米海軍に次ぐネームバリューをもつ英海軍もKongsberg製のNaval Strike Missile導入を決定、西側標準の対艦ミサイルと呼ばれるハープーンの後継的地位を不動ものにした。
参考:Kongsberg precision-strike missiles to replace Harpoons on UK warships
米海軍に次ぐネームバリューをもつ英海軍も導入を決めたためNSMの存在感はもはや不動のものになった感がある
英海軍は2023年に寿命が尽きるハープーンの更新計画=暫定的な対地/対艦ミサイル調達プログラムを昨年末に中止、英第1海軍卿のトニー・ラダキン大将は「より効果的な攻撃兵器を導入するための議論を行っている最中で、我々は他国と協力して必要な兵器を手に入れる=独自に新規開発するという線はないという意味」と述べていたが、Kongsberg製のNaval Strike Missile導入でノルウェー政府と合意した。
英国とフランスは共同で極超音速ミサイル(Future Cruise/Anti-Ship Weapon)の開発を進めており、両国はFuture Cruiseでストーム・シャドウ、エグゾセ、ハープーンなどを2030年頃に更新した意向だが、英海軍は艦艇で使用しているハープーンの寿命が2023年(当初2018年だったの延長)に寿命が尽きるため暫定的な対地/対艦ミサイル調達プログラムを進めていた。
この問題について英第1海軍卿のトニー・ラダキン大将は「より効果的な攻撃兵器を導入するための議論を行っている最中で、我々は他国と協力して必要な兵器を手に入れる=独自に新規開発するという線はないという意味」と述べていたが、英海軍はKongsberg製のNaval Strike Missile(NSM)導入でノルウェー政府と合意して注目を集めている。
NSMはノルウェー海軍のフリチョフ・ナンセン級フリゲート(4,600トン)やシェル級ミサイル艇(260トン)に搭載する対艦ミサイルとして採用されたもので、西側の標準的な対艦ミサイル「RGM-84ハープーン」の重量がブースター込みで約660kgあるのに対しNSMは同条件で412kgしかなく、この重量差は当然弾頭(ハープーン220kg/NSM110kg)に影響してくるため破壊力に「大きな差」が生じるはずなのだが、標準的な遅延信管を使用するハープーンに対しNSMは先進的な信管を備えているため目標に対する破壊力が大きい。
当初NSMは「ハープーンを搭載できない小型艦向けの対艦ミサイル」という位置付けだったが、コンステレーション級フリゲート(米)、ホバート級駆逐艦(豪)、F110フリゲート(西)といった大型艦までハープーンではなくNSMを選択したため「西側標準=ハープーンの後継」という地位を固めつつあったが、米海軍に次ぐネームバリューをもつ英海軍も導入を決めたためNSMの存在感(計10ヶ国採用)はもはや不動のものになった感がある。
ここまでNSMが支持を獲得できたのは「優秀な性能」だけでなく、米国市場での製造・販売をレイセオンに任せる代わりに米海軍へのNSM売り込みで協力、プログラム出資国というアドバンテージを生かしてNSMの空中発射バージョン「Joint Strike Missile(JSM)」のF-35搭載をいち早く進めたことで「米国市場」や「顧客数の多いF-35プログラム」で地位を確立、米海軍採用という最強の信用を得たNSMは優秀な性能と相まって一気のブレークしたのだ。
因みにF-35A/Cのウェポンベイに収まるよう開発されたJSMはサイズ的にMk.41にも収まるため、将来的には専用ランチャーではなくMk.41から発射可能なJSMが開発されれば関心を示す国がさらに増えるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Kongsberg Defence & Aerospace AS
威力が撃沈を目的としたものではなく、戦力の漸減を目的とすれば、
大破や中破の相当判定で十分な威力と考えているのかと思います。
日本も国産ASM、SSMの量産備蓄をしっかりできないのであれば、NSMのライセンス生産を真剣に検討すべきでしょう。
派生型であるJSMは発注済ですし、ハープーンを置き換えた90式艦対艦誘導弾の後継である(NSMと誘導方式が違うけど)17式艦対艦誘導弾も生産配備したばかりなので、自分としては12式対艦誘導弾の改良型の開発と生産に力を注いでほしいところですね。
問題は量産備蓄体制が構築できるかなんですよね。
国産武器(弾薬)を使う以上は米軍の兵站に頼れない訳で、備蓄体制をしっかりしなきゃならないのに、
昨今の防衛予算審議を見ていて、一番に費用対効果が分かりやすいはずの弾薬の備蓄というのが驚くほど話題にならない。
防衛省も防衛省で、防衛機密かなんかといい議題にすら出さない。いや議題にしろよ。
資料がないので、稼働率や弾薬備蓄を議論すらできない不可思議な国ですので、いっそのこと海外製品ライセンスとかの方が安心できるんじゃと諦めかけている感じですね。
次の標準的対艦ミサイルがこれになるならば、ハープーンの時と同じ様にランチャー等の互換性も大事になるかもしれませんね。
いつも思うけど、本当におっしゃる通りだな~
あと、兵器の種類が多すぎるので出来るだけファミリー化して絞って、予算低減と備蓄増やして欲しい。
でないと現場はそういうのが1番士気下がる。
対艦ミサイルに関しては既にファミリー化されていますが、対空ミサイルに関してはAAM-4をベースにしたXRIM-4が「防衛費削減のためだからESSMでいいじゃん」という理由でボツになったりしてますので、アメリカ製の兵器や、それに対応するミサイルをどうするかもキモになってきますね。11式短SAMのように陸自と空自で使わせるという手で数を増やして手間を減らすというのも有りですが。
一応、イスカンデルのようなミサイルに対応するために03式中距離地対空誘導弾の改良型の開発と、それを基にしたESSMの後継ミサイルは開発中です。どうなるかは未知数ですが。
大戦時と違い現代の洋上戦闘に於いて一発食らえば戦闘継続不能になります。
撃沈することが重要ではありません。
>Mk.41から発射可能なJSMが開発されれば関心を示す国がさらに増えるだろう。
発射手段が増えるのは得は得でしょうけれども、ハープーンよりも小型のJSMをMk.41VLSから発射する意味は有るのだろうか?
余裕の無いバーク級とかならば重心を下げるために採用するとかは有るかもしれないけれども、ハープーンよりも小型であればギリギリ専用ランチャーを装備しても行けるかもしれませんし
そもそも米海軍には対艦も可能になったトマホークやLRASMといったより大型の対艦ミサイルが有りますから、そちらの方がMk.41VLSに相応しいでしょうし
また、現在のMk.41VLSからはステルス性が欠けているとの指摘も有りますので、極限までRCSを削減するならば別の発射機を開発するなどした方が良いですから
イギリス海軍ってハープーンの後継は極超音速ミサイルに一気にジャンプして、その間は埋めないって言ってませんでしたっけ?
いつの間にか方針転換してたんだ
NSMはLRASMと比べ価格も重量も半分以下
LRASMの生産は低調で未だ数十機程度しかないとの情報もある
弾頭が硬いチタン合金製でそれ故にハープーンの半分の弾頭重量でも致死性はあまり変わらない予定
ライバルは恐らくラファエルの対艦ミサイルだろうが、未だ詳細は不明で未知数
ただし、対艦ミサイルとして軽いだけでAMRAAMあたりと比べれば倍の重量はあるからJSMが革新的なミサイルかというとなんとも言い難い