ヘグセス国防長官が「包括的な改革」を陸軍長官に命じ、ハンヴィー、JLTV、M10 Booker、ストライカーの調達中止、AMPV調達削減、AH-64D廃止など調達改革の嵐が吹き荒れているが、今度は「新型上陸用舟艇や対戦車ミサイル=TOW2の調達中止が検討されている」と報じられている。
参考:Army eyes cancellation of new logistics boat, halting TOW missile buys
参考:Marines sticking with JLTV after Army cancels future vehicle buys
米陸軍は一連の改革を通じ「今後5年間で480億ドル=約7兆円の削減」を目指している
米陸軍参謀総長のジョージ大将は「従来の調達計画を根本的に覆す大改革が進められている」と言及したことで防衛産業界はパニックに陥っていたが、ヘグセス国防長官が「包括的な改革」を陸軍長官に命じ、ハンヴィー、JLTV、M10 Booker、ストライカーの調達中止、AMPVの調達削減、AH-64DとGray Eagleなど旧式機材の廃止、新型自走砲を巡る競争の一時停止、無人戦闘車輌=RCV開発、新型ヘリ用エンジン=T901開発中止、RQ-7Bの後継機調達計画=FTUASへの投資中止が発表されたが、まだ調達改革は終わっていない。

出典:Public Domain MSV-L
Breaking Defenseは20日「陸軍は老朽化した上陸用舟艇=LCMの更新用として計画していたMSV-L取得(約10億ドル)をキャンセルするつもりだ」「2026年~2028年までに計2,082発(約5億ドル)の取得を計画している対戦車ミサイル=TOW2も削減対象(事実上の調達中止)になっている」「BAEが生産を担当しているAMPVプログラムから4.9億ドル、M109A6プログラムから2.3億ドルの資金削減も検討している」「さらに陸軍は2025年会計年度末までに戦闘車輌の電動化研究とアイドリング防止機能の調達を全て停止する」と報じている。
米海兵隊は「JLTV調達を維持する」と述べているが、総司令官のスミス大将は議会の公聴会で「陸軍の調達中止で被る影響の評価は時期尚早だが、発注が減るとJLTVの取得コストは確実に上昇し、これが海兵隊の任務遂行能力に悪影響を及ぼさないか懸念している」と証言し、TOW2も陸軍と海兵隊で共同調達しているため将来に対する懸念はJLTVと同じだろう。

出典:U.S. Army photo by Cpl. David Poleski
因みに米陸軍は一連の改革を通じ「今後5年間で480億ドル=約7兆円の削減」を目指しており、削減項目が確定するのは2026会計年度予算なので、まだ決定が覆る可能性もあるらしい。
追記:JLTVにとって最大の顧客=米陸軍の発注を失うと、米海兵隊と海外顧客の将来発注が影響を受けると予想されてる。TOW2の調達中止はFPVドローンの本格導入が関係しているのかもしれない。
関連記事:米陸軍副参謀長、いま改革を実行しなければ痛みはもっと大きくなる
関連記事:米陸軍の改革に救済なし、適応できない主要企業が撤退しても構わない
関連記事:米空軍がKC-46A納入再開を発表、米陸軍は請負企業から修理権を奪還
関連記事:米陸軍がUGV開発を中止、AMPVも調達削減、ストライカーも調達停止
関連記事:M10 Bookerが調達中止になる要因、重量増に加え拡張性がないモンスター
関連記事:米国防長官が陸軍に改革を指示、ハンヴィー、JLTV、M10の調達を中止
※アイキャッチ画像の出典:photo by U.S. Army Staff Sgt. Pablo N. Piedra
こっちは5年で約7兆円予算削るのに、ゴールデンドーム計画の出費で年間3.5兆円以上出費が増えるのか・・・。
いろんな対戦車ミサイルがあったわけですが、ハマス作成Yassin105のような安価なものだけでなく、徘徊型無人機・FPVドローンなどは対戦車ミサイルよりも長射程長時間さらなる脅威を与えられるわけですからね。
上陸用舟艇も、接近阻止の環境が構築されれば、制空権を得られない中で水際上陸を行えるの怪しいでしょうし。
無人機・FPVドローンが、現代戦車を破壊できるのが戦訓なわけですから、無人機の徘徊する環境を突破できるのか見直す必要もあるだろうなと。
もっと言えば、アメリカが大量の血を流してまで、上陸用舟艇で仕掛ける戦場ってどこかなのかなあと考えてしまいますね(自国の領土奪還くらいでしょうか?)。
まあ地図を見れば明らかにアメリカって陸軍国じゃないですし……。
世界中に米軍がいる状況の方がクレイジーだったという見方はある。
トランプはそれを見直しているだけ……。
というかゴールデンドームでアメリカを守るとかっこいいイメージで言ってるけど、本当に守りたいのは中国の近くにある航空基地じゃないの?
沖縄の滑走路は現状のままだと使えない(守りきれない)って何年か前に米軍から訴えがあったよね。
まさに仰る通りで、米国は海洋国家、シーパワーなんですよね。
グアムへの海兵隊・米軍機の移転計画は、中国の中距離弾道ミサイルなどの対策として、言われていたことがあるなと。
陸軍でJLTVの中止って事は、海兵隊のJLTVと言うかNMESISはどうなるんだろう?と思ったら、やはり影響あるのかな…
調達数削減でコスト上昇、NSMの調達遅延と、海兵隊の主力も大変だ
なんか汎用車両がなくなりそうな勢いでコスト削減しているけど、陸軍は何に乗って移動するんだろう?
テスラかな?
売れ残ったサイバートラックが沢山あるからなあ。
なんで陸軍に上陸用艦艇が?と思いましたがよく考えたら川と船を使った補給路は軍隊の基本でしたね
陸軍的には複数ある手段の1つなのでドローンの脅威があるので廃止しますで済みますが海兵隊的には痛いですね