アルメニアのバラヤン駐EU特使はロイターに「西側諸国が毅然とした行動に出なければアゼルバイジャンはアルメニアを攻撃するかもしれない」と主張していたが、Brussels Signalに対しても「数週間以内にアゼルバイジャンが侵攻してくる可能性がある」と警告した。
参考:Armenia urges EU to sanction Azerbaijan, warns of further attack
参考:Armenia fears Azerbaijani invasion ‘within weeks’
流石にアゼルバイジャンがアルメニア本国に手を出すとは思えないが、、、
アルメニアのティグラン・バラヤン駐EU特使(ベルギー大使兼任)はロイターの取材に対して「西側諸国が毅然とした行動に出なければアゼルバイジャンはアルメニア本国を攻撃する可能性がある」と主張していたが、Brussels Signalのインタビューに応じた中でも「国際法を尊重するというアゼルバイジャンの約束は紙くず同然で数週間以内にアルメニア本国を侵略する可能性がある」と訴えた。

出典:President of the Republic of Azerbaijan
アゼルバイジャンのアリエフ大統領は「国際的に認知されたアルメニア領に対する具体的な計画を持っていない」と述べたが、9月にナヒチェヴァン自治共和国でエルドアン大統領と会談した際「ザンゲズールは歴史的にアゼルバイジャンの土地だ」と主張したため、バラヤン駐EU特使は「国際法を尊重するというアゼルバイジャンの約束は紙くず同然で数週間以内にアルメニア本国に侵略してくるだろう。これはアリエフ大統領の拡張主義が深刻な反撃に直面していないためで、西側諸国が集団的で現実的な措置を講じない限りアゼルバイジャンを止めることはできない」と訴えている。
要するに「武力でナゴルノ・カラバフ地域を奪還したアゼルバイジャンに国際社会は具体的な措置=制裁を課さなかった」という意味で、そのためアリエフ大統領の拡張主義は「痛みを伴う国際的な罰」に直面しておらず、ナヒチェヴァン自治共和国とアゼルバイジャン本領を繋ぐザンゲズール回廊を手に入れるため「まもなくアルメニアのシュニク地方(ザンゲズール地域)を武力で奪いにくる」と言いたいのだ。
アリエフ大統領は「南コーカサスは何世紀も血なまぐさい衝突を繰り返したがもう沢山だ。遠く離れた所から自らの政治的利益を追求し、その道具としてアルメニア人を利用し、搾取し、売り飛ばす勢力、詐欺師、腐敗した政治家に南コーカサスから手を引くことを要求する」と主張して「南コーカサスのことは域内の国で決めるので域外の国は口を挟むな」と訴えたが、フランスが武器供給でアルメニアを支援すると発表したため今月5日に予定されていたアルメニア、フランス、ドイツ、EUとの会談を拒否。
ジョージアを訪問したアリエフ大統領は8日「歴史的観点から見ても、地理的観点から見てもアルメニアとの和平交渉を行うはジョージアが相応しく、アルメニアが同意すれば直ちに2ヶ国間もしくはジョージアを含めた3ヶ国間協議を開始できる」と述べたが、これはアルメニアを後ろ盾のフランス、ドイツ、EUから切り離すための提案で、これに応じればアゼルバイジャンが優位の場で和平交渉を行わなければならない。

出典:President of the Republic of Azerbaijan
この交渉を仲介するジョージアに和平交渉を公平に進める力=軍事力に裏付けられた政治力や外交力はないため、仮にアゼルバイジャンが無理難題をふっかけてきてもアルメニアは孤立無援だ。
Brussels Signalはインタビュー内容の全てを公開していないが、バラヤン駐EU特使は「アゼルバイジャンが和平交渉を意図的に破壊してシュニク地方を武力で奪いにくるかもしれない」と懸念している可能性が高く、西側諸国(特にEU)に「アルメニアへの武力侵攻は容認できないという政治的メッセージを出して欲しい」と要請しているのだろう。

出典:ՀՀ արտաքին գործերի նախարարություն
流石にアゼルバイジャンがアルメニア本国に手を出すとは思えないが、当事国のアルメニアからすればイランがザンゲズール回廊の建設に反対しているため「アゼルバイジャンが武力に訴えてくる」という可能性を捨てきれないのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:President.az/CC BY 4.0
そりゃあアルメニアの懸念はもっともだろうが
アリエフ大統領が国際世論の目を気にして慎重に動いてるように見えるので
アルメニア本国の侵攻まではしないと思う
ナゴルノカラバフで今のところ奪還したアゼルバイジャンの勢力がおとなしくしてるのが証拠
今にして思えば第二次カラバフ戦争の結果でアルツァフの命運は定まっていたようなものですが、ウクライナ戦争でロシアの関与が薄れるのを待つくらいには慎重でした。
今でもハマスのテロで世界がアルメニア問題を忘れかけているくらいだから、ザンゲズールで数年以内には動きがないとはいえません。
過去の停戦合意は反故にされたわけですから、ナゴルノ・カラバフとザンゲズールは相互に清算して、どちらも請求権はないという仕切り直しの機会ですが、結局どちらも火種を残したまま。
日本人が言えた義理でないにしても、アルメニア外交は目先の結果を性急に求めすぎです。折角欧米社会の同情という大きなアドバンテージがあるのに、短慮で長期的戦略に欠けるのがイスラエルとの違いに思えます。
あれっ、ザンゲズール問題はイラン側に新回廊造ることで一段落ついてなかったっけ?
最近のエルドアンはというかトルコは新オスマン主義の度が過ぎやしませんかねぇ
今朝もパレスチナ支持してトルコの拡張主義匂わす演説してたし
NATOにとってトルコが要衝なのは分かるけど付き合い方考え直さないといけないんじゃないですかね
冗談ですが、3度目のウィーン包囲でもやりたいのかと勘繰ってしまいます。
火事場泥棒やるなら今だけど常識で考えればやらんとは思うが(完全に侵略になる)
ロシアとの安保をアルメニアが切れば(時間の問題とみる)
アゼルバイジャンはこの絶好の機会をいかすだろうね。トルコも義勇兵を送る可能性がある。
問題はイランなのでザンゲズール回廊では反発する。ただイスラエルで忙しくなれば妥協の余地はあるかな?
もしくはもっと北部シシアンあたりなら反発は少ないのではなかろうか?
シュニク地方はイランが駐屯するという形で。
どうせ欧米は何もできないのがわかっているので止まるわけがない。
イランの反対はザンゲズルやその周辺地域(という位置)だからではなく、アゼルバイジャン・トルコ間の効果的な直通陸路が成立することと、ナヒチェヴァンへの物資やエネルギー供給に協力することで得ていたアゼルバイジャンへの影響力喪失などを避けたいという理由でしょうから、回廊の位置が変わればいいとはならないと思います。
勿論そういうのはあるでしょうが、イランが侵攻を匂わせてでもザンゲズール回廊設置に反対する理由にはならんでしょ
中継をすることの利権や影響力は確かに大きいが、アルメニアが中継貿易をやるとその限りではないし。
何よりそれは戦争をしてでも解決すべきものではない。戦争になれば失われるもの。
だが戦争してでも守らないといけないものもある。
一番大きいのは安全保障。トルコ軍がアゼルバイジャン側にくる。なによりイスラエル軍が来る可能性がある。
これだけは何が何でも阻止しないといけないのがイランです。
アゼルバイジャン・トルコ間の連携強化に繋がる直通陸路に触れた上でなおトルコ軍の部分を強調するということは、アゼルバイジャン領にトルコ軍(やイスラエル軍)が駐留するという意味でしょうか。
それを行った場合、アゼリー人問題やカスピ海等での潜在的な利害対立はあれど、近年ではザンゲズル回廊ほどの深刻さは無く、経済連携の強化,定期的な外相会談,相互に道路を敷き合うなど一定の安定があるイランとの関係は破綻するでしょう。一時期は合弁兵器生産計画までありました。
非ロシア経由パイプラインの新設や、国内にあったレーダー基地(の土地)貸与などの終了があってなお深い対露関係も破壊されるはずです。
そしてトルコはアゼルバイジャンに対して友好関係を超えた影響力を持つことになります。
アリエフ家が権力を掌握する契機は、90年代の紛争時に過剰な親トルコ,反露,反イラン政権による戦況と国内情勢の著しい悪化でした。それ以降のアゼルバイジャンは自国に対する他国の影響力を下げるよう努めつつも、関係の途絶は避け欧州等の遠隔地まで含めたバランス外交に勤しんでいます。
そのアリエフ家が有事の保険を超えたトルコ依存と周辺諸国との関係破壊を行うとはあまり思えないのですが、アゼルバイジャンがそこまで思い切ったことをする理由が何か生まれたのでしょうか。
またアルメニアがアゼルバイジャン・トルコ間の人や物資のやり取りを中継すればとありますが、それを正式かつ大規模に行うには両国との関係改善が必要です。
トルコに対してはアルメニアが繰り返し要求をしてきた過去の虐殺への謝罪を放棄しなければならないでしょう。アゼルバイジャンとは国境確定や欧米の関与排除もそうですが、第二次紛争後に合意したザンゲズル回廊無しには話が進みません。
ザンゲズル回廊の成立ありきという時点で前提が破綻している気もしますが、それ以外の諸問題もアルメニアにとって簡単に決断出来るものではないのでは。
ザンゲズール回廊って具体的にはどんな感じなんだろう?他国の中を通る回廊ってのが、陸の国境に馴染みがないから想像がつかない。
元々ソ連時代にあった鉄道を復活させるような形で主に鉄道輸送路を設置しようという案ですね。
通す物資に関してアゼルバイジャン側からアルメニアによる検問を容認する発言が出たこともあるので、輸送路単体でみた場合の性質はだいぶ平和的なものです。
現実見えないアルメニアディアスポラがEU巻き込もうとロビー活動で騒いでるだけだろう
アゼルバイジャンが国際的な罰を受けていないんじゃなくて、アルメニアが国際的な罰を受けているからこの対応なんだよ
付き合いきれんわ
アゼルバイジャンがナヒチェヴァンへの輸送路を武力で確保するのですか。
20年の紛争後の停戦協定で両国が輸送路建設に合意したはずなのに侵略を要するとは、不思議なこともあるものですね。
ビシュケク議定書やマドリッド原則の成立後も軍の撤退や返還が合意されたはずの実効支配地域に関して似たようなことを考えたような記憶がありますが。
現状がアゼル側有利すぎてこれ以上軍事力を行使する必要がないと見えます。アルメニア駐EU大使の記事での発言はEUの主要国を厄介事に巻き込もうとしてるのにしか思えないですね…。
現状、軍事侵攻なぞせずとも待ってればアルメニア崩壊しそうだしな…
人口280万の国に難民12万人だけでも経済的に致命傷すぎる
地図で見ると20kmくらいなんですよねぇ。
…いっそこっそりトンネルを掘って…というワケにはいかないかw
何、その某戦車道アニメ最終章第4話みたいな展開……
底が抜けたように世界中で戦争が起こるようになっちゃいましたね。在日米軍鍋の蓋論(在日米軍が撤退したら日本は必ずまた軍国化する)というのがありましたが、この理論の是非はともかく米国の世界展開能力の上にギリギリ成り立っていた均衡や和平が世界中にあったんでしょうね。
フセイン然りカダフィ然り、米国の不介入を読んで戦争始める指導者は昔からいましたが、今や火種を抱える中小国を抑止できるものが無くなっているのかもしれません。常任理事国ですら勝手に戦争始めてる始末ですし。一連の問題を全部米国の衰退に見るのは乱暴だと思いますが、中小国で国際秩序が崩壊し地域大国がグローバルサウスや一帯一路など独自の秩序を作り始めた時代において、大戦以来守られてきた先進国間の均衡まで崩れてしまう日が来るのかもと思うと恐ろしいです。
ロシアも、まさか軍事侵攻するはずはないと多くの人が考えていましたが
軍事侵攻しましたし、それを止めることはできていません
これは、国際社会や国連には大した力がない
というメッセージになってしまっています
実質は、欧米の一部のグループが結託しているだけ
圧倒的に力の差があるはずのロシア1国を止められない
その程度のものだと見られていると思います、ハリボテです
新たに軍事侵攻が始まったとして止める手立てはあるのでしょうか
なんだかんだと言い訳をしてロシアと直接戦わない「国際社会」が
アルメニアには出張ってくるんでしょうか、基準は何なんでしょうか
すぐ勝てそうだからでしょうか、核を持って無いからでしょうか
私にはわかりません
ザンゲズール回廊を取りに行くとさすがにロシアが何らかの行動をするのかと思いますが、西側諸国も戦争に伴うアセルバイジャンの天然資源の輸入禁止処置は現状避けたいでしょうし、エルドアン大統領に説得してもらうしか何のでしょうか…
他に道は無いのかとグーグルマップを見たけど、無いな!
時期的にイランに飴を舐めさせる選択肢も無いというね。
アルメニアが戦争をけしかけてドンパチとかならんと良いが…