米国関連

低コストのドローンキラー、SMASHとRPS-42を搭載したUGVが登場

イスラエル企業が開発した照準機能付きスコープ「SMASH」は低コストのドローンキラーとして関心を集めているが、イスラエルのSmart Shooter、イタリアのLeonardo、米国のHDT GlobalはSMASHとRPS-42を搭載したUGVを来週発表する予定だ。

参考:Little Radar-Toting Robotic Gun Vehicle Aims To Protect Squads From Drones
参考:Australian ‘drone killer’ system Slinger heading for Ukraine

低空域のドローン迎撃システムは小銃や小口径機銃を活用したものが主流になる可能性

イスラエルのSmart Shooter社が開発した照準機能付きスコープ「SMASH(スマッシュ)」は、小銃による遠距離射撃の命中精度を飛躍的に向上させるため「魔法のスコープ」と呼ばれており、兵士はトリガーを引いたままSMASHが自動追尾する標的に十字カーソルを合わせると最適なタイミングで弾丸が発射され、特別な訓練を受けていない兵士でも「遠く離れた標的を攻撃できる」という代物だ。

コンピュター制御の弾道計算技術は何十年も前に登場しているものの、一般的な小銃に後付できる「コンパクトさ」と調達コストが「安価=約990ドル」という点が評価され、米国、英国、オランダ、オーストラリアなどがテストして注目を集め、英メディアも「米陸軍のデルタフォースがSMASHを非常に優れた機器だと評価し、このスコープは有視界内戦闘に革命を起こす可能性を秘めている」と報じたが、ドローンの脅威が高まるにつれてSMASHへの関心は更に大きくなる。

SMASHは空中を飛行する標的=ドローンの迎撃を想定していなかったが、オランダ陸軍は強風が吹き付ける雪山でテストを行い、SMASHを取り付けたコルトC7で最大200m離れたドーロンの狙撃に成功、用意された67機のドローン全てに3発つづ銃弾を命中させたらしい。

オランダ陸軍によればSMASHを取り付けた小銃による射撃効果は「ドローンが空中に静止した状態」でも「高速で移動している状態」でも違いがないと主張しており、この結果を受けて海外メディアは「SMASHと小銃の組み合わせはドローンから重要な資産を守るのに効果的かもしれない」と報じ、米陸軍も空中の標的に対応したSMASH2000Lの取得に乗り出し、開発元のSmart Shooter社も公式に「ドローンへの対応」を強調していたが、遂にSMASHとUGVの組み合わせが登場して注目を集めている。

イスラエルのSmart Shooter、イタリアのLeonardo、米国のHDT Globalが共同でSMASHとRPS-42を搭載したUGVを発表、SMASHを取り付けた小銃は「生身の兵士」ではなく「タブレット式のコントローラーをもったオペレーター」が操作するため疲労が軽減され、UGVに搭載されたRPS-42は半径30km内のドローンを検出できるが、今のところSMASHとRPS-42が連携して作動するのかは不明だ。

米ディフェンスメディアは「仮にSMASHとRPS-42が連携していなくてもドローンの接近をオペレーターに警告できるため、SMASHによる迎撃はより効果的になる」と指摘しており、このUGVは来週に開幕する米陸軍協会の展示会で披露(ドローンとSMASHを組み合わせたSMASH Dragonも提案中)されるらしい。

因みに豪Electro Optic Systems(EOS)も「独自のカウンタードローン技術」と「M240機関銃を搭載したR400S RWS」を組みわ合わせ、300m~800m離れたドローンを迎撃するのに成功(1回の迎撃コストは5ドル~10ドル)し注目を集めていたが、EOSは2日「スリンガー(Slinger)と呼ばれるドローンキラーシステムをウクライナに送る」と発表した。

EOSは「スリンガーの価格は155万ドル未満(豪ドルなのか米ドルなのかは不明)で、1回の迎撃コストを155ドルから1,550ドルにするのが目標だ」と説明し、テストに立ち会った駐豪ウクライナ大使も「スリンガーはミサイルの数分の1でドローンを迎撃できる」と述べている。

追記:スリンガーのウクライナ提供はオーストラリアの支援ではなく米国の軍事支援パッケージに含まれ、年末までに10基が届けられる予定らしい。

関連記事:従来の防空システムとは異なるカウンタードローンシステムとは?
関連記事:小銃でドローン撃墜は可能、オランダ陸軍が実証した魔法のスコープ「SMASH」有効性
関連記事:歩兵戦闘のゲームチャンジャー? 英陸軍が注目する「命中を保証」する魔法のスコープ
関連記事:米軍を最も安価に攻撃する方法を明かす米海兵隊大将、答えはコストコで売っている
関連記事:豪企業、ローエンドの小型UAVを約10ドルで無力化することに成功

 

※アイキャッチ画像の出典:Smart Shooter

ウクライナとロシアの電力を巡る戦い、今年の冬は昨年の再現で終わらない前のページ

スウェーデン、NATO加盟後にウクライナへのグリペン提供を検討する次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    ロッキードマーティン、F-35スペアパーツ問題を認め補償支払いで合意

    ロッキード・マーティンはF-35のスペアパーツ電子ログ問題についてミス…

  2. 米国関連

    激しい地上戦を予想する米国、ウクライナ軍が砲弾不足に陥ることを懸念

    米当局者はウクライナ東部の地上戦が本格化すれば13日に発表した4万発の…

  3. 米国関連

    実際の調達コストは1億ドル超え、米議会はF-15EX調達を中止すべきか

    米メディアの「Defense One」は11日、議会は米空軍の間違った…

  4. 米国関連

    米海軍、バージニア級原潜ブロックVに極超音速兵器「プロンプトストライク」を搭載

    米海軍は2021会計年度予算案の中で、現在開発が進められている「Con…

コメント

    • ブルーピーコック
    • 2023年 10月 07日

    これらが効果的に作用したとして、ドローン側はどんな対策が施されるんだろうかな。

    それはそれとしてサバゲーに欲しいなSMASHのようなシステム。完全にPay to WINだから許されないだろうけども。

    2
      • 謎の密使
      • 2023年 10月 07日

      ドローン側の対策としては「この手のドローンキラーを見付けたら、そいつ目掛けて突っ込んで行く機能」が付与されるんじゃないですかね
      ドローンも安価なので、こっちを狙う物が有れば先にそいつをやっつけてしまえと言う発想です
      後、SMASHのようなシステムは究極のダットサイトかホロサイトみたいな物なので、色々と応用が効きそうですね

      12
      •  さ
      • 2023年 10月 07日

      この前、コミケで販売されたらしいヘッドアップディスプレイ照準システム『HUD SIGHT』ではだめなのか?
      ジャイロコンパス、表示部、弾道計算プログラムなど全ての機能を実装していた(電池は付属しない)らしいが

      北朝鮮にも注目してる人がいたという話もあったが……

      1
        • ブルーピーコック
        • 2023年 10月 07日

        哀れな生き物さん(命名;野上武志)こんなの作ってたんですね。って市販品が無いじゃないですかヤダー

        1
          •  さ
          • 2023年 10月 08日

          一般人(?)にも作れるのだし、日本企業がこれを商品化…しないよなぁ

          1
      • 航空太郎
      • 2023年 10月 07日

      人が操作する現状の自爆ドローンなら、現状、一般公開されている地形データでもかなりの精度はあるので、その情報をオペレータは参考にしつつ、本物のヘリのように超低空匍匐飛行、NOE(Nap-of-the- Earth)飛行をしていくようになるでしょう。ヘリより遥かに小さいので、本気で隠れながら前進されると見つけるのはかなり難しくなりそう。
      あとオペレータ操作の利点は、ドローンは安価なままでいいこと。高度な判断、操作をする能力、機能は全部オペレータ側にあるので、導入、というかそういう戦術を選ぶのは簡単です。ドローンオペレータの高い操縦技術は必要ですけど、ドローンが落ちるだけで、オペレータはどんどん経験を積んで行けますから。

      4
      • NHG
      • 2023年 10月 07日

      UAV単体では、相手も機銃装備 → ミサイルでアウトレンジ迎撃と戦闘機あたりの進化をトレースすると予想
      そして↑な戦闘タイプに護衛される神風型と編隊を組むようになると予想しても大きく外れることはないと思う

      • 匿名ちゃん
      • 2023年 10月 07日

      自爆ドローンに狙撃ドローンが随伴して、自爆ドローンを撃ち落とそうとする兵士を死角から狙撃、とか有効かも

    • 58式素人
    • 2023年 10月 07日

    M240MGで撃ち落とすわけでしょうから。
    うまく行けば、お値段的にも良いものになりそうですね。
    ウクライナの動画を見ていると、UAVから擲弾を落とされたり、
    車両に自爆攻撃されたりする画像が多いですし。
    いっそのこと、M18クレイモア地雷をUAVに向けて設置できないかなと思ったりします。
    対空砲のVT信管と組み合わせれば、出来そうな気もするのですが。
    対UAV地雷はできないものでしょうか。クレイモアは250ドルくらいだそうだし。

    1
      • a
      • 2023年 10月 07日

      人口密集地でそれを使ったら大惨事になりそう。
      コルトC7で最大200mは短いな。
      M240で4倍になってるからクレイモアとは逆の発想で対物ライフルで1発必中で、もっと遠くのドローンを落とせないかな。

      3
        • 58式素人
        • 2023年 10月 07日

        それもそうですね。
        必中なら対物ライフルも良いような。
        そうでないと、M2HMGになっちゃいますね。
        もし対UAV地雷を作るなら、装甲車両の背中か
        最前線の陣地限定で信管の作動(レーダーの起動)
        に関しては電気的にオンオフする形かな。

        2
    • TA
    • 2023年 10月 07日

    セントリーガンじゃん
    個人的にはブローニングM2と組み合わせて欲しい(ローテクとハイテクの組み合わせが面白いから

    • 折口
    • 2023年 10月 07日

    レーザータレットや指向性EMPが実用化されるまでのつなぎとしては充分な性能がありそうですね。ただ結局、対空射撃は目標識別能力がネックになりますから、光学+あってせいぜい赤外領域にしか対抗できない同システムがどこまで出来るのかは気になります。天候や時間帯に依存しないハーピーのような固定翼で自律飛行する自爆ドローンは防げないけど、搭載カメラと電波の都合で昼間の近距離でしか使えないクワッドコプターのUAVによる精密爆撃を防ぐには充分といったところなんでしょうか。

      • 折口
      • 2023年 10月 07日

      後で見返したらレーダーはついてますね、これは恥ずかしい…

    • 拓也さん
    • 2023年 10月 07日

    イスラエルさんハマスとの全面戦争に突入したそうですけど大丈夫すか…

    1
      • Natto
      • 2023年 10月 07日

      米軍のM157が似たようなシステムだろうけど、こっちは900ドルくらいで買えるとは思えない。

    • 理想はこの翼では届かない
    • 2023年 10月 07日

    ドローン側が底面に装甲を貼り付けて、小銃程度だと撃墜されないように進化していきそうな気がします
    撃たれても貫通されなければマルチコプターなら即姿勢制御できるでしょうから
    もちろん重くなる分だけ航続距離やペイロードは減るでしょうけど「安価なアンチドローンに対抗できるドローン」は模索されると思います

    それにしても無人兵器・電子制御での照準が進化しすぎて人の命を掛けて戦争するのがバカらしくなってきますね

    1
    • 匿名
    • 2023年 10月 07日

    今んとこ一発当たったら落とせる確率が高いというのが小型ドローンの弱点なんかな
    迎撃装備は今後充実していくだろうし今後は数を用意しなきゃいけなくなるなら、
    コストに対して不釣り合いにリターンがデカいのは今だけかもな

    • える
    • 2023年 10月 08日

    どんどん技術の発展が進み多くのことができるようになるとともに裸の人間えでは権力に抵抗することが難しい未来が来る可能性も暗示してますね

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  2. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  3. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  4. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP