仏シンクタンク=フランス国際関係研究所(IFRI)は10日「フランス陸軍の長距離攻撃能力に対する条件を完全に満たすのは韓国製の多連装ロケットシステム=Chunmooしかない」と指摘し、本当にフランスがChunmooを導入すれば韓国防衛産業にとって金字塔になるだろう。
参考:Armée de Terre : Une étude recommande l’achat de lance-roquettes multiples sud-coréens K239 Chunmoo
参考:Lance-roquettes multiples, une dépendance européenne historique et durable ?
本当にフランスがChunmooを導入すれば韓国防衛産業にとって金字塔になるだろう
欧州はウクライナとロシアの戦争を目の当たりにして「大規模な地上戦が再び欧州で発生する可能性」と「高度な防空システムの普及で接近拒否が成立する可能性」を認識し、航空戦力に偏っていた火力投射能力を地上戦力に戻す動きが加速しており、自走砲や多連装ロケットシステムの新規取得や追加調達が相次いでいる。

出典:Photo by Lance Cpl. Nicholas Guevara
砲兵システムに関しては欧州独自の選択肢とインフラが存在するものの、多連装ロケットシステムは米国製のM270 MLRSに依存してきたため使用するロケット弾の生産拠点もなく、米国製のHIMARS、 イスラエル製のPULS、韓国製のChunmooに人気が集中、ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、イタリアはHIMARSを、ドイツ、オランダ、スペインはPULSを、ポーランド、エストニア、ノルウェーはChunmooの導入を決めたが、ドイツのPULS導入はウクライナへのM270 MLRS提供分の穴埋め、スペインはイスラエルがガザ地区に対する軍事作戦を強行したためPULSを中止した。
現在はラインメタルとロッキード・マーチンはHIMARSの技術を流用したGMARS、KNDSとエルビット・システムズがPULSの技術を流用したEuroPULSが提案され、多連装ロケットシステムの選択肢は5つ(HIMARS、PULS、Chunmoo、GMARS、EuroPULS)に増えたものの、イスラエル製装備に対する欧州諸国の風当たりは強く、イスラエルと特別な関係にあるドイツとギリシャがPULS/EuroPULSを導入するかもしれないが、それ以外では競争力はほとんど残っていない。
フランスも2027年までに即応師団を編成する予定で、この即応師団の長距離攻撃能力は老朽化したLRU=M270 MLRSに依存しており、仏装備総局はサフランとMBDAのコンソーシアム、タレスとアリアンのコンソーシアムに独自の多連装ロケットシステム開発を発注したが、この競争入札で勝利したシステムの導入は早くても2030年以降の話で、ここにテュルジ・ガイヤールが「迅速に開発可能」という触れ込みの独自の多連装ロケットシステム=Foudreを提案。
仏装備総局もFoudreに関心を示しているものの「Foudreに対応したロケット弾」が存在せず、フランスの軍事ブログ=Zone Militaireは14日「暫定的な解決策=市場で入手可能な多連装ロケットシステムの取得も選択肢から排除されていない」「仏シンクタンク=フランス国際関係研究所(IFRI)の研究によれば全条件を満たすのはChunmooしかない」と報じ、この話をまとめると以下のようになる。

出典:Ministry of Defence Pinaka rocket
“公式に確認されている暫定的な解決策はインド製のピナカだ。この選択肢はラファール導入のオフセットとして機能し、システム自体も非常に安価(50万〜100万ユーロ)、インド陸軍の在庫から引き渡すことも出来るため納期も短く、フランスとインドのパートナーシップ強化にも役立つ。但し、IFRIのレオ・ペリア=ペニェ氏によれば「ピナカの優位性はデメリットで相殺される」と言う。ピナカは旧ソ連規格=122mmクラスのロケット弾を使用した飽和攻撃用の多連装ロケットシステムで最新のものに比べて性能が劣る上、過去の事故を加味すると弾薬の品質に疑問符がつく”
“さらにインド陸軍も300km先の長距離攻撃能力を確保するためPULS導入を決めており、フランスが予定している調達数も少ないため、インド側がピナカで使用するロケット弾の生産移転を認める可能性が低い。米国製のHIMARSも納期(最低で4年待ち)と価格(弾薬込みで2,300万ユーロ)が合わないため選択肢から外れるかもしれない。PULSも欧州では依然としてマイナーな存在であり、イスラエルとの関係性、プラットフォームに対する干渉や介入、データ主権の問題もある”
“最後の選択肢はChunmooだ。IFRIの調査によればChunmooだけが全条件を満たしている。長期的な開発ロードマップ、多彩な弾薬ラインナップ、独自弾薬を統合できる自由があり、IFRIは「多連装ロケットシステムにとって真の課題は弾薬供給をコントロールできるかどうかだ」「Chunmooは欧州で最も多く導入されている近代的なシステムだ」「弾薬も2030年までにポーランドで生産が開始される予定だ」「限定的な数量の発注であれば韓国軍の在庫からの転用、もしくはポーランド発注分への相乗りが可能であり短縮できるはずだ」と言う”
“さらにChunmooのインターフェースはM270 MLRSに近いため習得が容易で、唯一の問題=Chunmooの重量問題も「Chunmooのランチャーシステム」と「フランス製の軽量なシャーシ」と組み合わせることで解決できると主張しており、IFRIは「Chunmoo取得は信頼できる暫定的な解決策になるだけでなく、フランス独自の弾薬を統合することでChunmoo運用国(ポーランド、エストニア、ノルウェー、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)への輸出も可能になるかもしれない」と結論づけた”

出典:Hanwha Aerospace
これまでフランスの多連装ロケットシステム調達は正直よく分からなかったのだが、Zone Militaireの説明でシンプルになり「サフランとMBDAのコンソーシアム、タレスとアリアンのコンソーシアムの開発では間に合わない」「テュルジ・ガイヤールのFoudreはプラットフォームが間に合っても弾薬が間に合わない」「そのためフランス陸軍のピナカ調査は冷やかしではなかった」となり、ChunmooについてはIFRIの調査と研究の結果なので公式の動きではない。
それでも「IFRIがChunmooを推す理由=弾薬供給と統合の自由」は多連装ロケットシステムの導入で「最も重要視される点」であり、本当にフランスがChunmooを導入すれば韓国防衛産業にとって金字塔になるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Ministerstwo Obrony Narodowej





















あー、やっぱりインドのラファール購入ってこういうディール込みでしたか
韓国製兵器、すごい売れ方してますね。
アメリカ離れ=イスラエル離れが要因のようにも見えますが。
韓国製兵器の能力+価格~総合的な交渉力(過去の実績含め)が、両国の代替レベルに達しているのが何よりも重要だったのだろうと感じています。
韓国製の生産、供給能力ってのも加点ポイントなんでしょうね。
ウクライナの戦訓を鑑みても必要な時、必要な数を揃えられるのは重要ですから。
あと韓国ビジネスの持つスピード感も今の激変する安全保障環境に合ってるのかもしれません。
日本も武器輸出の緩和動くようですしこの辺見習うべきところは多いですね。
まさに仰る通りで、学ぶべきところを素直に学ぶのは重要と思います。
幕末~明治、戦後復興~高度経済成長など、日本人の歴史にキャッチアップできる強みもがあるわけですから生かしていくべきだなと。
『戦いは数だよ』なんて言葉がありますが、ウクライナ戦争の戦訓として仰る点が極めて重要と思います。
それプラス物がしっかり届いたり現地生産するにしてもちゃんと立ち上がったりとかそういう能力も信頼されてるんじゃないかな
言いっ放しが多いし最近
一昔前までは韓国こそ全てが誇張で口先だけって馬鹿にされてたけど(日本のネットだけ?中国もチャイナボカンとか
仰る通りですね。
F-35についてレーダーがない(!)意味不明な話しを拝見した後なので尚更感じます…。
(どんな製品もそうですが)納期・現地生産などの契約きちんと守れないようでは、アフターサービス・部品供給・弾薬なんかも期待できない=信頼感なくなっちゃいますね。
フランスの兵器輸入って「チっ、NATO規格かしょーがねーな」的な小規模な額・ミサイル等の消耗品ばっかりですから、韓国がフランスに売れたら、そりゃ「金字塔」ですな。
正直ロケットシステムって買うより自前で作る方が楽そうなんだけど、ここまで選択肢が少ない理由って何だろ?
言ってしまえば只の箱載せトラックで、欧州なら作れない国は無さそうなのに
ほとんど想像ですが。内容的に見て
> 多連装ロケットシステムにとって真の課題は弾薬供給をコントロールできるかどうかだ
とありますので、要は弾じゃないですかね。
コスパの良い大量の弾をどんな状況でも常に供給可能なこと、つまり製造工場も含めたサプライチェーンではないかと。
弾の規格が有りますからね。後発が独自規格を作ってもあまり良い事はない。
ロシアの大砲がインチ規格でアメリカの砲がミリ規格なのは逆な気がしますが、19世紀当時の後発国だったからです。
今の多連装ロケットは精密誘導ロケットやミサイルの発射母体でもありますから、昔みたいに筒とロケットを乗せるだけとはいかないでしょう。
予定は未定な以上は韓国が得られるネームバリューは今は脇に置いとくとして、予定調達数が少ないのならライセンス生産するメリットも少ないし、何よりフランス企業が黙ってられるかね。
アメリカにもイスラエルにも頭を下げられないのなら、Foudreまでの繋ぎとしてポーランドからK239をリース契約して調達するかもしれないが。
戦車も韓国製に
M270はなんで更新すべき?と言われるのかな。
思うに、履帯式が嫌われているのかな。
長距離移動には運搬車が必要だから。
実際、提案されているものは、ほとんどがトラックベースだし。
武器としての威力は発射体に依存するだろうから、
発射機としての性能には不足はないと想像します。
同じ大きさのコンテナに種々の発射体を収めるやり方は、
補給/運用において優れているとさえ思います。
発射体毎に発射機が異なるのは馬鹿馬鹿しいとさえ思います。
であれば、現状の車体を装輪式に改造しては?。以前にも書いたけど。
実例として、AMX-10が挙げられると思います。
AMX-10はスキッド式だけれども、H型ドライブでも良いと思います。
4軸8輪で8×4〜6くらいで。チェンタウロのそれに倣いますが。
装甲車体が先にあるから、スキッド式かH型になると想像します。
もし実現できれば、M270は16式とほぼ同じ大きさ/重さですから、
高速道路を自走できるのでは?。何なら予備弾を積んだトレーラーを牽引して。
空輸の必要な米軍はさておき、日本などには必要な改造では?と思います。
散々、装軌→装輪魔改造を書かれていますがどんなメリットがあるんですか?AMX-10はそれをする意味がまだありましたがM270では無いように思います。仮に米国がM2ベースの車体を装輪式に改造出来たとして技術転用で古くて余分なM2を装輪式に改造したいなんて要望なんて無いでしょう。
ボクサーの装軌コンセプトがありますが足回りが装輪式との互換性はありません、新しく作る必要があります。
古い搭載プラットフォームを改造する理由に移動のハードルがあるなら移動や攻撃を受けるリスクを最低限に出来る長射程ミサイルプラットフォームとして使用する。装軌式のメリットを捨てて装輪にするぐらいなら最初から安価で纏まっている装輪式で十分でしょう。日本こそやるべきと言いますがMLRSだけ100両に満たない数量でやる価値が有るとは思えません。
ウクライナのT-64やイランのF-5系、イスラエルの各種魔改造装甲車みたいに選択肢が無くコスパ関係無しで目の前にある物を無理矢理にでも有効活用しなければならない究極の状況じゃない限りは見向きもされないでしょう。
M270の車台の改装は、米国には必要のないものかも、と思います。
彼らには、充分な数のトランスポーター/輸送機があるでしょうし。
残念ながら、日本の場合は足りないように見受けられます。
防衛当局は色々と工夫を重ねているようにも見えますが。
足りていれば、あ、少し大きくて重いな、と思いつつ運用するのだと思います。
MLRSはすでにあるし、発射機としての性能には不足はないでしょうから。
射撃管制面でいずれ改装は必要とも思いますが。
必要な場所に、必要な数量が、必要な時に届けば良いのでしょうね。
装輪化できるとして、利点は中距離(各地方隊管区内?)移動の高速化と思います。
それと、中距離移動でのトランスポーターの手間の省略、と思います。
ボクサーの事は知りませんが、装軌化はその逆よりは楽なのでは?。
その改造の実現性や費用面とかどうなんですかね。少なくとも装輪化するならプロペラシャフトとドライブシャフトを通す必要があるし費用面や改造面で可能な限りリスク回避するなら車体下部に追加みたいな感じで車高自体上がるでしょう。
個人妄想で言うなら現用MLRSを有効活用するなら
①車体と発射部分の切り離し:貴重な防御力の高い軍用装軌なのでロケット発射機能をオミットして車体を悪路に強い救急車タイプ、対空車両、コマンドポスト型等に転換。発射機能は輸送力増加を狙い増加させる特大型運搬車改良型に搭載して運用。
②長距離攻撃プラットフォームとしてだけの運用:FCS等を更新させATACMSやPrSMのような長距離攻撃装備のみに特化し移動は最小限にさせる。
③無理矢理の装輪化:究極の悪路は走破しない前提で過剰品質と構造変更を最小限にする為にインホイールモーター方式を検討、実用化出来た際にはデュアルユース等で信頼性と価格低減を模索し可能であれば輸出拡大を視野に入れる。本来の速度以上を出すのに問題が無いのかやバランスによるタイヤの減りがリスクとしてありそう。
日本での運用をするなら幅が広いMLRSを装輪化するよりは、ポーランドみたく国産トラックへ搭載するみたいな感じで73式大型トラックにHIMARSのFCSや発射基を統合して、C-130にも載せられるし隠しやすいし速度も出せ小回りが効き日本のインフラをもっと活かせる方が良い感じがしますね。
想像も含みますが。
H型ドライブは、車体の下にドライブシャフトは通らないです。
装甲車体の両サイドに左右輪別々のシャフトが通ります。
ですから、高さは装軌車とさほど変わらないでしょう。
素人も詳しくないですが、wikiの”Hドライブ”を引いて知りました。
外国語の文章ですが、添付されたDAFのトラックのドライブトレーン
のレイアウト図を見て理解しました。参照されると良いと思います。
インホイールモーターは素人も考えてみたのですが、
防水がまだ未完成なのだと思います。
一般車両でも以前から言われていますが、まだ実現していません。
①〜③の利用案は興味深く拝見しました。
現用のMLRSの利用法はいくつもあると思います。
何より、99輌も調達したのですから、単に廃棄ではまずいでしょう。
恐らく見てないと思いますが書いておきます。
まずH型ドライブを提案している時点でM993 Bradley Carrierのドライブトレインがどうなっているのか考えているのかなと思います。現状の方式を限りなく有効活用するならH型では無くスキッドステアが運用面はともかく1番楽でリスクが少ないでしょう。
そして両サイドのシャフトに関しては現状の車体外に通すのか中に通すかでハードルが違いますし、仮に中を通すならばリアの架装部分がどうなっているか分かった上で提案しているのかの疑問があります。単純にドラシャを通すようなスペースを簡単に確保出来るか装備の移設や車体の穴開け等が必要なら当然手間も費用も掛かります。
そして肝心なのはどこがその魔改造をしてくれて納期や費用が全く見えない事。こんな魔改造を今のIHIエアロスペースが受けてくれる余地なんて有るんでしょうか。そして年20両ぐらい対応してくれなければ正直やる価値は無いと思います。
少なくとも自分は廃棄しろとは書いてませんしリスクや費用を最小限に、仮にリスクとお金を掛けてやるなら将来性踏まえて裾野が広がるインホイールモーターも絡めたらどうかと提案を出しました。しかしながら貴方は採用後に年数が経った装備を外観をほぼ変えずリスク、費用が掛かる可能性が高い改造を勿体ないからほぼ全てに適応しろと言っている。これが譲れない以上は平行線です。
そして設計時点で織り込んで試験を重ねてドライブトレインが構築された車両を例に出して出来る筈だと言う。想定していない物を後付けでやると言うのとはそもそもの土俵が違うでしょう。納税者の自分としたら流石にそんな博打みたいな物はやって欲しくないですね、それならまだ外国に売れるとかは考えずに既存自衛隊インフラ活用出来るトラック型を可能な限り早期に作る方が有りがたいです。
ご教授ありがとうございます。
おそらく、素人などより詳しい方なのでしょうね。
ドライブシャフトの位置は、装甲車体の両外側と思っていました。
そうででないと、おっしゃる通り、改造が大変でしょうから。
インホイールモーターは出来ると良いと思っています。
米国の製造元とも協力して、仕事ができるでしょうし。
あの自国調達志向の強いフランスが縁遠い後発組の韓国から兵器輸入するかもしれないとは、すごい世の中になったものだ