サウジアラビアは2022年度の国防予算として1,710億リヤル/約5.2兆円(前年度比約10%減/5,750億円減)を拠出すると発表したが、これはサウジアラビアの軍事増強が縮小しているのではなく予算効率が向上しているためだと米メディアが報じている。
参考:Saudi Arabia decreases defense spending to $46 billion
この動きに乗り遅れた海外の防衛産業企業は中東市場そのものから排除されてしまう可能性が高い
2022年度の国防予算額が前年度よりも削減されている主な理由は2つあり、1つ目はF-15SをF-15SA仕様にアップグレードする作業やアルジュバイル級コルベット調達がほぼ完了したため米国のボーイングやスペインのナバンティアに支払う費用が大きく目減りした点、2つ目は海外企業に依存していた装備調達やサポート体制が徐々に現地生産品や現地企業によるサポート体制に切り替わりつつあるため予算効率が向上しているためだと米国やバーレーンの軍事アナリストが指摘している。
特に興味深いのは2つ目の理由だ。
サウジアラビアは他国の政策に振り回されにくい独自の安全保障体制を確立するため防衛装備品の海外依存を2030年までに是正(国防支出の50%を国内で消化する)するつもりで、国内の防衛産業育成や研究開発に今後10年間で200億ドル(約2兆円)以上を投資すると今年2月に発表したが、すでに海外依存からの脱却に対する取り組みは始まっている。
例えば米国のロッキード・マーティンと共同でS-70(UH-60の派生型)の現地製造、ロシアのカラシニコフAK-103のライセンス生産、中国航天科技集団公司と共同でCH-4/UCAVの現地製造準備(中国のTengoen Technologyが開発したAl EQAB-1と呼ばれるUAVをライセンス生産中)、トルコのヴェステルが開発したKarayel-SU/UCAVのライセンス生産などに取り組んでおり、特にサウジアラビア軍事産業(SAMI)とロッキード・マーティンが共同で立ち上げる合弁企業はサウジの防衛や安全保障能力を強化に大いに役立つと噂されているのが興味深い。
新しく設立される合弁企業の株式はサウジアラビア軍事産業が51%、ロッキード・マーティンが残りの49%を保有することになっており、両者は協力してサウジ産業界への知識や技術の移転、サウジアラビア人自身が製品を製造して自国軍に供給するためのトレーニングを行い同国の防衛産業を発展させ、サウジアラビアの取り組みをバックアップする予定だ。
補足:ただ合弁企業が具体的に何を製造するのかは明らかになっていないが、恐らくロッキード・マーティンがサウジアラビア軍に供給している弾道弾迎撃システムTHAAD、C-130H、UH-60L、S-70A等のメンテンナスや消耗品などの製造、新たにサウジ軍が導入する装備品を合弁企業でライセンス生産するのかもしれない。
つまりサウジ市場で海外の防衛産業企業が今後も収益を上げ続けるためには現地に合弁企業を設立してサウジアラビアの取り組みに寄り添うしかなく、防衛装備品のライフサイクルコストの中で取得費用の倍以上の金額が動く運用・維持に関わる作業をサウジアラビア自身が行い、この辺りにかかる費用を削減して予算効率が高まれば現行のサウジ軍を維持していくコストに大きな変化が生まれるのだろう。
恐らく今回の前年度比約10%減はF-15SAへのアップグレードやアルジュバイル級コルベット調達に関する費用減が大きなウェイトを占めているのかもしれないが、このような石油時代の終焉を見越したサウジアラビアの取り組みは中東諸国に広がっており、アラブ首長国連邦は国内の防衛産業企業を2019年に統合してEDGEを設立するなど海外に依存した防衛装備品の調達体制見直しは非常に早いペースで進んでいるため、この動きに乗り遅れた海外の防衛産業企業は中東市場そのものから排除されてしまう可能性が高い。
因みに2020年の防衛関連売上高でEDGE(47.5億ドル)は世界23位の規模を誇っており、ゼネラル・エレクトリック(45.7億ドル)、サフラン(45.1億ドル)、三菱重工業(44.2億ドル)、ラインメタル(42.4億ドル)、エルビット・システムズ(42.4億ドル)、MBDA(40.5億ドル)、Naval Group(37.5億ドル)、ダッソー(37.2億ドル)、イスラエル航空宇宙産業(35.1億ドル)、サーブ(39.0億ドル)、川崎重工業(21.8億ドル)といった有名防衛産業企業よりも順位が上で、EDGEの最高経営責任者は「我々は防衛装備品を買う側ではなく自ら開発して販売する側になった」と述べているのが印象的だ。
関連記事:サウジアラビア、武装可能なトルコ製無人航空機「Karayel-SU」のライセンス生産を開始
関連記事:サウジアラビア、防衛産業発展のためロッキード・マーティンとの合弁企業設立を発表
関連記事:サウジアラビア、ロシアとの武器共同生産と防衛産業育成に200億ドル以上の投資を発表
※アイキャッチ画像の出典:Gordon Zammit / GFDL 1.2
油断大敵のことわざか
油切れする将来に備えて、取り組みが物になるかならんかは別として、世界の状況は常に目まぐるしく変化してるのを、日いづる国から日沈む国になりかねない東亜の島から焦りつつ遠望する
石油資源で贅沢するばかりで、努力も勉強もしないアラブって印象は終わるのかい
石油依存という考えを変えるだけで
今まで通り、嫌な仕事は周りの貧困国から集めた労働者に任せて
やつらはこれからも贅沢三昧さw
ニートが働くわけないだろw
そのオイルニートが世界経済を動かしもしてるのに
働くのがバカらしくなるねw
日本だとトルコのヴェステルってどっちで有名なんだろうな。大抵の人だと家電のイメージだろうが。
EDGEに関しては国内企業統合しての防需メインだから金額多くても不思議じゃないなと思う。むしろ需要が先細りの国内メインのMHIがそれだけ高い順位にいる方が不思議だわ。
日本ももっと防需特化の企業構築に力入れるべきだよ。他所部署で稼げるから国へのお付き合い程度は頑張りますとか、防需はお荷物だから冷遇しますとかで良いもの作れるのかね。
それよりも民需の方だろ、立て直すべきは
民需産業が世界のトップレベルを維持出来れば、防需のレベルだって付いてくる
逆などは無いよ
ちょっと勘違いしているようだけど、ここで言う特化はMHIと別会社の防需部門とかを統廃合しろって話。古くは日産航空宇宙事業をIHIに譲渡したのとか、そんな事。
結局どんな国でも出来れば安全保障分野の海外依存は減らしたいし、自国の軍需産業も育てたい
そして企業は相手国に「合弁会社を作れ」と言われれば利益が減ってもこれに従うほかない
今は完成品を買ってくれる新興国も最終的にはみんなこのようになるし、輸出で軍需産業を発展させる・・なんてのはますます難しくなっていくだろうな
独自の装輪装甲車で内製化してるのガン忘れしてんな
既にここらの連中は装甲ジープやMRAPは輸出する側になってる
三菱ってダッソーより稼いでんのか
まあ兵器部門じゃなくてグループ全体の話なんだろうけど
それでも凄いわ
産業用GTや大型ディーゼル機関の寡占企業なんだよなぁ…
ビーバーでお馴染みの空調関係も割と堅調のはずだし
『防需=自衛隊が使う物』って意味で三菱グループ全体で考えるなら桁は1つ上がると思うが。まさか三菱重工と三菱電機だけを考えている訳じゃ無いよな。
軍需を育てて経済的自立や世界的兵器産業への関与を目指すって考えがいかにもアラブ石油王の王子様だな。どっちみち原油の収入が減っていけば国家的金満体制も維持できなくなって、出稼ぎ労働者頼りの産業や社会インフラごと瓦解するんだから。多少自立を意識したところで焼け石に水だし、財源消失時代を見据えるならまず自分たち王侯貴族の生活を見直すところからだろう。実際のところ、多くの王族は今のうちに目一杯蓄財して海外に移住するつもりなんだろうけど。
石油採掘が産業化される以前の、オスマン時代のアラビア半島なんか、一部の都市以外は馬賊のうろつく砂漠の荒野だし、その頃の状況に戻るなら実質的に国家消滅ですよムハンマド皇子。
防衛関係って書いてあるやんけ。
>三菱重工業(442億ドル)
>川崎重工業(218億ドル)
この時点で日本の防衛費超えてるんですが・・・
どう考えても1桁ちがうやん、わざとかよ。
産油国は脱炭素社会を見据えて、石油に依存しない体制にむけて全力で投資中だからね。
軍事の記事だけだけど、経済面での取り組みもかなり本気。
防衛関連売上高、多分一桁ズレているような
川崎重工ってそんなに売上高無かった気がする
日本沈没ってドラマ、個人的には面白かったけど
保有兵器や軍需産業を引き合いに出せば何より引っ張り凧だったはず
あと資産は通貨だけではなく、金に換えて保有するのも大事だと思った
アフガンではサプライチェーンを全部アメリカ内で循環させたら撤退と同時に軍が維持できなくなってタリバンに秒殺されたからな。サウジとしても同じ轍は踏みたくないだろう。
米軍撤退とほぼ同時なんだからアフガンはサプライチェーンどうこうとかいうレベルじゃないわ
というかもともとかなりの地域をタリバンに押さえられてたし逆に兵器だけ揃ってても統治がダメダメだと意味ないという事例
「中露と取引する国に軍需工場を建てるな!」とバイデンが言うかどうか気になる。S-400はダメで中国のUAVはOKとか親中派しか納得しないだろ
アラブだけに、油を売ってるような暇そうなお話ばかり