Times紙は国際戦略研究所の指摘を引用して「ウクライナ軍が春攻勢を阻止するため特定地域に分散していた予備戦力を集結させればロシア軍の『魅力的なターゲット』になり、これを攻撃するため高価な航空機を失うリスクは許容できる」と報じている。
参考:War in Ukraine: Why Russia has failed to conquer the skies
ロシアは航空機を空飛ぶ大砲=地上部隊の付属物として見なしているためシンプルな航空作戦を好む
西側の諜報機関は「ロシア軍が国境付近に航空機とヘリコプターを集結している」と明かし、オースティン国防長官も「ロシア軍の地上部隊はかなり消耗しているため戦術を航空作戦に切り替えてくるかが焦点で、ウクライナ人が生き残るには出来るだけ多くの防空システムと弾薬が必要になるだろう」と述べ、NATOの外交官も「ロシアは航空戦力の80%以上が利用可能な状態で航空作戦の準備をしている。恐らくロシアは空からの攻撃でウクライナの防空システムを無効化したいのだろう」と言及していた。

出典:Soldatnytt/CC BY 2.0 NASAMSランチャー
一方で「ロシア軍の航空戦力がIRIS-T、NASAMS、HAWK、アスピーデ、SAMP/T、パトリオット、シースパローなどを統合したウクライナ軍の防空システム群を制圧できるのか?」という疑問の声もあり、仮に高価な航空戦力を投入しても「戦場に決定的な違いは作り出せない」という見方もある。
この問題について英国の国際戦略研究所(IISS)は「この戦争でロシアは優勢を獲得していないものの負けているわけでもなく、ロシア軍の戦闘能力が低下しているのは地上戦力のみで航空戦力はほぼ無傷だ。ウクライナ軍がロシア軍の春攻勢を阻止するため特定地域に分散していた予備戦力を集結させれば『魅力的なターゲット』になり、これを攻撃するため高価な航空機を失うリスクは許容できる可能性がある」と指摘しているのが興味深い。

出典:Минобороны России
ウクライナのレズニコフ国防相は「新たな武器や装備が到着して反撃準備が整うのは数ヶ月後だ」と言及しているためロシア軍が先に動く可能性が高く、この攻撃が大規模であるほどウクライナ軍が動かす予備戦力の規模も大きくなり、防空システムの保護がもっと届きに前線に規模の大きな地上戦力が出てくると「ロシア軍にとって航空戦力で無力化する好機だ」という意味だ。
つまり国境付近にロシア軍が航空戦力を集結しているのは「西側製防空システムが待ち構えるウクライナ支配空域に侵入して航空作戦を実施する」ためではなく、春攻勢阻止に投入するであろう戦略的予備を前線低空域で叩くためで、もしウクライナ軍が前線上空をカバーするため高価な防空システムを移動させてくれば砲兵部隊にとって「魅力的なターゲット」になり、戦闘機で前線上空をカバーしようとすればR-37Mを搭載したMiG-31BMにとって「魅力的なターゲット」になるかもしれない。

出典:Andrei Shmatko/CC BY-SA 4.0
戦場にはイレギュラーがつきものなので上記のように都合よく事が進むとは思えないが、あるアナリストは「西側とロシアでは航空作戦に対する戦闘教義が根本的に異なり、ロシアは航空機を空飛ぶ大砲=地上部隊の付属物として見なしているため大規模で複雑な航空作戦より少数によるシンプルな航空作戦を好む」と述べていたことがあり、前線の低空空域に限定された航空作戦の拡大なら防空網制圧ミッションが不要なため、何となくロシアらしい戦術と言える。
まぁIISSの指摘が現実のものになるかはもうすぐ判明するだろう。
追記:ノルウェー議会がウクライナに対する複数年支援プログラムを可決、今後5年間で750億ノルウェー・クローネ=約1兆円に相当する支援をウクライナに提供し半分は軍事支援なるらしい。
関連記事:ロシア軍が国境付近に航空戦力を集結中、ウクライナへの防空システム供給が急務
関連記事:ウクライナ人パイロットは数ヶ月でF-16を飛ばせる、但し飛ばせるだけ実戦は別
※アイキャッチ画像の出典:Dmitry Chushkin/CC BY-SA 3.0
ロシア軍は、勝てなくても負けなければよい、という構えなのですね。
ウクライナが戦闘機を求めていたのは、こういう事態を見越してのことでしょうか。
ウクライナ軍が訓練に時間がかかると言われながらも西側の戦闘機を求めているのは
ロシアのやり方をよく知ってるからで、複雑な航空戦術を行うよりも
手薄な防空システムをカバーして、ロシア空軍を牽制したいと言う意向が強いのかもしれませんね。
とはいえ機密の関係の関係でたぶん提供できるのは、旧型のF-16A/Bあたりになりそうなんだよな。
何らかの方法で、Mig31を墜とす算段が必要なのでしょうね。
ついでに、Tu-22M3/95/160もでしょうか。
いずれも領空から出てこないので、基地の近くで、離着陸時を狙うしかないのでしょうか。
捕獲したロシア製のMANPADSを使うことになるのでしょうか。或いは、ボカンか。
R-37Mを迎撃できれば良いのですが、早期発見して逃げるしかないのかな。
単体スペックでF-15Aクラスがいるよね。>MIG-31に対抗
ロシア空軍のドクトリンは近接航空支援に特化したものだと認識していたので、よく言われる制空権がどうだの、防空網がどうだのと酷評されていることに果たして本当にそうなのだろうかと首を傾げていました。
やはりあれは米軍または自衛隊の色眼鏡で見た評価で、ロシア空軍のドクトリンを加味していなかったものなのか。
それともそのドクトリン自体が時代遅れなのか。
ロシア空軍の作戦形式の基本は、もちろん第二次世界大戦時のIl-2-2シュトルモヴィク、襲撃機、
「空飛ぶ戦車」
に象徴される
「全縦深同時制圧」
であり、今はSu-25がまさにIl-2の後継ですが、他にsU-25よりも航続距離の長いSu-24や、Su-34もあり、これらは飛行場や、橋の攻撃などに使われ、Pe-2などの後継といえます。さらにはより航続距離の長いTu-95や、Tu-160、Tu-22などもあり、これらはより戦略的な任務に使われます。
近接航空支援に特化した、というのはかつての
「前線航空軍」
も話ですが、たとえばアメリカ軍でもアメリカ海兵航空隊などは、やはり同じように近接航空支援に特化しているわけで、航空自衛隊などは対艦攻撃を重視した装備や編成になっており、アメリカ海軍とアメリカ空軍でも当然いろいろ違います。
今のロシア空軍は、かつては防空軍でしか使っていなかったMiG-31を、今はウクライナにおける野戦防空にも使っているわけで、そのへんはかつてのソ連空軍と同じとは決して言えません。もちろん装備している極超音速空対空ミサイルなども、ソ連空軍時代にはなかった装備であり、戦術の前提も非常に大きく変化しているわけです。
そもそも今のロシア空軍には、前線航空軍と防空軍という区別はなく、実際にMiG-31が前線における野戦防空に使われています。
むしろMiG-31や、Su-35による極超音速空対空ミサイルの使用を前提としていない、考慮していない米軍や航空自衛隊、ウクライナ空軍、NATO空軍の戦術や分析、研究の方がすでに時代遅れの形骸となっている可能性も非常に大きいのです。
開戦から1年経って、碌な戦果もあげられていないロシア空軍が西側空軍より進んでいるというのは無理があるでしょう。
西側の航空戦術を取り入れて近代化を目指すも金やノウハウの蓄積が足りないせいで不完全な状態なのが露呈しているのが今のロシア空軍です。
昨年にイランからドローンのライセンスを取得し、大量生産体制が今年度前半
にも始まるので、わざわざ高価かつ、人的被害もある航空兵器を積極的に活用
するのはどうでしょう。これは欧米がF16を円滑に供与する為の地ならしの広報
なのでは?詳しくないのですが、高度によって使い道もあるということですか?
ミサイルもドローンとのハイブリッド同時攻撃にしているように、やるとしても
ドローンと同時の飽和攻撃だと思っているのですが。
Shahed136はプロペラ推進の低速ドローンであるため、防空戦力を持たない広域の民間インフラに対しては有効ですが、防空戦力を内包しているであろう軍の戦力に対してはよほど大量投入するのでもない限り決定打にはなりにくいかと
今使えない兵器の話をしても仕方ないのでは?
大攻勢が始まりつつあると言われてる中、ほぼ無傷な空軍を使うべき時はまさに今じゃないですかね。
未だにハイマースを上手く叩けないロシア軍にそんな気の利いた空爆作戦が出来るとは思えないけど・・・
てか出来ないからこんなに苦戦してるのではなかろうか?
空爆と言ってもS-13ロケット弾の投射量を引き上げたりするだけじゃない?
戦線も膠着してるしロシア空軍も踏み込んでも大丈夫な地域or撃墜される危険空域の判別に慣れてきた感じがするし。
ソ連時代から使われてる無誘導兵器なら量産出来るはず。
無理をしたら旗艦モスクワのときみたいにウクライナ軍に華を持たせる結果になりゃしませんかね。それを恐れて出してこなかったんでしょうけど、今を逃したらもう使い道がないかな。
開戦時にSEADっぽいことやって失敗してたし大規模な航空作戦をやる能力が無いから小規模な航空作戦しかできないだけなのではと思う
ここ1年のロシア空軍の戦いぶりを見ると、湾岸戦争やイラク戦争でアメリカ軍が見せた敵の防空システムを航空戦戦力で叩く芸術的な防空網制圧がロシア空軍にできるとは思えないので、どうしても損害覚悟で身をさらして防空システムを誘引してからの空地一体での防空システム制圧を考えているのでしょうか。
となると、ウクライナ軍も必死で弾薬の在庫を気にせず対抗してくると思われるので、成功しても失敗してもロシア空軍は今後10年は立ち直れないほどの損害を出すのではと危惧するのですが。
開戦からこっちSEADは出来ず地上支援もなおざりで、やることと言ったら国境付近からチョロチョロCM垂れ流すだけだった航空宇宙軍が、今さら何をするのやら。
支援をするべき地上部隊がボコされて消耗した後になってから「損害を許容してでも積極的に活動する」なんて言ってもなぁ。
まさか、旧海軍のような死に華咲かせようなんてヤケクソではあるまいけど…
前線の陸上部隊ですらMANPADSを装備して最低限の防空能力を持っている以上
低空での近接航空支援は楽な任務ではないでしょうね
ロシアおなじみの縦深攻撃、80年前から進歩してない…というのは今更ですが。
ソ連式のSEADは、事前偵察で判明した防空システムに対し、レーダーをARMで止めた隙に通常爆弾等で叩くDEADが基本です。
米軍式の、攻撃隊に随伴して一時的に防空網を強制停止させ、目標の破壊を優先する方式とは根本から違います。
成功すれば防空システムを破壊できるので、米軍式と違って高価なARMの消費が少ないのは利点でしょう(最近は米軍もDEAD中心ですが)。
ソビエト崩壊以降のSEAD関連には、Su-24がSu-34に更新されている事を除き、新要素は見当たりません。
開戦当初、100~200発程度のARMを使用したものの戦果は乏しく、備蓄を使い切ったという観測すらあります。
確認はできませんが、ソ連式の装備・訓練のままで、ARMの備蓄もそれを前提とした少数だったんじゃないでしょうか。
湾岸戦争やコソボでHARMを1000~2000発も使用した米軍が贅沢すぎるだけかもしれませんが。
元々の必要数が少ない以上、生産能力は小規模のはずですが、ARMの備蓄は回復したんでしょうか?
防空システムが砲兵の射程まで前進してこなかったら?
事前偵察を前提にした装備・訓練しかない部隊が、未知の状況で臨機応変に対応できるか?
中/長SAMを制圧できなければ低空侵入しかありませんが、それをやって結構な損害を出しましたね。
多少の損害は覚悟しているでしょうけれど、ウクライナの戦力次第では酷いことになるでしょう。
開戦劈頭にホストメリ空港までヘリ・輸送機を飛ばしたようにロシアも一時的にSEADは出来たと思うんだよ
その後ウクライナが戦力回復したのと西側から情報貰う事で自前の捜索レーダーへの依存度を下げる事ができて結果防空網の制圧を継続できなかったって事ではなかろうか
とはいえ広いエリアで継続的にSEAD/DEAD出来るのって各種ISRにWW機やARMの数考えても米軍だけだと思うの
実際はロシア空軍に限らず、アメリカ空軍でも完全に防空制圧を続けることなどは不可能ということでしょう。
コソボでは、ステルス爆撃機であるF-117ブラックホークも結局、セルビア軍の地対空ミサイルによって撃墜されてしまったわけです。
湾岸戦争でも、結局アメリカ空軍が完全にイラク軍の地対空ミサイルを制圧できたわけでなく、A-10やF-16が撃墜されています。
構造的に炸薬の少ない空対地ミサイルで、破壊できるのは結局レーダーのアンテナだけとも言われ、アンテナを交換するとまた使えるようになることも多いというのです。
レーダーも発信を止めれば探知できなくなったり、結局破壊できたのか破壊できなかったのかよくわからないことも多いのです。ただの無線機をダミーのレーダーとして使うこともあります。
以前ウクライナが謎の長距離ドローン攻撃したとき、ロシアは前線の防空システムを首都防衛用にさげ、国境近くの空港の航空機も奥地に撤退させられたと思うんだけど、ロシアが再び航空機を前線に戻すのは、これの対策ができるようになったってこと?
大量のドローン、大量のミサイル、そして航空戦力、飽和攻撃されれば
いかに防空システムが優れていようと対空ミサイルの数以上の目標は防げません
その辺りが心配なのですが
ウクライナの対空ミサイルの数も正確には読めませんので
急に全力一斉攻撃は行わないと思います
しかし短期間の間にドローンやミサイルの波状攻撃を行って
ウクライナの対空ミサイルの残弾を探り、もしも対空ミサイルが尽きたと判断すれば
航空戦力をバンバン出して来るかも知れませんね
これは印象というか偏見なんですが、海軍がそうであるように空軍も一定の損害を見込んだ上での攻撃を好まない、為政者側もそこまでは求めないのではという気がします。このあたりは外野からすると理解し難い部分ですけど、歩兵の万単位の損耗は気にしないけど艦隊や航空隊の損失には敏感になるような器質をロシアからは感じます。スラヴァ級モスクワ撃沈後の黒海艦隊や3月以降の空軍の消極的姿勢は、プーチン氏の権力体制や戦争遂行からすれば独断では実施し得ないもので、プーチン氏や国防軍も了承の上で機材の温存を優先しているのではと自分には感じられます。
忘れてはいけないのが、航空機と言うものは撃墜されなくても、ただ飛んでいるだけでもメンテナンスが必要で、部品の交換が追い付かなければ稼働率はどんどん下がっていきます。
西側から制裁を受けているロシアは工作機械の輸入やメンテナンスも止められているため航空機の部品の調達に苦労しており、去年の夏ごろには民間機ですら西側からパクった旅客機を共食いで整備している状況が報道されていました。
元々ロシア製戦闘機は寿命を犠牲にして性能を上げていたと言われ、ロシア国内でも度々墜落事故を起こしていることから、温存していたとしてもロシア空軍の実情は厳しいものがあるとみております。
ただそれを言ってしまえば、今のウクライナ空軍の主力戦闘機は、Su-27、MiG-29、Su-24、Su-25と、ことごとくが旧ソ連製戦闘機であり、条件はロシア空軍と同じか、明らかにそれ以下であり、ウクライナ空軍の実情は、ロシア空軍以上に厳しいのは当然です。
戦場における強弱というのは、相対的に決まるものであり、ロシア空軍戦闘機の稼働率が低くても、ウクライナ空軍戦闘機の稼働率がそれよりも低ければ、結局ロシア空軍戦闘機の方が優越する、有利になるということになります。
また中国や、インド、北朝鮮などはロシア空軍と同じSu-27や、Su-30、MiG-29などを使っており、それらの国々から部品が調達されるということも考えられます。
陰謀論寄りから眺めれば、結果としての航空戦力の損害増加はロシア弱体化をよろこぶ勢力の望み通りなんだが、
ここでロシアが勝つほどに長期的には衰退に向かっていくのをプーチンは良しとしているのか