ウクライナ戦況

ウクライナ軍による怒涛の解放、ヘルソン市郊外まであと10kmに迫る

ウクライナ軍は信じられない速度でドニエプル川右岸地域(ヘルソン州とムィコラーイウ州)の拠点を解放し続けており、この調子で行けば11月中の「ヘルソン市奪還」も夢ではない。

ウクライナ軍は市街戦を避けるためロシア軍の撤退を待ってヘルソン市に入る可能性が高い

ドニエプル川右岸地域からのロシア軍撤退に呼応してウクライナ軍は次々と拠点を解放しており、当該地域の前線=ウクライナ軍の最先端がどこに達しているのかは謎だが、視覚的に解放が確認された拠点と接続道路を参考に線を引くと以下のようになる。

出典:Google Map ヘルソン州の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

黄色字はウクライナ軍による解放が視覚的に確認された拠点で、チカラブ~ブラスキンズキー~ボロゼンスキーを起点とした突出部は消滅、ドニエプル川沿いのマイラブについて情報がないので状況は不明だが、ノボケイリーを解放した可能性を示す写真(国旗の掲揚)が確認されているため「マイラブは放棄された」と考えるのが妥当だろう。

さらにインガレット川沿いに伸びる突出部の起点だったスニフリフカや周辺拠点が次々と解放されているため、この方面のウクライナ軍はインガレット川沿いにヘルソンへ向けて南下する可能性が高く、黒海に面したスタニスラフを解放したウクライナ軍もヘルソンに向けて前進(トミナ・バルカを解放したとウクライナ政府関係者が言及)している。

出典:Google Map ムィコラーイウ州全域がロシア軍から解放された場合の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

特に興味深いのは「ムィコラーイウ州全域がロシア軍から解放された」と主張するウクライナ軍兵士の動画が存在する点で、この主張を額面取り受け取ると相当な範囲(?マークが描かれた濃い青の地域)をウクライナ軍が解放したことになるが、まだ当該地域の解放を示す視覚的な証拠は見つかっていない。

どちらにしてもロシア軍がドニエプル川右岸地域を放棄して後退しているのは確実で、ヘルソン市内ではロシア軍がインフラの破壊(テレビ放送施設、通信施設、ボイラーなど)を進めているのが確認されているため、この地域に長居するつもりは無さそうだ。

追記:マイラブの解放を視覚的に確認(マップには未反映)

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※アイキャッチ画像の出典:Telegram経由

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コメント

    • hoge
    • 2022年 11月 11日

    問題は終わりが見えてきたヘルソンの解放後ですよね。
    正直、ウクライナ的にはヘルソンでロシアが勝手に消耗してくれる方がやりやすかったでしょうし。

    26
    • せい
    • 2022年 11月 11日

    おお、ヘルソンを取り返しましたか。
    地図二枚目の?地域も本当に取り返してたとすれば、ドニエプル川左方のさは年内に取り返せるかな?

    3
    • ほい
    • 2022年 11月 11日

    ロシア軍撤退の見方は正しかったようですね。

    6
    • ブタゴリラ
    • 2022年 11月 11日

    うれしい情報だけど、バフムートのロシア軍制圧も11月中にありえそうで怖い

    3
    • pon
    • 2022年 11月 11日

    本格的な冬の到来の前にドニエプル川西岸を抑える可能性が出てきたのは良い感じですが、冬の間にどうロシア軍が愛偏されるかに注目ですね。

    4
    • ああああ
    • 2022年 11月 11日

    撤退時に民間のインフラを破壊して回ってるのを見て、本当に地獄に堕ちろって思う。

    43
    • 58式素人
    • 2022年 11月 11日

    当面心配なのは。
    ロシアが、カホフカ水力発電所のダムを破壊する準備を
    していると言う話があったこと。
    いつの時点で爆破をするつもりだろうか。
    ロシア軍がしていたと言う住民の疎開の状況はどうだろう。
    爆破による水害の影響範囲が想定できているなら、
    その範囲(ヘルソン市全域共?)に立ち入るのは要注意では。
    早く、爆破の危険を除去する必要があありますね。
    それとも、ダム湖の水位を安全な手段で下げられないものでしょうか。
    原発の冷却水がどれほど必要かはわかりませんが、
    別途に供給する手段は無いでしょうか。

    4
    • 名無しさん
    • 2022年 11月 11日

    >インフラの破壊
    ロシア軍が一番得意な奴ですね

    15
    • kitty
    • 2022年 11月 11日

    何気ないスナップ写真に出てくる兵士にヘルメットカメラの装着率が高い。
    ウクライナ軍の西側装備への転換が進んでいるんでしょうねえ。

    • 鳥刺
    • 2022年 11月 11日

    ヘルソン橋頭堡の戦いの現状は、ハイマース以降、戦場の設定がウクライナ側に極めて有利になっていたとは言え、「進出尖端での消耗戦的な押し合い」でロシアが根負けした事=現戦線の長さと予定の意図が、ロシアの国力の限界を越えていることを意味します。類例的にはガダルカナルですか。

    そして、この戦争が続く限り、ロシアの国力は制裁により萎み続けるわけです。

    それにしても、リアルタイムの陸戦の戦勢の評価は難しいものですね。ヘルソン橋頭堡北東部戦線の一回目の崩壊後の戦線の停滞を、ロシア側の兵站の確立の表われとする見方もありましたが、実態としては、やはりこの条件下でのロシア側の兵站の維持は過重で不可能な負担だった事だったようです。また、ウクライナ側には攻勢時の物資の集積・準備と放出のサイクルがある感触ですね。

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