インド太平洋関連

米同盟国の中でAIM-260の初取得は豪州、米議会の輸出審査をクリア

米国は中国とのミサイルギャップを解消するためAIM-260を開発中で、Naval Newsは昨年11月「まもなくオーストラリアに対するAIM-260初輸出が承認される」と報じていたが、国防総省も3月17日付けの武器売却通知の中で「オーストラリアへのAIM-260 JATM輸出が承認された」と通知した。

参考:Department of Defense Office of the Secretary [Transmittal No.26-03]
参考:France, UK Launching Joint Study Into Meteor Missile Successor

これはF-22やF-35よりもF/A-18E/FへのAIM-260A統合が先行している=初期運用能力の獲得に近い位置にあると示唆しているかもしれない

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は中国の航空戦力に関する報告書の中で「2020年時点のJ-20は技術的に比較的未熟で、2025年後半になると改良され技術的に成熟したJ-20Aが登場し、これをベースにした複座型のJ-20Sも含めて同機の年間生産数は120機、最低でも約13個航空旅団で320機~350機のJ-20、J-20A、J-20Sが運用されている」と言及したが、最も能力向上が著しいのは空対空ミサイルの分野だと警鐘を鳴らしている。

出典:彩云香江

“人民解放軍空軍のPL-15とPL-17はロシア、米国、欧州が使用する空対空ミサイルより大幅に射程が長く、まもなくPL-16も実戦配備されるだろう。PL-16はPL-15と同等の能力をもつ空対空ミサイルだが、本体の小型化と折りたたみ式のフィンを備えているためJ-20のウェポンベイに6発搭載できる。PL-15、PL-16、PL-17は何れもAESAレーダー・シーカー、ホーム・オン・ジャム、パッシブ・ホーミングといったデュアルモード能力を備えている可能性が高い”

“PL-15、PL-16、PL-17はAMRAAMで武装した西側戦闘機に対して絶対的な射程の優位性をもたらすだけでなく、非常に高いピーク速度に起因する目標到達時間=time-to-targetの優位性も提供する。これは中国軍機と西側軍機が同時にミサイルを発射し合った場合、中国のミサイルがおそらく先に目標に到達することを意味し、重大かつ潜在的な戦術的アドバンテージとなる。2025年5月のパキスタン空軍とインド空軍の交戦(シンドゥール作戦)は情報公開が不完全ではあるものの、西側やロシアの同等兵器と比較した中国製ミサイルおよび航空機の能力に関する有用な洞察をもたらした”

“一連の長距離交戦において少なくともラファールとSu-30MKIが1機ずつ撃墜され、インド空軍は他にも2〜3機の戦闘機がパキスタン空軍によって撃墜された可能性がある。パキスタン当局も「ラファールに命中したPL-15Eは200km離れた場所から発射された」と主張している。正確な数値(珠海航空ショーで展示されたPL-15Eの説明文には最大射程145kmと記載)はともかく、比較的新しいインド空軍の戦闘機がJ-10CEから発射されたPL-15Eによって被弾したことは事実であり、これは前例のない距離における初交戦だった”

“シンドゥール作戦とウクライナでの戦争における中国製とロシア製の長距離空対空ミサイルの性能の対照は際立っている。ロシアは状況認識力が非常に限られた旧式化したウクライナ軍機に対し、定期的にR-37Mを使用しているにも関わらず、Su-35、Su-30、MiG-31は4年にわたる戦いの中でウクライナ軍機を数機しか撃墜出来ていない。シンドゥール作戦で少なくとも1機のラファールを撃墜したPL-15Eは「中国軍向けのPL-15」よりも能力が著しく劣っていたことも強調しておく価値がある”

“PL-15Eのベースラインになったと思われるPL-15は10年以上前から人民解放軍空軍で運用が始まっており、この期間に見せた中国の軍事技術の進化や産業力の発展を加味すればPL-15ファミリーは中国軍向けにソフトウェアとハードウェアのアップグレードを複数回受けている可能性が高い”

出典:Government of India/GODL-India

要するにPL-15はデュアル・パルスロケットモーター(Dual-Pulse Rocket Motor)の採用によってAMRAAMを超える射程距離を実現しただけではなく、目標に接近した終末誘導段階で第2パルスに点火して再加速することで、最大9Gの回避機動までしか行えない戦闘機を追尾できるようになる、つまり「敵機がミサイル接近に気づいてミサイルの推進エネルギーを消費させる回避機動をとっても逃げ切れないノーエスケープゾーンを大きく拡大させている」という意味だ。

米空軍も「PL-15の脅威が本物だ」と認識してAIM-120の射程を上回るAIM-260 JATMの開発を進めており、このプログラムは徹底的な秘密主義の下で進められているため「AIM-260はAIM-120と同寸法」「AIM-120を上回る射程」「AIM-260は空軍と海軍との共同プログラム」「2022年までに初期作戦能力を獲得」ぐらいしか情報がなく、War Zoneは「PL-15が採用したデュアルパルスロケットモーターと同じ手法でAIM-120を上回る射程を確保しているはずだ。誘導装置や弾頭など推進部以外を小型化し、推進剤の容量アップを組み合わせることでAIM-120を上回る射程を確保している」と予想している。

出典:NAVAIR

米海軍は2026会計年度予算案の中で初めてAIM-260調達に3億900万ドル(調達数は不明)を要求、米空軍の高官は2025年10月「まだF-22やF-35への統合問題でAIM-260Aの運用を開始していない」「予定していた初期作戦能力の獲得時期は過ぎてしまったものの計画は順調に進んでいる」「空軍の戦闘機で最初にAIM-260Aを運用するのはF-22だ」と明かし、Naval Newsも2025年11月「オーストラリアへのAIM-260輸出がまもなく承認される」と報じた。

“米議会に提出された予備文書によれば国防安全保障協力局は9月にオーストラリアへのAIM-260輸出の可能性について通知された。Naval Newsが閲覧した取引の概要を示す文書にはオーストラリア向けとしてAIM-260A×450発が含まれ、関連費用を含めた契約総額は26億ドル(防衛装備品以外の費用も含めると31億ドル)で、1発あたりの取得コストは約580万ドルになる”

出典:Australian Defence Force/SGT David Gibbs

“オーストラリアはAIM-260Aの初期バッチを2033年第3四半期に受領する予定で、この取引について国防安全保障協力局、国務省、議会は特に抵抗していないため今週中に最終承認が行われる見込みだ。まだ開発が完全に完了していないAIM-260Aのオーストラリア輸出は異例なものだが、Naval Newsの取材に応じた米当局者は「FMS承認プロセスの変更や米国と最も近い同盟国との関係性を踏まえればAIM-260Aのオーストラリア輸出は成立する可能性が高い」と明言した”

“AIM-260A輸出に関しては複数の国から問い合わせがあるものの具体的な国名は不明だ。基本的にAIM-260Aの輸出判断はケースバイケースだが、AMRAAMの最新バージョン=AIM-120D-3売却を承認されている国はAIM-260A輸出が承認される可能性が高い。但し、オーストラリア向けの承認・納入スケジュールに他の国が追いつくのは難しく、この優先順位はトランプ政権の政策や同盟国が直面している脅威に基づいて判断され、特にインド太平洋地域の同盟国の優先されるだろう”

出典:Australian Defence Force/ACW Nell Bradbury

国防総省も3月17日付けの武器売却通知(Transmittal No.26-03)の中で「AIM-260 JATM×最大450発、AIM-260 JATM ITV×最大5基、AIM-260 JATM GTV×最大30基、各種関連費用を含む売却額は31.6億ドル」「AIM-260 JATMはMコードを使用した精密測位技術によって既存の兵器より射程と効果が向上している」「この潜在的な売却の機密区分は最高機密級だ」「この技術が敵対者の手に渡るとシステムの有効性を低下させる対策やより高度な機能を備えたシステムの開発に使用されたりする恐れがある」「オーストラリアは機密技術について米国と同等の保護能力を有していると判断され、AIM-260 JATMの輸出が承認された」と通知。

これでオーストラリアはAIM-260 JATM取得に必要な米議会の輸出審査を完了したことになり、今後は国防安全保障協力局が詳細な売却提案書(LOA)を作成して両国間で具体的な調達交渉が始まり、オーストラリアがLOAに署名して初回の支払いを終えると法的拘束力を持つ正式契約となる。これを受けて米国側が主契約者=Lockheed Martinと生産契約を締結すればオーストラリア向けのAIM-260 JATM生産が始まり、初回納入は2030年代前半(2033年第3四半期)になる見込みだ。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Nicholas Rupiper

未だにオーストラリア以外へのAIM-260 JATM売却話は登場しておらず、これはF-22やF-35よりもF/A-18E/FへのAIM-260A統合が先行している=初期運用能力の獲得に近い位置にあると示唆しているかもしれない。

ちなみに、英国とフランスは4月1日「ミーティアの後継ミサイル開発に向けた12ヶ月間の共同研究(将来の脅威を評価し、ミサイルに組み込む可能性のある技術を検討し、後継ミサイル開発のためのロードマップを作成)を行う」と発表した。

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※アイキャッチ画像の出典:Australian Defence Force/LACW Annika Smit

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コメント

  • コメント (1)

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    • せい
    • 2026年 4月 06日

    対空ミサイルの飽和が心配される昨今、戦闘機が敵機を確実に撃墜できるかは地味に重要
    台湾や日本みたいな島国は特に
    オーストラリアは欧米の中でも対中に熱心な国だし、装備増強は素直に嬉しい

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