デル・トロ米海軍長官は日本企業や韓国企業に「米造船業界への投資」や「子会社設立を通じた米国市場への進出」を呼びかけていたが、韓国のHanwhaは米国防総省のプログラムに「元請け」として参加する資格をもつ豪Austal買収に動いている。
参考:AUSTAL CONFIRMS RECEIPT OF UNSOLICITED, CONDITIONAL, NON-BINDING INDICATIVE PROPOSAL FROM HANWHA
参考:Austal rejects Hanwha’s $662 mln offer citing regulatory hurdles
参考:Austal rejects Hanwha’s takeover bid — for now
Breaking Defenseは「Austalの声明は買収の可能性について扉を開いたままだ」と報じている
米国の防衛市場は米軍ニーズに加えてFMS経由の装備・弾薬類の輸出が含まれるため「7,000億ドル以上の需要がある」と見積もられており、この市場に参入するには「米法人による現地生産」が必須で、欧州、アジア、オセアニアの防衛企業は「現地企業の買収」か「米企業との合弁会社設立」で米国進出を行っている。
主要な欧防衛企業の多くは米市場に参入済みで、英BAE、独Rheinmetall、伊Fincantieri、豪Austalなどは「米現地法人が本社から完全な独立性を保っている」と保証する特別安全保障協定を米国と締結しているため、他の米企業と同様に国防総省のプログラムに元請けとして参加する資格を持っており、合弁会社の設立で進出した海外企業も受注面で圧倒的に優位な立場だ。
デル・トロ米海軍長官は2023年9月「米国では日本や韓国を含む親密な同盟国の造船企業と提携する機が熟している」「世界で最も先進的な造船企業を誘致し、米国に子会社を設立させ投資させることで米造船産業の近代化や拡充を図り、より健全で競争力がある造船産業を創出する」と述べ、今年3月には日本と韓国を訪問して佐世保重工業、三菱重工業、Japan Marine United、現代重工業、Hanwha Oceanと会談、米国の商業造船や海軍造船施設への投資を呼びかけた。
日本の造船部門が米国への進出を計画しているのかは謎(管理人が把握している範囲)だが、Hanwha Oceaについては昨年6月「国際的な需要を獲得するため本格的な海軍艦艇向けのMRO事業を扱う専任部門を新設した」と報じられ、Hanwha Ocea自体も「米造船企業の買収を進めている」「造船所買収に必要な資金は最近発表した防衛部門への投資(9,000億ウォン)に含まれている」と明かし、米国では「Hanwha Oceaがフィリー造船所の買収に動いている」と報じられている。
現代重工業も米海軍長官との会談後「当社は韓国海軍やフィリピン海軍だけでなく米海軍の発展にも貢献する造船企業になるだろう」と声明を発表していたが、豪Austalは2日「韓国のHanwhaから買収の提案(6億6,200万ドル)を受けた」と発表し、海外の主要メディアやディフェンス・メディアがHanwhaの動きに注目している。
Austalは「豪海軍や米海軍の元請け企業としての立場、防衛契約に関する所有権事項を考慮するとHanwhaの買収案は豪米当局から承認される可能性が低い」と指摘、これを受けてロイターは「規制当局の承認を理由にAustalはHanwhaの買収案を拒否した」と報じているが、米ディフェンス・メディアのBreaking Defenseは「AustalはHanwhaに新しいオファーを出すよう示唆している」と報じている。
Austalはプレスリリースの中で「豪米当局の承認についてHanwhaと協議した」「現時点でAustalは買収案が承認されると確信できていない」「Hanwhaが豪米当局の承認について追加の確実性を提示できれば当社はさらなる関与に前向きだ」と述べており、Hanwhaも「我々はオーストラリアへの投資で豪外国投資審査委員会(FIRB)の承認を取得してきた。歩兵戦闘車、自走砲、弾薬供給車輌に契約を通じて豪産業基盤への投資実績持っているため、FIRBからAustal買収についての承認取得に自信をもっている」と言及。
米コンサルティング会社のCapital Alpha Partnersも「米当局の規制をクリアする上で海外企業による米造船所の所有について大きな問題はない。Austal USAはオーストラリア企業が所有する造船所で、コンステレーション級フリゲート艦もFincantieriが建造している」と指摘し、Breaking Defenseは「Austalの声明は買収の可能性について扉を開いたままだ」と報じているのが興味深い。
Hanwha Oceaはフィリー造船所の買収に動いていたため「米国内での商業船舶建造に投資する」と解釈されていたが、いきなり「国防総省のプログラムに元請けとして参加する資格をもつAustal買収」に動いたため、これが実現するとスピアヘッド級遠征高速輸送艦の建造、バージニア級原潜のコンポーネント製造、ヘリテージ級カッター建造に関わるAustal USAもHanwhaの所有になり、アジア市場で韓国勢のOPVと競合することが多かったAustalのOPVもHanwhaのものになる。
果たしてHanwhaによるAustal買収はどの様な結末を迎えるのだろうか?
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※アイキャッチ画像の出典:Commander, U.S. Naval Forces Europe-Africa/U.S. 6th Fleet
個人的には韓国企業のアメリカ進出を応援してますよ
韓国企業が引き受けてくれたら、日本企業がめんどくさいことに関わらなくて済むので
凄いですね 韓国とは安全保障協定を結んでないのに、適格企業を買収すれば参入できるわけですか
なんだか裏口上場みたいな話ですね
いかにアメリカが考える安全保障が軽いかよくわかりますね
共和民主問わず製造業再興みたいなこと言うけど、結局軍事分野すら外資頼みです
外資叩きしながら、米軍の軍事力が怪しくなってきたので外資誘致を推進するというちぐはぐさ
アメリカで結局生産できなくて、コンポーネントを輸入しようとして米当局と揉めると予想します
自動車生産ではいくらでも現地法人設立、現地生産をやっている日本企業が、防衛産業でやらないのは、単純に面倒なワリに儲からないからですよね
先方の手続きや慣例等が面倒なことはあるかもしれませんが、前提として、日本企業が日本政府を介さず外国政府や外国企業と防衛装備品を共同開発するには、当該事業が「防衛装備移転三原則」の規制内であると日本政府が審査した上での許可が必要なんです。
昨年10月に、三菱電機が豪政府と航空機・車両搭載用の警戒・監視装備を開発することが決定したと防衛省が公表しましたが、GCAPのような政府間共同開発事業以外では初めてのケースになります。
同案件は2018年に政府審査を通っていたそうです。
防衛省は「海外への技術の転用は日本の防衛産業の活性化につながる」として、今後(現状では5類型、又は部品相当の場合ですが)企業側に働きかけていきたいとしています。
台湾の半導体大手TSMCの創業者(張氏)によると、本当は中国に工場を作りたかったが、アメリカの圧力で渋々断念してアメリカ国内に工場を作らされた。アメリカの工場では人件費が嵩み、労働者も真面目に働かないので、台湾で半導体を作るのと比べて製造コストが50%も上がるそうです。張氏を含む台湾の財界人は中国に友好的で、張氏曰く「自由貿易は死んだ」。
アップル商品も技術者の確保と部品調達の問題から中国以外に工場を移設することができないみたいです。中国から製造拠点を取り戻そうとしても技術者不足と労働者の質が悪くて、アメリカ単独では製造業の再興はできない。仕方なく同盟国に圧力を掛けて、同盟国の企業が金と労力を浪費して「Made in America」を無理やり実現させている。
日本工場のコストはどうなんでしょうね。
台湾の人件費は韓国の2/3程度なんだそうで今の為替水準だと、日本は台湾本国と同じくらいじゃないかと推測しています。
それでも日本人は募集の給与にビックリする現実。
高度な半導体工場の場合、産業クラスターが重要で、クラスターから遠い地域に工場を作ろうとすると、コストがそれだけで、3割ぐらい上がるらしい。そのため、台湾でも韓国でも地域が偏る。
例えば、半導体工場は巨大クリーンルームかつ免振なんだけど、普通の建築業者じゃ難しい。
遠くから呼ぶ場合、それだけでお金がかかる。稼働後のサポート企業もそう。自社の人材も近ければ支援が簡単。
熊本の場合、台湾に近いので、サポートは受けやすいはず。生産ラインも最新鋭ではなく10年前レベルなのでアメリカほどは酷くないはずだ。
千歳のラピタスは苦戦するだろうな。
テスラの生産もそうですが、アメリカより中国産の方が出来が良いそうです。
総じて、欧米人よりアジア系の方が丁寧に作業するんですかね?
テスラの創業者イーロンマスクと電気自動車を非難するYouTube動画が多数投稿されています、この手の動画の投稿者は大抵、日本企業賛美と中国叩きの動画を作成しています。
電気自動車は価格と充電時間に課題があると私は考えますが、何故その事業を始めたのか、何故その地域で事業を展開するに至ったのかを詳しく分析せずに非難するのは間違っている。中国と台湾の関係だってそうだ、(一部の者の妄想とは異なり)台湾は経済的に中国と深く繋がっており、中国と対立したくないと考える台湾人は多い。
アメリカでは工学系の専攻者が7%しかおらず、アメリカのIT産業は中国人とインド人がいなければ成り立たない。イデオロギーの対立ばかりに気を取られ、経済面の協力によるメリットを軽視する輩が多過ぎる。
そんな話は眉唾では?
UAWの発表によると、2028年4月までの契約期間中、基本賃金が25%引き上げられる。初任給は生計費調整額と合わせて70%増え、時給30ドル(約4500円)以上になるという。
アメリカの自動車業界がこんな感じですし。これがアメリカ全体に波及するはずなのでアメリカ製造業人材の賃上げは続くでしょう。もはや関税払ってでもアメリカで製造しないことが最強のコストカットじゃなかろうか・・・
あまり良くは言われない船型だけれど。
双胴船(三胴船)の今後の見通しはどうなのでしょう。
単胴船より補強がより必要なのだろうと想像はしますが。
デッキ平面の広さや、抵抗の少なさから来る高速性能は魅力と思うのですが。
日本でも、一時、三胴船の研究はされていたようだし。
インディペンデンス級が船体にまでアルミ合金を使ったのは疑問に思いますが。
波浪に対する安定性の悪さとかでいかに現代技術でも使い勝手が悪いのでしょう。
あとアルミ合金は海水による腐食もありますから定期的な補修にかかるコスト考えたら割に合わないんでは?
補強の件はさておいて。
現在も存在するスタビライザーを
より積極的に運用することになるのかな、
などと妄想します。
日本製鉄のUSスチール買収に対するやらかし考えたら普通に考えて進出?米企業はタヒねやごらーにしかならないかと>日本の対応
昔から韓国企業の、脱韓国志向は強かったが実際にそれを実現するのはとても難しかった
今の政治的・経済的な意味での、国際情勢・(韓国)国内情勢ならば実現できるのかもしれない
ダイナミックですね……韓国らしいと言えば韓国らしいです
博多釜山航路に就航しているクイーンビートルもオースタル製なので買収に成功すれば今後は韓国でドック整備をやったりするんですかね
米豪は自国の防衛産業の外資による買収を警戒してしっかり守れるといいなぁ。
Austal の船はシドニーとかブリスベンに居るとちょくちょくお世話になる水上バスみたいな感じなんですけど、Austal は知らんうちにアメリカの軍需が稼ぎ頭になっていたんですね。
ハンファ、オーストラリア国内の民需を面倒見てくれるのだろうか。心配。
それとも買収されたあと、アメリカにある造船所だけ切り取られて再度売り出されたりするのだろうか。