大陸間弾道ミサイル迎撃における地上配備型(GMD:Ground-based Midcourse Defense)の次世代迎撃ミサイルのプログラムコストが180億ドル(約2兆円)近くになると報じられている。
参考:Next-gen intercontinental ballistic missile interceptor estimated cost? Nearly $18B
当初計画の3倍に高騰した次世代迎撃ミサイルのプログラムコスト、実質的な予算削減の中で費用を捻出できのだろうか?
米国の大陸間弾道ミサイル防衛は大まかに海上配備型と地上配備型に分かれており前者は海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦やタイコンデロガ級巡洋艦に搭載されたSM-6で、後者は陸軍のフォートグリーリー基地(アラスカ)と空軍のヴァンデンバーグ基地(カリフォルニア)に配備されたGBIだ。
このGBIはICBMを流用したロケットに迎撃体「EKV」を搭載したものでSM-6と同じように大気圏外で敵のICBMを破壊するように設計されているが、ロシアや中国が次世代のICBMを次々と実用化しているため米国はより高度で複雑な脅威に対処するためGBIに搭載された迎撃体のアップグレードを決定、新型の迎撃体「RKV」開発にボーイング(実際の開発主体はレイセオン)が取り組んだが技術的な問題を解決することが出来なかったため2019年に計画が中止されてしまった。

出典:public domain 迎撃体「EKV」
そこで国防総省はGBIの迎撃体を改良するのではなく次世代迎撃ミサイル(NGI)を一から開発して配備済みのGBIを更新する計画を発表、ロッキード・マーティンとノースロップ・グラマンがNGIのプロトタイプ開発に選ばれ最終的な勝者が2027年頃にNGIを軍に引渡す予定なのだが、国防総省のコスト評価とプログラム評価を担当するCAPEオフィスは「NGIの開発に131億ドル、NGIの調達に23億ドル、調達したNGIの運用と維持に22億ドルかかるため最終的なプログラムコストは180億ドル近い」という見積もりを発表して注目を集めている。
そもそも迎撃体「EKV」を改良してGBIをアップグレードする計画のプログラムコストは58億ドル(約6,300億円)だったので、一から次世代迎撃ミサイル(NGI)を開発するといえ同じ目的の計画が180億ドル(約2兆円)近くなるというのは国防予算が増額基調だったトランプ政権時代なまだしも、国防予算が実質的に削減される可能性が高いバイデン政権下では重荷になるかもしれない。

出典:public domain ミニットマンIII
バイデン政権は当初批判的だった大陸間弾道ミサイル「ミニットマンIII」の更新プログラム「地上配備型戦略抑止:GBSD(プログラムコスト約2,640億ドル/約27.5兆円)」について理解を示すなど現実的な路線への転換が見え始めており、このままトランプ政権時代の国防予算増額をあてにしたGBI更新プログラムまで計画通り進めるとバイデン政権が示した実質的削減に近い国防予算の下では他の重要なプログラムに影響を及ぼすだろう。
早い話2,640億ドルも必要なGBSDを切れば国防総省の台所事情は随分楽になるのだが、米戦略軍が運用する陸上発射型の大陸間弾道ミサイル「ミニットマンIII」は運用開始から約50年が経過しており、開発に携わった設計者や技術者の大部分は死去して設計図や技術文書の一部も行方不明になっているためミニットマンIIIをアップグレードして延命させるのは難しいらしい。
米戦略軍の司令官を務めるチャールズ・リチャード海軍大将は「時代遅れのミニットマンIIIをこれ以上延命させることは難しく、仮に延命作業を行なったとしても費用対効果の面で優れた選択肢ではない」と語りGBSDプログラムに資金を供給し続けることの重要性を主張しているが、トランプ大統領が掲げた「核の3本柱(ICBM/SLBM/戦略爆撃機)」の強化・更新の方針を見直さなければ米国は今後30年間で1兆ドル(100兆円以上)も核の3本柱に投資することになり1年あたりの平均負担額は約3.3兆円にもなる。

出典:U.S. Air Force photo/Staff Sgt. Trevor T. McBride
そのため英国やフランスを見習ってICBMを廃止してSLBMや戦略爆撃機等でカバーしたほうが良いのではないかという意見もあるが、もしICBMを廃止するなら核兵器を搭載した戦略爆撃機による「戦略パトロール」を復活させる必要があると米空軍の地球規模攻撃軍団(AFGSC)が主張しており、ICBMを廃止しても核兵器による報復レベルを維持するなら逆に運用コストが高いSLBMや戦略爆撃機でカバーすることになるので米軍の支払いは逆に高くなるというジレンマに嵌るだろう。
とにかく5月以降の発表される本物の予算教書(連邦政府予算案)でバイデン政権が7,150億ドル(約78兆円)に設定した国防予算の使い道を明らかにするので、もしかするとトランプ政権時代に決まっていたものを進めている現在の計画に大きな変更が加えられる可能性も0ではない。
果たして大金を必要とするGBSDやNGIはバイデン政権下でも継続して推進されるのか注目される。
関連記事:国防予算削減なら「核の3本柱」維持は無理? 米国でICBM廃止の可能性が浮上
関連記事:厳しい未来を予想する米陸軍、来年度の国防予算配分で陸軍は冷遇される?
※アイキャッチ画像の出典:Photo courtesy of the Missile Defense Agency
迎撃ミサイルの国際共同開発ってのは考えないのかな、機密度が高いのかしら
?
日米でしてるでしょ
そういえばそうか、これはそっちとは別なんでは
ICBM更新にアメリカがこれだけ金かけてるってのに規模が違うとはいえ北朝鮮はいくらかけてんだろか
あそこのミサイルは基本的にロシア技術の複製発展形か、パクりしかない。
しかも科学奴隷どもに研究開発されられる強みがある
元手が安いんだよ
えっICBMの日米共同開発!?(空耳)
SM6を陸上配備型に改良し直せばいいだけなんじゃないの?
またお得意のコストアップで開発中止かw
速度も重量も地上配備するにはスペック不足すぎる
ロシアはNUDOLと称する迎撃システムを開発中?どこからお金が沸いてくるのか
経済制裁の意味がないやん
核兵器ってお金かかるんだね。
日本は貧乏だから手を出さない方が良いんじゃないかな。
まあもったら経済制裁とか食らいそうですなあ、
でも日本国内の活動家さんはいっぱい資金もらそうですね。
核戦力から通常戦力まで更新しないといけないものが多すぎる。
野心的な兵器開発に失敗し続けたツケか。
78兆円(´Д`)
やっぱりアメリカって大国やな、
SM-6?
SM-3じゃなくて?
何やってもそれなりにお金がかかるなら優先順位つけて1番優先するものを開発すればいいのに…縄張り争いが激しいのかな?
あれ?
バイデン大統領が対中強硬政策を継続してるからトランプ元大統領と変わらんと言った挙げ句、トランプ支持者をネトウヨ呼ばわりした方々息してますか??
トランプを完璧だとは微塵も思っていないが、バイデン大統領は最初から国防費を減らす予定だったしね
まじで米軍大丈夫なんかな?
(自衛隊も予算も人員も全く足りていないが…)
トランプはワクチン打ったそうだね、真に受けてた信者は、置いてけぼりで気の毒だよ
君子は豹変す、これはバイデンも当てはまるかもよ
トランプはワクチン開発を急がせてたのに、いつからワクチン否定派と思われるようになったの?
自分では射たないって言い張ってたけどさ、
すべて口先だけの偽者だったね
共和党はしっかりと人選して欲しい
政府支出って新たに発行されたお金で執行されるから捻出もなにもないのよね
SLBMをICBMにするのってかなり難しい作業なの?
ICBMをSLBMにするのはサイズや防水やらで難しいというのはわかるんだが
どちらもよく似た目的なんだし、お金がないんだったら検討していると思うんだが
何かしらダメな要素があるということでしょうか
そうだよね。
一段追加すればいいとは思うけど。
それより、軌道変更できる弾頭を開発する方が大変なのかも。
確か、ロシアはICBMをベースにしたSLBMを最近作っているよ
ボレイ級SSBN用の3M14「ブラヴァー」(ベースはRT-2PM2「トーポリM」)がそれ
なので、今や米国の弾道弾開発技術はロシアに追い抜かれていると見た方が良いかも知れない
北朝鮮のムスダンもソ連のSLBMが元になってるらしいし出来るだろけど
まあアメリカは要求性能も高いだろうし、新規設計のほうが良いものが出来るんだろうな
米海軍と米空軍って、ミサイル開発では仲が悪い感じ。対空ミサイルでも地対空、艦対空をお互いに転用した例はない。空軍と海軍だったらスパロー、AMRAAMをシースパロー、SM-6に転用したりしているのだが。
何か頭がこんがらがった状達で書いているのかイマイチ分からない内容。
今更爆撃機で核パトロールを主張するやつがいるとか頭冷戦かよ
でもステルス爆撃機でなら現代でもイケる・・・のか?
死ぬほど金かかるけど
しかも危険だし
墜落事故の不安を払拭できない、過去例も多いし
いくら何でもボッタくり杉、、無能なプログラマがダラダラと長いコードを書いて結果はB7373MAXみたいなことになる未来しか見えない。
こうのとりやはやぶさのプログラムをした職員なら1/100の予算で作り上げるだろう。
”なぁーに日本が金を出してくれるから大丈夫”という予測の上でしていることだろ?
だけど日本もそこまで金を出すほど景気も良くないけどな。
冷戦終了後に、新型のピースキーパーを先に退役させるという不自然のしわ寄せがついに来た
未来への楽観論てのは、しばしば悲観の原因なんだと判る