米国関連

米空軍、F-35Aへ統合する新型エンジンの低率生産を2028年までに開始

米空軍は先月、2028会計年度までにアダプティブエンジンの低率生産を開始するための情報提供を要求する文書を発行、正式にF-35Aへのアダプティブエンジン統合が動き出した。

参考:F-35 Adaptive Engine Replacement (FAER) Program

アダプティブエンジンに採用された3ストリーム・アーキテクチャーは米空軍の次期戦闘機用エンジンにも使用される

Block4と呼ばれるF-35のアップグレードプログラムは66の機能追加(内容は不明)、ウェポンベイに搭載可能な空対空ミサイルの量を4発→6発に増加させるサイドキック対応、搭載アビオニクスの物理的な刷新を行うTech Refresh3など幾つもの要素で構成されており、Block4→Block4.1→Block4.2のように分割実装していくため「完全なBlock4に対応したF-35がいつ完成するのか?=少なくとも2020年後半までかかると噂されている」という質問に誰も答えることは出来ないが、1つだけはっきりしているのはエンジン問題を解消しないとBlock4で追加される全ての機能が能力を発揮できない。

出典:U.S. Air Force photo by Brian G. Rhodes

これはエンジンに欠陥があるという類のものではなく「Block4で追加される機能やアビオニクスを機能させるためのは現行のF135が提供する発電能力や冷却能力では力不足」という意味で、F-35ジョイント・プログラム・オフィス(JPO)のフィック中将曰く「最初に予定されている3つの能力増加分は現行のエンジンで機能するが、以降の能力増加分はエンジンの強化(発電能力や冷却能力の向上)が伴わなければ能力を完全に引き出せない」と述べている。

この問題を解決するのがNGAD向けに開発を進めていた「アダプティブエンジン」とP&Wが提案しているF135の強化パッケージ「F135EEP」だ。

出典:Pratt&Whitney

F135と同サイズで開発されたGE製のXA100とP&W製のXA101はF135と比較して推力が10%、燃費が25%、冷却性能(熱管理能力)が50%向上することが確認されており、F135EEPはF135と比較して航続距離、推力、熱管理能力のパラメータを二桁向上させることが出来るとP&Wは主張しており、共にBlock4の機能を全て作動させるだけの発電能力と冷却能力を備えているらしい。

ただしF-35の基本性能を大きく向上させるのはアダプティブエンジンの方で、この点に着目した議会が空軍のF-35Aにアダプティブエンジンを統合するため2022年度の国防権限法案に「統合義務」の文言を盛り込んでおり、2023年度の予算要求から2週間以内に空軍はF-35Aへアダプティブエンジンを搭載する方法や財政的に競争力のある調達戦略を議会に提出する必要がある。

出典:GE XA100が採用した3ストリーム・アーキテクチャー

これに対応して米空軍は1月27日、2028会計年度までにアダプティブエンジンの低率生産を開始するための情報提供を各社(恐らくGEとP&W以外には回答不可能)に要求する文書を発行しており、正式にF-35Aへのアダプティブエンジン統合が動き出した。

まぁアダプティブエンジンの統合は米空軍のF-35Aのみなので同盟国のF-35Aにとっては今のところ無関係だが、アダプティブエンジンに採用された3ストリーム・アーキテクチャー(バイパス流の3重化)は米空軍の次期戦闘機用エンジンにも使用されるため注目するしかない。

関連記事:2027年に新型エンジンをF-35Aに搭載予定、航続距離は30%拡張され加速性能は2桁向上
関連記事:P&W、F-35Block4に対応した強化エンジンパッケージ「F135EEP」を発表

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain

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コメント

    • 折口
    • 2022年 2月 03日

    28年(目標)ってのは微妙な時期ですね…。
    米国はいいでしょうけど日本としては次期戦闘機の開発が終盤に来ている時期で、ここで関連予算を104機ぶんのエンジン換装に費やすかどうか。旧型エンジンで退役まで使い続ける選択肢があったとしても、最大のユーザーである米軍機が移行してしまえば旧型の調達からサポートまで価格が上がるのは目に見えているし。国内に設置したエンジン組立工場との兼ね合いもありますし、ごたつきそうですね。

    7
      • 通りすがり
      • 2022年 2月 03日

      エンジンの強化パッケージを当てないとブロック4の恩恵を得られないならやるしかないでしょ

      19
      • おわふ
      • 2022年 2月 03日

      アメリカ以外が得られるのは強化パッケージだけなので、そこまで問題にならないのでは。
      ただ、それだと発電能力強化が中心でエンジンの根本的問題解決にはならないでしょうね。
      アメリカのF-35Aは一歩先に。

      11
      • samo
      • 2022年 2月 04日

      エンジンが必ず先に寿命迎えるから、新型に交換するしかないと思うよ
      まあ、F-15Jも全機エンジン換装してるしそこは心配する必要ない

      2
    • 全てF-35B
    • 2022年 2月 03日

    アダプティブエンジンがF-35Bに適用されないのは残念だが、F135EEPが適用されれば良し。
    F135EEPが、既存のF135からオーバーホール時にアップデート出来ればいいのだが。
    F-35Cにアダプティブエンジンが適用出来ないと、具体的な新型機のない海軍は少しピンチかな。

    6
    • トクメイキボウ=サン
    • 2022年 2月 03日

    ん?つまり現行のF-35をブロック4にするにはエンジンの性能が足らん、そんでアダプティブエンジンかF135EEPのどっちかを使えばブロック4に対応出来る、けれどもアダプティブエンジンを使った方がF135EEPを使うよりもF-35の基本性能が向上する。

    しかしアダプティブエンジンはアメリカ軍用で同盟国は供給して貰えないって認識でOK?

    28
      • 破軍
      • 2022年 2月 04日

      本文よく見てないな。block4の機能を完全に引き出す為には新エンジンが必要。

      アムラームのサイドキックなんてウェポンベイ内の有効活用でしか無いから致命的でも無い重量増に目を瞑ればエンジンは関係無い。

      アビオニクスに関しては消費電力に対しての性能向上を期待したい所だけど、PCみたいにソフトウェアで電力消費プランで高パフォーマンスやバランスとかで機能制限したりするんじゃないかね。電力消費別に違うハード準備するとか面倒だし。

    • 無無
    • 2022年 2月 03日

    ここでも発電能力
    これからは軍艦も飛行機も戦闘車両もみな電力の大きさがそのまま能力のカギ
    この分野、我が国は得手だったはずなんだが

    3
      • エンジン大好き
      • 2022年 2月 03日

      > この分野、我が国は得手だったはずなんだが

      今も得意ですよね。

      13
      • おわふ
      • 2022年 2月 03日

      効率化は得意。
      発電動力自体の出力が問題。

      5
        • エンジン大好き
        • 2022年 2月 03日

        > 発電動力自体の出力が問題。

        どんな問題があるんでしょうか?

          • おわふ
          • 2022年 2月 04日

          ライセンス生産能力は充分ですが、エンジン本体の自己開発能力はまだまだと思っています。

          2
            • エンジン大好き
            • 2022年 2月 04日

            英国側はテンペスト用エンジンで基本設計から日本の協力を希望しているというので、日本は高い技術力を持っていると思いますよ。

            9
      • くらうん
      • 2022年 2月 03日

      だったというか現在進行形で得手だよ。
      F135の発電量は160kwに対してXF9は180kwで上回ってたはず(IPPを使った場合はF135が上)。
      XF9が後発にしても、エンジンのノウハウが豊富なP&Wに発電量で勝るのは純粋にすごいことだと思う。
      ロールスロイスと次世代実証エンジンの共同開発に乗り出すのもこの数字が大きかったんじゃないか。
      レールガンの開発が継続されているのも米中に比べて蓄発電技術の優位があるみたいだし(深層NEWS 小野寺元防衛相)。
      日本スゲーしたいわけじゃないけど電力関連の技術はかなり強そうだぞ。

      19
        • バーナーキング
        • 2022年 2月 04日

        日本が発電関連でかなり強い事は事実だと思うけど、その根拠をXF9-1の発電量>F135の発電量に求めるのはどうかと思うよ。
        機体サイズに縛られないプロトタイプエンジンの発電量なんて増やそうと思えば(エンジンへの負荷やジェネレーターのサイズを気にしなければ)いくらでも増やせるんだから。
        XF9-1を根拠にしたいなら「発電量当たりのジェネレーターのサイズや重量」で比べなきゃいけないけどそれも評価がなかなか難しいだろうし。

        繰り返すけど日本が発電関連でかなり強い事もその辺目当てにRRが擦り寄ってきてるのであろう事も否定はしないよ。

        10
          • くらうん
          • 2022年 2月 04日

          XF9はF100やF110と同じくらいの大きさだったと雑誌で見た記憶がある、それを信じるとF135よりむしろ小さいはず。そもそも主目標がスリム化だったしね。
          搭載したのは新型ジェネレータのプロトタイプだから実用機たるF135と単純に比較できないだろうというのはわかるけど、とてもエンジンカウルに収まらないようなサイズをくっつけたとは考えにくいし。
          ここはXF9は日本の希望ということでひとつ手打ちにしてくれませんかね兄弟。

          18
            • バーナーキング
            • 2022年 2月 04日

            うん、「XF9-1(のスタータジェネレーター)が発電量の割にスリムだから」なら(少なくとも私には)反論材料はないです。

        • 無無
        • 2022年 2月 04日

        その辺を大いに期待しております、

        1
    • 無明
    • 2022年 2月 03日

    >Block4→Block4.1→Block4.2のように分割実装していくため
    各国に売ってそれぞれでメンテして終わりじゃなくていろいろと関連づけられてると聞くし細かいバージョン違いでぐちゃぐちゃになったりしないんだろうか

    3
    • ハガ
    • 2022年 2月 03日

    すごくどうでもいい話なんですが、
    この記事の見出し画像、F-35Aが直線翼みたいに見えて面白いですw

    2
    • mihai
    • 2022年 2月 04日

    さすが戦闘機界のサクラダファミリアwF 35
    そんなことよりODINどうなった?
    ALISがポシャっておでんになったんだけど
    そのおでんも予算凍結になってるだろ?w
    F-35の根本的な問題は維持費が高いことなんだから
    ちゃんと解決してくれないと困る。日本勝ってしまってるんだから

    次から次へと改良と言う名の手直しをして、型式ばっかり増えるから
    アリスやおでんみたいな自動兵站支援システムがポシャるんだろうに

      • ブルーピーコック
      • 2022年 2月 04日

      ここのブログの3日前の記事
      リンク

      2
        • mihai
        • 2022年 2月 04日

        >F-35ジョイント・プログラム・オフィス(JPO)は31日、F-35運用の妨げになっていたロジスティクス・システム>「ALIS」を新たに開発した「ODIN」で更新する『ファーストステップが』完了したと発表した。

        貴方が指したリンク先でも、『ファーストステップが』終わっただけで、オデンの開発は未だ『ファーストステップ』で、予算が付いたかどうかも分かってない状態が続いてますよ。
        プログラムを搭載するサーバーが決まっただけで、肝心のプログラムは未だに五里霧中の状態です。
        そりゃ、未完成なF-35を無理やり手直ししながら作ってて、同型式が数機とかでバラバラな型式を乱造してては、統一した兵站システムなんて構築できるわけがないのです。
        アリスをクソみたいに言う節がありますが、そもそも問題としてF-35の手直ししながら生産するなんて方法が問題なのですよ。
        いつF-35がフルレート生産になるのか知りませんが、すでに生産した(未完成な)F-35 全機をそれに規格を合わせない限りオデンも使えないでしょうね。

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