インド太平洋関連

オーストラリアがウクライナに提供を約束したM1A1、米国の許可待ち

アルバニージー政権は昨年10月「退役するM1A1AIM×49輌をウクライナに提供する」と発表したが、豪国防当局者はABC Newsの取材に「まだM1A1AIMをウクライナに移転する許可が降りていない」と述べ、未だにウクライナに提供する戦車はオーストラリアを出発していない。

参考:Australia to provide Abrams tanks to Ukraine
参考:A fleet of aging army tanks donated to Ukraine is yet to leave Australia

M1A1よりもブッシュマスターを送った方が喜ばれるかもしれない

オーストラリア陸軍は老朽化したM1A1エイブラムス=M1A1AIM(米陸軍仕様と米海兵隊仕様が混在したバージョン)×59輌のアップグレードを検討したものの、最終的にはM1A2C/SEPv3構成に準じたM1A1×75輌を新しく発注し、アルバニージー政権は昨年10月「退役するM1A1AIM×49輌をウクライナに提供する」と発表したが、ウクライナに提供する戦車はオーストラリアを出発していない。

出典:Cpl Michael Currie

豪国防当局者はABC Newsの取材に「まだM1A1AIMをウクライナに移転する許可が下りていない」「本当にウクライナがM1A1AIMを欲しがっているのかも疑問だ。この戦車にとって砲塔上部の装甲薄さは最大の弱点で、ウクライナが戦っているのはドローン戦争だ」「和平交渉の可能性が高まっている中、輸送船に戦車を積み込むのが恥ずかしいという懸念もある」「そもそもオーストラリアから欧州までの航海中、積み込まれた戦車を監視するランクの高い要員も不足している」と述べたが、豪国防省は予定通り提供するという立場を守っている。

ABC Newsは「米国の抵抗がM1A1AIM提供遅延の要因の1つ」と報じたものの、ウクライナとロシアの戦争で戦車が果たす役割は決定的なものとは言い難く、特に提供数が少ないM1A1の運用維持のことを考えると尚更で、M1A1よりもブッシュマスターを送った方が喜ばれるかもしれない。

関連記事:豪州、退役済みのF/A-18A/Bをウクライナに提供できないか検討中
関連記事:キーウを訪問した豪首相、M113など1億ドルの装備をウクライナに提供
関連記事:祈りと武器を捧げるオーストラリア、ウクライナにブッシュマスターを提供
関連記事:オーストラリア、ウクライナに155mm榴弾砲と砲弾を提供すると発表

 

※アイキャッチ画像の出典:CPL Johnny Huang

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コメント

  • コメント (16)

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    • かませ
    • 2025年 4月 30日

    この戦車の供与が発表された時これらの戦車の価値が全部で1.6億ドルと記載されていて安スギィ!?となりましたがオーバーホールなどせずにそのまま送るって事ですよね
    あと送ったとして運用にかかる莫大な費用はオーストラリアが負担するんかな?
    確定でトランプは払わんでしょ

    16
      • NIVEA万能論
      • 2025年 4月 30日

      退役寸前の戦車だと当然あちこち傷んでいて故障も出ると思われますが修理はどうするんでしょうね。
      ウクライナ人は自分で直せないでしょうし、米国はタダで修理してくれますかね?

      3
        • ネコ歩き
        • 2025年 4月 30日

        費用がどこから出ているのか不明ですが 2023年9月の Forbes 記事によると、戦闘損傷したM1A1は回収されレオ2A4やブラッドレー同様にポーランドに後送し修理されているそうです。(レオ2A6はドイツで修理とのこと)
        常識的に出荷前の点検整備までは豪州持ちでやると思います。
        2023年5月の WORLD TANK NEWS によればですが、ウクライナにおけるM1A1の問題点は12時間ごとにエンジンのエアフィルターを掃除しないと重大な損傷を与えかねずメンテナンスが複雑なことだそうです。
        ガスタービンエンジン搭載のM1A1は米軍と同等の整備体制が無いと手に余る戦車なのかもしれません。

        20
          • かませ
          • 2025年 5月 01日

          アメリカのM1A1 SAは確か海兵隊使用の物をオーバーホール及び近代化を施し31両で4億ドルでした。
          ですから何かしらが欠けているのでは、、、
          と思っています。
          レオパルト2A4の修理費はドイツが負担しているはずなのでニュース等になっているのを見たことは無いですがエイブラムスの修理も今はアメリカ負担では無いかと
          そして更に状態も悪く数も多いエイブラムスの維持費をオーストラリアが負担するのかと、、

          1
            • 他人事では無い
            • 2025年 5月 01日

            心配しなくてもウクライナで直せるよ。

    • イーロンマスク
    • 2025年 4月 30日

    こうしてみると砲塔がデカくて重そうだ
    恐竜的進化に感じる
    ドローン対策が出来なければ滅ぶのも仕方ない気がする

    6
      • D-day
      • 2025年 4月 30日

      それでもレオ2辺りとは段違いで回避は速いんだよ。
      レオ2は0-40km加速が10秒近く、M1は7秒ちょっとです。ガスタービンはトルク太いので実は走れるデブなんだ。

      10
        • レプタリアン
        • 2025年 4月 30日

        ドローンからしたら些細な差な気がする

        6
      • ななし
      • 2025年 5月 01日

      ドローンだと戦車の役目を代替え出来ないから、ドローンにより戦車が滅びる事は無いと予想しています。

      戦車を滅ぼす潜在能力を秘めているのはUGVの方で、
      ドローンにより滅ぼされる兵器があるとしたら攻撃ヘリかな?

      2
    • NIVEA万能論
    • 2025年 4月 30日

    仮に米国の許可が下りて送ったところで、これまでのウクライナでのM1エイブラムスの戦績を鑑みればまた大した戦果も挙げないまま早々に損耗しそうですね。

    19
      • 朴秀
      • 2025年 4月 30日

      戦車を送らずに輸送にかかる費用分をウクライナに寄付した方が役に立ちそうです

      4
    • たむごん
    • 2025年 4月 30日

    前線が極めて長い、国家間戦争ですからね。

    前線に運ぶまでに、貨車・橋梁・道路などインフラも大丈夫だったんでしょうかね?

    ブルドーザー・パワーショベルなど重機1000機をすぐ送った方が喜ばれたかもなと。

    8
    • 2025年 5月 01日

    豪州がウクライナでレッドバックを実戦テストしたら面白いけどそうはならないのだろうな

      • 名無し
      • 2025年 5月 01日

      ロシアに実戦テストされるので。。。

    • ななし
    • 2025年 5月 01日

    今更だけど、何で豪州はM1A1AIMのアップデートではなく、『M1A2C/SEPv3構成に準じたM1A1』購入にしたのだろう?

    米国のM1系統は新造無くて、『M1A2C/SEPv3構成に準じたM1A1』も中古車両のリビルド的なオーバーホールを受けた上でのアップデートだろうから、
    リビルド対象が現有品か在庫品の違いでしか無く、
    車両価格が上乗せされる分だけ後者の方が高くなると思うのだけど。

    1
    • nachteule
    • 2025年 5月 01日

     M1A1は後継車両が決まっているから送るなら、同じく後継が決まっているM113とかASLAVを数送った方が良さげじゃないかな。

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