米国関連

バイデン大統領が法案に署名、国防総省もウクライナ支援パッケージを発表

バイデン大統領は議会が承認したウクライナ支援法案を含む対外援助パッケージに署名、直ぐに国防総省も10億ドル相当のウクライナ支援パッケージを発表し、予想されているロシア軍が夏季攻勢(5月~6月)が始まる前にウクライナ支援が再開された。

参考:Biden Administration Announces Significant New Security Assistance for Ukraine

本当にウクライナが必要としているのは体制を立て直すための時間

米議会はウクライナ支援法案を含む対外援助パッケージを承認、バイデン大統領も法案に署名し、国防総省は米軍備蓄から装備・物資を引き出す大統領権限(PDA)経由で10億ドル相当のウクライナ支援パッケージを発表した。

出典:U.S. Army Photo by Cpl. Geordan J. Tyquiengco, Operations Group, National Training Center

この支援パッケージにはRIM-7、AIM-9M、ステンガー、HIMARS用の追加弾薬、155mm砲弾、105mm砲弾、60mm迫撃砲弾、小口径弾薬、ジャベリン、TOW、AT-4、地雷、精密航空爆弾、ブラッドレー、MRAP、HMMWVなどが含まれているものの、発表されたリストにはパトリオットシステムの迎撃弾やATACMSの記載はない。

国防総省が発表する支援パッケージのリストは安全保障上の理由から完全なものではなく、記載に無いシステムや弾薬が含まれている可能性も否定できないが、New York Timesは支援パッケージ発表前に「米当局者はパッケージにHIMARS用の追加弾薬が含まれると明かしたが、ATACMSが含まれるかどうかは明らかにしていない」と報じており、パトリオットシステムの迎撃弾や長射程タイプのATACMSが提供されているかどうかは戦場の結果で判断するしかないだろう。

出典:public domain

因みに共和党議員が「4月中に対外援助パッケージを処理しなければ完全に手遅れになる」と述べたのは「5月~6月にロシア軍が夏季攻勢を開始する」と予想されているためで、ウクライナ国防省情報総局のブダノフ中将も「5月中旬~6月上旬にかけて困難な状況に直面する」「ロシア側は包括的なアプローチを採用してくるため困難な状況はウクライナ全体に当てはまる」と指摘したことがある。

ある海外のアナリストも「本当にウクライナが必要としているのは体制を立て直すための時間だ」と指摘したことがあり、ロシアの夏季攻勢を阻止して時間を稼ぐことが出来るかどうかが「来年の戦い」を左右するはずだ。

追記:バイデン大統領は「数時間以内に発表された支援の輸送を開始する」と述べた。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Capt. Cody Gallo

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コメント

    • たむごん
    • 2024年 4月 25日

    ハリコフ方面(スームィ~ハリコフ)の地雷を、ロシア軍工兵が除去しているという噂を見かけました(真偽不明です)。
    ウクライナ軍が予備部隊を移動していると指摘もありますが、どの正面を重点的に防衛するのか気になりますね(真偽不明です)。

    ハルキウは、ロシア国境から近い100万都市ですが、ロシア軍が本気になれば厳しいですね。
    ガザやアレッポの事例を見れば、大都市の廃墟は避けて欲しいものです…。

    携行式対空ミサイルは、ロシア軍のCASに対する牽制になりそうですね。
    滑空誘導爆弾を防げないのは厳しいですが、CASが続くようではどうしようもなかったでしょうし…。

    ウクライナ政府が、援助物資をどの正面に振り分けるのか気になりますね。

    10
      • jimama
      • 2024年 4月 25日

      多分携行式短SAMはそのままだと今のウクライナでは滅茶苦茶リスキーであんま役に立たない気が
      頭上げたら秒で小型の自爆ドローンがすっ飛んでくる状況だと歩兵に持たせても一緒に火葬されそうですし車両でも大差なさそう
      素人の思い付きだと陸上ドローンとかに持たせてるとか隠した場所から遠隔操作できるようにして安全確保したい
      欲を言えば照準機構も分離して別に浮かしてあるドローンの視界とか利用できるように改造
      射手、照準システム、ランチャーの3つを物理的に切り離して人は隠れた場所からすべて操作できると理想的
      ただこれやると絶対高くなるし改造の時間もかかるしでいま必要?と言われると絶対違うというジレンマ

      9
        • たむごん
        • 2024年 4月 25日

        本当に厳しい戦場ですよね。

        仰る通り、最前線で目立つ行為が、本当にリスクが大きくなったように感じます。

        7
        • 2024年 4月 25日

        この支援内容だと爆炎のフロッグフットは止めれても一番の問題の葬送のフルバックを止めるのはFファルコンの担当になる訳だが量産型ターミネーターが牛耳る空域でどの程度戦果を上げるかが見物。

        9
        • Whiskey Dick
        • 2024年 4月 25日

        レーダー誘導方式の中~長SAMでは管制、照準システム、ランチャーを分離しているが、近~短SAMだと機動性を考慮して1台で機能を完結させています(アヴェンジャーやパーンツィリなど)。
        近接防空システムの分散、ネットワーク化で参考になるのがドイツのスカイガードシステムです。これは拠点防御用で管制、照準システム、ランチャーを分離させています。システムが分散しているので耐久性は高いですが、移動や準備を考えると少し面倒です。
        現実的なのは近接対空火器を搭載した自己完結型車両に遠隔操作機能を追加することでしょう。対空火器のリモコンを持った歩兵が目視若しくはドローン、遠隔センサーで敵を補足→リモコンで車両を操作して敵を攻撃という運用になる。

        3
        • はらへり
        • 2024年 4月 25日

        それを実現しようとすると
        それなりの出力がある無線送受信機と障害物より高いアンテナとか
        ミサイルにLOAL機能と空中ドローン照準器とのデータリンクとか
        とかどんどん肥大化していって携行SAM(携行できるとは言ってない)になるんすよね……

        3
        • M 
        • 2024年 4月 25日

        かなり後方までオルランが入ってきてミサイルの誘導までやってるから、MANPADSはその対策にはなるんじゃないかな?

        3
      • MD
      • 2024年 4月 25日

      スームィ、ハリコフ方面でロシアが部隊を集結という話もあるので、
      地雷の除去については攻勢の前段階とみていいかもしれません。
      今月ハリコフ方面の占領が目的とされる北部軍が創設されているので、
      まるっきりの眉唾という訳ではないと思います。
      (但しこの北部軍、国防省の活動報告に1度出ただけで、
      規模等については不明です)

      3
        • たむごん
        • 2024年 4月 25日

        仰る通りですね。
        クピャンスク方面に、4万人以上、戦車装甲車両1000台以上集結しているという話も、以前出ていた事を思い出したんですよね。

        北部が活発化すると、ウクライナも予備隊を貼り付けて備える必要がありますから、軍事資源配分が難しいですよね…

        1
    • せい
    • 2024年 4月 25日

    体勢立て直しには時間もいるだろうけど、とにかくウクライナ内部で割れてちゃどうしようも無い
    そろそろ大統領構えに出るのを止めて、現場を知るものに一任するようにしないと

    6
    • 2024年 4月 25日

    SAMがスティンガーしかないのは何ともしがたい。
    ATACMSとパトリオットはコッソリ供与するパターンだと思う。

    6
      • 例のアレ
      • 2024年 4月 25日

      ATACMSに関しては極秘で供与された長射程型が2回使用されたらしい

      14
    • 名無し
    • 2024年 4月 25日

    ATACMSはもうウクライナが使い始めてるっていう話が出てきてる
    まだ完全に証明されたわけではないけど

    ハルキウは住民が逃げる気あんまなさそうで、留まって軍と一緒に戦うって住民がもしいるならウクライナ人が再び戦闘民族化して世界がそれを見て
    開戦時みたく世界がもっと軍事支援するみたいな流れになるんじゃないかな

    6
      • 名無し
      • 2024年 4月 25日

      ATACMSについて記事が出始めたね
      冬の間のロシアがやった民間施設やインフラへの攻撃と、北朝鮮がミサイル供与したことでアメリカはそんなことするならこっちは長距離ミサイル供与するぞとロシアに忠告してて
      バイデンは供与したところでエスカレーションなんてしないと判断して供与の許可出して、4月〜ウクライナに供与してウクライナはクリミアの基地への大規模攻撃でもう使用済みと

      そして今回の支援パッケージにもATACMSが含まれてて、在庫が少なかったけど生産ラインが整ってその心配がなくなった
      アメリカは相当数を送り続けるって記事も

      13
      •  
      • 2024年 4月 25日

      ATACMSなんて去年から使ってますわな

      5
        • はらへり
        • 2024年 4月 25日

        それ射程165kmの初期型で今回のは300kmの奴

        18
      • Easy
      • 2024年 4月 25日

      ハルキウはインフラが破壊されてしまっているので。残ってる市民が兵力となるプラス面と、その市民たちに生存のための物資を供給せねばならないマイナス面があります。その天秤がどちらに傾くか、ですね。

      7
        • たむごん
        • 2024年 4月 25日

        100万都市のインフラ供給は、大変そうですよね…。
        ウクライナの都市防衛、バフムートなども疎開で、数百人~2000人前後だった記憶があります。

        地下学校建設により、子供も疎開させない方針のようですね。
        電気止まったりしてるのに、換気なども大丈夫なのかなあと…

        >ハルキウは現在、6歳までの子供たちを対象に700カ所近くの地下幼稚園スペースを提供している。少なくともその3倍の数の子供たちが、同じスペースで学校の授業を受けている。

        (2024年2月7日 ウクライナの子供たちの生活……東部ハルキウの地下学校を訪ねる BBC)

        1
      • M
      • 2024年 4月 25日

      >ハルキウは住民が逃げる気あんまなさそうで

      逃げる気なさそうと言うか、政府が逃がす気なさそう。
      逃げなくても大丈夫、パニックになるなとかアナウンスしてるし。

      3
    • 豆板醤
    • 2024年 4月 25日

    どこまで行ってもバイデンは慎重だな
    ロシアにプレッシャーかけんとウクライナはどんどん後退するぞ
    はよF16も出してやれよ

    6
    • 名無し
    • 2024年 4月 25日

    支援でどうにかな?段階はとうに過ぎてるんだがな……

    8
      •    
      • 2024年 4月 25日

      ロシアにしてもウクライナをノックダウンするだけの戦力が投入できていないから
      砲撃数は優勢とはいえピーク時の10分の1程度
      装甲車両も在庫が厳しい
      大規模追加動員にも踏み切れない

      独ソ戦の中盤みたいなもんだよ
      お互いにグロッキー状態のボクサーの戦いのような

      9
        • のー
        • 2024年 4月 25日

        これは既に米中の代理戦争になってますね。
        ロシアは中国が支援してます故、油断できません。
        もう弾切れになるはずのミサイルが尽きないように、不足しているはずの戦車も、何故か無地蔵に湧いて出てくるかも。

          • はらへり
          • 2024年 4月 25日

          少なくともロシアがプーチンの欲望で侵攻し、ウクライナ側が断固たる意志を以って反抗している
          お互いに自らの意思で戦っている以上「代理」ではありません
          その国にやる気がないならアメリカはさっさと見捨てますよ。アフガニスタンが良い例です

          7
    • Mr.R
    • 2024年 4月 25日

    6:20ごろにロブ・リー氏がクリンキーのドローン空撮映像をTwitterにあげてましたね。
    もうクリンキー『跡地』と言った方が正しいかもしれませんが。

    8
      • 名無し
      • 2024年 4月 25日

      まだやってたんだひっそり撤退したもんだと思ってた
      そもそも何がやりたかったんだか

      8
    • もへもへ
    • 2024年 4月 25日

    これでウクライナは資金も兵器も弾薬も気にせず戦えるようになりましたね。高価な誘導兵器も使い放題です。

    あと現状足りていないのは人ですが、徴兵年齢を25歳まで下げましたがこれを18歳にまで引き下げればまだまだ数十万は徴兵できそうなので余裕はあります。
    それでも足りなければ年齢を上に拡張すればいい話です。

    民主主義の旗を掲げる正義の大軍が悪逆非道な敵を押し流す姿が見えると信じています。

    さぁ来年は全面反攻でクリミア打通とは言わず全ての戦線で攻勢を行いロシア領に逆侵攻だ。

    モスクワを落とせばロシア人も身の程を知るでしょう。
    西側に楯突く愚かしさを。

    4
      • あるまじろ
      • 2024年 4月 25日

      >>ロシア領に逆侵攻
      >>モスクワを落とせば

      流石にそれはちょっと・・・

      30
      • kitty
      • 2024年 4月 25日

      ネタ投稿する前には、ボタンを押す前にもう一回読み返して寒くないか確認してから書き込みましょう。

      34
        • 名無し
        • 2024年 4月 25日

        ネタは毛髪前線で十分だ

        11
          • Whiskey Dick
          • 2024年 4月 25日

          我々は毛髪の自由と尊厳を守るため、fusa氏と彼の毛根の支持を表明する。

          6
      • 名無し
      • 2024年 4月 25日

      流石にネタだろ?寒いぞ
      本気ならちょっとストレスが溜まっているんだろう。ゆっくりお休みね。

      13
      •  
      • 2024年 4月 25日

      Twitter世論はネタでなく本気でこんな感じだよ。
      素人はともかくとしても学者やジャーナリストでさえ無邪気にキャホってる。
      去年の反転攻勢前の熱狂みたいになってる。
      こういう世論の形成はウクライナの足を引っ張ることになることを学習しないんだな。
      ゼレンスキーがまた世論に引っ張られて結果出そうとして無理な攻勢かけて自滅しかねん。

      10
        • 匿名
        • 2024年 4月 25日

        懐かしいですねぇ……目指せモスクワみたいなことになっていたなぁ…

        6
      • 2024年 4月 25日

      >>さぁ来年は全面反攻でクリミア打通とは言わず全ての戦線で攻勢を行いロシア領に逆侵攻だ。

      去年の大規模反転攻勢でクリミアに集中しなかったから大損害を受けただけで終わった愚を繰り返す訳だ?

      5
    • 58式素人
    • 2024年 4月 25日

    今回の内容にGLSBDは含まれているのかな。
    単弾頭で狙う時にはATACMSより使い易いような。
    M31ロケット弾の約2倍の射程があるし、
    ランチャーに装填できる数量は変わらない?だろうし。

    1
    • イーロンマスク
    • 2024年 4月 25日

    絵に描いたような戦力の逐次投入

    7
      • 2024年 4月 25日

      アメリカとしては敗北後の言い訳する為にやれるだけやった感出したいのだろう。

      4
    • 名無し
    • 2024年 4月 25日

    支援再会もロシアにとっては予想外でもなんでもない展開だろうな
    年末あたりだったと思うが、ライバーもこのまま支援がないとは考えにくいみたいなこと投稿してたし
    今のウクライナの防空レベルじゃ支援物資の場所特定されてピンポイントでミサイルぶち込まれる可能性も充分あり得る

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