欧州関連

オランダのウィルダース氏、連立政権樹立のためウクライナ支援停止を撤回

オランダの総選挙でウィルダース氏率いる自由党(PVV)は勝利を収めたものの「ウクライナへの軍事支援停止」が妨げとなって連立協議が破綻、ウィルダース氏は24日「PVVはウクライナを支持し如何なる支援についても喜んで協議に応じる」と表明して支援停止を撤回した。

参考:Dutch election winner Wilders willing to consider more Ukraine aid

PVVがウクライナとの2国間協定締結を阻止するのは難しいだろう

昨年11月に実施されたオランダの総選挙でウィルダース氏率いる自由党(PVV)は勝利を収め、潜在的なパートナーとして新社会契約党などと連立協議を行っていたもの、ウィルダース氏が主張する過激な政策(反移民政策、反EU政策、ウクライナへの軍事支援停止)が妨げとなり、モスク、イスラム学校、コーランを禁止する法案を撤回して何とか連立協議をまとめようとしたが、2月7日に新社会契約党が協議から離脱したためPVVは与えられた期間(2024年2月中)内に政権を樹立するのが難しくなっていた。

潜在的なパートナーらは23日「PPVが主張するウクライナへの軍事支援停止を支持したことは1度もない」「今後もウクライナに対する政治的、経済的、軍事的支援を必要な限り継続したい」と共同声明を発表、これを受けてウィルダース氏は24日「ロシアがウクライナに対して始めた戦争は違法かつ野蛮なものと言わざるを得ない」「PVVはウクライナを支持し如何なる支援についても喜んで協議に応じる」と表明、事実上「ウクライナに対する軍事支援停止」を撤回した格好だ。

因みに暫定政権を率いているルッテ首相はPVVが連立政権の樹立に手間取っている間に「ウクライナと安全保障に関する協議」を進めており、24日「まもなくウクライナと2国間協定を締結する」と発表、ウィルダース氏は「暫定政権が10年にも及ぶ協定を締結することができない」と主張しているが、政権樹立のキャスティングボードをウクライナ支援を支持する野党に握られているため、PVVが協定締結を阻止するのは難しいだろう。

関連記事:ウクライナ支援停止を主張するオランダの自由党、総選挙で第1党を確保
関連記事:伊加もウクライナと協定締結、明文化された今年の軍事支援額は161億ドル以上
関連記事:独仏がウクライナと安全保障協定を締結、2024年に101億ユーロの軍事支援を約束
関連記事:ウクライナは孤独ではない、英国とウクライナが歴史的な安全保障協定に署名
関連記事:バルト三国はウクライナ支援に14億ユーロ以上、英国は支援額を25億ポンドに増額
関連記事:ショルツ政権はウクライナ支援倍増で合意、40億から80億ユーロに引き上げ
関連記事:自由のための戦いに期限なし、ドイツは2032年までの予算計画にウクライナ支援を盛り込む
関連記事:イタリアのメローニ首相、ウクライナに武器を送らなければ戦争が近づくだけ

 

※アイキャッチ画像の出典:K. Wennekendonk/CC BY 4.0 DEED

シルシキー総司令官が進める監査、前線未経験の兵士を2個旅団分見つける前のページ

ゼレンスキー大統領が自軍の戦死者数に言及、3.1万人の兵士が死亡次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    トルコ大統領がギリシャに警告、挑発行為が行き過ぎれば攻撃も辞さない

    エルドアン大統領は3日「過去の歴史=ドゥムルプナルの戦いでトルコに負け…

  2. 欧州関連

    フランス、ギリシャ海軍が仏製フリゲートを採用すれば中古駆逐艦2隻を無償で提供

    ギリシャ海軍の新型フリゲート導入を巡って米国と熾烈な受注競争を行ってい…

  3. 欧州関連

    イタリア海軍が調達予定の新型潜水艦、リチウムイオン蓄電池の開発が順調

    イタリア海軍はサルヴァトーレ・トーダロ級潜水艦を改良したU212NFS…

  4. 欧州関連

    ゴルノ・カラバフ紛争、26日発効した3度目の人道的停戦も5分で終了か

    ナゴルノ・カラバフ地域を巡る戦いは3度目の人道的停戦が26日午前8時(…

  5. 欧州関連

    兵士を病気にさせる騒音問題が再発、英国は次期装甲戦闘車「Ajax」のテストを再び中断

    走行中の騒音問題が解消されたはずの次期装甲戦闘車「Ajax/エイジャッ…

  6. 欧州関連

    ウクライナ外相、ロシア軍がダムを破壊したと信じないメディアに怒り

    ウクライナのクレバ外相は「ノーバ・カホフカ水力発電所の爆破について『キ…

コメント

    • たむごん
    • 2024年 2月 25日

    連立政権は、少数派(少数グループ)もキャスティングボードを握るため、少数派(少数グループ)の意見が通りやすいという側面があります。

    アメリカ共和党下院、日本の連立政権もそうですが、何が通って・何が通らないのかは興味深いですね。

    20
      • kame
      • 2024年 2月 25日

       ポーランドもそうですが、欧州は連立政権で成立している国家が多いですし、選挙時に有権者にアピールしていた目標が有耶無耶になる事が多々あります。元々、多民族国家が多い上に近年はアフリカや中東からの移民も増加してますし、選挙に勝った後も政治運営に問題が出ることも珍しいことではなくなってますね。

      22
        • たむごん
        • 2024年 2月 25日

        仰る通りです。
        日本のように、自民党の与党が続いてきた事の方が、海外・特に民主主義国から見れば珍しいのでしょうね。

        自民党も考えてみれば、経済は成長派・増税派、外交は親米・親中・親ソ(旧)など、バラバラですね。

        13
          • kame
          • 2024年 2月 25日

           自民党(親米)、自民党(親中)みたいな志向の違いはあっても基本的にはアメリカとの一蓮托生なのは変わりませんから、一定の安定感はありますね。

          7
          • kitty
          • 2024年 2月 26日

          日本には公明党というがん(by麻生)が悪影響を与えています。
          明確に反目な共産党や社民党より質が悪いです。

          3
    • 名無しの悪夢
    • 2024年 2月 25日

    EUではこれくらい強烈な右派政党でないとウクライナ支援に反対する声が出せないのが興味深いです。

    13
      • はらへり
      • 2024年 2月 25日

      ヨーロッパはことなかれ主義でナチがラインラント進駐しようがスロバキア併合しようが
      放置してたらポーランド侵攻までしはじめて
      結果WWIIになって甚大な被害をもたらした経験があるんでな

      33
      • ALTER
      • 2024年 2月 25日

      歴史的経緯も含めて、反ロシアの価値観を共有している国が多い欧州だと当然だと思われ。
      日本で言えば親中派の平和主義者が当然のようにお寒い目で見られるみたいな…。

      24
        • 歴史と貧困
        • 2024年 2月 25日

        >親中派の平和主義者
        ただ、圧倒的な軍事力の差があるので、今すぐに中国と事を構えるのは不可能だ。という主張の現実派も反中派からは一括りにされるのが厄介な所。
        幕末の、倒幕・佐幕・開国・攘夷のイデオロギー問題と似た部分はあるのでしょうけど。
        明治初期に今は欧米列強と戦えないと言っていた者達とて、いつかは戦争で勝たねば不平等条約の改正は出来ないとわかっていた。

        17
        • 名無しの悪夢
        • 2024年 2月 26日

        我ながら揚げ足を取るようで申し訳ないですが
        そういう歴史的な経緯で考えるとロシアもナポレオンやヒトラーで不信感拗らせるのも仕方ない感じもしますね。
        ソ連崩壊後でも親露政権を潰すためのアメリカの介入も露骨みたいですし…まぁ、言い分はどちらにもあるし言い方もそれぞれということで
        個人的には当事者でなければ深入りはしたくない話ですね。

        8
          • 名無し
          • 2024年 2月 26日

          ロシアが日本の隣国で、過去に何してきたか知らないでコメントしてるの?
          日本がロシアと友好的だったことって本当に僅かな期間しかないんだよ

          7
            • 名無しの悪夢
            • 2024年 2月 27日

            察するに日本はロシアの潜在的敵国だから当事者意識がないにもほどがあると仰りたいのでしょうね。
            けど、そういう話をしていたら平穏な日々は永遠に訪れることはないでしょう。
            誰かの利益が誰かの利益に相反する構造がある以上、争いは避けられないものです、一方の味方に付いて一方的に懲らしめたところで、この根本的な構造は何も変わりません。
            なので人類にとって平和とはその場その場でその場凌ぎで続けていくしかないものと私は考えてます。

            これはあえて言わなかったんですが、ナポレオンやヒトラーのような事があっても隣国と結束できるヨーロッパ諸国が羨ましいですよ。

            3
    • ふむ
    • 2024年 2月 25日

    PVV信じて投票した有権者は裏切られた形になる訳ですか

    短期的には良くても、長期的には革命じみた爆発起きそうであんま良くない決着ですね…
    これなら最大野党として存在感発揮して、後々単独過半数得てから与党やる方が良いのでは

    15
      • はらへり
      • 2024年 2月 25日

      PVVが第一党といっても150議席中の37議席で
      前回与党のVVDが24議席で移民対策強化を掲げているものの、連立を考えるなら
      さすがに宗教弾圧レベルの政策であるモスク禁止等のガチガチの反イスラムは撤回せざるをえず
      (ちなみに現VVD党首はトルコ難民出身)
      他の主要政党が第二党のGL-PvdAが25議席で左派のためPVVとは連立組む余地無し
      今回連立協議離脱したNSCが20議席も持ってたので
      他の政策も相当譲歩しないとどうしようもなく
      イタリアのメローニ首相率いる極右政党イタリアの同胞と同じく政権運営しようとするなら現実主義路線に転換せざるをえないんですよね

      20
        • 古銭
        • 2024年 2月 26日

        移民問題は経済移民と亡命移民の区別や二重国籍の拒絶、国籍に紐づいた社会保障あたりが進むかどうかというところでしょうか。PVVとは組まないというだけで議会で消極的な協力が出来そうな政党自体は多いですし。

        2
      • 匿名戦士
      • 2024年 2月 25日

      欧州の多くの議会は単独過半数議席を持つ政党が存在せず、連立政権が常である事を考えたら、その考えだといつまで経っても与党になるのが難しいのでは?
      ただ、公約を軽々しく破って与党になるってのも考えものなのは同意なんで、有権者は次投票で別政党に投じるとかで対応するしかないですね。

      13
    • lang
    • 2024年 2月 25日

    欧州もダメダメですね
    全てイスラーム化しそう・・・

    10
      • 名無し
      • 2024年 2月 26日

      移民、難民を制限するってことにはどの党も主張してるんだよ
      ただその内容が過激すぎたり、実行性があるかが問題で

      5
    • 歴史と貧困
    • 2024年 2月 25日

    正直、ここまで連立政権が発足も出来ずに不安定だと、ウクライナにとって朗報とも言えないのが厳しいところです。

    『ウクライナが負けそうだから支援しない』ならば、勝ち目が再び出てくれば支援に転じる余地もありますが。
    【内ゲバの真っ最中で、他国に構っている余裕がない】だと、どうあっても中途半端な形が上限値になってしまう。

    外側からすればもどかしいだけで、全く頼りにならない支援国。

    10
    • 名無し
    • 2024年 2月 25日

    安定した与党って難しいんだね
    自民党が良くも悪くも安定しているから感覚がおかしいのかね

    7
    • 58式素人
    • 2024年 2月 25日

    ぬか喜びに終わるかもですが。
    ハンガリーがスウェーデンと交渉をして、グリペンを4機購入するとの記事が他所にありました。
    同記事では、ハンガリーは近日(今週)スウェーデンのNATO加盟を国会で可決するとのこと。
    これに絡み、記事では、SAAB社は、政府の指示が出次第にグリペンの提供準備をするとのこと。
    どうも、水面下で色々としていた様子。期待したいところですが、どうかな?。ぬか喜びかな?。
    良い方に考えてみると、グリペンの訓練は、英国でもシミュレーターまではできるようだし。
    英国は戦闘機提供同盟の旗振りですけれど、”F16”と言ったことはないような気もします。

    2
    • ななぴ
    • 2024年 2月 26日

    購入するグリペンはハンガリーがすでに運用している機体にプラスする分で、ウクライナへのグリペン提供などではまったくないと思いますが。

    3
      • 58式素人
      • 2024年 2月 26日

      もちろんそうです。
      別の機体(新造?)となるのでしょう。

      1
    • 名無し
    • 2024年 2月 26日

    オランダのルッテ(暫定)首相は次のNATOトップに最有力視されてる
    首相長く務めて顔が利くし、超反露なんでこれ以上ない適任者
    日本との協力も進められる人だろう

    スロバキアも当初のように反ウクライナ出来てないし
    単独政権じゃないと難しいな

    3
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  3. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  4. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  5. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
PAGE TOP