中々、知る機会の少ない米国製防衛装備品の単価が最近公開された国防権限法(NDAA)から読み取れ非常に興味深い。
参考:WILLIAM M. (MAC) THORNBERRY NATIONAL DEFENSE AUTHORIZATION ACT FOR FISCAL YEAR 2021
陸軍は独自に正面装備に投じる資金とほぼ同額約86億ドル(約8,890億円)を研究開発費に投じる
通常、防衛装備品のコストは関連費用が含まれている場合が多く純粋な単価が良くわからない仕組みになっているが、米国の国防予算に関する大枠を定めた国防権限法(NDAA)の内容が公表されたため米軍が2021会計年度に何を、幾つ、幾らで調達しているのかが判明した。
今回は米陸軍が2021会計年度に何を、幾つ、幾らで調達しているのかを見ていくことにする。
陸上装備や弾薬 | 調達コスト | 調達単価 |
M-SHORAD(50輌) | 3.7億ドル/382億円 | 740万ドル/7.6億円 |
AMPV(32輌) | 1.3億ドル/134億円 | 406万ドル/4.2億円 |
PAC-3 MSE弾(122発) | 6億ドル/620億円 | 490万ドル/5億円 |
PrSM(30発) | 4,900万ドル/50.7億円 | 163万ドル/1.7億円 |
ヘルファイア(428発) | 9,100万ドル/94.1億円 | 21万ドル/2,170万円 |
JAGM(657発) | 2.1億ドル/217億円 | 32万ドル/3,300万円 |
ジャベリン(773発) | 1.9億ドル/196億円 | 24万ドル/2,480万円 |
TOW2(1,405発) | 1.2億ドル/124億円 | 8.5万ドル/880万円 |
GMLRS弾(5,384発) | 8.5億ドル/878億円 | 15万ドル/1,550万円 |
M982砲弾(597発) | 6,900万ドル/71億円 | 10万ドル/1,030万円 |
装備品 | アップグレードコスト | アップグレード単価 |
AH–64Eへの改修(50機分) | 7.9億ドル/817億円 | 1,580万ドル/16.3億円 |
ストライカー改修(214輌) | 11.6億ドル/1,200億円 | 523万ドル/5.4億円 |
M1A2Cへの改修(89輌) | 10億ドル/1,034億円 | 1,120万ドル/11.5億円 |
航空機や艦艇の調達がある空軍や海軍に比べて陸軍の予算内容は一見すると地味に感じてしまう。
特に新規調達する装備の数が極端に少なく強いて言えば無人航空機(UAV)対策に2021年から調達が始まる近距離防空システム「IM-SHORAD」や次世代多目的装甲車「AMPV」が目立つが、装備のアップグレードを含めて見るとAH–64Eへの改修やM1A2Cへの改修が含まているので正面装備の強化にも資金を回している。
特にM1A2Cへの改修コストは1輌あたり11.5億円もかかっているため、日本の10式戦車を新規調達するよりは安価でも決して安くはなく、2021年に陸軍が車輌・航空機の調達やアップグレードに投じる金額はトータルで約67億ドル(約6,930億円)に達するが、弾薬調達量も膨大で上記に挙げた各種精密誘導ミサイルや誘導砲弾以外にも5.56mm弾から155mm砲弾、ロケット弾などの無誘導弾まで含めた弾薬調達に約27億ドル(約2,800億円)も投資している。
補足:M1A2Cを新規導入(米陸軍の余剰M1A1をアップグレードしたもの)する台湾は108輌調達するのに約20億ドル(弾薬やスペアパーツなどの関連費用込で約2,163億円:1輌あたり約20億円)要求されており、M1A2Cへの改修コストを考えると妥当なのかもしれない。
しかし陸軍は正面装備に投じる資金とほぼ同額の約86億ドル(約8,890億円)を各種研究・開発プログラムに投資することになっており、特に統合軽戦術車両(JLTV)への継続投資分として8.9億ドル(約920億円)、次世代の歩兵携帯用無線システムの開発プログラムに5.5億ドル(約569億円)、通信セキュリティ関係の研究開発に1.5億ドル(約155億円)、暗視装置の研究開発に11億ドル(約1,130億円)、次世代戦術指揮統制システムの研究開発に19.8億ドル(約2,040億円)などに高額投資を行なっている。
ただミサイル防衛や地上発射型の核戦力・極超音速ミサイルなどは開発や調達を効率的に行うため陸海空軍から切り離し、米ミサイル防衛局や国防総省が直接管轄しているケースもあるので陸軍の予算だけ陸上関係の戦力強化を全て把握することは難しい。
例えば2021年に核戦力の制御や通信の近代化に約70億ドル(約7,240億円)、地上発射型の核戦力近代化に約15億ドル(約1,550億円)、次世代のミサイル防衛や迎撃弾開発に約6.6億ドル(約680億円)、THAADの調達に約9.1億ドル(約940億円)、パトリオットの弾道弾迎撃能力の強化に約7.8億ドル(約800億円)、サイバーセキュリティや関連技術の開発に約98億ドル(1,010億円)、人工知能開発に約8.4億ドル(約860億年)、無人航空機や無人車輌等の自律性に関する研究開発に約17億ドル(約1,750億円)、極超音速関連の技術研究に約23億ドル(約2,300億円)、5G技術を活用した軍事通信の研究開発に約15億ドル(1,550億円)を投じている。
因みに米軍は2021年に割り当てられた国防予算約7,410億ドル(約77兆円)のうち1/7に相当する1,066億ドル(約11兆円)をRDT&E(研究・開発・試験・評価)関連に投じる計画で、この金額は日本の防衛省が投じた2020年度研究開発予算(1,676億円)の約65倍に相当するという化け物じみた金額だ。
少々本題から話が逸れてしまったが、これで陸海空軍が2021会計年度予算で何を、幾つ、幾らで調達しているのかについて一応まとめたことになるので、海軍や空軍の記事に目を通していない方は是非そちらも読んでいいただければ幸いだ。
関連記事:米海軍の装備調達コストは?SM-6は3.3億円、F-35Cは107億円、イージス艦は1,560億円
関連記事:米空軍の装備調達コストは?F-35Aは92億円、F-15EXは107億円、KC-46は187億円
※アイキャッチ画像の出典:US Army Photo by Mark Schauer ユマ性能試験場でテスト中のM1A2C
軍事費だけで下手な国の国家予算とは。
これじゃレガシーを退役させたくもなる。
下手な国と言うかこれ以上の国家予算の国なんて数えられるくらいでは?
2017年なら国家予算ランキングでトップ10入るし
むしろ10式安いのでは?
なんだかんだM1デカいし重いし……
M1戦車とか、正直新車を再生産した方が安そうだよな……。今となっては生産ラインが無いとかで無理なんだろうが
もっと言えば、一から新型戦車を開発する方が、開発技術の維持も考えれば割安かと
米軍の中の人もそう思ってるらしいが
戦車は改修のみ新造は許さんという謎ルールがあるので・・・
一応予算の無駄使いを防ぐためのルールらしいのだが
アパッチの改修費用も高いなー
アメリカのAH-64Dは600機くらいあるけど、何割をE型にするんだろう?
アメリカ軍のAH-64Eへの改修費用が、1機で16.3億円かぁ。高いのか安いのかわからない。
一方、自衛隊は、型遅れのAH-64Dを1機95億円で買った。
アメリカもぼったくりだよなぁ。
それとも、自衛隊は世間と価値観が断絶しているのか。
>5G技術を活用した軍事通信の研究開発に約15億ドル(1,550億円)を投じている。
「華為(ファーウェイ)は人民解放軍の一部門」なんて言う奴いるけど、どこの国でもやってることなんだよなあ
むしろ「学術会議」が発狂してる日本がおかしい
日本を防衛する為の研究を妨害する奴らは、日本国民の生命・国土の安全を脅かす敵そのもの。
防衛省には昔から輸入派が存在するようだが、利権云々を置いといて、一定の理解はできる
これからますます高度化の進む開発を、国内需要向けだけでまかなうのは不可能な段階に入ってるし、
兵器輸出というのも口にだすほど簡単でないのは、安倍政権時代にしっかり実感できたしな
ぶっちゃけ、デフレのおかげか今や国産兵器の調達・開発費は割安なので、むしろ国産兵器の調達・開発を推し進めるべきなんだよな
空対空ミサイルとか、感覚的には輸入価格の半額以下って記憶ですので
軍需産業に限らないけど、長期のデフレの結果(技術力は先進国レベルのわりに)日本の研究開発費のコスパがクッソ高くなってるのは皮肉なのかそれとも実は誰かが狙った結果なのか……
その割に兵器のレベルが国際的に遅れぎみなのは否めないが、
我が国の開発にはスピード感が足りない
研究費だけで日本の防衛費の倍Σ( ̄□ ̄)!
なんだかんだで中国も太刀打ちできんわな。
PAC-3 MSE弾は米軍価格でも1発5億円もするのか……。バイラクタル TB2の地上設備も含めたユニットコストが5億円とされるので、ミドルエンドUVA相手にも赤字ですか。PrSMも1発1.7億円で3分の1の価格ですから、短射程弾道弾相手にも赤字が出る
そりゃ早急にM-SHORADを開発配備しないと、すぐさま高価な対空ミサイルを撃ち尽くして在庫切れするか、国家予算が破産しかねません罠。そこら辺、ちゃんと重層的な防空システムを維持してきた本邦や陸自は偉い
あと、ジャベリン1発2,480万円って、ヘルファイア1発2,170万円よりも高価ですがな。そう見ると、旧式な有線誘導とはいえ880万円のTOW2にも生き残るニッチが有るのが理解できる
んで、GMLRS弾1発1,550万円と比較すると、M982エクスカリバー砲弾1発1,030万円の価格の高さよ。最小射程とか不随被害とかの問題が無ければ、GMLRSや無誘導の通常砲弾で対処した方がコストパフォーマンスが良さそうですね
というか、お高いSM-6ですら1発3.3億円で、それでいて射程は文字通り桁違いに広いのだから、そりゃSM-6を陸棲化させて広域防空システムにした方が良さそうですね。限定的な弾道弾対処能力も有るとの事ですし
本邦も、SM-6と同様のエリアディフェンス艦対空ミサイルとしてA-SAMを開発中ですし、中SAM改に弾道弾迎撃能力を付与する予定。高価で機動性に劣り、それでいて射程も狭いパトリオットシステム系列は、そう遠くない未来に日米共に終焉を迎えるかも?
unpoko⁓⁓
いつも楽しく記事を読ませていただいています。ありがとうございます。
気がついたのでご報告を。文末の以下リンク先が間違っているようです。時間ある際に修正お願い致します。
関連記事:米空軍の装備調達コストは?F-35Aは92億円、F-15EXは107億円、KC-46は187億円
実は宇宙人と戦うべくテクノロジー磨いてんだろ
そのくらい突出してる
>>弾薬調達量も膨大で上記に挙げた各種精密誘導ミサイルや誘導砲弾以外にも
アメリカが膨大と言うか日本が少なすぎるだけというか
昔の単純な兵器じゃないんだから戦時に大量生産できるわけないのにあの程度の弾薬調達量はちょっとねえ・・・
コスパで勝とうとするから問題になるので、3倍の経済規模なら三倍のコストをかけて札束で殴り合って勝てばいいんじゃないかな。国内で賄うなら公共事業みたいなものだし熊しか通らない道路をつくるより技術開発になるし。
国産開発のほうが安上がりとか、F3とかミサイル防衛記事も読まないにもお花畑がいるのか
2兆円かけて完成してないタイフーンとか見ると、実際安いんじゃないの
ろくに実績もないのに世界レベルのステルス開発するならば、これから開発費は膨れ上がるよ
F16母体のF2ですらあの価格
それはお前さんの母国に言ってやれという巨大ブーメランなんだが
安いんじゃなくて、世界に必要な戦闘機がないから国産をするw
タイフーンの欠陥、2014年に発覚した、尾翼周辺の胴体に負荷が集中して、寿命が短いって放置じゃない?
まあ、今更、改修して負荷分散より、胴体の寿命に合わせた方が安い?
まずはFMSの問題を把握しましょう
これはあくまで米軍調達価格です