ウクライナ侵攻で多用される無人機のサイズは様々で、比較的大型で中高度~高高度を飛行するタイプは有人機と同じ対処方法で無力化できるが、DJI製のドローンや固定翼の小型無人機はサイズが小さく低空を飛行するため、何十kmも離れた空域を飛ぶ目標をレーダーで検出することが難しい。
低空を飛行する小型無人機との戦いを米ディフェンスメディアは「低空の戦い」と呼んでおり、この領域での勝敗が視覚的でリアルタイムな戦場認識力に直結するため、戦術用途の無人機(前線の兵士が扱うサイズの小型無人機)導入やカウンタードローンシステム(C-UAS)の整備に各国が取り組んでいる。
このC-UASについて取り上げる日本メディアは少ないので今回はこれを紹介していく。
兵士が携帯するカウンタードローンシステム
C-UASに決まった形はなく脅威に対処する距離や場所によって様々な方法があり、最も原始的な方法は無人機が使用する通信プロトコルに直接妨害を行う小銃タイプのC-UASで、これを使用するウクライナ軍は「商用向けのドローンや無人機を99%無力化できる」と述べているがミリタリー仕様の無人機には効果が低く、目視で標的に照準を合わせる必要と照射する指向性の妨害範囲が数百mと短いのが欠点だ。
ほぼ同じ作動範囲で無人機を物理的に無力化できるのがイスラエル製の照準機能付きスコープ「SMASH(スマッシュ)」で、これを取り付けた小銃が簡易のC-UASに変身して効果が高いと各国で評判になっており、米陸軍と米海兵隊も少数のSMASHを導入してテストを繰り返していたが、米陸軍はC-sUAS戦略の一貫としてSMASHの改良型「SMASH2000L」の取得に乗り出している。
元々SMASHは無人機を迎撃することを想定していなかったが、改良型のSMASH2000Lは空中目標に対するより正確な照準を提供できようになっているのが特徴で、開発元のスマートシューター社も公式にC-UASへの対応を強調している。
SMASHを取り付けた小銃をコンソールで操作するタイプも登場しており、もはや簡易のRWSと呼んでいいのかもしれない。
固定拠点を保護するカウンタードローンシステム
固定の拠点を無人機の脅威から守るC-UASはAESAレーダーと光学センサーを装備している場合が殆どで、飛行高度が低く飛行速度も遅いドローンを自然界の何かと区別するための特別なアルゴリズムを備えており、イスラエル製「Drone Dome」はRCS値0.002㎡(Phantom4 ProのRCS値が0.01㎡未満らしい)の無人機を3.5km離れた地点で検出可能で、レーザーやジャミングで目標を無力化することができるらしい。
ロシア、アラブ首長国連邦、カタール、アフガニスタン、パキスタン、マレーシア、バングラデシュ、スリランカから引き合いが殺到(実際にロシアとパキスタンが発注)しているトルコ製「KALKA」は最大5km(無人機のサイズは不明)で、韓国製のC-UASは8km先でPhantom4 Proを検出することが出来るらしいが、仮にウクライナの前線距離2,450kmをDrone Domeでカバーするには700基必要だ。
勿論、3.5kmという理論値を点と点で結んだだけなので実用に耐えるC-UAS網を構築するには数千基は必要で、飛行速度が早くドローンよりも大きな固定翼の無人機を「数kmという作動範囲」で無力化できるのかはよく分かっていない。
機械化部隊の頭上を保護するカウンタードローンシステム
無人機に対応したAESAレーダーと光学センサーを車載したのがC-UAS対応の近接防空システムで、最も新しいものは米陸軍が調達を開始したIM-SHORADだ。
IM-SHORADは機械化部隊の頭上を保護するための自走式対空装備だが、固定式のAESAレーダーを4基搭載しているため常時360度の警戒と、L3ハリス製EO/IR「MX-GCS」による視覚的な警戒が可能で、接近してくる無人機を検出すれば7.62mm機銃、30mmチェーンガン、スティンガー(最大射程4km)、ロングボウ・ヘルファイア(最大射程8km)で無力化することが出来る。
上記で紹介したのは飽くまでDJI製ドローンのような小型無人機に対応したC-UASの代表例で、イラン製のShahed-136をSMASHを装着した小銃で撃ち落とせるのかは別問題だし、C-UASに対応したIM-SHORADがTB2とサシで勝負すれば手も足も出ないので注意してほしい。
一口にカウンタードローンシステムと言っても「何に対応しているのか」を良く見なければならず、効果が実証された決定的なC-UASはまだ存在しない。
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※アイキャッチ画像の出典:オランダ陸軍
いつどこに来るか分からない以上、最終的には自動迎撃出来なきゃダメなんだろうなとは思う
加えてカバー範囲が相対的に広い。基地のみならずインフラにも配備するだけの数が揃えられて、多数に対応可能な弾数=低コストでもなければならない
可能性ありそうなのは対空レーザー砲台とかかね。でもうちの国は湿度高いしななぁ
まあ何にせよ、まだSFの範疇ね
ドローン対応の命題は撃墜コストをどうやってドローンの製造コストを下回らせる事かですよね。
兵士の頭上に現れる偵察ドローンではなく、多数で襲い掛かって確率論で固定目標を狙うShahed-136みたいなものは
その固定目標を二重三重の金網か鉄板で覆うアナログで防御できると思いますね。
金網や鉄板ぐらい突破できるような突入速度のあるドローンを開発されるでしょうが、そうなってくるとミサイルに近づいてくので1機当たりのコストが爆上がりしてくるので機数を製造出来なくなるので、それ相応の高価な迎撃兵器で対応できるわけです。
そしたら高価なドローンと安物のドローンを混ぜて侵入してくるでしょうからその対応とかまだまだありますけどまあ基本的には安物のドローンは機体が小さいか、飛び方も甘く、更に頭脳もアホなんで金網みたいな障害物を作るみたいなアナログの対応で結構いけると思います。
記事にあるような電子制御で小銃で撃ち落とすというやつも発電所みたいに1発でも命中は許されないような固定目標には打ち落とし漏らしがある割には機械ものなんで価格もしますから不向きと思います。
問題は偵察ですよね。新しいエリアに侵入する場合、または自分たちが滞在するエリアが常に偵察ドローンフリーを保証するような安価で様々な機械での仕組みの考案が必要ですよね。そういう所で小銃を対空砲にする記事にあるような仕組みが仕組みの一部分として使えるんでしょうね。
とにかくこの辺の対応を自衛隊が早く体系化して実装してほしいです。
陸自は勿論のこと、開戦時に事前に持ち込んだドローンで一気に攻撃をかけられる可能性がありますから基地防衛の観点でも空自・海自も実装してほしいです。
呉の潜水艦桟橋とかもうね、目の前の丘に民家いっぱいありますからね。あの民家から潜水艦に傷をつけて潜航できなくする為の特攻ドローン攻撃を仕掛けられても守れる仕組みを装備してほしいです。
別にドローンに限らず弾道ミサイルでも広域迎撃抜けたら最後の砦であるPAC-3の配置なんて極めて限られているしある程度の取捨選択はされるべきだろう。そうでないとお金も操作人員もそれを守備する戦力も天井知らずで増えていって破綻する。
現状、日本で環境構築するなら射界制限や外れ弾の二次被害とか考えるとUAVによる体当たりなりネットシューターなりで迎撃の方が良いかもね。地上発射と機動性のある空中プラットフォームからの射出とか出来ればそれなりに柔軟な対応は出来ると思う。
勉強になりました
SMASH Hopperを見てるとまさに分隊規模でも使えるセントリーガンって感じでSFみを感じる
5.56mmでもいいけど7.62mmとか車体搭載になるだろうけどブローニングM2とか色々応用が利きそうだ
陸上自衛隊に採用されるかもしれないMAVもIM-SHORADみたいな派生型が出るのだろうか
対無人機用の装備の夜明けを感じる
装備が充実してくれば迎撃側のほうがコスト高いという状態はマシになるのか?
非常に為になります。
日本としては水中ドローンにも対策を考えないといけませんね。
SMASHはドローンや無人航空機以外への照準器としても使えそうだな。
しかし小銃に追加パーツとデカいゲーム機みたいなやつだけでこんな事ができるのか。イラク戦争ではipodとiphoneが八面六臂の活躍をしてたが、自分が詳しく知らないだけでプログラムやプロセッサー次第では軍事用ではない民間企業の製品でも同じことができちゃう時代なんだろうな。
攻撃ドローン側はこれからどんどん安価で手軽になっていく一方で、C-UASは逆に高価になっていく未来しか見えないね。機種ごとに違うものが必要になるし、ジャミングは自律型が登場すれば無意味になる。
MDならまだ敵ミサイルコストの下げ止まりがあるから救いがあるけど、数千円のドローンをうん百万のC-UASで落とすのは割に合わなすぎる。
結局、現場の歩兵の根性で撃ち落とすか、敵より多く攻撃ドローンを保有して「先制攻撃」するしかないような気がするけど……。戦争へのハードルが下がってヤバいんだよなぁ。
完全に無人機同士の攻防になると、器物破損程度の罪だからゲーム感覚で開戦しそう。
そうなると民主主義国がプーチン並みに好戦的になる?
個人的な想像ですが、数件はそういうことも起こるかもしれませんが、全体的にはそうはならないのではないかと思います(願います?)。
多くの国では国境線は山や海や河で隔てられていて、相対的に辺境地が多いと思います。そういう場所で無人機同士でドンパチやるだけなら、確かにゲーム感覚というのも解らないではありません。が、戦争の常として始め方よりも終わらせ方の方が圧倒的に難しい。仮に無人機同士でゲーム感覚で始めた戦争であっても血が一滴も流れずに終わることはないでしょう。特に劣勢側としては、そんな戦闘形態で国土やら賠償金をやり取りすることは到底できず、結局は相手国の都市を爆撃することになる(→血が流れる戦争になる)でしょうから。
無人機同士の戦争に限りませんが「戦争を過度に安易・低コストに考える」ことに敏感な人(特に政治家)は多いと思います。
無人機の話とは若干話がズレますが、今年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻について、個人的にはロシア政府の過度に安易で低コストな見積もりが招いたのではと思います。当初言われた通り、19万の兵士を投入により「数日間でウクライナ政権が崩壊し、パンと花束で迎えられる」ことでウクライナ全土が手に入るなら人件費も安いものですから。
ゼレンスキーやNATO加盟国が反ロシアで一致しているのは、もちろん1950年代からの敵対関係などもあるとはいえ、「過度に安易・低コストに考え」て始められた戦争に対する懲罰的な意図(高コストの支払いを強要することで後悔させる)が含まれているように感じます
>完全に無人機同士の攻防
そんな「お上品」な戦争あるわけないでしょう! 無人機の主要な目標は人間! 無人機を狙う無人機なんて高い技術力が求められるし、必然的に高価なものになる。前記事にトルコのTB2が空対空ミサイルでShahed-136を撃墜できるって話があるけど、明らかに費用対効果が釣り合わない。C-UASの開発に時間とお金をかけるくらいなら、より確実に敵兵を殺せる攻撃ドローンを沢山作ったほうが合理的。
私が危惧するのは冷戦時代と同じように、各国が敵より多くの攻撃ドローンを配備するドローン版の「軍拡競争」が起こる可能性があるということ。核の場合はコストの高さや「相互確証破壊」によって安定したけど、ドローンの場合は際限なく増やせる上に使用するハードルが低いのが問題。
独裁主義とか民主主義とか関係なしに関係の悪い国同士で容易に戦争が勃発する。
機種で分類するより用途で分類する方が思考の拡張性あるように感じます。
①前線部隊の偵察用、②広域戦略偵察用、③部隊への直接攻撃用、④拠点インフラへの直接攻撃用…に大別した場合、①が徹底した低コスト、②はコスト度外視、③は???、④は複層化がポイント、と焦点が明確になる。
> C-UASに対応したIM-SHORADがTB2とサシで勝負すれば手も足も出ない
IM-SHORADが1機のTB2に手も足も出ない理由はどの辺りにあるのでしょうか?
火力が足らない?
先に見つけられる?
撃ち合いになると回避出来ないから被弾率が違う?
管理人様よろしくお願いします。
TB2がMAM-Lを使用すると最大15km先からIM-SHORADを破壊できるため、スティンガー(最大射程4km)やロングボウ・ヘルファイア(最大射程8km)では手が出せないという意味です。
ただこれはゲームのような1対1の「サシ勝負」の話なので、実戦では異なる結果が出るかもしれません。
回答ありがとうございます。
黎明期ですね
航空機の実用性が疑問視されていたWW1前や、艦艇に対しての有効性が証明されていなかったWW2前。今がWW3で無いことを願いたいですが、いずれは必ずそんな時代が来るんでしょうね
前例と違って、非常に安価なとこが背筋を凍らせますね。
敵も味方もSMASHを使ったらどんな戦いになるんだろ
結局、レーザーなどよりもスマッシュスコープやドローン対応のRWSが普及しそう。
一発は安くても、ユニットコストや電力がねえ・・・。
守る時は、敵が用いるドローンに対応できるカウンターシステムを用意。
攻める時は、敵のカウンターシステムで撃墜が困難なドローンを用いる。
すべてのタイプのドローンに対処するカウンターはステムの用意が困難である以上、今後は兵器配備の新たな駆け引き生じるのでしょうね。
重層的な低空防空網の再構築と理解しました、まるで魚釣りのように獲物にあわせてエサから仕掛けから変えねばならないイメージ
なかなか一網打尽には行けないようで
掌サイズの超小型ドローン「Black Hornet」から、イランのShahed-136や、トルコのTB2、米軍のMQ9まで、どれも無人機と言いながら、その大きさ、能力があまりに幅広いのが悩ましいですよね。
Black Hornet対策にバードショットを撃てるショットガン、DJI製ドローン程度までを撃ち落とせるようにSMASHスコープ付小銃、更に大型のShahed-136とか、ヘリ相手の防衛用としてスティンガー、この辺りまでは歩兵小隊でも装備しないと今後は駄目でしょうか。
ただ、重量増加が著しいので、重量の50~80%を兵士に負担を掛けずに地面に逃がす「人力型エクソスケルトン=UPRISE」辺りを皆が装備するようにしないと、まともに戦えなくなりそう。
今後の兵士はますます専業化が進み、先進国においては、素人ではいくら集めても足手纏い、って事になりそうですね。
クレー射撃の愛好家に10番ゲージ散弾銃を渡して対ドローン要員に。
金もヒマもある人達だから喜んでやるでしょ。
アストンマーチンとかガチの高級車とハイゼットデッキバンが並ぶ不思議な世界が射場の駐車場。
イランのハームっぽいドローンに改造を施し、レーダー波を感知すると30秒ほど燃焼できるロケットブースターを積み邪魔な翼も点火時にとばして800㎞/h位に増速して突っ込む様にする。コイツをIM-SHORADはサシで防げるのか?5機同時は?10機ならどうだろう?と攻撃側は単価が安いからマシマシできるしけど。守る方は高級品を揃えて対応しないといけない。
戦争での攻守のコスト離れは広がる一方で。我が国は専守防衛の看板を降ろす時が来たのかもしれない。
カメラの性能が良すぎて認識外から撮られて終わりな気がする
正直対抗策なんてこちらが先に敵の砲兵部隊潰すくらいしかないでしょ
歩兵小隊レベル自衛装備と中隊防空用の物を分ける必要があるのかな
専用装備じゃなく、対地ピンポイント攻撃などもできるようにしたい
分隊でも頭上のハエぐらいは落とせるようにしたい