米国関連

バイデン政権、ウクライナ関連を含む計400億ドルの追加資金を議会に要求

バイデン政権は下院に対して計400億ドルの追加資金を認めるよう要請、この中に240億ドルのウクライナ関連資金が含まれていると報じられており、米政府高官は「これが認められば軍事支援を第1四半期末まで継続できる」と述べている。

参考:Biden seeks $24 billion for Ukraine, testing bipartisan support in Congress
参考:Biden Seeks $40 Billion Emergency Bill, Setting Clash With GOP

返還された62億ドルと要請した36億ドルで「2024年3月末までウクライナ支援を続けられる」という意味だろう

バイデン政権が議会承認をパスして次々とウクライナ支援を実行できるのは下院が承認した白紙の小切手=累計1,130億ドルの資金がベースで、この資金の3/5=670億ドルは軍事支援に、残りの2/5は政府援助、経済支援、難民支援などに割り当てられているが、民主党は予算関連の先議権を有する下院の主導権を失っており、白紙の小切手に対する資金補充は昨年末(12月の450億ドルが最後)から行われていない。

出典:The White House

ウクライナ支援の資金について国防総省は「9月末までに底をつく」と予想していたが、米軍備蓄から持ち出された装備の価値を過大評価していたことが発覚したため62億ドルの資金が返還され、9月末までウクライナ支援の資金が尽きることはなくなったが、10月以降の何処かで支援資金が尽きるのは目に見えており、バイデン政権は下院に対して計400億ドルの追加資金を認めるよう要請した。

計400億ドルの追加資金には「ウクライナへの軍事援助:131億ドル」「戦争の影響を受けた国々への経済・人道支援:73億ドル」「発展途上国に対する支援:10億ドル」「ワグネルに抵抗するアフリカ諸国の支援:2億ドル」「災害援助基金の資金補充:120億ドル」「麻薬の流入抑制」「国境警備の強化」「消防士の給与引き上げ」に関する資金が含まれているが、この中に噂された台湾援助に関する資金が含まれているは分かっていない。

出典:U.S. Air Force photo by Mauricio Campino

因みに131億ドルの中には「米軍在庫の埋め戻すための95億ドル」が含まれているため、ウクライナに対する実質的な軍事援助額は36億ドルに過ぎず、米政府高官は「(これが認められれば)軍事支援を第1四半期末まで継続できる」と述べているので、返還された62億ドルと要請した36億ドルで「年末までウクライナ支援を続けられる」という意味だろう。

追記:海外メディアは「バイデン政権がウクライナ関連資金として240億ドル(米軍在庫の埋め戻すための資金を含むウクライナへの軍事援助+戦争の影響を受けた国々への経済・人道支援+???)を議会に要請」「バイデン政権がウクライナへの軍事援助として131億ドル(米軍在庫の埋め戻すための資金を含むウクライナへの軍事援助)を議会に要請」と報じているが、どれも表現的には間違っていない。

関連記事:バイデン政権、ウクライナ支援を継続するため新たな資金獲得に動きだす
関連記事:米下院軍事委員会、ウクライナ支援を縮小して対中国対策への投資を望む
関連記事:バイデン政権、台湾に対する3.45億ドルの軍事支援パッケージを発表
関連記事:米紙、ウクライナにとって最大の悲劇は運命を自らの手で決定できない点
関連記事:1度も使用されなかったウクライナ・レンドリース法、ウクライナ側は延長を要求

 

※アイキャッチ画像の出典:PRESIDENT OF UKRAINE

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コメント

    • 名前は無い
    • 2023年 8月 11日

    泥縄しきに感じるなぁ、去年の侵攻当初から一気にやってれば去年の盛大に領土取り返した時に一気に全土行けたんじゃ無いかと思う

    10
    • bbcorn
    • 2023年 8月 11日

    ロシアは今年前半で年間の軍事予算を使い切った。
    今年は国家予算の40%近くまでが軍事予算に。
    侵略なのに全力で戦争やってるよね。
    貧乏ロシアはいつまで西側支援に対抗して耐えられるのか?

    10
      • Easy
      • 2023年 8月 11日

      「経済制裁をしていなければ」とっくにロシアルーブルは崩壊していましたよ。ロシア国内の民間資金はダムが決壊するかのように国外に逃避し、ロシア国内経済は壊滅的な打撃を受けていたことでしょう。
      が。
      経済制裁によってロシアを切り離して箱の中に閉じ込めてしまいました。
      そうなるとロシア国内の資金は国外に逃げれず、ルーブルの崩壊は食い止められることになります。
      そして時間を稼いでいるうちに人民元が代わりの決済通貨として使えるようになり。
      市民生活に必要な製品はいくらでも中国やインドから入って来るようになり。
      ロシア市民は戦争の好景気に沸いており、失業率が激減して給料が上がったそうですよ。
      勇ましく制裁だ制裁だ、とやることが実は全然逆の効果を持つという面白い例ですね。

      20
        • bbcorn
        • 2023年 8月 11日

        で中国の属国になるってオチですね。

        13
          • 匿名
          • 2023年 8月 11日

          で、いつロシアは崩壊するんですか?

          10
            • bbcorn
            • 2023年 8月 11日

            崩壊なんてしませんよ
            大北朝鮮になって中国の属国になるだけです

            13
              • 通りすがりA
              • 2023年 8月 11日

              純粋に2つの仮定の比較として考えを聞いて見たいと思ったのですが、
              ①ロシアが崩壊した場合
              ②大北朝鮮になって中国の属国になった場合

              日本にとっての脅威度としてはどちらがましになるでしょうか?それとも、大差ない?
              この前の7月に平壌に北朝鮮、ロシア、中国が揃い、それに対して米日韓で連合組んで立ち向かう構図に2023年8月現在は見えますが、「北と露が中華の属国」になっても、陣営の総力が変わらないような気もします。

              第二次世界大戦時の日独伊三国同盟において、ムッソリーニ政権が崩壊したならば英米ソの有利になりますが、イタリアがナチスドイツの属国になっただけでは、軍事指揮系統が統合されるだけで英米ソにとっては有利にならないのでは? と疑問におもったので聞いてみました。

              • 匿名
              • 2023年 8月 11日

              なるほど、いつ頃中国の属国になるのかご教授お願いします

              2
                • bbcorn
                • 2023年 8月 11日

                既に資源を大量に安売り
                中国から消費財を大量購入
                おう植民地経済になってますよ

                4
              •  
              • 2023年 8月 11日

              ウクライナはとっくにアメリカの属国になってるけどな…
              結果出さんと支援止めるぞと圧力をかけられ国民を次から次と塹壕に差し出す…

              8
          • Easy
          • 2023年 8月 11日

          言い換えると、アメリカは兆円単位の予算を投じて中国に石油と小麦の供給源をプレゼントしたことになります。
          「それでもロシアが苦しむのだから良いじゃないか!」というのが典型的なバイデンさんの思考法で。要は、未だに脳内で冷戦を戦っているんですね。なので、世界が多極化していることに気付いておらず、ロシア以外に敵がいることを把握できていないんですね。
          問題を把握出来なければ対策も出来ない、とは真理ですね。

          15
            • pp
            • 2023年 8月 11日

            プレゼントというか、中露間の相互理解は他所には理解出来ない深さで。昔から。
            多分皆思い違いをしている。

            2
            • bbcorn
            • 2023年 8月 11日

            ロシアの国家予算って韓国より10兆円も少ない37兆円ぐらいなんですよ。
            で 今年はそのうち37%が軍事費として全く無駄に消えちゃうわけです。
            大北朝鮮化 突っ走ってるんですね。
            こんなんで大丈夫かな?

            6
              • pp
              • 2023年 8月 11日

              君もうやめたほうがいいよ。理解が酷く浅い
              簡単な算数ならこうはなっていない

              10
                • bbcorn
                • 2023年 8月 11日

                客観的な数字の話をしてるんですけど。
                理解できませんか?

                9
            • タチコマァ
            • 2023年 8月 11日

            ロシア潰してからより巨大な中国を叩くだけって話では
            弱い敵から無力化した方がいい

            2
        • タチコマァ
        • 2023年 8月 11日

        欧米から正規で資金調達や物資技術購入出来ないだけで大問題な気が……
        迂回貿易してもコストは跳ね上がるし効率は落ちるわけでして
        給料上がるって、それインフレ対応なのでは?増税もするそうですし、全業種で上がるなら兎も角一部ならば全体では市民生活圧迫します
        そもそも市場が小さくなって好景気になるとは考えにくい、軍需偏重による一時的なものなのでは?民需は戦前に比べてどれくらい拡大しているのか?失業率改善しているという話も何処の業種で吸収しているのか?それらも考慮しなければならないのでは?

        4
        • たら
        • 2023年 8月 23日

        経済制裁をしなかったら民間資金が逃げてロシアは崩壊したはずだとおっしゃいますが、その場合はロシア政府が規制をかけるはずですので、結局は今とさほど変わらないと思いますよ。ですので、面白い例ではありません。

    • gepard
    • 2023年 8月 11日

    現実の予算はここから共和党との攻防と妥協でさらに削られるだろうが、バイデン政権の要求ベースでも「1100億ドルの白紙の小切手」から実質的な規模縮小傾向が明らかになった形だ。

    ウクライナ支援の36億ドル+払い戻しの62億億ドル=約100億ドルの資金になるが、約8ヶ月で1100億ドルを使い切ったことを考えると、節約しても数月分となる。

    9
    • アイスノン
    • 2023年 8月 11日

    米国の会計年度は10月1日からなので第一四半期末は2024/3/eではなく2023/12/eかもしれません。
    ご確認下さい。

    7
    • パセリ
    • 2023年 8月 11日

    相変わらず中途半端
    頭Zの人達が軍産複合体を肥え太らせる為にウクライナを支援してるとか言っても否定し辛いレベル

    9
    • ポンポコ
    • 2023年 8月 11日

    地味な話題だけど、アメリカの予算案は、F16やレオパルドや都市の奪還より、重要かも?
     
    ロシア経済のことを言ったひとがいたが、世界銀行の予想では、ロシア経済は日本の次になるらしい。意外だ。

    6
    • たむごん
    • 2023年 8月 11日

    米国下院は、共和党が過半数ですからね。

    超党派の合意を目指すのでしょうが、世論調査の結果を見れば、最終合意の金額なかなか見通せないですね…

    ウクライナ追加支援、米国55%「反対」 世論調査、共和党で強まる孤立主義
    リンク

    9
    • ひょっとこ
    • 2023年 8月 13日

    ご存じのとおり、米国の予算執行権は連邦下院にありますが、現在下院は来年の大統領選をにらんだ「バイデン一家」の収賄疑惑調査にかかりきりで、ほとんどウクライナは議題になっていません。むしろ、台湾の安全保障が審議対象という状況です。共和党は野放図なバイデン政権のウクライナ支援に歯止めをかけようとしています。

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