プーチン大統領は習近平主席と手を組むことで西側が最も恐れていた露中連携を成立させたが、その代償としてインドとの関係に亀裂が生じるかもしれない。
参考:Here’s why India-Russia rift will deepen with Ukraine crisis. It’s foolish thinking otherwise
中国包囲網形成に消極的だったインドの態度に多少でも変化が起これば米国にとって吉報と言えるだろう
プーチン大統領と習近平主席は互いの安全保障問題(NATO拡大と台湾独立)で協力することで合意、ロシアは「1つの中国」の原則を改めて支持して台湾の如何なる形の独立も容認しないと表明、中国もNATO拡大を否定するロシアの立場を支持すると表明して露中連携や関係強化をアピールしたが、このような動きは西側陣営だけでなく伝統的なロシアとインドの関係にもダメージを与えているのが面白い点だ。
つまりロシアと中国の接近を警戒しているインドが影響を受けて方針を変更する可能性が出てきたという意味で、印メディアのThe Printは「この状況下でインドは直面する脆弱性に留意しながら問題の軽減に務める必要が出てきた」と興味深い主張を披露した。
The Printの主張をまとめると以下の通りになる。
インドの安全保障政策に大きな影響力をもつロシアと領土問題やインド洋の支配権を巡り対立する中国との接近はインドの国益に反し、米国の力を削ぐという点で合致したロシアが中国の軍事力強化を支援すればインド太平洋地域における米国のプレゼンスが一方的に減少し、強大になりすぎた中国はインドの手にあまるようにるため「確実にロシアと中国の関係強化はインドに不利益をもたらす」と主張、さらにロシアとの伝統的な関係はインド外交の自立を担保するため有効だったかもしれないが「あくまでロシアとの関係はインド外交の『目的』ではなく自立を担保するための『手段』に過ぎない」と指摘した。
伝統的なインドとの関係を今後も維持していくとプーチン大統領が約束したところで「米国の弱体化」はロシア自身の安全保障政策に直結しており、これを進めるということはインド太平洋地域における中国軍のプレゼンス拡大を後押しすること指しているため到底インド外交の自立に資するものではない。
仮に「中国と関係強化はロシアとインドの伝統的な関係に亀裂が入る」と主張したところでプーチン大統領は国益に忠実な選択を優先するため、インドの政治的指導者は希望的な観測ではなくロシアと中国の関係強化は相対的にロシアとインドの関係を毀損する、中国の軍事力を強化して米軍のプレゼンスを今以上に低下させる行為はインドの国益に反する、インドとロシアの国益は根本的に矛盾しているという「3つの現実」を直視して問題の軽減に務める必要があると述べている。
日本からすればロシアOUT→米国INと受け取ってしまいがちだが、あくまでインドは自立外交が基本戦略なのでThe Printは「ロシア製兵器に対する依存率を引き下げる時が来た」と意味深な言葉でインドを進む道を示しており、恐らく兵器の国産化を進めて安全保障分野におけるロシアの影響力を引き下げパワーバランス(米国依存が高まると自主性が損なわれ内政干渉など受けるためフランスや英国などの力を利用するか、東南アジア諸国と対中国で新たな局面を構築するなど)の再構築を示唆している。
このあたりは中国を理由に米国の言いなりになるべきではない=自主性を犠牲にするべきではないと主張する台湾に通じるものがあるものの、中国包囲網形成に消極的だったインドの態度に多少でも変化が起これば米国にとって吉報(S-400導入に制裁を課せば台無しになるが、、、)で、相互に影響を与え合う国際関係を眺めていると外交は本当に一筋縄ではないかないと実感する、、、
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※アイキャッチ画像の出典:President of Russia
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インドは非同盟を堅持するには力が弱すぎる。
(インド自体は大国だが、最大の脅威かつ地続きの中国はアメリカと並ぶ超大国になってしまったため、あくまで相対的な話)
では何処と組むか。
ロシアは記事にある通り。
アメリカは、インドが対中目的で核保有したときに制裁してきた過去がある等、梯子外しを平気でする国。あとパキスタンも支援してたしな。
歴史的にはアメリカよりロシアの方を信用しているが、最終的にロシアは中国のジュニアパートナーになる可能性もあるため、いつまでも頼ってられないよな。
パワーバランスの変化でいえば、中国とロシアの間でも変化を感じる。
5年前くらいまでなら、中国が上・ロシアが下といった感じだったけど、
その後の、米中関係の不可逆的な悪化と中国経済の先行きが不透明になったことにより、中国にとってロシアの重要性が増している。
この「協力」という言葉には、中国とロシアの関係が「対等」に近くなったような印象を受ける。
>中国とロシアの関係が「対等」に近くなったような印象を受ける。
どうでしょう。
従来のロシアは中国と関係を強化しつつ、中国を牽制するためにインドとの関係も重視していましたが、今のロシアはインドとの関係に亀裂が入っても、中国との関係強化をアピールしています。
ロシアの中国依存度が増しているような気がしますね。
インドとロシアの関係は、そんな簡単に亀裂が入るものではないと思いますよ。
最近もインドと中国が領土紛争している最中に、ロシアはインドに優先的に武器を輸出する約束をしている。
有事に頼れるのが真の友人。
ロシアと中国の結束は、あくまでビジネスライクな関係。対米では歩調を合わせられるけど、東側内のライバル関係だから、他の分野では争ってたりする。
いままではどの陣営がインドを招き入れるかが焦点であったが、近い将来、インド主導で、どの国を味方と見なすかに逆転する可能性を感じる。
それは日本にとっても無関係ではない、より複雑な国際感覚が求められよう
インドって他のどの陣営からも遠いんだよね。だからインドに何かあった時に積極的に支援したい陣営っていないし、逆にインドの方から積極的に味方になってほしい陣営がいるかというとこれも微妙。
日本がクアッドでインドを味方つけたいと思ってるけど、それも極論インド洋の日本のシーレーンが無害であれば良いわけだし。
中国と陸続きと言ってもヒマラヤを挟んでの事なので、何というか、歴史的にも地理的にもインドは自己完結してる感じが強い。
将来的にも積極的にどこと組むというのではなく、その時その時で支援してくれるところからは支援を得る、程度に留まるのではなかろうか。
>中国と陸続きと言ってもヒマラヤを挟んでの事なので、何というか、歴史的にも地理的にもインドは自己完結してる感じが強い。
そんなちんたらしたこと言ってらんないでしょ。建国以来の敵であるパキスタンが中国と組んで西側から圧迫しているし、ミャンマー、ラオス、タイあたりのインドシナ半島国家が消極的な親中国家として東側に存在してんだぜ。少なくとも味方じゃないんだし。これでインド洋まで中国海軍が回遊するようになったら八方ふさがりだ。
そのための保険であるロシアがあてになんなくなってるのが今回の記事なんだから、第三陣営を誇っている余裕はあんまりないように見えるが。
話の趣旨としては、どの陣営に属するかでなく、新たにインド陣営が生まれる可能性を語ってますが、
確かにヒンドゥーは自己完結的な国であることは認める(笑)しかし、大国とはいえ人口密度が高すぎて、資源と市場を海外に求めざるを得ない段階がまもなく来ますよ、そうなるとインドは安全保障の見地から、自国に必要な国家を取り込もうと画策を始めるでしょう、それは東西陣営でない一角
対中の主役が、アメリカからインドに変わるということですか。
それは近い将来ではないような。
中国もロシアも独裁だとか権威主義とか言われるけど、長期間同じベクトルを持ち続けることで、米国の覇権を脅かすことに成功したことを見ると、自由主義の衰退を首肯せざるを得ないかな。
世界的戦国時代に突入しつつあるのかも知れないが、日本は憲政史上最長の政権を経てもさほど変化に至らなかったことを悔やむべきなのだろうか?
フィリピンのように最善でない選択をする場合もあるのが議会制民主主義ですから、どう良くなったか判断するのは難しいですね。80年代以降の日米貿易摩擦が好転したかも知れないし更に酷かったかもしれないが、どちらでも国防に対して理解が深まったかは疑問なので
自由主義が衰退したというより、貧富の格差拡大が原因で社会が硬直化してるんでしょ。分断なんて言われてるけど、極論貧富の格差の拡大による不満の矛先を、同一階層内での紛争にすり替えてるだけに見える。結局貧富の格差を解消しない限り、自由主義もデメリットだけが目立つようになるんじゃないか。
あと、
>世界的戦国時代に突入しつつあるのかも知れないが、日本は憲政史上最長の政権を経てもさほど変化に至らなかったことを悔やむべきなのだろうか?
は言い過ぎに感じるが?
ここにいると他の国の景気の良い話が多くて麻痺してくるし、日本メディアはパッパラパッパーだから変化していないように見えるが、日本政府は戦力拡大の進展を図ってるし、それは国民の一定の危機感を背景にしていると思うが。その成果が出ているかといえば、問題も多いとは思うが。
それとも右から左まで軍拡万歳それ一色になるのがお望み?
日本人は普段が静かだから、きっかけ次第で大爆発しそうで怖いんだよ。
別に軍備拡大だけを意図したわけでは無いのだが。
日米安保を基軸にするのは良いけど、周辺国との関係は混迷に近い状態だし、あれ程媚びを売ったロシアからは塩対応の体たらく。
Quadは評価すべきだが、米豪の安全保障の主軸はAUKUSに置かれていると考えるのは僻みかな。
あと軍拡万歳なんて書いてもいないことを非難されてもね。
確かに言い過ぎたかもしれん。ただ、
>世界的戦国時代に突入しつつあるのかも知れないが、日本は憲政史上最長の政権を経てもさほど変化に至らなかったことを悔やむべきなのだろうか
という変化ってなんなんだ、という話で。
その憲政史上最長の政権が、韓国の目覚め(日本から見たら暴走か)と中国の膨張に対する日本人の危機感を背景に成立したんじゃないのか、と思うが。集団的自衛権みたいな割と無茶な解釈変更をしても選挙で負けなかったし。
明確な成果が出たのは、QUADとTPPくらいだと思ってるが、国民の意識は着実に変化しているし、それを背景に政治も方向は変わっている最中なんじゃないか?
>日本は憲政史上最長の政権を経てもさほど変化に至らなかったことを悔やむべきなのだろうか?
変化はありますよ。国家安全保障局ができたことは大きい。憲法改正には至らなかったけど下地は出来てる。後は我々国民が決断するだけ。それが民主主義でしょ?
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