大陸間弾道ミサイルの更新問題が浮上しているタイミングで実施されたミニットマンIIIの試射が失敗に終わり、米国の核の3本柱維持に暗い影を落としている。
参考:Minuteman III Intercontinental Ballistic Missile Test Aborted Due To Undisclosed Issue
果たして試射に失敗したミニットマンIIIは有事の際に確実な作動を保証できるのだろうか?
ロシアや中国は地上配備型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を次々と開発して能力向上に努めているが、米国は未だに運用開始から約50年が経過した「ミニットマンIII」に依存しているためICBMの戦力差にギャップが生じており、これを問題視したトランプ前政権がミニットマンIIIの更新プログラム「地上配備型戦略抑止(GBSD)」を立ち上げた。
ただGBSDのコスト(ICBMの開発・調達・維持にかかる総費用で核弾頭部分の開発・維持はエネルギー省の予算でカバーされるため含まれていない)は約2,640億ドル/約27.5兆円と見積もられており、国防予算の削減を打ち出すバイデン政権や民主党はGBSDにかかるコストが大きすぎると問題視してるため来年度の国防予算で資金供給が続くのか非常に流動的なのだが、バイデン政権は最近GBSDに理解を示す発言を行っているので若干風向きが変わってきたとの受け取れる。
ただ最近の世論調査では有権者の多くがGBSDプログラムに反対の意思を表明しており、ミニットマンIIIの延命を支持しているため最終的にバイデン政権がどの様な判断を下すのかは依然として不明だが、米戦略軍の司令官を務めるチャールズ・リチャード海軍大将は「時代遅れのミニットマンIIIをこれ以上延命させることは難しく、仮に延命作業を行なったとしても費用対効果の面で優れた選択肢ではない」と語りGBSDプログラムに資金を供給し続けること力説している。
そもそもミニットマンIIIは運用開始から約50年が経過して開発に携わった設計者や技術者の大部分はこの世に生存しておらず、設計図や技術文書の一部も行方不明になっているためミニットマンIIIをアップグレードするのは難しいと言われているのだがノースロップ・グラマンに23億ドルを支払って2040年までミニットマンIIIの推進システム維持を命じているので完全に延命が不可能な訳ではなさそうだ。
さらにミニットマンIIIに核兵器W87を搭載した新しい再突入体「Mk21A」の統合も予定されているため核戦力の能力向上という点でも無策ではないことが伺えるが、ロシアや中国は新しいICBMに核兵器を搭載可能な極超音速滑空体の採用も視野に入れているため根本的にICBMのロケットブースターを更新しない限り戦力差のギャップを埋めることは不可能なのだろう。
この様な大陸間弾道ミサイルの更新問題に揺れるタイミングで実施されたミニットマンIIIの試射が失敗に終わったため、今後GBSDの議論でプログラムへの資金供給を維持する主張が勢いを強めるかもしれない。
ただミニットマンIIIの試射失敗が技術的な要因なのかは今のところ不明で定期的に実施されるミニットマンIIIの能力検証は過去にも何度か失敗しているため取り立てて大きく扱う必要がないのかもしれないが、試射失敗の原因がシステム自体の老朽化に起因するなら見過ごせない問題だ。
果たして今回のタイミングで試射に失敗したミニットマンIIIは有事の際に確実な作動を保証できるのだろうか?
もし議会がミニットマンIIIが提供する核報復の能力を疑問視すればGBSDプログラムに資金を供給するのではなく英仏に習って陸上発射型の大陸間弾道ミサイルを廃止する可能性もあるので、米空軍の地球規模攻撃軍団(AFGSC)が主張する核兵器を搭載した戦略爆撃機による「戦略パトロール」復活も現実味を増してくるかもしれない。
追記:ミニットマンIIIの試射失敗の原因はカウントダウン中にシステムのコンピュータが故障を検出しため試射を中止したと米軍が発表したが、これ以上の情報は機密に該当するため一般には提供されないらしい。
関連記事:国防予算削減なら「核の3本柱」維持は無理? 米国でICBM廃止の可能性が浮上
関連記事:米次世代迎撃ミサイルのプログラムコストは約2兆円、削減される国防予算から費用を捻出可能か?
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※アイキャッチ画像の出典:public domain ミニットマンIII
次期ICBMはスペースXに任せよう
弾頭を切り離したらロケットが戻ってきます
戦略パトロール復活? B-52で? 政治家、兵器ともに高齢化が著しいアメリカさん。
新しい兵器はコストが高く調達個数が少ないので、少子高齢化である
しかも維持費高いのに碌に働かない穀潰しという
アメリカの宇宙ロケット技術は衰退しているのか?
あまり話題にならないから実態が分からないな
ミニットマンしかり、B52しかりアメリカは半世紀前の投資に支えられてる。良きにつけ悪しきにつけ、驚異的。
アメリカの核の三本柱の内最も若いトライデントですら25年以上。はっきり言ってアメリカ製核の傘は骨組みが曲がり穴だらけのボロ傘。世界の安全保障に深く関わる現状の相互確証破壊が機能するのはあと数年間だけ。アメリカ没落の象徴にアメリカ核体制の見直しが揶揄されるのも時間の問題。
ISSの代替名目にロシアと中国が本格的な宇宙開発に乗り出した。遅くとも2025年までには核による縮図(勢力図)が変わるので、確実に日本もロシア・中国から大きな外交圧力を受ける。生き残るには核武装くらいしかなく、中距離ミサイル配備の話が来年頃から出始めると思う。勿論アショア計画再開の話も含む。
ミニットマンの誘導システムって江戸時代のものなのか、今ならカスタムチップ一個で間に合いそう。
その場合でも気の遠くなるほどのテストが必要になるだろうけど。
さすがに江戸時代は言い過ぎだが、昭和に開発された物を維持するのは大変だろうな
開発当時は半世紀以上も配備するなんて想定していないだろうし
コンデンサの容量抜けとかでまともに動作するかあやしい気がする
サイロの中はなかなか広々としてて、梯子かけて電子機器を交換する写真を公開してたが、抜き打ちでどれかテストしたら動かなかったんですかね。電子機器か推進剤の劣化で。
スプートニクが墜落したってデマ流してた話か
実際には発射前に中止になった
>スプートニクが「墜落したってデマ」流してた
な。最初
>「スプートニクが墜落した」ってデマ流してた
に読めて混乱したわ。
アメリカ様が順調な記事をほとんど見かけない。
かたや、ロシア中国はイケイケな記事が多い気がします。
アメリカの底力はこんなものなのか。
中露は基本威勢のいい情報しか出てこないからね
裏でどんな不具合が出てるかわからんし報道ベースの情報だけで西側民主国家と比較してもあまり意味はない
>ロシア中国はイケイケ
プロパガンダが多分に含まれている可能性があります。もしくは都合の悪い情報は表に出てこないとか。
まぁ、世論がゴチャゴチャ言わない(言えない)ので色々試しやすいのかもしれません。
核兵器削減に一役買うであろうミニットマンIIIにノーベル平和賞を送ろう(提案)
ピースキーパー復活させるか
いちから新しいICBMを作るより早そうな気がしますよね。
弾頭の制限以外にもいろいろ難しいことがあるんでしょうか。
国の戦略の違いだから日本人の私が語っても意味ないかもしれんが、核搭載可能な弾道ミサイルを配備する「費用対効果」って字面やばいな
それどうやって算出してんのって
アメちゃん頼むぜ!…
核はお金掛かるね。
日本にゃ無理だよ。
50年・・・ここまでくると、使ってるトランジスタみたいなのって入手できるんだろうか?
NASAはシャトルの為にeBayとかで買ってきた昔のラジオからトランジスタ抜きだして使ってるみたいな話たまに流れてきてたけど(予算獲得の為の涙なしには語れない話なのかもしれない)
古い装備を大事に使うのは良いんだろうけど維持がねぇ・・・。
AC-130の積んでるボフォース40mmも部品が無くて苦労してるらしいし海自のMH-53EやらイギリスのハリアーGR7やらも部品取りの為に買い取ってるしで、素直に必要な部品だけ再生産した方が早くて安上がりなんじゃなかろうかと素人は思うがそうはいかない事情があるんだろうね。