インドとロシアは安全保障分野での結びつきが強く、ウクライナ侵攻後も対露貿易を維持するため独自の決済システムを構築し、ロシア産石油も大量に引き受けていたが、防衛装備品やスペアパーツを供給するロシアの能力に問題が生じたため「距離を置く」と報じられている。
参考:India pivots away from Russian arms, but will retain strong ties
ロシア製装備品のインドシェアが現在より低下しても別分野で関係を強化する
インドは主にロシアとフランスから防衛装備品を調達してきた歴史があり、過去20年間に調達した装備品の65%(600億ドル以上)がロシア製で、シン国防相は「今後10年間に1,000億ドル近い資金を防衛装備品の調達に投じるだろう」と予想しているが、モディ首相が推し進めるMake in India政策は防衛装備品の調達にも関係している。
シンプルに言うと「法律によって海外製装備品の調達を制限」「割高になっても国産装備品の調達を優先」「海外企業がインドの防衛市場に参入するには印企業との合弁による現地生産が必須」で、これまで思うような成果が挙げられなかった西側諸国(フランスを除く)は技術移転を伴う現地生産を認めてインド市場に殺到しているが、この市場の伝統的な強者であるロシアとフランスも「Make in India政策」を積極的に支持してシェアの維持に必死だったが、防衛装備品やスペアパーツを供給するロシアの能力に問題が生じたため「距離を置く」と報じられている。
既にインドとフランスは「歴史的な信頼関係の発展」を約束し、27日には「インド軍向けのヘリコプターや潜水艦を含む防衛装備品の共同生産」「友好国向けの防衛装備品に関する共同生産」で合意したと表明したため、インドにおけるロシアとフランスの立場は逆転する可能性を秘めているが、ロイターは関係者の話を引用して「インドはロシアの武器から遠ざかっても強い結びつきは維持するだろう」と指摘しているのが興味深い。
関係者の話を要約すると「対ロシア関係の軽視はロシアの中国接近を加速させる」「インドと中国との間で紛争が発生すればロシアは中国の肩を持つことになる」「仮にロシア製装備品から距離を置いてもエネルギー資源などの貿易を強化して結びつきを維持する必要がある」「対ロシア関係を飛び越えて調達先を西側諸国に広げる流れは止まらないが調達先の配分は平等ではない」となり、これはベトナムの状況と良く似ている。
ベトナムが1995年~2021年までに輸入した武器の80%以上(60億ドル以上)がロシア製で、特定国に武器調達を依存するリスクを問題視して武器調達の多角化に乗り出し、これを好機と見たバイデン政権はベトナム側にF-16売却を持ちかけ「これが成立すればロシアの影響力を低下させられる」と考えているものの、中国と国境を接して領土紛争を抱えるベトナムの外交的立場も非常に複雑だ。
ISEAS-Yusof Ishak Instituteでシニア研究員を務めるイアン・ストーリー氏は「ベトナムについて米国は非現実的な期待を抱いている。ベトナムと中国の関係がどれほど微妙なもので、ロシアと関係がどれほど深いものか十分理解しているとは思えない」「ベトナムの指導者達は大国の間で踊ることに長けている。四半世紀の間にフランス、米国、中国という3つの侵略者を退けたベトナムは大国同士の争い巻き込まれるのを嫌っており、独自の道を切り開こうとしている。米国はベトナムの立場を誤解すれば火傷を負うことになり、この地域において米国特有の二者択一を迫る外交スタイルはリスクが高い」と指摘。
アジア太平洋安全保障研究センターのアレクサンダー・ブービング教授も「ベトナム人は対米関係を強化しながら中国やロシアにも『関係を軽視していない』とアピールする必要がある」「ベトナムは非常に微妙な外交バランスを保つ必要がある」と言及、ニューヨーク・タイムズ紙も「ベトナムはロシアとの合弁事業を通じて代金を送金する方法でロシア製兵器の購入を試みている。ベトナム当局者は『西側諸国から制裁を受けるロシアの現状』は戦略的信頼を強化する絶好のチャンスだと考えている」と報じている。
恐らくロシア製装備品のインドシェアが現在より低下しても別分野で関係を強化するため、これが「ロシアの孤立化に繋がる」と捉えるのは早計なのだろう。
関連記事:インドは困窮するロシアからの石油購入量を増やす方針、中国を意識か
関連記事:米国はベトナムの取り込みを狙い、ベトナムはロシアとの関係を強化したい
関連記事:印仏が防衛装備品の共同生産で合意、インドを巡る影響力拡大はフランスの圧勝
※アイキャッチ画像の出典:Narendra Modi
🇺🇸のイデオロギーってのは「俺たちが正義。あいつらは悪。だから理解もしないし話し合わない」ってスタンスなんよね。
だから、結果よく分からない方向にいって失敗する。
相手を理解した上で、自分の利益になるように立ち回る。
そこを意識するのが大事なんやなと改めて感じてる。
グレーな立ち回り大切やな
グレーな立ち回りにはそれはそれでリスクがありますし……その辺りは個々の国々の周辺状況含めた歴史的経緯、経済に文化、政治状況で全く方針が変わるものです
インドやベトナムの場合はロシアと国境を接していないため領土問題がなく、中国やパキスタンと対立しているというロシアにとって都合が良い状況故の事情があるわけで……その辺りの理由を履き違えて同じ事すると全方位から信用失う事態にもなりかねないのではないかと
自分の立ち位置と相手を理解して初めてグレーな立ち回りが出来るから正直な所は出来る国と出来ない国があるとしか。純粋に軍事的な関係だけで割り切れる物でもない訳だし。
今のインドの兵器に関するポジションだと最新鋭機は自国開発か売ってもらえるなら買ってやるみたいな感じで行けるし、経済的に外国に大きく依存でも無いように思う。将来的な国力や核を含めて兵器輸出国の戦力をあてにしなくてもいい軍事力考えると忖度してもらって結構無理が通る感じよね。
> 四半世紀の間にフランス、米国、中国という3つの侵略者を退けたベトナムは大国同士の争い巻き込まれるのを嫌っており、独自の道を切り開こうとしている。
羨ましい。外交とはかくのごとくあるべし。
一方、親日反日の二元論しかない日本の現状よ・・・
米国のご指導あそばす方針以外の行動をしたら滅亡する制約がある日本からすると羨ましい自主性ですね
まるでそれ以外の方法があったかのような発言だけど、具体的にどんな方法、方策があったのです?
具体的には、冷戦時やそれ以降の時期に
中小国からすれば大国同士で勝手に争ってろこっちを巻き込むなが本音でしょうからね。
実質的に今も占領状態で敗戦国である我が国は米国一辺倒の外交しか出来ないのが辛いね
大国間で比較すると陣営としては「アメリカが一番マシ」とは思うんですけどね
どうもアメリカ自身が自国の国益そっちのけでイデオロギーに走って消耗してる感があるのが…
アメリカ寄りではあってもただ従うのではなく、どうにか日米の利益と平和に繫がるような道に引っ張り込めないものか
さらに問題なのは、「アメリカ大統領が二人いる状態」になってしまっていることでしょう。
対立法王や対立皇帝の如くに、熱心なトランプ支持者は“盗まれた座を元に戻す”という認識であり、赤いアメリカと青いアメリカ、どちらとどう付き合えばよいのか、わかりにくいことこの上ない。
バイデンとどんな約束をしても、トランプに反故にされ、その逆も平気で罷り通る。
近隣諸国どことも領土問題抱えてるのはでかいね。半島、中国台湾、ロシア……欧州は遠すぎてあてにならんし。
ちなみに国連決議においては、アメリカ発案決議の内半数ほどしか日本は賛成してない
所謂核心的な部分を除くと、意外とアメリカのいう事を聞いてない
そのため、アメリカも意外と日本には配慮してるそうな
インドは、ロシア産の石油など資源を利用して、インフレを抑え込みながら経済成長に成功していますからね。
ロシアとの関係維持は、安全保障上の制約のうえに、その見返りと考えても安いものです。
アメリカのアウトソーシングから始まりましたが(英語圏のため)、タタグループなど基盤となる巨大企業の育成に成功しており、2020年代GDP世界3位への道が見えています。
イスラエルとさえ、友好関係を維持していますから、全方位外交を継続しながら成長を続けそうですね。
鳩山政権の外交をあのまま野放しにしていれば、今頃は日本も全方位外交に(せざるを得なく)なってたかもしれませんね…😌
そういえばそんな時代がありましたね、随分立ち直ったように感じています。
リーマンショック後というのもあり、日本もうこのままダメなのかなあと感じていた事を思い出しました…。
米ソ冷戦時代から第3世界のリーダーたらんとしていたインドだもの。これが通常営業よ。
てかアメリカ君は価値観踏みにじったりとか、爆撃したりとか、NBC兵器かました相手に無神経過ぎるのを止めるのが最善手だゾ。ダブスタというか二重人格みたいな国だから、出来るならやってるだろうけどな。
まあ、ロシア今はウクライナでの戦争で輸出より自前で使う方優先してて、それでインドへ来る分が遅れたりやらだから、依存していざという時にそれでは困るって事な気が。
フランスとか他の西側諸国にも依存して同じような事になって嫌だろうから、どっちにもそれほど依存しない範囲が一番なんでしょうけど。
インドの立場や立地的には自国生産出来た方が良いだろうけど、上手く行かないから当分はロシアにフランスどっちの兵器も運用する感じで行くんでしょうね。
日本も独自生産しないと
大阪にでかいの作りましょう!
しかし外交と言うか国際関係は複雑ですね
中東で米軍に死者が出たドローン攻撃の件、アメリカはヨルダン内の基地で攻撃受けたと発表してますが
ヨルダンのムバイディン大臣はヨルダン国内は攻撃されていないと否定、攻撃されたのはシリアのアルタンフ基地だと言っている
地理的に近くはあるのですがなぜこんな齟齬が起きるのか
一体どんな政治力学が働いていて、攻撃されたのはどこだったのか
ヨルダン基地の前哨基地でシリア領内に勝手に置いてる基地のようですね。
これで報復ならロシアがウクライナに置いてる基地で報復になってしまう
共和党はイラクに開戦しろと喚いていますが、少しでも今の米軍の状況を理解している人間は、イラクと戦争できるような余力は無いと理解しています。
バイデンも、弱気なわけだけではなく、散々、軍部に「無理です」と言われているのでしょう。
すみません。ふむ様の投稿へのレスだったのですが失敗しました。