現在入手可能な西側製戦闘機の中で最も高価だと言われるタイフーンの調達単価や導入費用は如何ほどなのだろうか?
1億1,300万ドルという数字が純粋なタイフーンの調達単価に最も近いか?
NATOに加盟する英国、ドイツ、イタリア、スペインの4ヶ国によって開発されたユーロファイター・タイフーンは米国のF-22やフランスのラファールと同時期(1980年代前半)に開発がスタートしたにも関わらず、冷戦終結による国防予算削減の影響や仕様に対する要求がバラバラで足並みを揃えるのに時間がかかり、各国が量産機(トランシェ1)を初めて受け取ったのはドイツとスペインが2003年、イタリアは2004年、英国に至っては2006年になってからだ。
ただ4ヶ国の開発国が予定通りタイフーンを導入、オーストリア、サウジアラビア、オマーン、クウェート、カタールの5ヶ国から受注を獲得したため累計生産台数は571機(2020年10月)に達しており、トランシェ3を発展させたトランシェ4が最近登場してドイツが正式に発注(38機)するなど今後もタイフーン開発と量産を継続してく意思を示しているが、現在入手可能な西側製戦闘機の中で最も高価な調達コストのせいで開発国以外へのセールスは低調だと言わざるを得ない。
特にお膝元のNATO加盟国や欧州諸国では人気がなく、開発国以外の欧州で唯一タイフーンを導入したオーストリアでは高額な運用コストが原因で機体寿命が十分過ぎるほど残っているにも関わらずグリペンへの置き換えが検討されており、実質的にイスラエルの質的軍事優位性(Qualitative Military Edge:QME)を維持するという制限のせいで米国製の最新戦闘機導入が叶わない中東にしか需要を見込めない(※)のが最大の問題点だと言える。
補足:トランプ政権によるイスラエルとスンニ派の関係改善に伴い中東諸国へのF-35A輸出をイスラエルがが容認したため、オイルマネーによって比較的資金に余裕がある中東の需要をF-35Aに持っていかれる可能性があり、バイデン政権がトランプ政権の武器輸出政策を堅持すればタイフーンの海外セールスは非常に厳しくなるだろう
ではセールスを阻害しているタイフーンの調達単価はいったい幾らなのか?
2009年に英国、ドイツ、イタリア、スペインの4ヶ国が112機のトランシェ3共同調達に署名した際の契約金額は約127億ドルなので1機あたりの導入費用は1億1,300万ドル(約116億円)ということにるが、この契約は112機分の機体と241基分の搭載エンジン(スペアエンジン17基を含む)のみをカバーした契約なので純粋なタイフーンの調達単価に近い数字だろう。
次は海外輸出した際のタイフーンが幾らになるのかを見ていくが、機体+パイロットの訓練+弾薬+保守部品やメンテナンスサービスが含まれたパッケージ金額である点とトランシェ3とバージョンが異なるため飽くまで参考程度の比較として考えてほしい。
- オーストリア:契約総額17.5億ドルでトランシェ1を15機導入、1機あたりの導入費用は約1.2億ドル(約124億円)
- サウジアラビア:契約総額139億ドルで72機のトランシェ2を導入、1機あたりの導入費用は約2億ドル(約207億円)
- クウェート:契約総額90億6,200万ドルで28機のトランシェ3を導入、1機あたりの導入費用は約3.2億ドル(約330億円)
各国で導入費用がここまでバラけるのは条件が天と地ほど異なるためで、オーストリアの導入費用が安価に抑えられているのはオフセット要求もなく短距離空対空ミサイル「IRIS-T」を数発しか同時購入してしないためだ。
逆にクウェートの導入費用が高価なのはエアバスによるクウェート政府高官への賄賂や導入過程で大規模な国家予算の不正流用が行われたせいで「あまりにも馬鹿げた契約」だと問題になり現在調査中で、オマーンとカタールの契約総額には訓練機ホークの導入費用が含まれているため実質的にサウジアラビアの導入費用を参考にするしかない。
以上のことから開発国のタイフーン調達単価は約1億1,000万ドル前後だが、これは共同調達によって112機を一括発注しているためで個別にタイフーンを発注すれば調達単価はこれよりも高価になるのはほぼ確実で、実際ドイツが38機(単座型31機/複座型7機)のトランシェ4を単独発注した際の契約金額は54億ユーロなので1機あたりの調達単価は約170億円(トランシェ4の開発費用が含まれているのかもしれないがトランシェ4自体の内容が不明なのでハッキリしない)と高騰している。
さらに海外輸出した際のパッケージ金額はマトモな参考例が1つしかないので何とも言えないが、1機あたり約1.2億ドル(約130億円)~約1.5億ドル(約162億円)前後の導入費用で調達できるF-16Vと比較すると割高で、政治的に米国との関係に問題がなく約2億ドル前後の導入費用を負担できるなら第5世代戦闘機F-35Aに手に届くためタイフーンのセールスは厳しさを増すばかりだ。
ただイスラエルのQME維持のため米国製の最新戦闘機導入が不可能な中東諸国や安全保障を米国に依存するのを嫌い武器調達を意図的に多様化させる国(エジプトやインドなど)も存在するため、今後もタイフーンやラファールは一定の存在感を維持するかもしれないが中国の躍進やトルコや韓国などの新規プレーヤーが戦闘機市場に参入してくれば存在感の低下は避けられないだろう。
余談だがタイフーンを導入するにはエアバスが発行する「ユーザー証明証」を取得する必要があり、タイフーン導入を希望する国は英国、ドイツ、イタリア、スペインから承認をとりつけ米議会の輸出許可(GPS等)を受ける必要があるため、米国やフランス製戦闘機よりも導入手続きが煩雑な点も問題なのかもしれない。
関連記事:再掲載|導入自体が間違い?タイフーンを導入したオーストリアの後悔
関連記事:またエアバスが不正? クウェートに売りつけたタイフーンの価格が問題に
関連記事:ドイツ議会、トーネード後継機としてタイフーン導入をひとまず承認
関連記事:戦闘機導入の相場、フランスのラファール導入が高額になる理由
※アイキャッチ画像の出典:Public Domain
恐ろしい。
Fー35にしてなかったら、日本のライセンス生産はいくらになっていたか。
FX選定時F−35を貶してタイフーン推ししていた連中は今息しているのかな
タイフーン推しは技術貢献が目的で調達コストは論点じゃなかったろ
勿論、息してるよ!笑
よく誤解されるけど、タイフーン推進派はあくまで、その時世の技術へのアクセス及び製造基盤の維持が目的であり、どのみち後々F35は買うしかないんだからさ。
結局、F35を選定する為にFXを引き延ばしてる間、日本の戦闘機の製造関連の会社は待ちきれず(民間企業で人員を遊ばせることは出来ない)撤退や縮小してしまった為に基盤が失われて、ほとんど一からインフラを整備するから、F3は安くても1機300憶以上になかもしれない状況だよ。
アンタがどんなに泣き叫ぼうがユーロファイターを買わないと言う決定に変更はないし、最良の決定である事に変わりはない
は?最良?スパホやSイーグルをしっかり選定しても良かったと思うけどね!
余分に生じる税金は代わりに払ってくれるなら良いけどさ!
この国は民主主義なんだからさ~自分だけが正しいなんて思うなよ!
引っ張った挙句のF-35組み立て、ってのが
国内産業的に最良とは言い難い、って点には賛同するけど、
半端な数のタイフーン(他の第4.5世代機でも)導入(ライセンス生産?)がより良い選択であったとはやっぱり思えないなぁ。
後々F-35は買う、ってならA/B合わせて5機種体制?
それこそインフラ・教育含めたらタイフーンが金食い虫になるとしか思えないけどな。
個人的にはやっぱり震災のドサクサで喪失分+αのF-2を再生産、が良かったと思う。当時民主党政権だったのが痛感。
10年前のムックが家にあったので開いたら、日の丸つけたユーロファイターのイメージ写真がでかでかと…(笑)
インドの時のF-X調達価格で考えると多分ユニットコストで300億以上したのでは?>EF-2000
タイフーン君って割りと珍兵器に片足突っ込んでるからな・・・
そうそうに離脱したフランスは英断してたと思う
もっとも次期主力機は共同開発の泥沼にはまってる気がしないでもないけど
保険でF-35の開発パートナーにもなっておいたイギリス&イタリアも、振り返ってみればいい判断だったと思う
ヤベーのはタイフーンにオールインしちゃったドイツ・・
さりとてセールス的にラファールが成功しているかというと微妙ですけどね
セールス的には微妙だけど、フランス軍にとっての使いやすさを優先した結果だから、セールスはある意味二の次な訳で、その辺りはフランスもある程度割り切れるんじゃないかな。
実際、フランス的にはラファールの運用実績、割と良い感じらしいし。
>フランスは英断してたと思う
英国面を断てたから、正しく英断だね。
>英国面を断てたから、正しく英断だね。
FCASでは独逸を断って、独断専行すると良さそうだね。
(* ̄- ̄)ふ~ん ガンバ~
本当、この辺は共同開発の悪い所が全面に推し出ているよ
しかも調達に関してもこれじゃ要らない。トランシェ1なんて使い物にすらならないし。ドイツ空軍も惨憺たる有様。
今のFー2、次期支援戦闘機調達計画やF-4の後継機について、兎に角タイフーン推す声もあったけど
これじゃあ調達しなくて正解だったと改めて思う。グリペンのがマシというのは本当かもしれない。
ただ個人的にはグリペンの元自体にこれ以上の発展の見込みがないように見えるし、グリペンEもF-35が買えるならいらない。
F-35も開発途上はきな臭く怪しい雲行きの時期もあったが、蓋を開ければ価格破壊も良いところのとんでもないのが出来たのは大きい。英主導や仏主導の次世代機の開発計画はあるものの、しばらくタイフーンを使い続けるしか無いんだろうなあ
グリペン買うならF-2の再生産の方がいい気がする。
F-4全部置き換えると2機種体制になっちゃうのが難だけど。
いや、仮にF2をもう一度作りたくても…もう製造基盤が無いから120億ではつくれないのさ!
だからインフラ維持の為と米国の横やりを防ぐ為にもタイフーンが必要だったんだけどね。
それを含めて見てもユーロファイター買わなくて良かった〜
タイフーンのごたごた対して言い訳不能になったからってそんな苦しい論振り回さんでも
戦闘機商売は単なる貿易でなく政治問題だとよくわかる
単純に、安ければ、高性能なら売れるという次元じゃないね
お花畑の防衛族に認識して欲しいよ
F3への理想的な解は、空自の戦闘機保有枠を拡大して調達数を激増させることだ
それかF35に統一するか、開発が具体化するほど難しい再選択を迫られる予感がする
先ずは予算をGDP比2%まで引き上げて、あと自衛隊員を増員する事かな。
後者は、少子化が進行している状態だと厳しいかもしれないけど。
生活保護廃止と老人の医療削減待ったなし!
タイフーンの問題は現在EUが抱える問題の典型例だなあ
欧州の需要を独占しようとしてどんどん競争力が無くなっていく
航空機の開発は予算と技術があれば単独開発が一番効率がいい、複雑な問題も自国語で話し合えるしお互いの能力もわかっている。
今の日本なら開発費は自前でほぼ自国開発できるが、面倒な部分の一部のみLMと共同で開発するのは仕方がない。
F-3も多分最近では珍しいくらい順調に開発が進むと思っている。
次期戦闘機は実質LM製だからそりゃ順調かもしれんな
要素研究は日本がずっとしてきたものを活用すると思うので、一概にそう思われたくはないですよね。
今まで国産なんか出来るわけ無いと言ってたのに
いよいよ出来そうな雰囲気になって来たんで
実質LM製と思い込むことで精神の安定図ってんのか……哀れだねぇ
技術的に可能=実現可能って思ってるところが子供の発想
アメリカの議会が絡む時点で政治案件だわ。Fー2開発で技術提供が受けれなかったのをLMのせいにする幼稚園児が多数いるが、そんな権限あるわけないだろ。神田氏の本でも読んでからコメントすればいいのに
ポチ官邸がご主人様のお伺いたてて防衛省と仲違いする未来に1票
軍ヲタはかなしいことに世間に疎い子供が多いから
カッコいいとか高性能で話が決まるとか信じてるのが痛い
逆に高性能以外のどこで技術に目星をつけるんだよ。
話が決まる云々が、政治や経済と連結してると主張するならそう言えばいい。
「技術提供が受けれなかった」のに、「LM製」扱いですか?
反論のための反論だなぁ。
「技術的に可能=実現可能」を否定する要素がアメリカ議会ならそれこそ単独で開発しろって話で終っちゃうじゃないかwww
最近開発が順調に進んだLMの戦闘機って何があるんだ?
F-16V?
F-22は言うに及ばず、F-35もここへ来てセールスこそ好調だけど
開発は波乱万丈(現在進行形)だろ。
BAEシステムズも忘れないで、あとグラマンとロッキードのタッグはどうなったんだ
その通りですね!
電子防御システムはBAEが世界シェア七割前後を占めてる為、自前主義の米国すらここを排除できない。
機体、エンジン、レーダーがあっても電子防御システムが無いと身を守れないよ!
F15Jはライセンス時に電子防御システムの許可が米国から降りなかった為に日本が独自に作ったが…結果的には敵機からのリアルロックオンされたことが無いから有効性が未知数…当然だけど敵レーダーの照射パルス特性が分からないと電子防御システムを造れない訳なので、中東で常にドッグファイトしてるイスラエルや情報盗む為にスパイを送り込める米英やロシアのメーカーが強い。
そのためのRC2なんですが。
世界で最初に航空機用のAESAレーダーを作った日本の開発力を舐めててもらっては困る。
それをひっくり返すのが政治だって
いつもどの国でも、軍の論理の上に政治のあることをお忘れなく
F-22の次に強い戦闘機でも高ければ売れないのか。
縁起でもないが、どこかで実戦で圧倒的優秀性を示せば状況が変わるのだろうか。
米国と戦わない限りは世界最強なんだから。
いや、「F-22の次に強い戦闘機でも高ければ売れないのか。」の時点で英国面に落ちてますがな(汗
あとたまにでいいからロシアちゃんやフランスちゃんも思い出してあげてください→「米国と戦わない限りは世界最強なんだから。」(ちうごくちゃんはいらないから)
まあ確かにBAEシステムズの自称だけど、カタログスペックでも機動性はF-22の次に優秀で、電子戦システムもかなりなもの。
射程距離はロシアが頑張っているがミーティアを搭載だし、非ステルス戦闘機としては上位でしょう?
本当のところは実戦でしか分からないけどね。
自称ではなく、英国防省や米国防省でもシミュレーションした結果、ほぼ同様のデータが出てるよ。
勿論、あくまでも機体性能や当時の兵装においてだけど。
DACTで近接戦でSu-30にボロ負の様なので、精度の低いシミュレーションだった様ですね。
タイフーンの能力を過大評価してたのか、F-22とタイフーン以外を過小評価してたのかは分かりませんが。
それでも中東に買い手がいるだけマシですね。
F-35の開発難航してた時期、タイフーン説ってわりとリアリティあったよね。英国が技術移転に前向きだ、とかいって
英語でいいので、どっかのタイフーン・パイロットがタイフーンの使い勝手を赤裸々に語る
覆面インタビューとかないでしょうか?
兵器はコスパが良くないと売れないからな。というか商品は皆そう。開発時にセールスが上手く行くか検討しなかったのかな?
でもなんだかんだタイフーンも輸出に関してはそこそこ上手く行ってると思うがな
タイフーンが失敗扱いだとするなら、中東どころか世界中から人気が無い日本製兵器はどうなるんだよと
そもそも日本は本気で売り込んでないでしょ?って突っ込み待ちなのか、単なる釣りなのか、はたまたいつもの韓国推しの人なのか。
判断が難しい。
コメ主ではないけど、本気で売り込みをかけたら日本製兵器が売れるというのも机上の空論だし、全く売れないというのも根拠がない。
ただ現実的には日本に兵器ビジネスを行うだけのノウハウが欠けているので売れないんじゃないの?特に日本の兵器は世界一般的に求められる仕様からはかけ離れているんだから。
かつて世界を席巻した日本の家電みたいなもで、新興国ブランドとの差別化で付加価値に走るあまりにガラパゴス化して、結果的には世界で通用しなくなってしまった。涙
ある意味、アイリスオーヤマ家電は良い意味で原点回帰してると思う。
仕様もそうだけど最大の問題は法の問題だよ。
憲法の解釈次第で輸出できるようにしたけど、それってつまり解釈変えれば輸出やめる事にもなるんだからね。
そんな将来性のあやふやな国の兵器なんて性能がどれだけ突出していたとしても導入には二の足を踏むことになると思うよ。
そもそも同じ土俵にすら立ってないよねって話では?本気ってのはまず土俵に上がることであって人気のあるなしはその後の事でしょってつっこみだと思うんだけど。
何をもって「成功」とするかだなぁ。「売れば成功」?
たかだか15機の売り上げと引き換えにEUの同胞オーストリアの国防をボロボロにするのが成功とはどうしても思えん。
日本は賄賂&接待が下手すぎるのがその原因、大部分の国は政治家や軍人がポッケナイナイすることが第一で性能な二の次。
2010年前後までは「世界で2番目に強い戦闘機」「Su-27相手のキルレシオ4.5:1」とか言われて評論家やマニアの受けも良かったけど。
その後は改良が遅々として進まなかったり、強度欠陥起こしたり、アップグレードが効かなかったり、挙句DACTで優位なはずのラファールやSu-30にボロ負けしたり、一挙に化けの皮が剥がれてきた。近年まれに見る誇大広告機。
日本のFXに提案したときにAESA付きのトランシェ3の売り込みしてたくせに2020年のドイツ空軍にすら存在しなほどの計画遅延
導入しようとしたら身内であるはずのドイツ空軍から反対されるほどの欠陥機
政府高官がユーロファイター社と内通してなきゃどの国も買わねえのは当たり前