軍事的雑学

パキスタン空軍がJ-35A初号機を受領? これは完璧なフェイクニュース

中国は2024年の珠海航空ショーで正式にJ-35Aを公開、今月21日にはWeibo上に「グリーン塗装のJ-35A量産機が飛んでいる」と投稿されたのだが、乗りものニュースはパキスタン空軍のファンアカウントに騙されて「パキスタン空軍がJ-35Aの初号機を受領した」と報じている。

参考:Weibo
参考:J-35A Takes Off: China’s Twin-Engine Stealth Fighter Enters Mass Production ?
参考:China Fast-Tracks Stealth Jets to Pakistan to Counter India: Report
参考:南アジア初!「インドの敵国」が“激安”で最新ステルス戦闘機を入手!? 大量調達&運用開始まもなく

なぜこうなるのかさっぱり分からない、パキスタン空軍のファンアカウントに騙される日本メディア

パキスタンはインドのラファール導入に危機感を感じ、中国と共同開発したJF-17の最新バージョン=Block3の調達(計50機発注)を始めていたが、当時のアーメド内務相が突然「2022年の建国記念日に予定されている式典に25機で編成されたJ-10C装備の飛行隊が姿を見せる」「我々のJ-10C導入はインドのラファール導入に対する回答である」と発表し、パキスタン空軍も予告通りにJ-10Cを公開、当時のカーン首相もJ-10C導入意義について「力の不均衡を是正するの役立つ」と強調した。

さらにパキスタン軍は中国が開発を進めている第5世代機=J-35取得を示唆、中国も2024年の珠海航空ショーで正式にJ-35Aを公開し、今月21日にはWeibo上に「グリーン塗装のJ-35A量産機が飛んでいる」と投稿されたのだが、Defence Security Asiaは22日「北京がパキスタンへのJ-35A納入を迅速に進めている」「初回バッチの引き渡しスケジュールは2026年後半から2026年前半に前倒しされた」「北京が納入を6ヶ月早めたことでパキスタンは2026年初頭に第5世代戦闘機を受け取れるだろう」と報告。

これを引用したNewsweekも23日「パキスタンへのJ-35A納入が2026年初頭に早めれられた」「パキスタン空軍のファンと思われるXカウントもテスト飛行の様子(21日にWeiboで登場した写真)が投稿された」「同機の導入が間近に迫っているという期待感が高まっている」と、日本の乗りものニュースも24日「パキスタン空軍は2025年5月23日、公式Xにおいてステルス戦闘機J-35Aの初号機を受領し、自軍パイロットの手による初飛行にも成功したと発表しました」と報じ、なぜこうなるのかさっぱり分からない。

Newsweekは記事で紹介したXの投稿について「パキスタン空軍のファンアカウント=Pakistan Air Force=@TheRealFalcons5」と書いており、パキスタン空軍の公式ページに掲載されているXアカウントは「DGPR (AIR FORCE)=@DGPR_PAF」で、こちらにはWeibo上で登場したJ-35Aの写真などは投稿されておらず、乗りものニュースが「パキスタン空軍が公式Xで発表した」という内容はパキスタン空軍のファンアカウントの方だ。

さらに中国人らも「またいつものデタラメと嘘の拡散だ。元投稿=WeiboではJ-35A量産機だと示唆しているが、これがパキスタン空軍向けだと主張している者はいない。なぜいつも大げさな嘘を広めるのか? クリック稼ぎのためか? それとも自己満足か?」と指摘しており、仮にWeibo上に登場したJ-35Aが量産機だったとしても人民解放軍空軍向けの機体だろうと主張している。

因みに乗りものニュースは「パキスタン空軍は前日22日に、J-35Aの第1バッチ機は早ければ2025年8月に納入予定だと発表していました」と報じているが、これも公式アカウントではなくパキスタン空軍のファンアカウントの投稿内容なので信じないほうが良い。

とにかくNewsweekの安全保障ニュースや軍事ニュースは疑ってかかった方がいいと思っている。

関連記事:中国が珠海航空ショーでJ-35Aを正式公開、J-20S、J-15T、J-15Dも
関連記事:中国エンジン産業の進歩、WS-15を搭載するJ-20の鮮明な写真が登場
関連記事:中国は1年間にJ-20を100機以上、J-16を100機以上、J-10を40機生産か
関連記事:インド太平洋軍司令官、まもなく人民解放軍空軍が世界最大の空軍になる
関連記事:中国海軍向けの第5世代戦闘機J-35、高解像度画像が初登場
関連記事:中国が改良したCH-7を公開、対称戦で求められるハイエンドUAV
関連記事:中国海軍、空母航空団創設10周年を祝う映像にJ-15BとJ-35が登場
関連記事:CGではなく実機、中国の第5世代戦闘機J-20に噂されていた複座型が登場

 

※アイキャッチ画像の出典:Weibo

ドローンが変えた陸上戦、ウクライナでは戦場の一部から兵士が居なくなる前のページ

ロシア軍がスームィ州内に安定的な足場を築くこと成功、4集落を占領次のページ

関連記事

  1. 軍事的雑学

    米空軍の戦闘機は嘉手納基地から撤退しません、今後も常駐する予定

    航空万能論の記事に基いてYouTuberさんが動画を作っても普段はスル…

  2. 軍事的雑学

    武器輸出の3大条件、技術移転、現地生産、サプライチェーンへの参入

    冷戦が終結して軍縮が始まると売り手は需要減に直面、買い手は取引額に見合…

  3. 軍事的雑学

    ロシア海軍のフリゲートが黒海で火災? 信憑性に問題のある証拠ばかり

    ロシア海軍の黒海艦隊に所属する艦艇が蛇島周辺海域で火災を起こしていると…

  4. 軍事的雑学

    11/6更新|ロシア軍のウクライナに対するミサイル攻撃のデータ

    ロシア軍がShahed-136を戦場に投入=2022年9月22日以降に…

  5. 軍事的雑学

    米国がウクライナNATO不加盟確約と報じるのはロイター日本語版だけ?

    ロイター(日本語版)は「米国が来週中に提出する文書の中にウクライナのN…

  6. 軍事的雑学

    Global Firepower発表の2022年軍事力ランキング、上位10ヶ国に変動は無し

    グローバル・ファイアパワー(Global Firepower)は軍事力…

コメント

  • コメント (5)

  • トラックバックは利用できません。

    • 他人事では無い
    • 2025年 5月 25日

    成る程、ありがとうございます。

    3
    • 無印
    • 2025年 5月 25日

    パキスタンがもうJ-35?早くない?と思ったら、これですか

    乗り物ニュースってこう言うの多いですよね
    とにかく数を出せばいいと思ってるのか、雑な記事が多い

    4
      • a.k
      • 2025年 5月 25日

      「乗りものニュース」の軍事関係の記事は、Forbesの斧先生の記事と同類の代物で、
      とりあえずアクセス稼ぎする為のイエロー・ジャーナルだと、個人的には認識しています。

      産経の単独報な軍事関係記事は、裏を取っていないトバし記事なのが多いのとは別種の注意が必要ですよ。

      2
    • hogehoge
    • 2025年 5月 25日

    「乗りものニュース」ってネットサーフしたのを取材しないで転載してるのばかりなのと、その出典のリンクも載せないのでコアのミリオタ層からは評判微妙だよね
    リンク載せないし、画像に「乗りものニュース」って張り付けてるけど、あれ許諾とかも絶対取ってないだろうなという

    1
    • ななし
    • 2025年 5月 25日

    乗りものニュースのこの記事見て、パキスタンってそんなに買う金あるのか?とは疑問に思った。

    1
  1. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
PAGE TOP