米国関連

米空軍に続き米海軍も高度な戦術訓練機の調達を発表、最大の目的はF-35運用時間の削減か

米空軍はパイロット養成に使用しているT-38タロンを更新するため調達予定のT-7Aレッドホークとは別に「高度な戦術訓練機(Advanced Tactical Trainer/ATT)を最低でも100機(場合によって数百機)調達したい」と発表して注目を集めたが、米海軍も戦術的な代替航空機(Tactical Surrogate Aircraft/TSA)に関する情報提供依頼書を20日に発行した。

参考:Tactical Surrogate Aircraft
参考:Navy Follows Air Force In Wanting Another Jet Trainer Variant For Aggressor And Support Roles

空軍が要求しているATT対応機で海軍が要求するTSAに挑戦できると指摘する米メディア、高度な戦術訓練機の需要は最低でも167機

海軍がTSAに求めている役割は「金色の記章(ウイングマーク)」を獲得して本物の戦闘機(F/A-18E/FやF-35C)を使用した訓練を行うパイロットに追加の飛行訓練を実施したり、十分な経験を積んだパイロットもTSAを使用することで高価なF-35Cや次世代戦闘機の機体寿命を消耗することなく訓練を行うことができると説明しており、日常的な訓練や大規模な演習で需要が高まっている「Red Air(敵機役/この分野の需要は非常に大きく払い下げの旧式戦闘機を取得した複数の民間請負企業がレッドエアサービスを提供している)」サービスにもTSAが活用できることを求めている。

出典:Public Domain T-45 ゴスホーク

非常に特徴的なのは訓練機「T-45 ゴスホーク」の後継プログラム(UJTS)とは異なり空母への発着艦能力は要求(UJTS機も精密着艦モードによる陸上空母離着陸練習と空母でのタッチアンドゴーのみに対応することが求められていて実際の発着艦能力は不要)されていない点で、艦載機特有の条件を満たす設計が不要=陸上機でOKという部分だ。

そのため米メディアは空軍が要求しているATT対応機で海軍が要求するTSAに挑戦(海軍はTSAを67機調達することを予定しているので空軍のATTと合わせると最低でも167機の需要がある)できるだろうと言っているのだが、逆を言えば空軍も海軍も高価で運用コストの高い第5世代機や次期戦闘機の第6世代機を使用した訓練を安価な訓練機に置き換えて運用・維持コストの削減を狙っていると解釈することが出来る。

出典:U.S Air Force photo by Airman 1st Class Jacob Wongwai

つまり政府説明責任局(GAO/旧会計検査院)からF-35の年間運用コスト削減を求められている国防総省は「2028年までにロッキード・マーティンだけの努力で運用コストを780万ドル→370万ドル/約4億円削減(F-35Aの場合の話)できる」と思っておらず、米空軍はGAOに対して「運用コスト削減が実現しない場合残された選択肢は調達数の削減か運用時間の削減しか残されていない」と主張していたので、空軍のATTや海軍のTSAはF-35の運用時間=実機を使用した訓練時間を削減しても十分な訓練飛行の時間を確保することが最大の狙いなのだろう。

因みに空軍のF-35が運用のピークを迎え始める2036年(運用予定数は1,885機)までに年間運用コストを削減できなければ「年間157億ドル/約1.7兆円(適正値は97億ドル/約1.1兆円で削減要求は60億ドル)」もの大金を国防総省はF-35の運用・維持に費やすことになる。

関連記事:米空軍、T-7Aレッドホークとは異なる「高度な訓練機」を最低100機調達する計画を発表
関連記事:ボーイング、米空軍が調達計画している新しい戦術訓練機にT-7Aを提案することが濃厚
関連記事:米軍、運用コスト削減に失敗するとF-35維持に年間1.7兆円もの負担が必要
関連記事:米海軍の次期練習機の座を巡りボーイングがT-7A、ロッキードがT-50A、レオナルドがM-346を提案

 

※アイキャッチ画像の出典:Boeing

ヘリテージ財団が米軍の評価レポートを発表、空軍は何を優先すべきかが分かってない前のページ

呆れるほど良く売れるトルコ製UAV、キルギスがバイラクタルTB2購入を発表次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米海軍の不満が爆発、発注したバージニア級原潜は何処に消えたのか?

    米海軍上層部の防衛産業界に対する不満が高まっており、ダリル・コードル大…

  2. 米国関連

    ロシア軍の再編スピードは予想以上、戦力規模は侵攻前よりも15%増加

    米欧州軍司令官とNATO最高司令官を兼任するクリストファー・カボリ陸軍…

  3. 米国関連

    中国の偵察能力を飽和させる方法? 新マンハッタン計画は米海空軍協力の象徴

    米海軍の最新鋭「ジェラルド・R・フォード級空母」2番艦が12月7日、洗…

  4. 米国関連

    10年掛かっても完成しないズムウォルト級駆逐艦、極超音速ミサイル運用艦に改装?

    進水から10年たっても実戦投入不可能なズムウォルト級ミサイル駆逐艦に、…

  5. 米国関連

    米海軍、ノルウェーの秘密基地を再稼働させてロシアの聖域に挑む

    米海軍とNATOは秘密基地「オーラウスヴァーン基地」を再稼働させ、再び…

  6. 米国関連

    日本には影響なし、米議会が英国や韓国に米軍のF-35配備を禁じる法案を検討

    衝撃的な話が飛び込んできた。米国がファーウェイ製通信機器を使用している…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 10月 22日

    正直、T-7A一択
    スケールメリットを考えてもT-7A以外を選択する理由がない
    日本含めた同盟国たちも、雪崩を打ってT-7Aを採用していくことになるんだろうな

    24
      • 匿名
      • 2021年 10月 22日

      なんねーよ

      5
      • 匿名
      • 2021年 10月 22日

      T-7Aの改良型で対応できんかな?流石に新たに作るのは無駄すぎる

      2
      • 匿名
      • 2021年 10月 23日

      イタリアと韓国はT-7Aにはしないだろうな。自国で作れている産業を簡単に手放すわけがない

      1
    • 匿名
    • 2021年 10月 22日

    シミュレーターで、全て出来るという見込みは完全に外れたわけね。
    F-35等実機の挙動まで学べるかどうか。
    ステルス塗装無しの訓練用F-35を作った方が、実が上がると思う。

    12
      • 匿名
      • 2021年 10月 22日

      管理の都合でフル仕様のF-35を使ったほうが安くなったりして

      6
      • 匿名
      • 2021年 10月 22日

      戦闘しない機体で武装の量を試射レベルまで小さくした機体と
      F-35ベースでは価格差がありすぎて作られることは無いだろう

      4
      • 匿名
      • 2021年 10月 22日

      シミュレーターで全てなんて最初からやってないでしょ。
      機種転換訓練での基本操縦習得にシミュレーターを活用することでF-35の複座練習型は不要て理屈。

      7
    • 匿名
    • 2021年 10月 22日

    タブレットで訓練できる夢の旅客機もうまく行かなかったしやっぱり訓練機は必要よ

    3
    • 匿名
    • 2021年 10月 22日

    度重なる尖閣諸島へのスクランブル発進も、地味に機体寿命をガリガリ削っていくんだよなぁ…
    こういうもんこそ無人化で対処出来んもんかねぇ…

    6
      • 匿名
      • 2021年 10月 22日

      戦闘機の無人化じゃあSAMにスクランブル対処をやらせるのと同じで「スクランブル発進したら領空侵犯機を問答無用で撃墜しちゃいました(てへぺろ♪)」ってオチしか無い
      現状で使われている遠隔操作のドローンだって有人機の機能を完璧に出来る訳では無く、何らかの抜け漏れが有る以上、有人戦闘機は当面必須で、その消耗を押さえる為に専用の訓練機を導入する事で無駄な飛行時間を削減しようっていうのが現在の米空海軍の状況

      9
        • 匿名
        • 2021年 10月 23日

        何でいきなり自律行動が求められてるの?

        4
      • 匿名
      • 2021年 10月 22日

      割とマジでそういう任務にこそFA-50が最適なんだよなぁ
      韓国より日本の方が必要な機体だったね

      2
        • 匿名
        • 2021年 10月 22日

        てか韓国も中国機に対するスクランブルで只でさえ稼働機が少ないF-15Kの寿命削られてるんだがな。

        4
          • 匿名
          • 2021年 10月 22日

          韓国のスクランブル主力はKF-16
          F-15kはあんま飛ばん

          2
            • 匿名
            • 2021年 10月 23日

            うろ覚えですが以前このサイトで、航続距離の問題からF-15Kを酷使して韓国でも問題視されている、といった旨の記事があったような。

            5
          • 匿名
          • 2021年 10月 23日

          そういや数年前にここの記事でF-15Kはボロボロってのがあったけど、今現在はどんな状況なのだろうか。

          韓国のF-15Kはボロボロか?領空侵犯に対する「スクランブル」崩壊寸前
          リンク

          4
        • 匿名
        • 2021年 10月 22日

        航続距離も空戦能力も全く向いてないだろ

        17
      • 匿名
      • 2021年 10月 23日

      対応の必要度で2,3段階に分けてさ、
      まずは無人機のみで対応。
      一線を越えたら、編隊統制用の安い有人機体が出動。
      最後はF15出動。

      こんなんじゃあかんのか?
      示威行動への対応は示威だけで、危機への対応は危機対応で。
      こうせなほんと不毛な消耗戦やん。。

      1
        • 匿名
        • 2021年 10月 23日

        無人機ではそもそものスクランブルをこなせない
        スクランブルというのは所属不明機にたいして行う 相手は故障した旅客機や風船かもしれない
        旅客機の場合は交信しないといけないし、飛行物の場合確認をして写真を撮る必要がある
        これを無人機でやろうとすると送信データが膨大な量になる 人間はかなり高性能にできていて、コンピュータでかわりにやろうとするとかなりの体積を要する

          • 匿名
          • 2021年 10月 23日

          それ、無人機側で処理する必要ありますかね? 
          自律的に攻撃の判断までするようなのでなければ、帯域幅が問題なら通信用の無人機を立てるなどして、基地側で処理できそうなもんですが。。
          人間が最も高性能なのはこの先も当分そうだと信じてますが、その分お値段もプライスレスなわけで。。

          3
            • 匿名
            • 2021年 10月 23日

            と言うか、人間の判断力が現場に必要なんだよ
            通信が途切れて無人機が暴走、その所属不明機と衝突しましたなんて事故が起きでもしたら最悪。
            そして万が一事故がおこって、それを証言する人間も必要

            ぶっちゃけ言ってしまうと、無人機もっていって、、ジャミングによって通信を断然されて当たり屋された場合の対処どうする?
            こっちには何の落ち度がないって証明もしようがない
            外交圧力の道具に使われることが目に見えてる

            8
            • 匿名
            • 2021年 10月 23日

            航空路帯が集中している領域での対領空侵犯措置は、遠隔誘導での無人機でもハードルの高い行為と空幕は見なしている様です。

            戦時での無人機の必要性を認識しつつも、無人機より有人機開発を優先した経緯が、平時の対領空侵犯措置などを問題視した為だとか。

            8
      • 匿名
      • 2021年 10月 23日

      「防衛省政策評価に関する有識者会議(第30回)議事録」に無人機でのスクランブル使用について、下記の見解が示されています。

      ﹙前略﹚
      最後に、ボーイングの無人機、紹介されておりましたけれども、無人機、非常に重要な技術だと思っております。
      これからどんどん、周辺国の能力が上がって、相手の戦闘機も強くなる、ミサイルも長射程化する、電子戦もどんどん激しくなっていく中で、有人の戦闘機でのこのこ出かけていって安全なのかという、問題意識は持っております。
      それに対して、完全に無人機で対抗するべきではないのかという議論も、当然、ありました。

      他方で、平素の任務として、やっぱり、スクランブルをやっている、例えば、沖縄の辺を見たときに航空路帯が集中している沖縄において、無人機を上げて対領空侵犯措置ができるのか、遠くでモニターで見ているような対領空侵犯措置があり得るのかということも、空幕の中では考えてみましたけれども、
      さすがに、今の段階で、2035年に実現するような機体では、それを完全な無人機にする必要はないんではないのか、むしろ、有人機のほうにメリットがあるというふうに結論づけております。
      ﹙後略﹚

      7
    • 匿名
    • 2021年 10月 22日

    記事にある通り、今後米軍におけるF-35の占める割合は増加していくのは確実なわけで、新人パイロットが複座機のないF-35部隊にいきなり配属なんて普通になるわけですよ。将来的にはより高度で高コストになるだろう次期戦闘機群も配備が進む。
    米空軍・海軍の訓練システムと機材の見直しはそれを見越したものかと思います。

    2
    • 匿名
    • 2021年 10月 22日

    製造ライン新設して調達数のメリットなくすやつですね。
    わかります。

    • 匿名
    • 2021年 10月 22日

    先輩(T-38)が優秀で頼られ過ぎて、後進が育たず苦労するとかアメリカ軍の訓練機も大変だな
    ところで自衛隊にもF-35Bが来るわけですが、それの練習は何でするんですかね

    1
      • 匿名
      • 2021年 10月 23日

      普通に実機では?
      米軍ほど規模は大きい内のでしばらくは実機で回した方が効率の良い軍隊だろうしね。

      4
        • 匿名
        • 2021年 10月 23日

        そもそも「米空軍と空自では文字通り1ケタ規模が違う」って点を無視して、何事も米軍の真似をしろって意見には賛同できないよね

        3
    • 匿名
    • 2021年 10月 23日

    広告について
    携帯で広告を消しても、内容が欠けた状態になり読めません

    どうにかならないでしょうか?

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  3. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  4. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  5. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
PAGE TOP