欧州関連

バフムート周辺で戦うウクライナ軍兵士、弾薬の続く限りロシア軍を阻止する

Kyiv Independentの取材に応じたバフムート周辺で戦うウクライナ軍兵士達は「弾薬の続く限りロシア軍の前進を阻止する」と述べており、ドローンの観測結果に基づいた砲兵部隊の攻撃がロシア軍に壊滅的な犠牲を強いていると報じている。

参考:Bakhmut Sector: Ukrainian Soldiers Defiant and Ready to Fight, Civilians Battered

イワニフスキー方面やクロモヴェ方面への前進が10日間以上も大きな進展を見せていない

Kyiv Independentの取材陣が訪れたのはバフムートの西に位置するチャシブ・ヤールで、同拠点に接続する道路の経由地で断続的な砲撃に晒されているものの「駐留するウクライナ軍の兵士は十分な食事と休息をとり、身なりも清潔で十分な武器を携帯していた。3月11日と12日にチャシブ・ヤール、セベロドネツク、コンスタンチノフカ間を走行したところ四輪駆動車なら走行可能で、双方向で軍の車輌が移動していた」と報じている。

出典:Сухопутні війська ЗС України

さらに出会ったウクライナ軍兵士達はメディアとの対話を禁じられいることを謝罪し、何人かの兵士は温かい飲み物、新鮮な果実、エネルギー飲料、休息をとるための地下防空壕の提供を申し出て、前線に近い6つの村で出会った10人以上の将校や兵士は非公式な会話の中で「バフムート周辺の陣地は持ちこたえている。ロシア軍の攻撃には特に戦車、歩兵戦闘車、重砲が欠けている」と明かし、とある場所では203mmカノン砲が東に向けて砲撃を加えていたものの敵の反撃は見られなかったらしい。

特に興味深いのは「2日間の取材期間中にウクライナ軍の救急車を1台しか見かけなかった」という点と、とある軍曹が「配属されてきた新兵は効果的な戦い方を覚える前に死んでしまう」と明かしている点で、前者の言及についてKyiv Independentは「バフムートで大きな死傷者が出ているという一部メディアの報道内容を否定するものかもしれない」と指摘しており、後者の言及は「動員者への訓練改善」を訴えたクポル中佐の主張が正しかったことを裏付けている。

出典:GoogleMap バフムート周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

まぁ「2日間に限定された取材範囲」で全体を判断するのは難しいが、イワニフスキー方面やクロモヴェ方面への前進が10日間以上も大きな進展を見せておらず、ロシア軍によるバフムートの包囲網を閉じる試みは停滞している=ウクライナ軍が阻止し続けており、ロシア軍が攻めあぐねていると判断するか、わざと戦いを引き伸ばしてウクライナ軍の疲弊を誘っていると判断するか非常に難しいところだ。

因みにKyiv Independentの取材陣が出会ったウクライナ軍の中尉は「我々は絶対に立ち上がり一歩一歩戦う。弾薬の続く限りロシア軍の前進を阻止する」と述べており、出会った殆どの兵士も「ドローンの観測結果に基づいた砲兵部隊に支援されたバフムートの戦いはロシア軍に壊滅的な犠牲を強いており、昼間の攻撃で敵の小隊全体や中隊までもが事実上全滅している」と主張しているので、これが事実ならバフムートはまだ持ちこたえられるかもしれない。

追記:バフムート市内のカメラマン全員がチャシブ・ヤールに引き上げさせられたという報告があるが、事実かどうかは不明だ。

関連記事:ウクライナ侵攻385日の戦況、ウクライナ軍が守るバフムートは刻々と状況が悪化
関連記事:バフムートにゼレンスキー大統領が決定を下す、今後も防衛して保持する
関連記事:ウクライナ侵攻383日の戦況、露ワグナーはスラビャンスク方向に道路を北上

 

※アイキャッチ画像の出典:93-тя ОМБр Холодний Яр

物議を醸すウクライナ人指揮官の訴え、軍は全て誇張されたものだと反論前のページ

年内に砲弾100万発をウクライナに供給可能か? 西側諸国の倉庫は空っぽ次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    トルコの第5世代戦闘機開発にロールス・ロイスが復帰、エンジンを共同開発か

    トルコの第5世代戦闘機「TF-X」のエンジン開発にロールス・ロイスが復…

  2. 欧州関連

    ロシア軍がザポリージャ原発から撤退? ウクライナが撤退準備の兆候を確認

    ウクライナの原発を管理するエネルゴアトム社は27日、ロシア軍がザポリー…

  3. 欧州関連

    トルコが第5世代機に続きステルス無人機ANKA-3も公開、まもなく初飛行に挑戦

    トルコ航空宇宙産業は第5世代戦闘機「TF-X」のプロトタイプを予定通り…

  4. 欧州関連

    英国もトルコからバイラクタルTB2を導入? 真剣に英国がトルコ製UAV導入を検討中

    トルコのヴァランク産業技術大臣は今月15日、CNNの取材に対して「英国…

  5. 欧州関連

    海上戦闘におけるTB2の威力は想像以上、UCAVは戦争を再定義する存在

    Naval Newsは18日、海上戦闘におけるバイラクタルTB2の威力…

  6. 欧州関連

    ウクライナ軍、ロシアとの戦いにジョージア元国防相も参加したと公表

    ウクライナ軍は8日、ジョージアのイラクリー・オクルアシュヴィリ元国防相…

コメント

    • 匿名
    • 2023年 3月 18日

    管理人様が作成した地図を見る限り、チャシブ・ヤールはまだ抗戦地域では無いので、激しい砲撃も無く、比較的補給も充実しているのでしょうね。

    ただKyiv Independentの「2日間の取材期間中にウクライナ軍の救急車を1台しか見かけなかった」ので、「バフムートで大きな死傷者が出ているという一部メディアの報道内容を否定するものかもしれない」は、余りにも酷すぎる楽観的見方だと感じました。
    救急車すらロシア側の砲撃目標として狙われ、現に救急隊員やボランティアが多数犠牲になっており、安易に近づけない戦況だと分かりそうなものですが。

    あと「配属されてきた新兵は効果的な戦い方を覚える前に死んでしまう」と触れておきながら、上記の物言いは「新兵は死傷者のうちに入らない」と言うウクライナ流のブラックジョークなんでしょうか。

    21
      • TKT
      • 2023年 3月 18日

      私もウクライナ軍の救急車があまり走っていない、というのは、ウクライナ軍の死傷者が少ないからではなく、すでに俸給路が遮断、あるいは砲撃されているバフムト市街に、ウクライナ軍の救急車が入れない、あるいは出てこれないか、あるいはウクライナ軍衛生隊の救急車が少ない、足りていない、ということだと思いました。

      道路を走っているうちに、救急車がロシア軍の砲撃で破壊されたり、衛生隊の衛生兵も死傷すれば、衛生隊や野戦病院も壊滅するかもしれません。

      あるいは、ブラボー忍者小隊の日本人義勇兵の話、給与や休暇、認識票の話などから想像すると、ウクライナ軍の司令部や本部に負傷兵を救護する気があまりない、という場合さえも考えられます。認識票がなければ戦死しても確認はとれないのです。

      配属されてきた新兵がすぐに戦死してしまうのは、全て兵士の自己責任ではなく、上官である部隊指揮官や、下士官、配属した司令部、司令官の責任でもあるのです。もっともクポル中佐のように上官に直言をする司令官はすぐに罷免されてしまうわけです。

      9
        • タカ
        • 2023年 3月 18日

         直言する司令官はすぐに罷免されてしまう、とおっしゃいますが、彼は訓練センターに配属後に自分でやめています。
         彼にやる気があるのならば、せっかく訓練の現場にいるのだから、そこで得た情報も踏まえて改善するための情報発信をすれば良かったのではないでしょうか。
         すべてぶちまけて辞めるというのは、それでも現場で踏みとどまっている戦友のためにはならないと思います。

        15
          • 2023年 3月 18日

          そうですよね。
          当然居づらい雰囲気でしょうが気骨があるなら、死んだ仲間の為にも新兵の為にも、教官として頑張れば良いのにと思ってしまいます。

          7
    • モノリス
    • 2023年 3月 18日

    プーチンはドネツク州全体の制圧を命じているのにロシア軍(ワグネル)はもう8ヶ月はバフムートで足止めを食らっています。
    時間が経ては経つほど西側の砲弾生産体制も整ってくるのに、戦線をわざと膠着させてウクライナ軍の損失を誘う様な戦術をとっている余裕はロシアには無いと思います。
    単純に装甲戦力の不足や砲兵の砲弾不足で攻めあぐねているだけでは無いでしょうか。
    同時にウクライナ側も反撃戦力として温存していた兵力のバフムート投入などが噂されている中で、春にあると言われている反撃で中々奪還できないでいるクレミンナやメリトポリへの打通が出来るのかは疑問が残る所です。
    とにかくもっとウクライナに砲弾を

    43
    • 匿名
    • 2023年 3月 18日

    バフムト以外でもクラスノホリフカが抜かれたりと、ウクライナ軍が全体的に劣勢ですね。
    クラスノホリフカの先の集落をウクライナ軍の報告でも、ロシア軍の攻撃あったといわれていますから、ロシア軍がウクライナ軍のアウディーイユカ要塞あたりも包囲がすすみはじめていますね

    3
      • 2023年 3月 18日

      クラスノホリフカの件は、ウクライナ軍がアウディーイユカ方面からバフムト方面に部隊を抽出して送ったのも要因という説があります。
      ウクライナ軍がバフムトにロシア軍精鋭を引き付けているつもりが、逆にウクライナ軍精鋭をバフムトに貼り付けるということになってしまっているのかもしれません。
      だからと言ってウクライナに妙策はないでしょうから、戦車早ようとしか。

      4
    • 匿名
    • 2023年 3月 18日

    キエフの新聞だろ?
    情報ソースとしてはどうなんだこれ

    3
      • uralT72
      • 2023年 3月 18日

      だからこの前の記事とセットって事だよ。

      10
        • 2023年 3月 18日

        良い情報だけ聞きたいのは反露派だけでないんだな。
        プーチンもその手の人みたいだし。

        5
    • TA
    • 2023年 3月 18日

    ロシアはウクライナの春攻勢に向けて戦力温存して防御態勢とってそうだなぁ
    バハムート周りの動きが鈍すぎる

    3
      • らっく
      • 2023年 3月 19日

       春攻勢はない、というかできない、というよりもやりたくないのではないかと私は考えるようになってきました。
       米国防担当発言の「時間の無駄」のなかには西側戦車配備の件も含まれているのでは?
       そもそもはたして西側の重い戦車が春期の攻勢作戦の役に立つのか?重戦車の重装甲はむしろ戦線の火消し役のほうが向いているのでは?
       そういうわけで、ウクライナは攻勢に出たくないのが本音であり、アメリカの意向をかわし、攻勢をやるふりをするために西側の戦車や戦闘機など、余分に準備の手間がかかるものを要求し、バフムトに兵をおくっているのではないでしょうか。

    • れんちゃ
    • 2023年 3月 18日

    クポル氏の発言が正しいのなら、新兵は真っ先に逃げ出して戦わないのでは?なのに真っ先に死ぬのはおかしくないかい?
    ウクライナのベテラン達が語る効果的な戦い方というのは被弾を避け回避や隠蔽に努めながら機会を見て反撃を試みる戦い方の事かと。
    新兵がそうしたベテランに育つ前に、ロシア軍との連続した戦いのどこかで亡くなってしまい易く、成長させられないっていう歯痒い話なんじゃないかい?

    あと、ウクライナの話は支援を引き出す為に苦戦をアピールしてる面も指摘されているので、コントロールされている事もあるよ。
    砲弾が一発もないとかは典型的で、実際にはそれなりに反撃を返してる。もっと必要なのは確かだが、時に表現が大げさな事もある。この記事でも砲撃をしているのが見かけられていただろう?

    8
      • paxai
      • 2023年 3月 18日

      ウクライナの兵士って今は逃亡には厳罰って決まってるしなんなら督戦隊もいるんじゃね?
      本当か怪しいが投降しようとしたウクライナ兵のいる塹壕に攻撃するウクライナ軍って映像が結構昔にアップされてるんよな。

      3
    • かず
    • 2023年 3月 18日

    逆に言えば、砲弾の供給がストップすれば阻止出来ないから、そこで撤退ですよとの宣言とも言えるから
    ウクライナ首脳部に向けて、防衛行動を続けさせたきゃ、そっちでも補給には責任を持てとのアピールか?

    • 2023年 3月 18日

    新兵が前線で弱点になり死傷しやすいというのはWW2の時も言われてることです。
    米軍の兵士の話でも見られますね。

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 欧州関連

    再掲載|導入自体が間違い?タイフーンを導入したオーストリアの後悔
  2. 米国関連

    本当に笑えない、米空母ジェラルド・R・フォードを苦しめるエレベーターの呪い
  3. 日本関連

    リチウムイオン電池採用艦!日本のそうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう」就役に世…
  4. 日本関連

    海外メディアも注目、横浜で護衛艦「いずも」の空母化工事が始まる
  5. 日本関連

    着実にレベルアップを果たす日本の対潜哨戒機P-1、2020年度から「能力向上型」…
PAGE TOP