インド太平洋関連

K9に各国から発注が殺到、今年だけで推定900輌前後の受注を確保か

韓国のハンファディフェンスが製造する自走砲「K9 Thunder」にはエジプトやポーランドからの新規受注、インド、ノルウェー、フィンランドからの追加発注が確定したため推定900輌前後の受注を確保した格好だ。

参考:Norway bulks up artillery with new K9 howitzer agreement, tank contract set for year end
参考:Suomi ostaa lisää ”Moukareita” Etelä-Koreasta
参考:China threat in mind, Army to order another 100 K9 Vajra howitzers from L&T, more to follow

運用国数や相次ぐ追加発注を考えるとK9の性能や運用状況は「完全に信頼を勝ち取った」と言っても良いだろう

韓国はエジプトから自走砲K9A1EGY、弾薬補給車輌K10、射撃統制車輌K11の調達契約(16.5億ドル/推定100輌前後)を締結、ポーランドとはK9A1とK9PLを648輌調達することで合意して212輌のK9A1調達契約を24億ドルで締結した。

さらにインドから100輌(さらに100輌の追加発注を検討中)、ノルウェーとフィンランドから計42輌の追加発注が確定、ハンファディフェンスは今年だけで推定900輌の受注を確保したことになり、総生産数も2,400輌を突破するだろう。

フォーブスやフォーリン・ポリシーに安全保障分野の記事を寄稿しているマイケル・ペック氏は「何故これほど多くの国が韓国のK9を購入するのか?」という問いついて「M109A7よりもK9は連続発射と持続発射の能力が優れているにも関わらず調達コストが安価だ」と指摘しているが、K9の隠れた魅力は総生産数が多い=巨大なマーケットへの参入が約束されている点で、産業界にとってK9グローバル・サプライチェーンへの参加は非常に魅力的だ。

例えば英陸軍へのK9A2提案に英国法人のロッキード・マーチンUK、レオナルドUK、ピアソン・エンジニアリング、ホーストマン・ディフェンス、スーシー・ディフェンスなどがこぞって「協力する」と表明したのも「K9グローバル・サプライチェーンの一員として新たなビジネスチャンス=アップグレード作業や消耗品の供給などに関与できる」と判断したためで、自動装填装置を採用したK9A2へのアップグレードに多くの導入国が関心を示し、搭載する榴弾砲を52口径から58口径に換装するK9A3の研究・開発が進められている。

さらにハンファディフェンスはK9と米陸軍が開発を進めているロケットアシスト砲弾「XM1113」との互換性も披露して「西側標準の自走砲」の地位を固めつつあり、これは潜在的な導入国から見ればプラス要素と評価されるため今後も導入国が増える可能性が高く、長期的な投資が約束されているK9プラットホームでのビジネスチャンスは小さくないという意味だ。

勿論、武器導入には外交関係や安全保障政策との兼ね合いがあるため「ビジネス要素」だけで導入が決まる訳では無いが、運用国数や相次ぐ追加発注を考えるとK9の性能や運用状況は「完全に信頼を勝ち取った」と言っても良いだろう。

追記:韓国のハンファディフェンスは今年7月、ポーランドのディフェンスメディア「Defence24」とのインタビューの中でK9の製造能力について「年間200輌以上」と明かしている。

関連記事:西側関係者が参加したK9A1のテスト、米陸軍が開発中の新型砲弾試射を披露
関連記事:米メディア、何故これほど多くの国が韓国のK9を購入するのか?
関連記事:エジプトがK9導入、1,900億円規模の契約を韓国と締結
関連記事:インド陸軍、山岳地帯での運用テストに合格したK9バジュラを追加導入する方針
関連記事:韓国製戦車の欧州上陸が確定、ポーランドがK2とK9A1の本契約に署名

 

※アイキャッチ画像の出典:Hanwha Defense

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コメント

    •  
    • 2022年 11月 18日

    ドイツの自走砲は性能は実戦を踏まえてもおそらくトップだろうが、生産数やコスト、技術移転の制限その他諸々ふくめて、総合力でかなり押されている印象。ただはたからみても売れすぎて納期守れるのか心配になってくる。国内分をしっかり確保しているのだろうか。まぁライセンス販売も増えていくだろうし、最低限抑えたらあとの国内分はコストが下がってからということもできなくもないのかもしらないが。何にせよシンプルな兵器なので長く使うことは分かりきっている自走砲、世界中でシェアを持てば将来的な維持コストの軽減は相当。重砲が重要な韓国陸軍にとってはかなりの追い風になれるだろうか。

    19
      • nachteule
      • 2022年 11月 18日

       国内分の確保と言うのが何を指すのか分からないが本体は陸軍大国なだけ有って世界でもトップクラスの保有数で追加の必要は無い。だから本体だけならば国内を気にせずに輸出分を作れば良いと思う。
       懸念すべきは初期型のアップグレード用部品が確保出来るかだけだろう。それすら新型主力戦車を商売のために外国に回す時点で計画遅延は決定しているとしか思えない。

       ただ一番時間が掛かるであろう部品の製作期間ってどんなレベルなんだろうなとは思う。韓国はどうか知らないが酷ければ特定の職人がかなりの期間掛けてるって話もあるんだが。

    • ブルーピーコック
    • 2022年 11月 18日

    あとは道路インフラと気候もかな。整備された道や、硬くて平坦な地面なら装輪式が有利だけど、デコボコな土の道ばかりだったり、冬の雪原や泥濘地での戦いが想定されるなら装軌式の方が優れてるし。

    2
    • f
    • 2022年 11月 18日

    生産設備の韓国国内過剰投資を避け欧州向けをポーランド辺りでライセンス生産でもさせて、何割かのライセンス料で儲ける形はあり得るのだろうか?

    3
      • けい2020
      • 2022年 11月 19日

      ポーランドではK9のポーランドバージョンの国内生産と自由輸出権利みたいな話しがありますね

      というか、これが無ければ早期の納入を求めてるところへの
      供給が全く足らない事にはなりそうです(韓国軍に今まで納入した期間物量的に、増産しても無理がある)

      2
    • ジョブス
    • 2022年 11月 18日

    マイクロソフトのOSやLINEやらPayPayみたいに、一度大きな入れ物作れば、後は勝手についてくる的な?

    7
    • 白髪鬼
    • 2022年 11月 18日

    あとは行列に早く並ばないと何年も待たなければならない、というお馴染みの消費者心理が働いてるのかもしれないですね。
    ロシア=ウクライナ戦争で、制空権を十分に確保出来ない状況では、長距離火力が結局ものを言う事が露わになりましたから、陸続きに仮想敵を抱える国は、一日でも早く手に入れたいでしょうし。

    しかし、ガンダムの結局白兵戦兵器に回帰したストーリーに近いものを感じます。

    8
    • もり
    • 2022年 11月 18日

    数十年後のミリタリー専門誌の21世紀前半の傑作兵器特集に必ず載るような兵器になったね、こりゃ

    29
    • Vauwibqv
    • 2022年 11月 18日

    韓国防衛産業の大躍進が本当にうらやましい…
    輸出実績ゼロの日本防衛産業と比較すると、本当に恥ずかしくなる

    15
      • 無印
      • 2022年 11月 18日

      また消されちゃうよ

      14
      • トーリスガーリン
      • 2022年 11月 18日

      日本はようやく殺傷兵器の輸出制限撤廃に動き出したみたいなんでこれからこれから
      兵器市場は加熱したままだし上手くやれば何処かに食い込めるかもしれないよ
      諦めるのはまだ早い
      無論、最大限の努力が必要になるし実るとも限らないけどね…

      17
      • 2022年 11月 19日

      輸出出来るようになったとしても、売れるんですかね、わー国の兵器は。
      戦争になったら、平気で戦地でのアフターサービスは出来ませんとか言う国ですよ。

      1
    • 2022年 11月 18日

    本質論を見失っているような気がする・・・・連射速度、とか・・・手数の多さは、問題ではないのでは?
     「戦場認識力」それに相応した「精密砲弾」・・・今回の戦闘に足かせになっている可能性は「精密砲弾の不足」
    「戦場認識力」とそれを活かし切る、精密誘導弾の不足・・・不思議なのは(誘導信管)が話題に上がらないこと?
     それと・・・はいマースの弾薬の長射程化・・・(弾頭の軽量化+滑空翼の付与)・・・。

    日本も、やたら装備から外さないで・・・誘導信管を付けて、旧式装備を使うことを考えたら?

    3
      • ビーフィーター
      • 2022年 11月 18日

      おじさん構文かな?

      35
    • 通りすがりのななし犬
    • 2022年 11月 18日

    韓国兵器産業にとっては、受注増は大変嬉しいだろうけれど、生産は大丈夫なのだろうか? 既存の設備で間に合うのだろうか? 韓国はいろいろの事情で設備投資のための社債発行がままならない状態になっているのだけれど?

    3
      • 無能
      • 2022年 11月 18日

      現地でのライセンス生産があるとはいえ、900両の注残を一体何年で消化するんでしょうね?
      これだけ売れると砲身をはじめとした交換部品の需要も相当な量になりますし安定的な供給網が整備できるといいんですが

      6
      • けい2020
      • 2022年 11月 19日

      そうなんだよな、韓国電力以外は社債発行がまともに出来ないぐらいは
      韓国債券市場がショートしてるから、増産投資する資金をどこから持ってくるのかわからん

      これで韓国政府が資金供給したら、今度は契約が怪しくなるぐらいは揉めそうだし

      K9は今まで23年で多分1000両ぐらいなのかな、だとすると年40-50両の生産力だと思われる
      24時間交代にしたとして年80ぐらいかな(韓国労総環境で24時間が認められるかは微妙だけど)

      やはり韓国生産より、ポーランドからの輸出前提じゃないと10年でも納入完了しないかも

      7
    • ザコ
    • 2022年 11月 18日

    去年まではまだ比較的安価なのと技術移転が売りの隙間産業的な語られ方だったと思うのですが、今は普通に一級品になってますね。
    今後のアップデートを考えると西側最高レベルの自走砲になる日も遠くない?

    11
    • 名無し2
    • 2022年 11月 19日

    散々馬鹿にされながら地道な努力を重ねて完全勝利したK9。登場時一級の性能を持ちながら輸出の検討すらなく終わる99式自走砲。何故ここまで差がついたのか…

    8
    • 折口
    • 2022年 11月 19日

    実際のところ各国自走砲の中身ってどう違うのか気になってK9とPzh2000と99式の中身自分なりに調べたんですが、結構違ってて面白かったです。

    Pzh2000:主弾薬庫が全部床下にまとめられており、戦闘室フロアが広い上に後部ドアを解放できるのでALS(自動装填装置)故障時にはM109と同様に車外から人力給弾しながらの砲撃もできる。実際演習なんかだとM109同様に戦闘室を解放して手動で撃ってる場面を結構見る。薬嚢は手動挿入。世界最高規格と言われているけど、ALS故障時に床下弾薬庫へのアクセスどうなっちゃうのとか色々考えるとあくまでM109時代のオペレーションの邪魔をしないところにALSをねじ込んだという印象。速射能力は世界最高。

    K9:無印型とA2でALS方式が違う。無印ではスポンソン部に砲弾を横置きしており、弾薬庫前までせり上がってきた砲尾側のトレーに砲弾を「滑り落とし」、トレーが砲尾に移動してラマーが砲弾を薬室に挿入する方式(薬嚢は手動)。砲弾が砲尾真後ろの高いところにあるので、ALS故障時にも下から持ち上げる動作が無く一定の速射性が確保されてそう。一転してA2型では砲弾薬嚢を含めた完全自動装填化しており、無印型で砲弾弾薬庫だった場所が薬嚢置き場、砲塔側面後部が砲弾置き場になっている。

    99式:戦車用ALSに近い構造。砲塔後部にベルト式弾薬庫があり、その中に砲弾と薬嚢が入る。違うのは弾薬庫開口部が車体中央ではなく車体右側に寄っていることで、この開口部前にあるトレーが砲尾側まで90度倒れることで高仰角時の装填にも対応する。トレーは二重構造になっており砲弾と薬嚢を同時に装填可能。最初から高規格の完全自動装填を達成しているが、ALSが砲塔後部右側を専有していて人力装填時に使える空間が左側のみなので、ALS故障時に射撃能力をどの程度残せるかという点では上記機種に及ばない可能性も。

    という具合で、同じ機能性を達成する手段が各国の技術水準や運用者側のドクトリンで劇的に違っているんですよね。Pzh2000は(おそらくドイツ連邦軍が出したであろう)現場側の要望に引っ張られているのを感じます。逆に陸自は75式からの伝統なのか小型化や省人化のためにMBTでもSPAでも機械化部隊にはALSをどんどん入れてますよね(関係ないけど陸自のこの辺の考え方は米独よりむしろ仏やソ連に近いと思う)。

    既に何度も述べられているようにこういう細かいスペックや仕様の部分は商業的な成功とはあまり関係ないですが、K9の中間的な特性が「いろんな使用法の可能性を残す」ことでより多くの顧客のニーズに合致したという見方も出来るんじゃないかと思う次第です。K9の顧客がPzh2000や99式を欲しがるかというと必ずしもそうではないと思いますが、逆にドイツ連邦軍や陸自がK9を使うことになってもある程度受け入れられると思うんですよね。

    18
    • 58式素人
    • 2022年 11月 19日

    記事の内容とはズレるのだけれど。
    日本では、100mm級の榴弾砲は絶滅(?)してしまったけれども。
    その後釜が重迫と155mm榴弾砲だけで良いのかなと思います。
    戦車砲だと間接射撃に不測があるような気もします。
    重迫を大きく超える射程の100mm級野砲は本当にいらないのかな。

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