台湾メディアは13日「F-16Vの長距離攻撃能力を拡張するためAGM-158の売却を要請したが、米軍もAGM-158の数が不足しているため、代わりにJSM売却を提案されたものの統合費用を負担する必要があり、AGM-84L-1の調達を検討している」と報じている。
参考:美拒AGM-158飛彈 建議改採購JSM飛彈空軍因「研發費」卻步
参考:Inflection Point
参考:US Army readies new artillery strategy spurred by war in Ukraine
台湾有事で最も期待されているのが長距離攻撃兵器だが、米軍ですら必要量を確保できていない
台湾空軍はF-16Vの長距離攻撃能力を拡張するため「AGM-158」の調達を予定していたが、米軍も有事に必要とされるAGM-158の数が不足しているため台湾の要請を拒否、代わりに米国のRTX(旧レイセオン)とノルウェーのコングスベルグが開発した「Joint Strike Missil=JSM」の調達を提案したが、JSMはF-16への統合が予定されていないため台湾が統合費用を負担する必要があり、統合作業にどれだけ時間がかかるかも不明なためJSM調達を拒否、最終的にAGM-84L-1の調達を検討しているらしい。
米軍が懸念している台湾有事の戦場は中国本土に近く、長年の投資と準備で人民解放軍の航空戦力、ミサイル戦力、防空システムは高度で強力な接近阻止・領域拒否(A2/AD)を実現しており、米シンクタンクのランド研究所は7月「何度も試みたウォーゲームで米軍は中国の高度な防空システムを制圧するのに失敗しているため、台湾周辺での戦いはイラク戦争の時のように絶対的な制空権を確保するのは難しく、根本的に台湾を舞台にした戦いは圧倒的に中国優位な戦場環境だ」と指摘。
この脆弱性をカバーできると期待されているのが「長距離攻撃兵器」で、米空軍は戦場に巡航ミサイルを運搬するため戦闘機や爆撃機に加え、C-17やC-130といった輸送機の活用を検討しており、ロッキード・マーティンは「空中投下型弾薬パレット(通称:ラピッド・ドラゴン)」の開発を進めている。
ラピッド・ドラゴンを使用すればC-17は36発、C-130は12発のAGM-158を空中投下することができ、台湾周辺にC-17を10機投入すればAGM-158を360発(C-130なら120発)も一度にばら撒くことが出来るのだが、問題は「AGM-158をここまで大量に消耗することを想定していなかった」という点で、新アメリカ安全保障センターも6月に発表したレポートの中で「長距離攻撃兵器の取得に関する投資が不十分なため産業界の生産力は限定的で、米軍の備蓄量も十分でないため今直ぐ投資を増やせ」と警告。
台湾メディアも「米軍は台湾有事に必要なAGM-158が十分確保できていないと判明、自軍のニーズを満たす必要性からAGM-158の輸出は出来ないと言ってきた」と報じており、米国は同盟国や友好国の需要をよりも自国のニーズを優先させてきた格好だが、この問題についてオーストラリア人アナリスト(ソース失念)は「本格的な戦争では火力の質も重要な要素だが、最も重要なのは火力の量で、高価で複雑な兵器と同時に安価でシンプルな兵器を取得すべきだ」と主張していたのが印象的だった。
因みに長距離攻撃兵器とは無関係で話がどんどん脱線していくが、これまで米陸軍の砲兵部隊は長距離精密射撃を重視し、58口径155mm榴弾砲を採用したM1299、エクスカリバー砲弾の射程延長、100km超えの射程を実現するラムジェット砲弾の開発を進めてきたが、ウクライナでの戦いを目の当たりにした米陸軍のジェームズ・レイニー大将は「引き続き長距離精密射撃も重要だが、戦場で最も敵を倒しているのは通常の大砲だ」と述べ、榴弾砲による通常火力戦略を年末までに発表する予定だ。
つまり陸上戦でも火力量をカバーするため最も安価でシンプルな「通常火力」に回帰する様子が確認されており、年間生産量が400発に過ぎないエクスカリバー砲弾は局地戦や限定的な戦いに効果的でも、火力量を確保するにはシンプルさが一番なのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Todd Cromar
日本も将来ラピッド・ドラゴンを採用するもしくは似たようなのを独自開発するのかな?
仮にラピッド・ドラゴンを採用するとしてメリットはアメリカとミサイルを共通できる事でデメリットは今回の台湾みたいにミサイルを直ぐには購入できない事
独自開発のメリットはミサイルの調達を他国に左右されない事でデメリットはオリジナルミサイルなので実際に使用した後直ぐにはミサイルを必要数調達できないことですかね。
5月に「輸送機用誘導弾発射システム(投下試験用)」を三菱重工業と契約してますね。
とりあえず試験用はC-2輸送機から12式地対艦誘導弾能力向上型(空発型)を発射するシステムの様です。
これを開発するからには覚悟決めて国産ミサイル量産する、って事だとすればむしろメリットになるんじゃないですかね。
試験用だし、後からアメリカのシステムとセットで機体も買えとか言われそう。
非常に強力な反面、非力で鈍足な輸送機が母機となるので不安点もある、例えばロシアがウクライナでやってるMi-31と長AAMを用いた高高度からの攻撃、高度と速度も相まって射程は400kmを超えるとか、戦闘機なら運動エネルギーを殆ど失ったミサイルなんて怖くもないけど、輸送機ならそうもいかんだろう
「『将来』ラピッド・ドラゴンを採用するもしくは似たようなのを独自『開発するのかな?』」への「既に試験用を契約してますね」というコメントに対して「試験用だし〜」って何が言いたいんです?
てか「AGM-158が米軍の分すら十分になくて台湾が買えない」って記事なのにアメリカがそのAGM-158を大量にばら撒くラピッドドラゴンを日本に押し売りするんですか?当然弾も売るんですよね?
あと長時間決まった領域に滞空することが求められる早期警戒機や空中給油機と違って、好きなタイミングで好きな場所からぶっ放して即退散のこの手の運用に長AAMで対処するのはなかなか大変だと思いますが。
兵器はシンプル(軽量頑丈安価)をもって良しとすると言ったのは誰だったかな
あとは戦術の問題でそれは軍人の領域
米国はウクライナ戦争でお金をつぎ込むより、こちら関連などに力を入れるべきだったと思う。
世界の本当の危険は、中国共産党だから。
AGM-158はJASSMで、AGM-84はハープーンミサイルのようです。(自分が分からなかったので半分メモ書き)
JASSM自体意外と歴史があるミサイルですが、恐らく今数が足りないのはB型でしょうかね。今の顧客はオーストラリアに日本、英語のwikiだとドイツやオランダが潜在的顧客とされていたので仮に台湾が購入できても長い列の後ろになったかもしれないです。
なので、JASSM自体は交渉を続けつつ、ハープーンの数を増やすが現実的方向性でしょうか。
それにしても、ココ最近は台湾関係で兵器移転の遅れの話が出てきているのが不安ですね。一連の動きを見ていると何だかんだ国産ミサイルを保有する事のメリットを感じる流れでもあります。
許される事はないのでしょうが、日本かJASSMの生産工場置けたら楽なんでしょうねぇ。あちらも技術はあるから基盤のお手伝いができたらと。
色んな面から現実的では全くないですが……
ウクライナ戦争に、大量のリソースを割いてる弊害がでてきましたね。
台湾海峡の抑止に繋がるという建前が、どこまで本当なのか試されてると思います。
米軍の武器備蓄は、危機的水準になっており、台湾の武器備蓄がどこまでできるのか時間との戦いになっています。
台湾は、島国のため、ウクライナのように戦中に武器や弾薬支援は難しいです。
制海権・制空権が不安定になっており、潜水艦や機雷が展開されれば、難しいでしょう。
日本も、平時に生産基盤を整える所から始める必要がありますね。
今までのように、ボランティアのような利益で、防衛装備品に協力してくれる会社は少なくなっています。
CSISのシミュレーションでは大半のシナリオで台米日の辛勝となるらしいですが、ランド研究所の「圧倒的に中国優位な戦場環境」という言い口からすると、ランド研究所では違うシミュレーション結果が出ているんですかね
だとすると薄ら寒い話です
そりゃ武器の質量ともに米軍が圧倒的に優位なんですから。
その圧倒的な兵器の優位を持ってしても、台湾海峡は中国側に地の利があるためにイラクのような圧勝は難しい、という話ですね。
10年前ならどのシナリオでも米台連合が圧勝だったのでしょうが。
今や技術格差も生産力も差が詰まって来て昔のような楽な話にはならない、ということでしょう。
「台米日の辛勝」、台米日も莫大な損失となる理由の1つが「圧倒的に中国優位な戦場環境」ということと思いますよ。
そもそも、大半の日本人には台湾有事に際して当事者になる覚悟ができているとは思えません。
朝鮮戦争やベトナム戦争では在日米軍は出撃基地となりましたが、在日米軍基地を含む日本が北朝鮮や北ベトナムから攻撃を受けることはなかったので、今回もどこか他人事のように感じているのでしょう。
今の状態で中国軍が台湾に侵攻したら日本はパニックになるのは確実で、なし崩し的に日本が事実上の参戦を強いられるのか、あるいはその前の段階で世論醸成のための強力なプロパガンダが行われて、自衛隊を強化するための隊員リクルートも併せて実施されるのでしょうか?
今回の日米韓の首脳会議で、日韓が米国の生産能力の補完って議論がなされている可能性は高そうだな。
サプライチェーン強化。
それがウクライナへの弾薬だと製品または可能な限りの半製品をいったん米国に移転する。
台湾向け弾薬だと日韓がライセンス生産して米国に納品する。
韓国の弾薬開発状況は知らないけど、日本は独自弾薬開発時にできるだけ米国弾薬との代替性を確保するetc.
XM1299ちゃんも生まれる前から暗雲が…。開発しているうちに前提となる要件が陳腐化してしまうのは米地上軍装備開発の悪い癖というか伝統芸ですが、自走榴に関しては何でも良いのでとりあえず更新して差し上げてほしいですね。火力が重視される以上、ALSの無いパラディンよりは射程優位が無くても投射料の多いXM1299のほうが良いでしょう。
ドズル閣下の「戦いは数だよ兄貴!!」は至言だったってことですな。
AGM-158が今の時点でダメなら先の話とは言えF-15J近代化改修機の能力向上の目玉の一つがどうなるんだろうかね。12式地対艦誘導弾能力向上型も島嶼防衛用新対艦誘導弾も全然間に合わないけどどうすんだこれ?
ASM-3Aの調達と改の開発は進んでますし、哨戒機用新空対艦誘導弾の量産も始まって、輸送機用誘導弾発射システムなんてのも試験を進めてますし、
そもそもF-2が現役の内は対艦対地攻撃でF-15J(SI)がそこまで頑張る必要はないのでは。