集艦)に攻撃を仕掛けたものの失敗に終わった。艦艇搭載の武器で全て破壊された」と発表、14.5mm機関砲でUSVを破壊するシーンを公開して「この艦艇はトルコの排他的経済水域内にある海底ガスパイプラインの安全を確保する任務を遂行していた」と述べていたが、別の動画が登場して注目を集めている。

ウクライナメディア「Obozrevatel」のオレスト・ソカール編集長は25日、艦尾方向からユーリー・イワノフに到達するUSVの動画をTelegramに投稿し「国防省情報総局のUSVがユーリー・イワノフを損傷させた。この動画がそれを証明している」と主張、確かに15秒の動画はUSVがユーリー・イワノフに接触したことを示しているものの「自爆に成功したのか」「ユーリー・イワノフに損傷を与えたのか」までは不明だ。

ロシア側のチャンネルはネット上に「攻撃を受ける前のユーリー・イワノフを映した映像」や「他の艦の映像」を投稿して「ユーリー・イワノフは無傷だ」と主張しているが、まだ真実は誰にも分からない。

因みに現代の艦艇は近接火器の数が少なく、異なる方向から同時に複数隻で接近されると対処時間が足りなくなって突破を許す可能性があり、しかも襲撃場所がボスポラス海峡に近いため自爆型UUVの到達範囲は想定よりも広く、黒海艦隊の艦艇はどこを航行していても自爆型USVの接近に警戒する必要がある。

出典:@BrennpunktUA

もし最近公開された海中を徘徊する自爆型UUV「Toloka」が投入されれば、黒海艦隊の運用はさらに制限を受けるだろう。

関連記事:ウクライナが海中を徘徊する自爆型UUVを公開、自爆型USVの合理的進化
関連記事:ロシア領ノヴォロシースク港で爆発、ウクライナ軍が自爆型USVで攻撃か
関連記事:クリミアで発見された謎のUSV、ウクライナに提供された無人沿岸防衛艦?

 

※アイキャッチ画像の出典:Орестократія

アルメニア首相、アゼルバイジャンと領土の相互承認で合意したと発表前のページ

米国のミリー議長、ウクライナへのF-16提供コストは10機で20億ドル次のページ

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コメント

    • ブルーベレー
    • 2023年 5月 26日

    ここんとこ数週間チクチクドローン攻撃うけてますね
    比較的安全に行動できてるのはキロ級潜水艦くらいのもんですかね?

    現地のロシア軍内でも黒海艦隊の肩身狭そうだなぁ陰口叩かれてそう

    17
      • 戦略眼
      • 2023年 5月 26日

      装備を陸揚げされそうだね。

      2
        • 鳥刺
        • 2023年 5月 26日

        水兵を陸に上げて海軍歩兵でしょう(笑)

        まともな水上艦艇が一隻も無い相手のハラスメント攻撃で消極的な行動を強制されるロシア黒海艦隊…本当に、沿海域での海軍の作戦行動はこの戦争以降様変わりしますね。

        2
    • たぬき
    • 2023年 5月 26日

    夜間じゃなくてわりと明るい(早朝?)時間に襲撃してるのね

    迫ってくるのがはっきり見えるぶん心臓に悪そう

    10
    • 山田さん
    • 2023年 5月 26日

    このサイズの自爆ドローンで3000t級の船が轟沈するとも考えにくいので、たぶん中破or大破、船体後部や舵の破損は確実。
    そのうち曳航中の映像なり、炎上中の映像なりを、NATOが嬉々として出すはずなので、結論はそれ待ちになりそうですね。

    28
    • NHG
    • 2023年 5月 26日

    これから有人船にはCIWSのような近接哨戒砲が装備されるようになり特攻UAVは半潜水艦→潜水艦と進化して、有人船はそれに対応するために対潜ヘリ型UAVを駆使するようになって、攻撃側はそれに対応するために対ドローン・イージスシステムを搭載した無人艇を併用するようになって・・こんな感じになる?

    4
      • 月虹
      • 2023年 5月 26日

      現状、海自の護衛艦の多くはソマリアの海賊対策など海外派遣や不審船事案などを契機としてM2重機関銃を設置できるシールド付きの銃座を設置して必要に応じて射撃要員を配置しています。2019年に就役した「しらぬい(あさひ型護衛艦2番艦)」に装備庁の開発した「水上艦艇用機関銃架(遠隔操作型)」が試験的に搭載され、もがみ型護衛艦では標準装備になっているので近接防御火器として今後の護衛艦に標準装備されていくでしょう。

      対潜ヘリ型UAVについては「MQ-8B ファイアスカウト」があり、米海軍が沿海域戦闘艦(LCS)に搭載して試験運用を行っています。ただペイロードが272kgなので重量が320kgある海自の97式魚雷および12式魚雷の携行は厳しく、対潜戦に利用するには難しい。米海軍もペイロードの小ささから後に有人機であるベル407の機体にMQ-8Bのシステムを組み込んだ大型の無人機「MQ-8C」を開発。MQ-8Cはペイロードが1338kgなので対戦魚雷も携行可能になっているほかに機体の大型による速度や航続距離なども増えているため、米海軍ではコンステレーション級フリゲートに搭載する予定になっています。

      9
        • NHG
        • 2023年 5月 26日

        いちおう補足
        今回のような自爆ドローンが半潜水艦/完全潜水することで発見されずらく、それを撃破するためにどうなっていくかって想像です
        小型の艦艇がある程度の遠方で目標補足して潜航して近づいてきたら、現行のセンサーや目視による監視の網をすり抜けそうだなと

        地上から空を低速で飛ぶ小型ドローンを既存のレーダーで見つけづらく四苦八苦してるように、海でも同じような対策と対応のイタチごっこが繰り広げられていくだろうなって(そして形は変われど既存の兵器がたどった道のりをたどりそうというお話です)

        3
    • 58式素人
    • 2023年 5月 26日

    艦船は、船尾側に隙があるのでしょうか。後甲板は作業スペースが多いですし。
    こういう突撃艇を防ぐなら、WW2に戻って(笑)、
    イスパノエリコン20mm単装機銃みたいなものを多数並べるのでしょうか。
    少なくも日本の雷撃機には十分であったと聞いています。
    突撃艇の動き方は雷撃機とは違うでしょうが、距離を詰めないと
    ならないでしょうから、直線的に動きそうな気がします。
    RWSがするべきでしょうが、別に有人操作でも良さそうな気もします。
    砲側にIRセンサーとレーザー距離計一体の照準器をつけて。

    1
      • 第十軍団
      • 2023年 5月 26日

      そのそもコール事件後に自爆ボート対策でM2ブローニング積んでなかったっけ

      3
        • ヴェルダン
        • 2023年 5月 26日

        艦載の機関銃類に改めて力を入れた契機は確かにコールの自爆テロ事件とソマリアの海賊対策等だったと思いますね。
        米海軍の広報動画とかでもちょくちょく海兵の兄ちゃん達がM2やミニミで練習標的にぶっ放してフォーーと叫んでいるのよく見かけますし。

        14
      • ネコ歩き
      • 2023年 5月 26日

      撃破された映像の航跡では被弾率低減のためか不規則に蛇行しながら接近してますね。
      記事にある通り、ユーリー・イワノフは信号情報収集艦で、最大速力はせいぜい十数ノットです。
      14.5mm海洋タンブラー機関銃装置と称する対水上兵器を前楼前方左右と後楼左右に計4基搭載していますが、画像では手動操作のように思われます。

      このような自爆型USVだと、かなりの数を同時投入できなければ、低速で対抗武装の貧弱な艦船にしか効果は望めないように思います。
      その意味からも、自爆型UUVに発展するのは必然なんでしょう。

      9
        • チェンバレン
        • 2023年 5月 26日

        なるほどガチの戦闘艦艇でないのなら、低速な無人艇の到達を許したというのもわかります

        しかも信号収集艦の大事な仕事を邪魔できる
        撃破に至らなくても、行動を制約したり緊張を強いたりすることができる

        4
    • ななし
    • 2023年 5月 26日

    ウクライナ側の動画が無音なのにロシア側の動画は音が凄いうるさいのが印象的ですね
    まるで都合の悪いことを大声で誤魔化す人を見てるみたいです

    8
      • ppap
      • 2023年 5月 26日

      基本的に宇露双方が上げる戦果動画は音楽をつけているのが非常に多いので不都合がどうのではないと思います
      スラブ圏独特の文化と言えるものです

      18
    • XYZ
    • 2023年 5月 26日

    陸上ではドローンや精密誘導砲弾&ロケット、SAMの影響で塹壕に榴弾砲が予想外の活躍をしているように、海上でもこのような自爆USV対策に廃止されてしまった水雷防御網が復活するかも??

    魚雷と違い自爆USVは軽量ですから水雷防御網ほど重い物ではなく、網程度で突入を防げそうな気がします。

    1
      • 名無し
      • 2023年 5月 28日

      >水雷防御網が復活するかも??

      損傷した場合スクリューに絡む可能性がある欠陥を無くさないと、恐らく復活は難しいと思います。

    •  
    • 2023年 5月 26日

    次世代艦艇はWW2後期の艦艇ばりにハリネズミと小型魚雷くらいは防げる喫水線以下の防御がつくのかな?

    1
    • 折口
    • 2023年 5月 26日

    えらい迎撃戦闘がショボいなと思って調べたら、ユーリー・イワノフは電波情報収集艦なんですね。日本でいうと音響測定艦や海洋監視艦に該当する非武装の軍艦でしょうか。開戦後から黒海上空に展開し続けている西側のISR機やNATOのレーダーの情報を収集するために出張っていたということなんでしょうね。その種の艦艇なら即応できる武装がKPVしかなかったのも分かる話ではありますが、過去何度もUAVによる襲撃が発生しているのに護衛もなく行動していたのはどうなんですかね…。

    たぶん、電波情報収集のためのパトロールは開戦後からずっとやってたんでしょうね。その間もウクライナ側からは何の手出しもされなかったので昨日まで続けてしまったけど、それはバレてなかったという事ではないと。映像だとウクライナ側はスクリューを狙っているようだったので、軽微でも航行に支障が出る損傷を負わせて定期パトロールのスケジュールに穴を開けるのが狙いなんでしょうね。攻勢開始のための下準備の一つだったりするのかな。

    24
    • ななし
    • 2023年 5月 26日

    双方の動画やこれまでのUSVの戦果を見る限り、群狼戦術であっても航行中の艦艇に迎撃を潜り抜けて突入攻撃を行うのはそこまで成功率高くなさそうに見えますね。それでも抑止力にはなるし最新型の情報収集艦を中破以上に追い込めるならコスパは十分なのでしょうが。
    魚雷型UUVも今後出て来るようですが、航続距離や待機時間を考えると中型以上のサイズのUUVに魚雷積んで待ち伏せ攻撃を行うタイプも出てきそうだなと思いました。

    3
    • kitty
    • 2023年 5月 26日

    写真で置いてある机の合板の天板部分まで、パーツに見えたのは、ダンボール・木製UAVの記事を見たせいなのかゼルダのやり過ぎなのか…。

    1
    •  
    • 2023年 5月 26日

    数年後の海戦は震洋と回天に埋め尽くされてそう

    4
    • zerotester
    • 2023年 5月 26日

    映像見ましたがすごいですね。ゲームのようだ。
    接触する少し前に動画は切れていますが、撮影してエンコードして送信するのに数百ミリ秒のラグはあるのでこんなものでしょう。

    知り合いがこういう無人艇を民生用に開発していますが、コストは安いので大量投入できればかなりの嫌がらせになりそうです。

    4
    • けい2020
    • 2023年 5月 26日

    この手の海上無人艇って、海面1cm以下の水没船ではダメなのかな
    無人なら難易度は低い上に、ステルス性の大幅上昇、被弾性の低下、喫水下に対する攻撃力増加

    水没させることによる速度低下とかもあるでしょうが、見つけられにくい利点を大幅に超えそうな
    潜水じゃなくて水没なら潜水艦みたいな複雑な仕組みも要らず、無人なら安全性は最低限で良いと

    1
    • チーズ
    • 2023年 5月 26日

    こうゆう自爆型USVにハイドラロケットやヘルファイヤ1発でも武装して遠隔発射できたら面白そうですね

    1
    • VRTG
    • 2023年 5月 26日

    この程度なら暗視とスタビライザーの付いたそれなりのRWSなら防げますね
    有人の機銃は命中率、全天候性、破片を含む被弾時のリスク、射界、射手の常時配置を考えると普通は避けるでしょう。

    M61ファランクスのBlock1B以降ならサーマル追加で迎撃可能ですが、対水上だと船体の影響で射界が制限される範囲がそれなりにあったりします。

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