欧州関連

エアバス、顧客から要望があればFCASの有人戦闘機2機種開発を支持

エアバスのギヨーム・フォーリ最高経営責任者は19日に開催された決算会見で「我々は顧客からの要請があればFCASの有人戦闘機を2機種並行開発することを支持する」「機種並行という道が開ければ『他のパートナー』を迎え入れる機会にもなる」と述べた。

参考:Airbus open to two-fighter option for FCAS to keep program alive

もう何処に着地するのか蓋を開けてみるまで何とも言えない

フランス、ドイツ、スペインは将来戦闘航空システム(Future Combat Air System=FCAS)の共同開発を進めているものの、ダッソーがワークシェア配分の3ヶ国合意を無視した主導権を要求し、ドイツのメルツ首相は「このままではFCAS計画を続けられない」と、インドラのデ・ロス・モソス最高経営責任者も「我々とスペイン国防省はFCASに対する立場について完全に一致している」「計画に33%出資するのであれば33%の利益を受け取らなければならない」と述べ、フランス側にFCASのワークシェア比率を守れと要求した。

出典:Dassault Aviation

この問題についてドイツ側は当初「年末までに政治的解決策を見つける」と説明していたが、協議が難航してフランスとドイツの溝が埋まらず、ドイツのピストリウス国防相は11日「数日以内にFCASの将来が明らかになる」と言及、ドイツのディフェンスメディア=hartpunktも13日「政権指導部は今月末までに新たな決定を下すようだ」「ドイツは(FCASの枠組みの中で)2種類の戦闘機開発を検討している」「FCASの有人戦闘機(NGF)部分以外の要素は引き続き開発する予定だ」「業界筋によればエアバスは2030年代半ばまでに戦闘機を開発する準備を整えている」「場合によってはドイツ単独での開発も辞さない構えだ」と指摘。

Breaking Defenseも13日「FCASのNGF共同開発はほぼ確実に崩壊に向かっている」「業界筋はエアバスとダッソーによるフェーズ2の協議が停止したと明かした」「今週中にFCASの葬儀が行われる予定はないものの、ミュンヘン安全保障会議の傍らで取材に応じた業界筋によれば『エアバスとダッソーの間で相違があるのにフェーズ2の協議をなぜ行わなければならないのか』と語った」「NGF実証機の製造と飛行が予定されていた第二フェーズの協議がまとまらなければ、4月に終了するフェーズ1BをもってNGF開発は終焉を余儀なくされるだろう」と報じていた。

出典:Machtwechsel

もうFCASを取り巻く状況は刻々と変化しており、メルツ首相は政治ポッドキャスト=Machtwechselに出演して「フランスはNGFに『核兵器の搭載能力』と『空母での運用能力』を求めている」「それは現在のドイツ軍が必要としているものではない」「現在の問題は2つの異なる要求要件に対して『2種類の航空機を製造する力と意志があるのか』『それとも1種類に絞るのか』ということだ」「この問題が解決されないならドイツはプロジェクトを継続できない」「我々には協力する準備ができている『欧州の他の国々』が存在する」と言及。

これを受けてFCASにオブザーバー参加しているベルギーのテオ・フランケン国防相も「ドイツの首相がMachtwechselで述べた通りFCASは死んだ。独仏共同の第6世代戦闘機が実現することはない。ベルギーはプログラムのオブザーバーであったが、我々は自国の立場を再検討する」と述べ、Breaking Defenseは18日「要求要件の食い違いは新たな政治的アプローチだが、所詮はエアバスとダッソーが『NGFの主導権』を巡って争っている産業上の紛争に基づいたものに過ぎない」「ここ2週間の報道とメルツ首相の発言によってアナリストの多くがFCAS終焉を確信するようになった」と報じている。

エアバスのギヨーム・フォーリ最高経営責任者も19日に開催された決算会見で「FCASは困難な岐路に立たされている。作業は複数の領域に分割されており、戦闘機セグメント以外のコンバット・クラウド、リモート・キャリア、エンジンなどは順調で良好な進展を見せている。戦闘機セグメントの行き詰まりが欧州の集団防衛を強化するFCAS全体の将来を危うくすべきではない。我々は顧客からの要請があれば2機種並行開発案を支持する。欧州の協力関係を通じて再編されたFCASにおいて主導的な役割を果たす準備はできている」と述べた。

FCASは有人戦闘機、協調可能な無人戦闘機、搭載兵器類、ネットワークシステムなどで構成された将来戦闘航空システムの総称で、基本的に有人戦闘機の設計以外は問題なく進展しており、エアバスは「有人戦闘機開発の行き詰まりで欧州の集団防衛強化に寄与するFCASを危うくすべきではない」「FCASの枠組みを維持するためならドイツ・スペイン向け機体とフランス向け機体の2機種並行開発を支持するし、そのための準備もできている」と言っているのだが、興味深いのは2機種並行開発になった場合についてだ。

出典:GlobalCombatAir

フォーリ最高経営責任者は「エアバスが単独で開発するのか、スウェーデンと組んで新型機を開発するのか、あるいはGCAPに合流するのか」という質問に「機種並行という道が開ければ『他のパートナー』を迎え入れる機会にもなる。しかし誰と手を組むかを決めるのは顧客の判断だ」と述べ、FCASの枠組みで2機種並行開発になった場合でも「ドイツ・スペイン向け機体の開発に『他のパートナー』を迎え入れる機会がある」という認識を示した格好で、もう何処に着地するのか蓋を開けてみるまで何とも言えない。

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※アイキャッチ画像の出典:AIRBUS

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コメント

  • コメント (20)

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    • せい
    • 2026年 2月 20日

    実質フランスとはもう一緒にいられないって事か
    或いはダッソーだけ省いて、その他のフランス企業はまだFCAS を続けるのか?
    フランス政府や産業界はどう思ってるんだろう
    今のままだとまたダッソーは単独開発して、今度のユーロファイター枠はGCAP が担いそうだけど、ドイツは黙ってはいないよなぁ

    8
    • Sundaycameraman
    • 2026年 2月 20日

    こんな記事があって

    リンク
    記事はラファールだけど、
    ひょっとしてフランスはインドに金を出させて自分が造りたいものを造ろうとしてるのではないだろか?
    インドに限らず、ジュニアパートナーの立場で良いから共同開発したい中進国はいくらでもあると思う。

    13
    • SB
    • 2026年 2月 20日

    ワークシェアの問題はとりあえず置いておくとして、メルツ首相の「『核兵器の搭載能力』と『空母での運用能力』をドイツは求めていない」って一体何を考えてフランスをパートナーに選んだんだ…

    18
      • 他人事では無い
      • 2026年 2月 20日

      ドイツは、ユーロファイターの改良とF-35の生産に専念して下さい。

      2
        • teshdo427
        • 2026年 2月 20日

        それではドイツの戦闘機の技術力を育成できない。ドイツも技術基盤を強化したいはずだ。

        3
      • 電話猫
      • 2026年 2月 20日

      元々フランスとイギリスでFCASを計画してたんだけど、2016年にブレグジットでイギリスが出て行ってしまった
      そして後からドイツが入ってきたわけだけど、この時はFCASはフランスが、MGCSはドイツが主導権を握る形で合意
      そういうわけだから敬意としてはMGCSの連携ありきなとこはある
      その後にドイツがごねてワークシェアを50:50にしろと言って来たり、50:50にした後にさらにドイツがスペインを引き込んで33:33:33にしろってゴネて変更させて今に至るって形ですね
      被害者面してるけどドイツが相当悪質

      8
        • 特盛
        • 2026年 2月 20日

        いやぁドイツ以外からもダッソーが異常と言われているんですが…
        ダッソー以外フランスからも揉める要素が出てない以上主犯はダッソーということで。

        5
          • バーナーキング
          • 2026年 2月 20日

          どちらか「だけ」がおかしいとは限りませんので。
          というかドイツもスペインも明らかにおかしいでしょ…

          10
      • のー
      • 2026年 2月 20日

      ドイツは米国と核共有していますが、将来的に解消される可能性はあるし
      間接的にはフランスの核兵器に頼ってるのが現状ですから。
      空母は別にしても、核兵器の搭載能力のある戦闘機の存在はドイツにとっても必要だと思いますけどね。
      もういっそのこと空母も作ってしまえば良いのに。
      そうすれば丸く収まる。

      5
    • 58式素人
    • 2026年 2月 20日

    ”「我々は顧客からの要請があればFCASの有人戦闘機を2機種並行開発することを支持する」
    「機種並行という道が開ければ『他のパートナー』を迎え入れる機会にもなる」”
    これは、具体的にはスウェーデンのことなのでしょうね。
    ロシアのSu-75に対抗する機体が必要でしょうから。グリペンと同じ運用思想で。
    フィンランド/ノルウェー/バルト3国/ポーランド/ウクライナも同じと思います。
    ロシアと開戦したら、即、本土決戦?なのですから。
    ではSu75の現状はというと2026年度中に初飛行が見込まれるとか?。
    であれば、表に出てこないだけで、スウェーデンはすでに動いているのでは?

    2
      • Fっカス
      • 2026年 2月 20日

      AIRBUSであれSAABであれ、米や仏のエンジンは使いたくないから、英(日)からのエンジン供給(含ラ国)が落とし所では?

        • ネコ歩き
        • 2026年 2月 20日

        記事中にありますが、揉めて進まない機体とは別途のFCAS枠組でコンバット・クラウド、リモート・キャリア、エンジンは「順調で良好な進展を見せている」とありますから、サーブと協働することになってもそれらを統合する前提と思いますよ。

        3
    • YF
    • 2026年 2月 20日

    FCASは無人機、ネットワーク、システムの統合が出来ればNGF(有人戦闘機)に関しては、それで丸くおさまるなら2機種開発も有りだと思いますね。
    アメリカ、中国以外の第6世代艦載機の需要は必ずあると思いますのでフランスには妥協して欲しくないですし、かといって空母が必要のない国にとっては無駄ですしね。

    欧州はロシア相手なので航空戦力にはまだ余裕があるからこんな駆け引きやってるのかなとは思います。
    主力がほぼ第5世代戦闘機になりつつ数もある中国相手の日本から見るとある意味羨ましいですね。
    なのでなんとかFCAS内でまとめて下さい。GCAP関わらないでと思います。

    8
    • ユーロビート大好き
    • 2026年 2月 20日

    そんなややこしいことをしたら、さらにコストと時間がかかりそうな気がしますけど、大丈夫なのだろうか。

    1
    • GM_teshdo427
    • 2026年 2月 20日

    ドイツはFCASから退いて独自開発に舵をきったらどうかな。ドイツにはそれをするだけの経済力がある。その方がドイツの技術基盤の強化にも繋がる。

      • tofu
      • 2026年 2月 20日

      GCAPの方もチラチラしてきてるよ

      • 特も。
      • 2026年 2月 20日

      戦後ずっと航空機を単独開発したことないドイツには厳しいんじゃないかと。

      2
    • あうあうあー
    • 2026年 2月 20日

    同一エンジンで2種類の機体ということですが
    F型とF/A型とか、フルステルス型と準ステルス型とか、
    そういう役割分担ならアリの気もしますが、そういうわけでもないでしょうし

    フランスがラファールとラファールMをつくってる時に
    ドイツは同じエンジンでラファール・ラージでも設計するのか?
    というイメージで捉えると、やはり意味不明すぎます

      • NHG
      • 2026年 2月 21日

      正直、第五世代が穴場に思えるんだよね
      選択肢は中国のJ-20とF-35しかないし(西側から制裁食らいそうなロシア製は除く)、韓国やトルコが作ってるやつの性能は未知数かつ既存兵装との互換性がつくかわからないし

    • tofu
    • 2026年 2月 20日

    順風満帆とまで言えるかどうかはさておき
    ライバルのGCAPが今の所は進んでいて、そちらに相乗りしたい国もちらほら手を上げ始め
    他ならぬドイツも選択肢の一つくらいには検討してる現状では、エアバスは主導権を完全に失うくらいなら多少の無茶も飲み込もうとはするよね

    1

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