ケンドール米空軍長官は「早ければ2024年にCCA(有人機に随伴可能な無人戦闘機)の競争試作を開始する」と述べていたが、CCAの競争試作はボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、アンドゥリル、ゼネラル・アトミックスで争われることになった。
参考:The 5 Firms Selected to Build the Air Force’s Fleet of Autonomous CCA
競争入札の5社にはアンドゥリルが含まれているので斬新なCCAを期待したいところだ
米空軍は有人戦闘機に随伴可能な無人戦闘機のことを「協調戦闘機(Collaborative Combat Aircraft=CCA)と呼んでおり、ケンドール空軍長官は「早ければ2024年にCCAの競争試作を開始する」と述べていたが、ジョーンズ空軍次官補は24日「CCAの競争試作に参加する5社と設計・製造契約を締結した」と発表。
CCAの競争試作に参加するのはボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、アンドゥリル、ゼネラル・アトミックスで、ボーイングは「効率的に生産され、大規模な納入に対応し、有能で汎用性が高い手頃な価格のCCAを米空軍に提供できると確信している」と、ノースロップ・グラマンは「米空軍と緊密に協力してCCAの能力を手頃な価格で提供する」と、アンドゥリルは「競争入札に選ばれた唯一の非伝統的な防衛産業企業であることを誇りに思う」と声明を発表した。
これまでに判明しているCCAの情報は以下の通りだ。
- 1機の有人機が制御するCCAの数は当面2機
- 米空軍が調達するCCAの戦力サイズは1,000機
- この戦力サイズは2,000機まで膨らむ可能性がある
- 調達性に優れていることが重要だが驚くほど安価ではない
- CCAの調達コストはF-35の25%~50%=2,000万ドル~4,000万ドル
- CCAの基本的なミッションセットは有人機の射撃手、電子戦、センサーの3つ
- 米空軍は今後5年間でCCAに58億ドル(2024年は3.9億ドル)を投資予定
米空軍研究所はLCAAT (低コスト航空用航空機技術)の下でXQ-58Aを開発、この無人戦闘機は大量生産によって「安価な調達性(200万ドル~300万ドル)を実現できる」と注目され、CCAに要求される技術要素の検証=スカイボーグ・プログラムにも参加していたが、CCAのコンセプトが「安価な調達コストによる消耗前提」から「手頃な価格で消耗も可能」に変更されていたため、競争試作に参加する5社にクラトスは含まれていない。
但し、CCAに選ばれなかったクラトスとXQ-58Aの将来性は完全に閉じられた訳では無い。
クラトスはオクラホマ・シティに完成した生産拠点でXQ-58Aの低率初期生産を開始、現在はLOT2(XQ-58A Block2)12機の生産に入った段階で、同社のデマルコ最高経営責任者は「Block1と比較してBlock2はより高い高度を長時間飛行できるようになった」「LOT2で生産される半分以上はBlock2Bに変更され顧客や要求した追加機能が組み込まれる」と明かしており、米空軍はXQ-58Aを利用して空対空スキルと空対地スキルを実行可能なAI開発を進めている。
米海軍や米海兵隊もXQ-58Aを購入してテストを行っている最中で、特に米海兵隊は「滑走路運用に依存しないF-35BとXQ-58Aの組み合わせに関心があるのではないか」と噂され、XQ-58Aは海外の展示会にも出展されて潜在的な顧客からの関心も高く、CCAとは別の道で成功を収めるかもしれない。
クラトスがCCAへの参加を逃したのは本当に残念だが、競争入札の5社にはアンドゥリルが含まれているので斬新なCCAを期待したいところだ。
因みにアンドゥリルが発表した垂直離着陸が可能なRoadrunnerにも大きな期待が集まっている。
ジェットエンジンで駆動するRoadrunnerはモジュール式ペイロードを交換することで様々なミッションに対応できる多目的な無人機だが、この設計を流用したRoadrunner-Mは「空中目標を迎撃可能な徘徊型弾薬」と呼ぶべき存在で、目標と交戦しなかったRoadrunner-Mは自律的に帰還して再使用が可能だ。
Roadrunner-Mは飛行速度が速いため無人機以外との交戦も可能だと示唆(具体的には明言されてない)されており、戦闘機と防空システムの特性を併せ持った存在と言える。
#LongShotUAS will launch from human-crewed aircraft and close on enemy targets, keeping our warfighters out of harm’s way.
Learn about what’s next for the program: https://t.co/420eEgCo93 pic.twitter.com/w0xN1aKprr
— GA-ASI (@GenAtomics_ASI) January 20, 2024
追記:米国防高等研究計画局(DARPA)から「複数の空対空ミサイルを運搬可能な空中発射型UAV=LongShot-UAV」のプロトタイプ製造を受注していたジェネラル・アトミックスが新しいイメージを公開した。
自分で言うのもアレだが無人機の開発数が多すぎて追いきれなくなってきた。
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※アイキャッチ画像の出典:Northrop Grumman Model437
”1機の有人機が制御するCCAの数は当面2機”
母機の搭乗員は何人なのでしょう。
それで、難易度が随分と違うように思えるのですが。
F‐35か開発中の第6世代に随伴することになるんでしょう
AIの活用でパイロットの負担は軽減されることになるでしょうし、すべて航空機(戦闘機)による制御ではないとおもいます。早期管制機は戦場の状況を把握していますので制御するのには向いているのかもしれません。
米軍は現在すべての軍をネットワークで繫ぐことを目指しています。それが実現した時に無人機は本領を発揮するものと思われます。
単座が駄目ならかなりの主力であるF–35は駄目って話になりますが。今の空軍戦力で戦闘機だけに限るとステルス機は単座しか無く複座だとF−15と16が使える。
純粋に戦闘機だけとペアを組む様な運用だけするとは思えないし、やろうと思えば生存率向上のために鈍重なタンカーや輸送機や爆撃機とセットでも良いでしょう。
むしろ無人戦闘機を安価にするならハードウェア性能が劣る物を使うかもしれないので母機のミッションコンピュータの性能がかなり重要になる可能性すらある。そう考えると現状ではステルスは期待出来ないが複座で高性能なミッションコンピュータを積むF–15EXが特に運用に向いている?
素人の古い(笑)頭で考えると。
戦術戦闘機は、現在、2機1組のロッテで運用されていると想像します。
これは、ルフトバッフェで始まったやり方と思いますが。
1 機が戦闘行動をする時、僚機はやや後方で戦闘空域を警戒/監視して、
戦闘行動をする機体を援護し、必要に応じ介入、というものだったと思います。
ここで容易に考えつくのは、僚機の位置に有人機を配置することかと思います。
AI用に戦闘プログラムを作るとしても、過去の実践経験を基にすると考えれば、
おかしくはないのかな、と想像します。但し、視界内戦闘の場合ですが。
視界外戦闘に限れば、母機が戦闘機である必要は必ずしも無いような。
長射程のミサイルを撃つようなものでしょうから。
「無人機の開発数が多すぎて追いきれなくなってきた」
情報収集とまとめ記事お疲れ様です。無人機はこれからもバリエーションが増えてくるでしょうし、各国間での性能競争も激しくなりそうです。軍事的にどのような形で使われる事になるかはまだ分かりませんが、単純にどのような進化を遂げていくのかは興味深いですね。
品質とマネイジメント力に定評のあるボーイングにお任せください!
戦闘中のパイロットにできるのはバイクや車のモード切り替え程度でしょ、最初はAIも微妙だろうし
母機は中継機で細部はAWACSか基地のオペレーターにやらす感じで
あと簡単に見つかる様だと近くに母機がいるのバレちゃうからそれなりのステルスいるよね
最終的にはステルス重視のセンサー役とペイロード重視のシューター役に別れるんじゃないかな
あと電子戦機は電力足りんのかな
CCAにクラトスが入っていないのがちょっと意外でした。1機あたりの予算的にも2000~4000万ドルとむしろXQ-58Aより高額化しているのを見ると、どちらかというと安さより性能重視なのでしょうか。
ボーイング等既存のメーカーは生産ラインが硬直化していて高コストのイメージがあるため、新参メーカーの登場で生産段階においても革新が起こるのか注目しています。
F-35やF-22でも足りねぇNGADが必要だー、とか言ってる戦闘環境で航続距離3000km搭載兵装250kgってのは物足りないって事ですかね。
であれば記事にある通り海兵隊とか、あるいは日本に分散配置してグァムから出た有人機を支援するみたいな運用なら小回りのきくXQ-58にも可能性は残りそうです。
ボーイング「効率的に生産され、大規模な納入に対応し、有能で汎用性が高い手頃な価格のCCAを米空軍に提供できると確信している」
アメリカのブラックジョークは俺には難解過ぎるな
有人機の1/3のコストの触れ込みがいつの間にか有人機と同じ価格帯になるのがいつもの米軍。
頑張って管理人!航空万能論のタイトルに偽りはないとみせつけてくれ!!
というだけなら簡単なんだけどまとめる方はとても大変だとおもうので、今後とも趣味のおこぼれを勝手に他楽しませてもらうので好き勝手に更新してください!
200~300万ドルかぁ
米軍側はそんな皮算用してるけど、んな安く数が揃うんですかねぇ
F-16あたりならまだしも、ステルス機随伴でしょう?
そのうち有人機は航空母艦としてCCAへの給油・兵装補給・指示出しをする存在になっていって、前線で戦闘するのは無人機だけって事になっていくのかもしれないですね
SFの世界がどんどん近づいてきてて怖くなる
NGADのNGFは新規設計だからわかるけど、F-35などの既存機とCCAはどうやって連携させる気だろう?
F-35を含む既存機では射撃指揮図(Fire Control Picture)の生成ができないから、センサーとシューターの分離などは不可能なはずだけど。
アップデートで入れるだけでは?
そのための随時拡張なんだし
あんまりあれもこれもと詰め込むと稼働率の低下を招いて元の木阿弥になりそう
コスト感覚皆無のLMとボーイング以外から選んで欲しいです
よくわからないのですが、
無人の随伴機はどのようなメリット・狙いがあるのでしょうか?
有人機の負荷が増えてるだけのような気が・・・
運用負荷が増えそうな気が・・・
最初から無人機だけで飛ばせばいい気が・・・
誰か有識者の方ご教示いただけますか?
ミサイルキャリア・デコイ・被害担当機とか簡単に思いつきますが。
センサーとかECM装備みたいな高価なものはどうかと思いますが、信頼性があがるなら、武装は無人機に全部任せて、浮いた分の重量をそうした装備に振って、将来の有人戦闘機はミニ管制機みたいになるのかしれません。
随伴無人機を管制する有人戦闘機の役割は、戦術上の意思決定を行うだけになるはずです。
恐らくですが、無人機管制は提示される選択肢から有人機パイロットが行動を決定するようになるでしょう。意思決定に要する時間は短縮され判断ミスも減少するのではないかと。パイロットの負荷は逆に減ることになると思われます。
当該機に搭載されるAIはそれが可能な自律性/状況判断能力の獲得を目指して鋭意開発中です。
有人機が何機の随伴無人機を管制できるかはAIの性能仕様次第になるでしょう。米空軍が予定する装備化時期では2機とするのが妥当な達成レベルなのだと思います。
YF-23びいきとしては出来の良さに関わらずまーたノースロープ・グラマンが苦汁飲まされるの分かり切ってるのによく参戦したな。B-21製造するのだから、アメリカ政治の結果ボーイングに製造割り振るに決まってる。バルカンすら搭載しないJ-20のみれば制空戦闘機はもはやステルス全振り、遠距離ミサイル攻撃頼りが正解。F-22こそがトレンドから外れた。