欧州関連

米CNN、英国がクリミア大橋に届くストーム・シャドウをウクライナに提供

米CNNは「複数の西側政府高官は英国が複数のストーム・シャドウをウクライナに提供し、反攻作戦前に長距離攻撃能力をウクライナ軍に与えた」と報じており、これが事実なら反攻作戦でクリミア大橋の攻撃にストーム・シャドウを使用できる。

参考:UK could help supply Ukraine with long range missiles within ‘months’
参考:Exclusive: Britain has delivered long-range ‘Storm Shadow’ cruise missiles to Ukraine ahead of expected counteroffensive, sources say

地上発射バージンは存在しないためゼレンスキー大統領は「まだ時間がかかる」と言っている可能性がある

ゼレンスキー大統領は2月「英国と長距離攻撃兵器の供給について合意が成立している」と明かし、Times紙は「ハープーンとストーム・シャドウのどちらを提供するかで政府は議論している」と報じていたが、スナク首相はミュンヘン安全保障会議で「英国はウクライナに長距離攻撃兵器を提供する最初の国になるだろう」と言及、デンマークが提供済みのハープーンを「長距離攻撃兵器を提供する最初の国」と表現するのは違和感があるためストーム・シャドウ提供が濃厚となっていた。

出典:Robert Sullivan/Public domain

しかし米ディフェンスメディアは「極秘プログラムで開発された長距離飛行が可能な自爆型無人機をウクライナに送る可能性がある」と報じ、これ以降ウクライナへの長距離攻撃兵器提供が話題にならなくなり、誰もが「英国によるウクライナへの長距離攻撃兵器供給」を忘れかけていたが、英国メディアが「2ヶ月以内にミサイルがウクライナに到着する予定だ」と報じたため再び注目が集まっている。

英国メディア「英国が主導するウクライナ国際基金(IFU)は最大190マイルの射程を備えたミサイル(陸海空の何れからも発射可能なもの)について情報提供を呼びかけており、調達先に選定された企業には6月上旬に連絡が行われ、2ヶ月以内にミサイルがウクライナに到着する予定だ。これとは別に英国防省はウクライナと別の取引を協議している」と報じ、IFUが要求する射程はストーム・シャドウの輸出バージョンと一致するため「英国はストーム・シャドウを提供するのではないか」と噂になっていたが、今後はCNNが「英国がウクライナにストーム・シャドウを与えた」と報じた。

出典:Rosavtodor.ru / CC BY 4.0

CNNは「複数の西側政府高官は英国が複数のストーム・シャドウをウクライナに提供し、反攻作戦前に長距離攻撃能力をウクライナ軍に与えた。英国政府はウクライナ政府から『主権の及ぶ範囲でしかストーム・シャドウの使用をしない=ロシア領に向けて発射しない』という保証を得た」と報じており、英国はクリミアは不法に併合された地域で「ウクライナの主権が及ぶ範囲」と公に声明を発表しているため、クリミア大橋の攻撃にストーム・シャドウを使用できるという意味だ。

もしCNNの報道が正しいならストーム・シャドウは「英国防省とウクライナが協議している別の取引」経由で供給したことになり、IFU経由のミサイル供給には「?」がつくが、ゼレンスキー大統領はBBCの取材に「まだ軍が必要とする幾つかのものが到着しておらず、このまま前進を始めれば多くの命を失うことになるため(反攻作戦の開始を)まだ待つ必要がある」とも述べており、もしかすると「英国防省とウクライナが協議している取引」と「IFU経由のミサイル供給」は同じものなのかもしれない。

出典:PRESIDENT OF UKRAINE

英国は本当にストーム・シャドウをウクライナに提供しているのか謎だが、地上発射バージョンは存在しないため旧ソ連製の戦闘機や攻撃機に統合する必要があり、そのためゼレンスキー大統領は「まだ時間がかかる」と言っている可能性もある。

関連記事:英国、ウクライナにハープーンもしくはストーム・シャドウの提供を検討中
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関連記事:欧州9ヶ国がタリン宣言を発表、ウクライナに対する集団的軍事援助を約束

 

※アイキャッチ画像の出典:MBDA/Thierry Wurtz/2004

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コメント

    • チェンバレン
    • 2023年 5月 11日

    そもそも自分たちはウクライナ全土にミサイル攻撃しといて、自分たちの領土が撃たれそうになったら核恫喝するなんてアンフェアだよなあ?!

    LRASMやTACTOM、ATACMS供与してくれてもいいのよ?

    55
    • 名無し
    • 2023年 5月 11日

    ウクライナ反攻後に発表するなら理解出来るが、このタイミングの発表の意図が図りかねる

    3
      • チェンバレン
      • 2023年 5月 11日

      イギリスのことですから、何かメッセージなり謀略なり仕込んでそうですね。

      4
    • モリ猫
    • 2023年 5月 12日

    ここに至るまでロシア領土への補償がなされるって核保有のメリットデカすぎる

    8
      • NHG
      • 2023年 5月 12日

      でも核戦力を抜きにしても「俺(ロシア)はまだ本気を出してない」 ってのは本当ですからね
      ロシアの動員拡大も専門家はやれといってるのにプーチンがやらないのは「戦争じゃない」という対面があるからで、そこを崩したらもっと効率よくロシアが動くようになっちゃう

      1
      • チェンバレン
      • 2023年 5月 12日

      北朝鮮が持ってていいなら、日本が持っちゃいけない道理はないですよね
      核があれば侵略は起きないって証明されちゃったし
      戦略核を搭載したSSBNが4隻くらいあれば、少なくとも一方的な侵略はされないでしょう
      死なば諸共、です

      3
        • ポルスカ
        • 2023年 5月 12日

        普通に核戦力を持っていても通常戦力が十分になければ侵略されるのでは?
        フォークランド紛争を考えると

        1
          • チェンバレン
          • 2023年 5月 12日

          確かに

          そう考えると核もないのに核保有国に喧嘩ふっかけるアルゼンチン
          すごいっすね

        • 名無し3
        • 2023年 5月 12日

        中国の脅威度と工業製品のサプライチェーンの構築度合いの兼ね合いによっては日本は比較的に低い代償で核武装が可能でしょう
        台湾と韓国の後方にある日本が失陥すれば西太平洋と東アジアの経済圏を全て中共が併呑することとなるため西側が日本に対する弱体化政策は取りがたいはず

        もし西欧でロシアとNATOが核戦争になればNPT条約に言う異常な事態と言えるし、中国ですら経済的(貿易相手の確保の面で)に実質的な対抗措置は難しい

          • チェンバレン
          • 2023年 5月 12日

          >> 西側が日本に対する弱体化政策は取りがたいはず

          結局そこなんですよね
          すでに核武装している国々としては、核拡散を防ぎたいわけで、そのために制裁など様々な手で核武装のコストを引き上げている

          中国の進出を防ぎたい国々は、それをやや弱めるかもしれない

          しかしかなりの売り上げを中国に依存している本邦の場合、今度は中国からの経済的圧力を受けるという

          1
    • 匿名
    • 2023年 5月 12日

    空中発射バージン…🤔?

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