ウクライナ戦況

ロシア軍がイワニフスキーを占領、露国防省はスタロマイオルケ占領を主張

DEEP STATEは10日夜「ロシア軍がアウディーイウカ方面の複数方向で前進した」「ロシア軍がバフムート方面でイワニフスキーを占領した」と報告、ロシア国防省は「南ドネツク方面のスタロマイオルケを解放した」と発表し、RYBARもスタロマイオルケ解放を報告している。

参考:Мапу оновлено!
参考:Хроника специальной военной операции за 10 июня 2024 года

ウクライナにとって「昨年夏の反攻作戦で奪還した集落を失う」というイベントは政治的によろしくない

ウクライナ軍参謀本部は連日「戦闘が最も激しいのはハルキウではなくドネツクのポクロウシク方向だ」と言及し続けてきたが、ゼレンスキー大統領も9日「前線の中でポクロウシク方向の状況が最も困難だ」と、参謀本部も「我々はノヴォレクサンドリヴカ、エヴヘニフカ、ソキル、ノヴォポクロフケ、ノボセレフカ・ペルシャ、ヤスノヴロディフカに対する襲撃を撃退しているものの攻撃は止んでおらず、この方向の状況は悪化している。敵はオチェレティネからノヴォレクサンドリヴカ方向とエヴヘニフカ方向に突破を試みている」と指摘。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

ウクライナ人が運営するDEEP STATEも9日に更新した戦況マップの中で「ロシア軍はノヴォレクサンドリヴカ集落内で占領地域を広げた」「ノヴォレクサンドリヴカ集落全体がグレーゾーンに収まった」「ノヴォレクサンドリヴカの南で支配地域を拡大した」「ロシア軍がノヴォセリフカ・ペルシャ方向に支配地域を広げた」と、ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARも「ロシア軍はウマンスキーの北東で前進した」と報告したが、この方向の状況は更に悪化した。

DEEP STATEは10日夜に更新した戦況マップの中で「ロシア軍はソキルとノヴォポクロフケの間で支配地域を拡大した」「ロシア軍はノヴォポクロフケ方向に支配地域を拡大した」「ロシア軍がノヴォセリフカ・ペルシャ方向に支配地域を広げた」「ノヴォポクロフケ集落全体がグレーゾーンに収まった」「ノヴォセレフ・ペルシャ郊外までグレーゾーンが伸びた」と報告。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

ノヴォレクサンドリヴカに続きノヴォポクロフケも集落全体が係争地域に移行し、ノヴォポクロフケの背後に位置するノヴォセレフ・ペルシャにもロシア軍の手が伸び始めている格好で、ソキルとノヴォポクロフケのラインもじわじわとロシア軍に押されており、もうノヴォポクロフケの運命は時間の問題だろう。

DEEP STATEはバフムート方面のイワニフスキー方向について「ウクライナ軍が集落の南西部分と運河に続く森林地帯を保持もしくは両軍とも支配していない」と主張してきたが、10日夜に更新した戦況マップの中で「ロシア軍がイワニフスキー(運河に続く森林地帯を含む)を占領した」と認めたため、これでイワニフスキー方向に対するDEEP STATEとRYBARの評価は一致した。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

RYBARもバフムート方面について「チャシブ・ヤール東地区で戦闘が続いている」と報告したが前線位置に具体的な変化はなく、DEEP STATEは「クレシチェエフカ方向の前線位置が判明した」と報告して評価(次回の更新で戦況マップに反映する予定)を変更している。

因みにロシア国防省は10日「スタロマイオルケを解放した」と発表、RYBARも「ロシア軍がスタロマイオルケを解放した」と報告しており、DEEP STATEも10日夜に更新した戦況マップの中で「ロシア軍がスタロマイオルケの大部分を支配している」と報告したが、DEEP STATEは「ロシア軍がスタロマイオルケを占領した」と認めていない。

ロシア大統領旗がスタロマイオルケ集落(47.75486, 36.79374)に掲げられているのを確認したが、これだけで「ロシア軍の支配地域が集落の北端まで及んでいる」とは言えない。但し、周辺の状況を考えるとスタロマイオルケの運命も時間の問題で、ウクライナにとって「昨年夏の反攻作戦で奪還した集落を失う」というイベントは政治的によろしくない。

関連記事:侵攻837日目、ウクライナ軍の状況が最も困難なのはハルキウではなくドネツク
関連記事:侵攻836日目、ロシア軍がチャシブ・ヤール東地区中心で軍旗を掲げる
関連記事:侵攻835日目、ロシア軍がチャシブ・ヤール東地区の中心部に到達した可能性
関連記事:侵攻834日目、ロシア軍がクピャンスク方面でイヴェニフカを占領
関連記事:侵攻833日目、アウディーイウカ方面におけるロシア軍の前進が顕著
関連記事:侵攻832日目、ロシア軍がドネツク西郊外方面とアウディーイウカ方面で前進

 

※アイキャッチ画像の出典:Воин DV

最小限の戦闘でオチェレティネを失った理由、街を守る兵士がいなかった前のページ

ウクライナ軍によるSu-57の破壊、UMPKの有効性が低下している可能性次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ロシア軍はキスリブカで国旗を掲げ、オチェレティネから西へ2kmも前進

    RYBARはクピャンスク方面について「ロシア軍がキスリブカ東部で国旗を…

  2. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍が再びドニエプル川に掛かる橋を攻撃、クリミアでは本土に逃げる車で大渋滞

    ウクライナ軍が再びHIMARSでアントノフスキー橋とノーバ・カホフカ水…

  3. ウクライナ戦況

    南ドネツクの戦い、ウクライナ軍がブラホダトネの解放に成功

    ウクライナ軍の第68独立猟兵旅団は11日「味方と協力してブラホダトネを…

  4. ウクライナ戦況

    水上無人艇の夜間攻撃で損傷したクリミア大橋、道路橋の一部橋桁が崩落

    ウクライナメディアは「クリミア大橋に対する夜間攻撃は海軍と保安庁による…

  5. ウクライナ戦況

    ロシア軍が巡航ミサイルで西側提供の装備保管場所を破壊? ウクライナ側は否定

    ロシア国防省は「巡航ミサイル4発で西側が提供のT-72や装甲車輌を破壊…

  6. ウクライナ戦況

    騙されないゼレンスキー大統領、ロシア人は結果でしか信用できない

    ロシアとウクライナの和平交渉は「幾つかの点で歩み寄りが見られた」と報じ…

コメント

    • 暇な人
    • 2024年 6月 11日

    むしろまだイワニフスキーが残っていたのが驚きだ
    ロシアも守れそうにないときはさっと引いたところをここまで粘るのがむしろおかしい

    31
      • jimama
      • 2024年 6月 11日

      クリンキもまだ残ってますからね
      8日にもまたちょっかいかけて吹き飛ばされてた
      なんというか、ウクライナの指導部は損切が苦手なんでしょうか
      株とかでドツボにはまるタイプ

      17
        • たむごん
        • 2024年 6月 11日

        クリンキ、まだやっているのですか。

        アウディーイウカ攻防〜オチェレティネの戦い、クリンキの海兵4個旅団や支援部隊があれば、また違ったかもしれませんね。

        仰る通り、損切りなどのリスク管理、銘柄選定も苦手そうですね。

        6
    • たむごん
    • 2024年 6月 11日

    T-0504が、砲撃・FPVドローンの射程に入りそうなので、ニューヨークなどの補給に悪影響がでそうです。

    T-0504~ノヴォレクサンドリヴカ、10km圏内に入りますので(DeepStateMAPで簡易計測)、補給線への圧力が大きくなりそうですね。

    16
    • もへもへ
    • 2024年 6月 11日

    1次大戦みたいな陣地戦になった以上、大突破するにはかなりの兵力優位が必要ですね。
    東部戦線から兵力を転用したドイツのカイザーシュラハトも末期の連合軍の反攻もアメリカの大兵力に支えられていました。

    かと言ってウクライナは既に自力で公務員の給料も年金も払えず財政は支援頼み。
    ロシアはなんだかんだ言って自国で経済を回せているようですが、ウクライナの場合は支援の途切れは財政的に死に直結します。

    全土奪還まで戦うとすると数年単位でしょうから、昨今の欧州選挙結果より今までのように金は幾らでも援助される状況は無くなりつつあると思います。

    特に最近は何処何処が陥落という暗い話が多いですから、何々の兵器撃破とかではなく知名度のある都市の奪還で支援国の選挙を側面支援する必要があるのではないでしょうか。

    もちろん兵力不足の現状では困難な話ですが、明日の支援を増やすためにも乾坤一擲の攻勢でバフムートやアウディーイウカ辺りを一時的にでも奪還できれば大きなニュースバリューがあります。

    5
      • ルイ16世
      • 2024年 6月 11日

      反抗には大兵力が必要なのはもへもへさんの言う通りです
      ですが正確にはもう2つ必要なものがあります
      砲兵と航空機(ドローン)です
      第一次大戦は浸透戦術にしろ戦車の投入にしろ敵砲兵の排除が絶対必要です
      そして対砲兵戦の勝利には航空優勢が必要です
      航空戦で勝利した側が観測機を飛ばせ、観測機のある方が砲兵戦で勝て、砲兵戦で勝てた側が砲兵の射程まで歩兵や戦車を前進させる事が出来ます
      これが第一次大戦後半からの原則で各国が航空機の性能を競っていたり、大規模な攻勢の前に必ず航空戦が行われるのはこの為です
      どちらも不足した状態で兵に突撃させれば万歳突撃した日本兵の様になると個人的に予想します
      苦しいですがロシアより航空機、砲兵で上回る日まで待つべきだと思います

      11
        • kitty
        • 2024年 6月 11日

        >苦しいですがロシアより航空機、砲兵で上回る日まで待つべきだと思います

        もう無理ポの婉曲表現でしかないですね。

        47
          • 通りがかりさん
          • 2024年 6月 11日

          低空域(ドローン)では出遅れていましたが、どちらも得意とするドクトリンですからねぇ。

          7
    • nk
    • 2024年 6月 11日

    ドネツク州とルハンスク州全域占領はロシアからすると必達項目だろうから進軍できる箇所は占拠していくのかなと。プーチンは停戦うんぬん言ってるがウクライナが飲まない事を理解した上で、ロシアは停戦交渉はいつでも受け付ける体をうまいこと取れている印象。ハルキウ陽動からの東部方面主攻撃軸にして進軍し、南部も少し進軍という感じで今の所はロシアが崩れる要素は無さそうかなと思われる。ウクライナは東部は守勢に回っているのだから、さっさと運河の西まで徹底し防衛線引き直すのが良いと思うのだが平和会議までに押され過ぎると支援国からの印象悪いのと一応住民守るという建前あるからなかなか難しいのだろうが、住民ハイエースして20発射撃訓練後に塹壕へgoしてる時点で色々と破綻はしているがハイエース不可になるまで継続予定なのだろうか興味深い。

    29
      • つぐみ
      • 2024年 6月 11日

      プーチンはロシア側の停戦条件がウクライナにとって受け入れ難いことを理解しながらあえて提示して、

      一方で戦場では支配領域を拡大させて心理的にも物理的にもダブルでウクライナに圧力加えて出方を伺えるだけの余裕があるんだろう

      ウクライナの足元を見て戦争を進めてるという意味で、プーチンは衰えているどころかむしろ狡猾だね

      22
      • ポレ
      • 2024年 6月 11日

      ハイエースの風評被害が凄い。

      これも一種の有名税か。

      14
        • 納豆菌
        • 2024年 6月 11日

        住民ハイエース、ハイエース不可 とかで意味が通じてるのがスゴい。と思います。

        16
          • 2024年 6月 11日

          確かに普通は、住民ハイエースなんて意味不明。

          9
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 6月 11日

    ウマンスキーが陥落した時点でノヴォホクロフケは片翼がもがれた形になったので、十分な防戦は無理でしょうね
    ノヴォセリフカ・ペルシャも増援が無い限りは時間の問題でしょうとしか

    8
    • カリアゲ
    • 2024年 6月 11日

    市街地や集落、運河や溜池以外の地域は、動きが早くなりましたね。ウクライナ軍の兵力不足か防衛線構築の為、集約してるのでしょうか。
    ウマンスキーは、溜池東岸一帯の掃討とノボセレフカ・ペルシャ包囲。
    イワニフスキーは、南東方向へ運河迄とクレシチェエフカ北部との連絡狙いですかね。

    5
    • 納豆菌
    • 2024年 6月 11日

    住民ハイエース、ハイエース不可 とかで意味が通じてるのがスゴい。と思います。

    7
    •  
    • 2024年 6月 11日

    イワニフスキー陥落
    キーウまで残り570キロ(東京〜青森と同じ距離)

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  4. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  5. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
PAGE TOP